50話「ハールンステーション」
シラリア惑星近くにあるハールンステーションへとたどり着いた。
『入港手続きが完了しました。107番ドックへの誘導赤外線を発射いたします』
入港し俺達は久しぶりにステーションへとやって来た。
「ペンドラゴン達は船番と海賊達を警察機関に渡すのと金になる物資は売ってきてくれ。俺は別件だ」
「畏まりました」
「ルル、行くぞ」
「私?」
「お前の事なんだから来てもらわないと困る」
「私はどうしたらいいかな?」
「自由にして構わない。1日休んだらここを出発するぞ」
「分かった」
キャメリアはドックを出て行く。
「俺達はコッチだ」
中央受付へとやってくる。
『傭兵団ギルドへようこそ』
「途中で海賊達が乗っ取った旅客船の生き残りを保護したんだが」
『保護ですね。旅客船のデータやバイオメトリックデータは有りますか?』
「旅客船の名前は流星、データは今送った」
『少々お待ち下さい・・・旅客船「流星」は確かにこの宙域で消息が不明になっております。ルル・ルルーシュ様は乗客リスト上に居ますが・・・男の子の筈ですが?』
ん?
『種族も狼牙族、年齢は12歳とバイオメトリックデータとは一致する箇所が名前しか有りません』
まさか・・・
「解析」
【解析】
名前:リリィ
レベル:26
種族:ホビット
性別:女性
年齢:26
職業①:魔術師(Lv70)
体力:2,070/2,070
魔力:3,745/3,745
攻撃力:284
防御力:189
頭:
体:服
手:手袋
腰:スカート
脚:革靴
アクセサリー①:リボン
アクセサリー②:偽装の指輪
アクセサリー③:
職業スキル:第1位階:ファイアーボール、ウィンドカッター、ウォーターバレッド、アースホール、ライトボール
第2位階:ツインファイアーボール、ウィンドシールド、ウォーターウォール、アースウォール
第3位階:トリプルファイアーボール、ソニックウェーブ、ダイダルウェーブ、ロックランス
第4位階:フレイムアロー、ウィンドフルール、アイスブレード、ロックキューブ
第5位階:フラッシュオーバー、ウインドバインド、アイシクルフィールド、ロックガドリング
第6位階:フレイムピラー、ダストストーム、ダイダルウェーブ、アースクエイク
日本語、アラムド連邦標準語
状態:健康
・偽装の指輪
ステータスの一部を任意に偽装できる指輪。
「偽装の指輪か・・・騙されたな」
「え?」
『違うんですか?』
「あぁ。今のは無しだ」
『はぁ?身元不明の方だとコチラとしては引き取れないのですが疑義報告は困りますね』
「少し話す必要があるな」
ビクッ
ルルことリリィが少女の様に目に涙を溜めて見つめてくる。
「涙は武器になんかならないぞ26歳」
「全部バレてるのね・・・レディの年齢を言うなんてタブーよ」
「騙そうとした相手に演技は通用しないぞ」
「チェッ」
「場所を変えるぞ」
「こうなったら」
「逃がすわけ訳だろう」
糸拘束術でリリィを拘束する。
「パブリックスペースでいいだろう」
逃げようとするリリィを引っ張って行きパブリックスペースへとやって来る。
半ば無理やり座らせて対面させる。
「目的はなんだ?」
「何処かの宇宙ステーションに来るためよ」
「ここじゃなくても良かったわけか」
「えぇ」
「何故騙していた?」
「アナタが強いからよ」
「宇宙海賊相手なら魔法で勝てただろう?」
「宇宙船の中で魔法が使えるとでも?」
「使えないのか?」
「魔法は自然の力を魔力で生み出す力なの。自然が無い宇宙船では無力なのよ」
「それなら合点が行くな」
「でも、アナタの船は使えそうな感じだった」
「俺達の船は特別だからな」
「本当はここに到着したら逃げるつもりだったけれど、アナタ達に興味があるの」
「興味か」
「何故、『日本』について知っているの?」
「ふむ。秘密だ」
「秘密って」
「俺を騙そうとしてた相手に喋るとでも?」
「まぁ、いいわ。で、私をどうする気?警察機関にでも渡す気?」
「密航自体や偽名乗船についてはその船に裁く権利があるらしいから警察も動かないだろうよ。それを知っていてやっていたんだろう?」
「ふふっ」
「どうして俺の船に密航者や偽名者が乗り込んでくるかね?」
「私意外にも居たのね?悪趣味な船に」
「キャメリアは元密航者だよ。クルー達の目を掻い潜って密航した事には驚いたがね」
「あの子が密航者?よく許したわね」
軽くキャメリアの事情を話すと納得してくれた。
「私はここで開放かしら?それとも罰を与えるの?」
「本来なら偽名を出して無銭乗船して来たんだからそれなりの罰金等が発生するんだが・・・金なんて持っていないだろう?」
「もちろん」
