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43話「鉱山迷宮都市」

む?


地下51階層に降りた途端に広大な土地が広がっていた。


「マスター、ここは?」


隣でサンがその光景に警戒を示す。


「迷宮内に太陽だと?」


迷宮は閉鎖的空間である、頭上に光り輝く太陽がある訳がない。


「分析結果が出ました。アレは巨大な魔石が太陽の役目を果たしているようです」

「そんな機能があったのか?」

「標準装備です」

「アレが何なのかは分かったが周囲に何か居るか?」

「探索してみます・・・気配察知!」


魔力の波動が周囲にばら蒔かれる。


「周囲100m以内には生物はおりません」

「なら、千里眼で周囲をみてみるか」


ヴンッ


視界がズレて上空へと向かう。


降りてきた場所は森の中心部、小さな湖のある広場だった。


森もまた広大で奥に見えるのは草原であった。


「ダンジョンに街があるのか?」


草原の中央部に人工建造物の影が見える。


「ボス部屋の数十倍にもなる階層って事か」


恐らく1階層分の壁をぶち抜いて広大なエリアを確保し自然を設置したのだろう。


しかし、何故こんな事をするのだろうか?


「マスター、モンスターの気配を察知しました」

「識別できるか?」

「大きさからして、ゴブリン種です」

「強さは?」

「気配察知にはそのような性能はありません」

「だよな。位置は分かるな?」

「ここから2時の方角、70m先です」

「アレか」


視線をサンの指し示した場所に向けると1匹のゴブリンが木の棍棒を持って徘徊していた。


【看破】

 名前:NoName

 レベル:2

 種族:ゴブリン

 体力:31/31

 魔力:2/2

 攻撃力:2(+2)

 防御力:2

 各種装備品:棍棒、腰布

 所有スキル:棍棒術

 状態:健康


外のゴブリンと変わらない強さか・・・51階層としては弱すぎる・・・


「如何致しますか?」

「近づいてきたら相手する。とりあえず森を出て人工建造物のある場所へ向かう」

「畏まりました。マスターは私の後ろに」

「あぁ」


サンを先頭に動き出す。


この森を軽く見てみるとゴブリンが単独で徘徊している。


ギャァ


サンの前ではレベル2や3のゴブリンは瞬殺である。


「ん?」


迷宮の中で当然に起こる霧散現象が起きない。


「こいつは、天然物なのか?」


ゴブリンの屍を触り感触を確かめる。


「天然物とは?」

「迷宮内に発生するモンスターは死ぬと霧散して魔石を低確率で落とすだろう?コイツはそれが起こらないって事は迷宮では生まれてこなかった外のモンスターって事になる」

「確かに・・・何故そのような事を?」

「その秘密は中心部にあるだろう」


森を抜けて草原に佇む人工建造物を指差す。


「草原にはウルフ系か」



【看破】

 名前:NoName

 レベル:6

 種族:グランドウルフ

 体力:45/45

 魔力:10/10

 攻撃力:17

 防御力:17

 所有スキル:噛み付き、遠吠え

 状態:健康


やはりレベルが低い。


グランドウルフは群れを作り5頭1チームで俺たちに襲いかかってくる。


が、サンの前では無意味である。


キャウゥン

キャワァン


一撃で地に倒れ伏す。


「毛皮は剥いでおくか」


グランドウルフの毛皮を剥いでインベントリに突っ込む。


徒歩にして2時間程歩き続けて人工建造物の近くまで来た。


「壮観だな」

「私には分かりません」


モンスターの侵入を防ぐ為に作られた壁はツルツルとしたコンクリートのような壁が高さ10m程で左右に広がっている。


今まで見てきた外の都市を囲む壁とは全く違う素材だ。


・大理石の壁

 モンスター侵入を防ぐために作られた防護壁

 耐久値:10,000/10,000


鑑定で調べてみても凄い壁だと判明した。

コレが全部大理石なら結構な金が使われているようだ。


「マスター、左手に門を発見しました」

「そっちに向かうとしよう」


壁沿いに歩き続けると、巨大な門が姿を現した。


・ミスリルの城門

 ミスリルで出来た城門。

 魔力減衰:5,000

 耐久値:100,000/100,000


「ミスリルで出来た城門かよ」

「堅く閉じられているようですね」

「見張りとかは居ないようだな」


城門には門番すら立っていなかった。


「こっちか?」


城門の横に人の通れそうな木の扉が設置されていた。


丁寧にノッカーが付いている。


ゴンゴンッ


ノッカーでノックしてみる。


ガチャッ


『誰でぇ、こんな時間によぉ』


出てきたのは子供の背丈程の身長、顔の殆どが髪の毛と髭で覆い隠されている、スングリムックリの体型。


「ドワーフか?」

『あぁん?俺を見てドワーフと一緒にされたぁプライドが傷つくぜ』


【看破】

 名前:ギンガ

 レベル:65

 種族:エルダードワーフ

 職業①:戦斧使い(Lv55)