「代わりに払ってくれる奴も居ないと?」
「両親は既に他界したもの」
「じゃ、体で払ってもらう他ないよな?」
「え?ロリコンなの?」
「誰がそういう方向で払えって言った」
「女性に対して体でって言ったらそうなるわよ」
「それは誤解を生ませたな。じゃ、改めて俺の魔法を極める相手になってくれ」
「え?」
「聞こえなかったか?」
「魔法を極めるって聞こえたけど?」
「聞こえたてたな」
「どういう事?アナタは魔法使いの類じゃないわよね?」
「本職は魔法使いではないが、サブとして魔法使いのジョブを持っている」
「でも、世界によって魔法形態が違っていて教えられないわ。同じファイアーボールでも私は魔法陣なしでは使えないもの?」
「魔法陣式か・・・」
「という事は詠唱式なのよね?私としてはソッチの世界に生まれたかったわ」
「威力とかが変るなら魔法陣式でも習っておくべきだろうな」
「例え魔法陣式に切り替えてもどうやって戦闘中に魔法陣の切り替えを行うかが鍵になるわ。私の場合はグリモワールでやってるけど」
ボンッ
リリィの目の前に黒革に金字で書かれた表紙と背表紙を持つ分厚い本が出てきた。
「これがグリモワール、中には初級、中級、上級に通ずる魔法陣が描かれているの」
ペラペラと中身を見せてもらいながら軽く説明される。
「職業は魔術師となっていたが最初からなのか?」
「えぇ」
「一次職が魔法使い、二次職は魔術師ではなく?」
「ゲームかなんかの話かしら?」
「俺の場合・・・いや、俺が生まれた世界でもそんな事なかったか」
「話を戻すけど、魔法陣式はおすすめ出来ないわ」
「最初の魔法陣は覚えた」
シュルルルル
銀に発光する糸でリリィの持つグリモワールに描かれていた最初のページにあった魔法陣を再現する。
「あの一瞬で覚えたの・・・でもその魔法陣は何の物か分からなければ発動しないわ」
「俺には幾何学模様の様にしか感じないが、魔法陣が何を示しているのかは感じている。で、強制的に発動させてみる」
キィイイイイン
糸への魔力量を増やし感じ取った属性と同じ魔法系統を出す。
「ファイアーボール」
ボッ
魔法陣の前に火の玉が現れる。
「驚いた」
「いや、これは魔法使いとしての俺が出したに過ぎん・・・」
ヒィイイイン
魔法陣自信が俺の魔力を吸い上げて目の前の魔法現象に本来の効果が足されていく。
ボォオオオオ
「こういう事が起こるのか」
通常のファイアーボールの赤褐色から青く変化した。
「こんなの私の知っているファイアーボールじゃないわよ」
「そうなのか?」
「見てて。ファイアーボール」
ボォッ
リリィのグリモワールからファイアーボールが出現するが見慣れている赤褐色をしている。
「じゃあ、コレは一体」
『貴様等!そこで何をしている!!』
そこで俺達の前に警備員がすっ飛んできた。
『ここ、宇宙ステーション内での魔法行使を禁じている事は知らなかったのか』
「すまん」
「スミマセンでした」
警備員に怒鳴られながらも説明を受けた。
『以後、気をつけるように。次もやったら留置場送りだからな!』
「分かった」
「分かりました」
『よろしい。では、本官は持ち場に戻るでな』
そう言って戻っていく警備員。
周囲にも軽く謝り俺達はこの場を去っていくことにした。
「続きは船の中でだな」
「分かったわ」
話の流れで俺の船に乗ることになったリリィは方舟のクルーとして傭兵団ギルドに登録してハールンステーションを出て行く事にした。
・・・
・・・・・・
「先日の続きだな」
「えぇ」
日本旅館のある空間にて俺は詠唱と魔法陣でファイアーボールを出現させ、リリィは魔法陣のファイアーボールを出現させる。
「温度差1,500度差があります」
ペンドラゴンに色の異なるファイアーボールについて報告がされる。
「青いファイアーボールは私の記録にも有りません。どういった現象なのか理解不能です」
「俺達もだよ」
「えぇ」
「推測ですが、異なる魔法形態をあわせた事によって変化が生じたものかと」
「他属性を合成させる魔法はあるけど、同属性の合成は無いわ」
「2つの異なる世界の魔法同士という意味になります」
「逆に2つの異なる世界の他属性同士だとどうなると思う?」
「不発か大爆発かになるかと」
「ステーション内で発動させたのが同じファイアーボールで良かったわね」
「先日、大事件になり掛けていたって事か」
「では、威力の方を試してみましょう」
シュンッ
50m先に人型の的が現れた。
「アチラはミスリル製の盾を持った騎士の的です」
「ミスリルですって!?あの魔法金属と呼ばれている希少金属の1つのよね」
「えぇ。そちらの世界にもミスリルはあるのですね」
「あるにはあるけれど、指輪サイズでも物凄く高い金属よ。盾に使われる量で城が建つわ」
「そっちの世界はミスリルが貴重なのか・・・」
「その言い方、そっちの世界だとミスリルは豊富にあったって事かしら?」
「ミスリル自体は全体的に希少だというのは変わりありません。ただ、ダンジョンの特典でミスリルは生み出せるのです」
「ダンジョンの特典」
「艦長・・・よろしいですか?」
「今は同じクルーなんだ。説明として消費しても構わないだろう」
「分かりました」
ペンドラゴンはダンジョンコアを取り出して操作をする。
ボコッ
地面から土にまみれた銀色の何かが現れた。
「嘘でしょ・・・まさか」
リリィはソレを手に取って土を払い金属の輝きを見て驚愕している。
「ミスリル鉱石です」
「こんな簡単に手に入る訳ないわよね?」
「通常では無理に近いです。この度クルーとして向かい入れられたのでお話しますが、この艦自体がダンジョンになります。そして私がダンジョンマスターの権限を持っているのです。詳しい話は後で致しますが、ダンジョンポイントなる物でミスリル鉱石と交換いたしました」
「なるほど、色々と合点が行ったわ。この船が魔力に溢れているのと魔法が使える理由がね・・・ダンジョンが宇宙船なんて聞いた事ないわよ」
「正確にはダンジョン機能を装備した宇宙戦艦となります。元々宇宙戦艦だった事には代わりありません」
「ミスリルについては良くわかったわ。逆にコレで大儲けできると思うのだけれど?」
「交換するレートが高いのです。希少鉱石なら尚更です」
「幾ら位なのかしら?」
「このミスリルだと3万ポイントですね」
「高!?」
「なんでアナタが驚いているのよ」
「3万って言ったらこの空間を作ったときと同じポイントだぞ・・・というか3人の3ヶ月分も吹っ飛んだのか・・・」
「説明して」
「まず、ダンジョンポイントの説明からになります。ダンジョン内の中はダンジョンポイントと呼ばれるポイントで様々な物と交換できます。空間を広げる事もポイントで可能となるのです」
「なるほど、この船の中にこんな広い空間があるのはその為ね」
「ポイントで交換できる物にもレートがあります」
「この概念はポイントはお金、交換する物は商品という感じね」
「はい。ではポイントとはどの様に取得するのかについてですが、ダンジョン内に生息する生物につき1時間毎に5ポイントずつ追加されます」
「アナタ達は?」
「生物ではないのでカウントされません。現在は艦長、キャメリア様、リリィ様の3人がポイント対象となります」
「1時間で15ポイント、1日で360ポイント、1ヶ月30日として10,800ポイント、3ヶ月分の消費がコレ一つなのね・・・高いわね」
「海賊達を乗せていた分が余剰にありますので緊急時では無いので説明する為の費用と考えて頂ければ良いかと」
「もっと低い物でも良かったのでは?」
「レアであれば人は信じやすいのです。普通のものを取り出しても興味や関心は少ないでしょう」
「なるほど。残りポイントは幾ら位なんだ?」
「残り1,836,000ポイントですね」
「そんなに貯まったのか」
「183万でも他のダンジョンに比べて少ないです」
「ちなみにガンジがマスターだったダンジョンは何ポイントあったんだ?」
「エルダードワーフ族が長年住み続けていたので大量にあったでしょう。ガンジ様が初代でしたので・・・大体65,700,000,000ポイントになりますね」
「657億か・・・途方もないな」
「ダンジョンマスターの管理が無くなり最低限の維持だけだったのでアレほど溜まったのでしょう。ダンジョンの備蓄平均50億ポイント位あれば事足ります」
「50億でも遠いな」
「艦長たち以外もクルーとして雇えば日に日に増えます」
「雇ったとしても船はお前達が完全管理しているからクルーの技術は必要ないだろう。キャメリアの機関整備士が無駄になっている位だからな」
「いえ、今回の様に船に関係の無いクルーを雇えばいいのです」
「だからと言って俺達の旅に同行できる奴じゃないと駄目だぞ。途中で降りるなんて事になったら面倒だしな」
「それも聞きたかったわ。貴方達の目的ってなんなの?」
「艦長、話されていなかったのですか?」
「そもそも降ろす気だったからな」
「説明してからでないといけませんよ」
「で、目的地は何処なのかしら?」
「私達の最終目的地は【地球】です」
「地球!?存在するの!?」
「確証は得られていません。リリィ様は地球についてご興味が?」
「私の目的地が地球なのよ」
「ほぅ」
「でも、全然地球に関する情報が無いのよ」
「現時点では私達も地球に関するデータは伝説、口伝程度の話しか知りません。なのでスールン星系へと向かう事に致しました」