 体力:3,800/3,800

 魔力:620/620

 攻撃力:790(+110)

 防御力:724(+79)

 各種装備品:ミスリルの戦斧、ミスリルアーマー、ミスリルグリーブ

 所有スキル:斧術、破砕、薙ぎ払い、一斧両断、兜割り、ショックインパクト

 状態:健康


レベル65のエルダードワーフだった。


「スマン」

『最近の人族はよぉ・・・・人族!?』


俺をみてギンガが驚きの声を上げた。


『なんで人族が居るんだよ!?此処は迷宮の中でそんな簡単に来られる場所じゃねぇぞ』

「迷宮を突破してきたんだ」

『いやいや、50階層にヤバイのが居るだろう!』

「トーラスキングか?倒してきた」

『馬鹿な!?・・・お前さん一人で』


ギンガの視線が俺から横にズレてサンに向けられた。


『んな!?』


大口を開けてサンを見て固まる。


『ば、馬鹿な!!?』

『おい、ウルセーぞ』


そこにギンガと同じような背格好をした別のエルダードワーフが現れた。


【看破】

 名前:ガルン

 レベル:65

 種族:エルダードワーフ

 職業①:斧槍騎士(Lv55)

 体力:5,150/5,150

 魔力:782/782

 攻撃力:1,330(+110)

 防御力:994(+79)