「あなた達は正気?あそこにたどり着くまで幾つも星系を超えないと無理なのよ」
「計算上、大体23年後となりますね」
「1年早まったか」
「反応炉D型が4基になりましたので」
「たとえスールン星系に辿りついてもその先もある筈よね」
「【地球】の座標、方角が分かったとしても銀河椀を超えなければならないと予測されています」
「銀河椀?」
「アラムド連邦とスールン星系はアンドロメダ銀河、艦長の情報によれば【地球】は天の川銀河と呼ばれる場所にあると聞きます」
「ちょっと待って、アオイは【地球】出身じゃないのでしょう?」
「俺は未開拓惑星出身だな」
「そんな、アナタがなぜ【地球】の位置を知っているの?」
「俺は転生者なんだ。【地球】からのな」
「やはり、艦長はそういった方だったのですね」
「気付いていたか」
「ガンジ様と同じ気配を感じておりました。あえて聞こうとは思いませんでしたが・・・」
「私もよ。【地球】からの転生者なの・・・何とか宇宙に出てこられたけれど大きな壁にぶつかって1年間はアチコチのステーションに飛び回ったわ」
「日本語が使えていたのはその為か」
「アナタも日本人だったのでしょう?」
「まぁな。VRMMOをしている途中で転生された」
「VRMMO?何かのゲーム名?」
「バーチャルリアリティ空間内での大規模多人数型オンラインの略称だ」
「・・・それってヘッドセットつけてコントローラーを握るゲーム?」
「いや、完全没入型のゲームだ」
「それって、何年の事?」
「西暦2052年程の事だ」
「・・・なるほど、時代が違うのね」
「時代?」
「私が死んだ時、西暦2012年の事よ」
「40年前」
「時間軸が異なったけど今は同じ船にいるのね」
「時間軸が変動してもおかしくはありませんよ」
「どういう事だ?」
「この宇宙には時間の感覚が変わってしまう事は稀ではありません。研究資料によりますとブラックホールに近い惑星内での時間は1時間経過したとしても外では数年経っている場合もあります。それを応用したのが」
「減速装置か」
「はい。恐らく地球からこちら側の銀河を通る際にブラックホールの様な物を通ったのでしょう。であればこういった事は可能になるのです」
「2012年に私が死んで、ブラックホールに近い物を通るまでに40年近くも経過していたという認識でいいのかしら?」
「その見解で殆ど合っていると思います。もちろん出会うには宇宙空間に出なくてはいけません」
「恐らく私達のような地球からの転生者や転移者は他の惑星にも行っていると思うの」
「前世の記憶持ちは限りなく少ないと思うぞ。俺達はたまたま出会ったのだからな」
「奇跡的にね・・・」
「もしクルーを見つけるなら、地球の記憶を持つ人が良いわね」
「ペンドラゴン、推測でいいから今の地球は俺が居た時代より未来になるのか?」
「未来になる可能性は大きいです。伝説等でしか存在されていない地球の伝承を信じるならば、現在の地球は人類が外宇宙に進出した後の時間軸なのかもしれません」
「スールン星系は元地球人達の子孫説か」
「アラムド連邦側の人は違うって事?」
「幾つかの星はそうかも知れないが、【地球】の情報はもっと色濃く残っていてもおかしくは無いだろう」
「確かに」
「ガンジ様から神について話されていましたね」
「神?」
「ガンジ様の推測では神の存在があったのではと言われています」
「神?存在するのか?」
「惑星を作ったのは最低でも1柱の神が作り出したとか・・・神が実在するかは定かではありませんが神が人を作り出したのであれば【地球】から人が来なくても問題ないかと」
「たしかにソッチの方が有力だな」
「神なんて存在するなんて聞いた事無いわ。こんなSFな世界に」
「今は高度な科学が中心な生活でも生まれた惑星が中世程度だったら神の存在は疑わなかっただろうな」
「たしかに・・・私の住んでいた場所も神に対する信仰宗教団体が居たくらいだわ」
「魔法なんて非科学的な物まであるんだ。神が居たっておかしくは無い」
「アラムドは神説か」
「だから人以外の種族も多いのね。特に獣人種」
「他に何かあるか?」
「それ以外は特に思い当たりませんね」
「わかった・・・俺達の事情はこんな物だ。かなり時間を掛ける旅なのは承知の上でやっている。リリィ、お前は俺達について来る気はあるか?」
「・・・考えさせて頂戴」
「時間はある。じっくり考えてくれ」
この話は一旦終了となりリリィの決断を待った。
3日間悩んだ末にリリィもついてくる事が決まり時間短縮が出来るゲートのあるに向けて俺達は再出発をする。
お疲れ様でした。