 各種装備品:ミスリルの斧槍、ミスリルアーマー、ミスリルグリーブ

 所有スキル:斧術、破砕、薙ぎ払い、一斧両断、兜割り、ショックインパクト、槍術、薙ぎ払い、剛腕突き、連続突き

 状態:健康


こっちもレベル65のエルダードワーフだ。


『どうした?お前がそんなに慌てる事でもあったか?』

『あ、あ、あ、アレを見ろ』


ガインが指差すのはサンの装備、ドラゴンスケイルギアである。


『あぁん・・・んな!?』


ガインも同じく大口を開けて硬直する。


『そんな!?ガンジ様の作品だと!!?』

『全身だ』


サンのドラゴンスケイル装備には紋章が掘り込まれている。


「コレが如何した?」

『お前、この装備の価値を知らんのか!?』

『あのガンジ様が作り上げた装備だぞ!!いや、待て!!?コヤツ、人族じゃない』

『本当だ・・・待て、自律型魔導人形《NALL》シリーズだ!ガンジ様の最高峰の1つじゃないか』

『小僧、コレを何処で手に入れた!!?』


ガシッ


興奮気味のガルンが俺の両腕を掴む。


ザッ


「マスターに触れるとは死にたいか?」


サンが間に入り眼を光らせる。


『マスター!?』

『小僧がか?』

「マスターを侮辱する気か!?」


サンは腰のドラゴンクローレイピアに手を掛ける。


バッ


『おっと、ワシはそんなつもりは無かった。許してくれ』

『コレが自律型魔導人形って奴か・・・』

「コイツの事を知っているのか?」

『知っているも何も、ワシ等エルダードワーフ一族の先祖であるガンジ様の最高傑作だ』

『ここじゃ、なんだ』

『入ってくれ』


エルダードワーフ2人に案内されて中へと入る。


ギシッ


『自己紹介がまだだったの。ワシはガルン、こっちが』

『ギンガだ。俺達は此処でモンスターの侵入を防ぐ為に見張りをしている』

「昼間から酒か?」


机の上にはアルコール臭い酒樽が転がっている。


「ガハハハッ、今は夜じゃよ。あの太陽で感覚が狂ってるんじゃ」

「そうなのか?」

「アレは常に光りを発しているからのぉ」

「ここは結局なんなんだ?」

「ここは鉱山迷宮51階層、鉱山迷宮都市と呼ばれておる。エルダードワーフ族の里じゃ」

「じゃ、お前達以外にも」

「沢山おるよ」

「人族が珍しいとは?」

「さっきも言ったが50階層のボスは並大抵の奴じゃ倒せない」

「ガンジ様の作品があればあるいは倒せるのじゃろう」

「失礼な方がたですね。私は見ている事しか出来ませんでした」


ガルンの言葉にサンが発言する。


「たった一人でか?」

「マスターはお強い方なのです」

「装備はチグハグじゃが」


ロンリーウルフレザーとガントレットを見て呟くガルン。


「待て。自律型魔導人形にマスターと呼ばれているならば、小僧の職業は糸使いじゃないのか?」

「正確には傀儡師だ。自律型魔導人形のマスターになるにはこの職業しかないと説明文があったからな」

「傀儡師とはなんじゃ?」

「糸使い、人形遣いの上位互換の職業だ。最上級職じゃないか?」

「おぉ、最上級職というのもあるのか」

「無いのか?」

「あるにはあるが少ないのぉ。ワシの知る限り、大賢者、剣聖、聖女なんかが最上級職じゃな」

「勇者は?」

「勇者には下級職なんかは無いから別格じゃ」

「あれ単体で最上級職って事か」

「そう言う事じゃ。して、小僧は何しにここに来たのじゃ?」

「アオイだ」

「アオイか」

「俺はドワーフ族のガンドルフと言う奴にこの迷宮を攻略するように指示を受けた。ここの最下層に自律型魔導人形が眠っていると当たりをつけているんだが」

「マスター本当ですか!?」

「ドワーフ族の聖域に眠る遺産って言ったらお前位な物だろう」

「ドワーフ族ではなくてエルダードワーフのな」

「ドワーフの上位種族がエルダードワーフなんじゃないのか?」

「エルダードワーフとドワーフは元を辿れば一緒なんじゃが、アヤツ等はいわば新種族じゃ。ワシ等よりずっと若造よ」

「ドワーフ族の伝承にも聖域について語り継がれているらしいが」

「資格あるものを探し出しここに導くのがドワーフ族の使命じゃ。で、ワシ等エルダードワーフは聖域に導くのがその役目じゃ」

「案内してくれるのか?」

「案内人は族長の努めとなるから俺等じゃ無理な話よ」

「なら、族長の元へ連れて行ってくれ」

「族長へ会うには52層に降りる必要があるのじゃが、ワシ等にも下層へ続く階段は知らぬ」

「自分で探せという訳か」

「うむ」

「とりあえず、中に入れ」


ガチャッ


俺達が入ってきた外からの扉ではなく、更に内側へ続く扉をギンガが開く。


カァン


カァンキィン


今まで聞こえてこなかった金属音の叩く音が耳に届く。


「「ようこそ、鉱山迷宮都市【アルヴヘイム】へ」」

「アルフヘイム?」

「アルヴじゃ」

「アルフヘイムはハイエルフ達の都市だ。間違えないようにな」

「ヴか。間違えないように注意しよう」

「その自律型魔導人形がいる限りアオイはこの都市に滞在しても良い。じゃが、職人には気をつけることじゃな・・・ガンジ様の最高傑作となれば群がられるぞ」

「その場合は私が盾となり切り伏せます」

「それは今後に支障がでる」

「職人気質のエルダードワーフ達は頑固で譲歩しようとせんからな」

「無事、族長に会える事を祈っているぞ」

「世話になった」

「外に出たい場合はここが唯一の出入り口じゃ」

「分かった」


ザッ


2人に会釈し俺はアルヴヘイムへと入る。


シィン


俺とサンの姿を見て周囲にいたエルダードワーフ達が一斉に手を止めて見てくる。


ウォオオオオオオオオオオ


ビクッ!?


唐突に周囲から歓声なのか怒声なのか分からない声が上がってきた。


「な、なんだ!?」


ドドドドドドッ


工房で働いていたエルダードワーフ達が一斉に近づいてくる。


「マスター!私の後ろに!!」


カシャッ


異様な光景にサンがドラゴンファングレイピアを抜き前に出る。


『おぉ!まさか、ガンジ様の作品が拝めるとは!!』

『いや、コレは自律型魔導人形《NALL》シリーズじゃ!?』

『なんと!?』

『確かにNALLシリーズの一体じゃ!』

『なんという事じゃ』

『生きているうちに見れた事が奇跡じゃ』


エルダードワーフ達はサンを取り囲みガヤガヤと言い合っている。


『おい、小僧。このNALLシリーズのマスターなのか!?』


一人のエルダードワーフが目を充血させて迫ってくる。


グッ


その間に割り込むようにサンが体を盾にしてレイピアを向ける。


「マスターを害する行動は慎むが良い!さもなくば死あるのみ!!」


サンが警告を周囲に飛ばす。


『やはり、マスターのようじゃ』

『人族がマスターとは驚きじゃわい』

『神官の所へ誰か走れ』

『みんな作業場に戻れ』

『親方、案内頼みます』

『おう』


ドスドス


エルダードワーフの中から一際大きなエルダードワーフが出てきた。


【看破】

 名前:ゴーガン

 レベル:75

 種族:エルダードワーフ

 職業①:鍛冶師(Lv68)

 体力:1,920/1,920

 魔力:1,070/1,070

 攻撃力:734

 防御力:658

 各種装備品:マダマンタイトのハンマー、鍛冶エプロン、長靴

 所有スキル:観察、注視、鑑定、看破、鍛冶師(銅/鉄/鋼鉄/ミスリル/アダマンタイト)

 状態:健康


『ゴーガンじゃ。ココ等を仕切っている工房長だ』

「アオイだ」

「マスターの僕である、自律型魔導人形《NALL》シリーズが一体、名前はサンと言います」

「うむ。ガンジ様のNALLシリーズを従えし人族か・・・傀儡師という職業はなんだ?」


シレっと看破したな?


「糸使い、人形使いの上位職だ、最上級職だな。俺を看破したな?」

「他の連中も看破している。職人の最低限必要なスキルだ」


周囲の連中を看破に掛けると看破スキル持ちだった。


「俺の強さは筒抜けか」

「その膨大なスキル数には驚かされたがワシ等を抜くのは難しいと思うがの」


レベルも全員65以上の鍛冶師ばかりだ・・・そんな連中相手に戦うのは無謀という物だな。


「案内してくれるのか?」

「エルダードワーフの歴史を知る神官の所までだ」

「分かった」

「着いてこい」


ドシドシ


ゴーガンが歩きだし、俺達はついていく。


歩く事20分ほどで都市の中央部へと到達する。

案外狭い都市なのかも知れない。


中央部には大理石で出来た神殿と思わしき建造物が建っている。


「ここが、エルダードワーフの歴史が祭られている神殿だ」

「ガンジ・・・」


エルダードワーフの神殿前には大理石で出来たドワーフ像が立っていた。


服装などは変っているが顔や髭なんかは俺の記憶にあるガンジの顔ソックリだった。


「そう、アレがエルダードワーフ族の始祖、ガンジ様の像だ。神官長、後は頼むぞ」

『えぇ』


珍しく髭の生えていないエルダードワーフが神官服に身を包んだ姿で登場した。


【看破】

 名前:サリア

 レベル:75

 種族:エルダードワーフ

 職業①:神官長(Lv67)

 体力:3,230/3,230

 魔力:3,040/3,040

 攻撃力:864

 防御力:788

 各種装備品:神官服、アダマンタイトの十字架

 所有スキル:ヒール、パラライズヒール、ポイズンヒール、ペトリファクションヒール、グレーターヒール、ハイヒール、リジェネーションヒール、エリアヒール、エリアグレーターヒール、エリアハイヒール、ホーリーランス、ホーリーバリア、ホーリーブレード、ホーリーレーザー

 状態:健康


「神官長のサリアです」

「女の神官長?」

「女で不服ですか?」

「いや。聖女を名乗ればいいんじゃないか?」

「神官長の方が箔が付くのです。長ですからね」

「聖女の方が箔が着くと思うが」

「それは嬉しい事ですが、ここでは男性の方が優位なのですよ」

「まぁ、何でも良いんだけどよ」

「それもそうですね。では、案内いたします。こちらへ」


サリアの案内にて神殿の奥へと案内される。


「これは」


巨大な壁画が左右にいくつも飾られている廊下を歩く。


「これらはガンジ様達が魔王討伐の偉業を成した時の壁画でございます」


ピタッ


一枚の壁画を見て俺の足が止まる。


数十人の人族が巨大すぎる亀に立ち向かう壁画だ。


「コチラは七つの大罪が一つ」

「憤怒のインテリジェンスタートル・・・」

「よくご存知で。人族にも言い伝えがあるのですね」

「勝ったのか?」

「はい。勇者の一人を失いましたが人族達は勝利しました」

「そうか」

「他の壁画も傲慢、嫉妬、怠惰、強欲、色欲、暴食の象徴となる幻獣を打倒しました」

「幻獣だったのか」

「そう伝わっております。7つの印を手に入れた勇者達は最北端にある封印されしダンジョンに向かいます」

「フィレウス大迷宮」

「はい。聖大陸と魔大陸の間にある外海には誰もが渡ることが出来ずに居た所、一人の勇者が糸口を見つけだした結果です」

「魔大陸に渡った勇者達はどうなった?」

「幾数名の犠牲を払い、フィレウス大迷宮を突破し魔大陸に進出しました。そこからは地獄のような土地だったと伝えられています」


恐らく俺が抜けた事によって、フィレウス大迷宮の突破が困難になったんだろう・・・だが、一度限りだったとしても突破したのか。


「数多のモンスターが襲来する中、経験を積み上げ勇者達は生きる気力を振り絞り魔王城へとたどり着きます」


漆黒の魔竜、数千の軍勢を率いるスケルトンキング、筋肉隆々のオーガジェネラル、古城を支配しているサキュバスクイーン、コウモリに変身するヴァンパイアロード、10mはありそうな巨躯を誇るナーガラージャ。

そして、巨大な魔王城。

その前を守る数万とも言えるモンスターの軍勢と紅い眼を光らせる魔王そのものが描かれた壁画。


「魔王城にたどり着いたのはガンジ様を含め4人の勇者様と数名の豪傑達でした」

「魔王イヴ・ヴァレンタイン」

「ヒッ!?何故・・・」


唐突にサリアが恐怖に顔を引きつらせた。


「名前を言ったに過ぎないが」

「その名前を知っているのは国の極一部の者のみに継がれているのです。口に出してはいけない名前だと」

「そうか」

「アナタは勇者ではなさそうですね・・・いえ、ガンジ様の自律型魔導人形が答えですね」


勝手に納得されたぞ・・・


「そういえば、魔王が復活したと勇者が言っていたが本当なのか?」

「それは誠ですか!?」


一々、騒がしい人だな。


「勇者ユンがそう言っていたからな」

「どちらの勇者様ですか?」

「勇者は複数人いるのか?」

「この大陸にある四つの国は元々魔王討伐をされた四大勇者が王となり作り上げられました。ご存知でしょう?」

「剣の勇者、拳の勇者、賢の勇者、癒しの勇者の事か」

「ガンジ様曰く四大勇者に糸の勇者が加わって五大勇者と私共には伝わっています」

「最初に亡くなった勇者の事か」

「はい。話を戻しますが」

「装備品で剣の勇者だと思うが」

「他の勇者をお探しでしたか?」

「いや、聖女との約束事でこの迷宮を攻略すると言っていたが?」

「一緒に来なかったのですか?」

「見ての通りだ」

「聖女が癒しの勇者という事でしょうか?」

「そこまでは分からん。会ったこともないしな」

「そうですか・・・魔王復活以外に情報はありますか?」

「それ以上の事は無い。俺はNALLシリーズを回収しに来ただけだしな」

「やはり遺品は自律型魔導人形なのですか?」

「恐らくはな・・・族長は52階層に居るそうだな。階段は知らないか?」

「私も知りえない事です。族長との連絡も通信真玉と呼ばれる魔導具によるものです」

「族長は世襲制か?」

「その様ですね。エルダードワーフの寿命は長いので今期で三代目の族長になります。四代目は数百年は先でしょう」

「この神殿には地下室とかあるのか?」

「あるにはありますが、神聖なる場所故に権力のあるものしか立ち入りが許可されていません。私でもアナタを立ち入らせる権限はありません」

「ふむ・・・そこには何がある?」

「ガンジ様のお作りになられた作品達が眠っております。幾数の結界で誰にも突破できません」

「そうか・・・目の前には行けるんだな?」

「はい。しかし何かした場合恐らくアオイ様でもこの都市には立ち入れなくなりますので何もしないでください」

「そこまで案内よろしく頼む」

「はぁ」


一度、壁画の回廊を戻り神殿の地下へと下る。


「ここから先は許しがあるもの以外立ち入れない場所です」


地下への階段を降りて封印の間の前へとやって来る。


「サン」

「はい」


ガシャッ


サンが俺の前を行き、封印結界の前へとでる。


「何を?」


《【鍛冶神】ガンジ様の作品である事を感知、封印を解除します》


スゥウウウウウ


機械的な声が発生られて結界が消え去って行く。


「なっ!?」


プシュウウウウ


空気の抜ける音と共に扉は左右にスライドしていく。


《自律型魔導人形《NULL》シリーズ。3号機の帰還をお待ちしておりました》

「マスター」

「中を探索してこい」

「畏まりました」


ガシャガシャガシャッ


プシュウウウウ


再びドアがスライドして閉じる。


ブゥウウウウウンン


再び侵入者防止の結界が張られた。


「考えましたね」

「ガンジの作品が出入ることは問題ないだろう」


《マスター、怪しい碑文を発見致しました》

《何て書いてある》

《「ワシの遺品か? 欲しけりゃくれてやるぜ・・・たどり着いて見せろ。この世のすべてを中心に置いてきた」です》

《戻ってこい》

《はい》


プシュウウウウ


サンが無事に出てくる。


「マスター、この武器が中に入っていました」

「ほぅ」


サンが持ち出してきたのは黒と赤の混じった刀身を持つ、レイピアだった。


「勝手に持ち出さないでください!」

「コレは自律型魔導人形《NULL》シリーズ専用の武器だと判断し持ち出しました」


・憤怒のダマスカスレイピア

 七つの大罪《憤怒》が込められたダマスカス製のレイピア。

 固有能力【全反撃フルカウンター】を持つ。

 攻撃力:1,750

 耐久値:800/800

装備可能職業:自律型魔導人形《NALL》シリーズ専用

 ランク:アーティファクト

品質:5


「うっ」

「この細剣は私の武器という事で宜しいですね?」

「確かに自律型魔導人形《NALL》シリーズ専用だと記憶していますが」

「族長の許可を得ればいいだろう」

「しかし、族長の居場所など」

「検討は付いている」


カッ


踵を返して神殿前の広場へと戻る。


「アンカー射出」


バシュゥウウ

両手の糸を全て出して巨大ガンジ像に巻きつけていく。


カカカカカカカカカンッ


ミスリルの杭が足元にくい込む。




「サン、それを持ってアッチに向かってロングピアッシングだ」

「はっ」


サンが全ての杭を左手で掴み取る。


「ロングピアッシング!」


サンがガンジ像の向いている方角にロングピアッシングを発動。


勢いが落ちることなく真っ直ぐに進む。


グンッ


ビィイイン


9本の糸が引っ張られる。


ゴッ


糸が途中で切れることなく像を引っ張り続ける。


「んなっ!?」

「連続で発動しろ」

「ロングピアッシング!」


ギュンッ


ゴッゴッゴッゴッ


数トンという重量がありそうなガンジ像が土台ごと重苦しい音と共にズレていく。



ゴゴゴゴゴッ


数度のスキル発動でガンジ像がズレて

ポッカリと階下へ続く階段へと姿を現した。


「52階層への階段だ」

「こんなに近くにあるなんて」

「族長はこの下か」


俺とサンは52階層へと下りる。


『よく来てくれた』


階下には石造りの建物が有り一人のエルダードワーフが待ち構えていた。


【看破】

 名前:ギース

 レベル:75

 種族:エルダードワーフ

 メイン職業:族長(Lv62)

 体力:2,470/2,470

 魔力:1,620/1,620

 攻撃力:722(+320)

 防御力:707

 各種装備品:オリハルコンの戦斧、族長の服、サンダル

 所有スキル:斧術、破砕、薙ぎ払い、一斧両断、兜割り、ショックインパクト、スマッシャー

 状態:健康


『ここはエルダードワーフ族長の居住区』

「アンタが族長なのか?」

『俺がエルダードワーフ三代目族長のギース』

「アオイだ」

「存じてる。立ち話もなんだ目的なんかも話してくれ」


ギースに案内され大理石で作られた家へと入る。


椅子に座り、俺の目的を離す。


「なるほど、エルダードワーフの遺産を目的にか」

「ここの最下層にあるらしいと聞いた」

「最下層にはダンジョンマスターの部屋があると聞く」

「聞く?」

「伝承のみしか知らないんだ」

「行った事がないのか?」

「行けなかったのが正解だな」

「行けなかった?」

「この家の裏手には52階層の迷宮が広がっている。我等エルダードワーフもまた祖先の遺産を一目見たいという思いで二代目族長は人手を集めて進もうとした・・・が」

「壁にぶつかったんだな?」

「屈強なるエルダードワーフの戦士を集めても倒せないモンスターと対峙して少なくない犠牲を払い撤退したと伝え聞く。その時の怪我が元で二代目族長は命を落とした。俺はその遺言を聞き次世代のエルダードワーフ達には族長の存在を隠す事にした」

「なるほど、だから巨大な像で入り口を隠したのか。先祖の像を動かそうという奴は居ないと踏んで」

「その通りだ」

「糸使いが現れた時、導く事が出来ないんじゃないか?」

「導く事は出来ないのは確かだが、ヒントは出せる」


ギースはサンを見つめる。


「自律型魔導人形には同型機を探知する機能が備わっていると聞く」

「はい。5番機の波長が微小ながら感じ取れます」

「聖域には5番目の自律型魔導人形があるのか」

「あの像には自律型魔導人形の波長を弱める力が込められているから今まで感じなかったのだろう」

「今ではハッキリと感じられます」

「ソレがお主を導くであろう」

「聖域とは別の話になるが、ガンジの仲間について何か知っているか?」

「ガンジ様の仲間か・・・確か弟子の中にミモザという人族の大召喚士が居たらしい」

「四大勇者の名前は?」

「その名は人族側でも有名ではないか?」

「聞いた事が無い」

「剣の勇者:ガンツ、拳の勇者:ウィリアム、賢の勇者:ヨハネ、癒の勇者:レッドの4人が四大勇者と呼ばれている」


ガンツ、レッドはノーチスギルドメンバ、ウィリアムはフルタイムギルドメンバ、ヨハネはノックスギルドメンバだ・・・やはりこの世界はフリースタイルオンラインの半デスゲーム化した後の話・・・だが、実際の世界の話だ。


幾ら体力が高くたって致命傷の攻撃を受ければ死ぬ。

死んだら終わりの世界だ。



「アオイ殿、如何なされた?」

「あぁ、済まない」

「ここに来るまで疲れたのだろう。今日は休まれるが良い。もし、補充したい物があれば神官長に案内させるゆえ」

「言葉に甘えるとする」


俺は族長の居住で一泊して翌日備える事となる。


「緩くはないか?」


ここはゴーガンの工房で神官長サリアに案内されてきた場所だ。


「あぁ、フィットしている」


・アダマンタイトアーマー

 ダマンタイトから作り出したアーマー。

 防御力:110

 耐久値:500/500

 ランク:クリエイト

品質:2



・アダマンタイトレギンス

 ダマンタイトから作り出したレギンス。

 防御力:87

 耐久値:500/500

 ランク:クリエイト

品質:2


・アダマンタイト製のペンディラムガントレット

 【アダマンタイト】によって防御力UP(中)。

 【コガネタラテクトの糸】によって魔力消費量は75%に抑えられる。

 【ミスリルの杭】で貫通力重視の攻撃が可能。

 限界距離50m。

 切り離すことは出来ない。

 糸は最大5本まで操作可能である。

 攻撃力:63

 防御力:78

 移動速度:-5%

 耐久値:500/500

装備可能職業:糸使い

 ランク:クリエイト

品質:2


ゴーガンに頼んで最高の装備を用意してもらった。


外の硬貨は使えない為、ここまでくるのに集めた魔石との交換で話は付いている。


それから足りなくなってきた食料を補充する。


・・・


・・・・・・


ザッ


サンを連れて再び52階層へと戻ってくる。


「達者でな」

「あぁ、世話になった」

「恐らくダンジョンマスターの部屋の奥が我らエルダードワーフの聖域だと思う」

「そうか」

「聖域に入るにはコアの制御を止める必要がでてくる。さすればこのダンジョンは機能を停止し我々は住めない環境となるであろう」

「それで」

「我らは地上を目指すこととする。新たな新天地を目指す」

「分かった」


ギィイイイイ


アダマンタイト製の扉が開かれて52階層の迷宮が姿を現す。


「行け」

「あぁ」


ザッザッザッザッザッ


俺とサンは歩き出す。

お疲れ様でした。


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