42話「鉱山迷宮③」
『コガネタラテクトの縦糸の加工、50mが10本と10mが1本の加工代で銀貨460枚となります』
「加工代で460枚とは高いな」
『コガネタラテクトの素材自体が希少故に加工する技術も一子相伝にもなっているのです。それほど素材や加工代は高くなるのです。もし売るとしたら1本10m単位で金貨5枚は頂く価格になりますのでお安くなっております』
「それほど希少価値の高いモンスターなのか」
『はい、迷いの森の最深部に到れる冒険者は限られております。たとえAランク冒険者のPTでも帰ってこない事例も多々あります』
「そんなにか」
『またコガネタラテクトの情報が欠落している為、熟練の冒険者も死亡してしまう事もあるかと・・・もし宜しければ討伐方法の情報をお売りして頂ければ幸いかと』
「金が動くのか」
『特定のモンスターとなりますと情報だけでも高く付くのです』
「教えてもいいが、ユン達次第だな。1回の討伐だけであの稼ぎ方だ。情報を開示したくない場合もあるだろうし」
『既にパーティ:勇ましき者の旅団の3人は了承を得ています。アオイ様の返答次第と仰っていました』
「なら開示してもいいだろう」
俺は手短にコガネタラテクトの持つ特性や行動パターン等覚えている限りの情報を伝える。
『こんな細かい詳細な情報を持っていますか・・・失礼を承知でアオイ様を解析しても宜しいでしょうか?』
解析?
「初めて聞くスキル名だな?」
『解析は対象物の詳細なステータスを暴くスキルでございます』
「看破との差は?」
『やはり看破持ちでしたか。誠に失礼しました』
「?」
急に受付嬢が深く頭を下げた。
『解析等のスキルは存在致しません。カマを掛けさせて頂きました』
「あぁ、引っかかったのか」
『申し訳ございません』
「いや、謝る必要はないぜ。簡単に引っかかったアンタの話術が凄いだけだ」
『左様ですか。ではこの情報を買い取らせて頂きます。後で生産致しますのでアオイ様はギルド長の所へ伺って頂けないでしょうか?』
「ギルド長」
『私も詳細については知りません。ギルド長がお呼びになられています。安心してください罰とかそういった類な物ではないと保証いたします』
「分かった。あの扉の奥なのか?」
『ギルド長のいる場所はあの扉をくぐりまして突き当たった両扉の部屋におります』
「分かった、”アミラ”さん」
「ふふっ」
俺が扉を潜りギルド長室へと足を向ける。
「まだ、名乗った覚えがありませんが見られてしまいましたかね」
【看破】
名前:アミラ
レベル:75
種族:ハーフエルフ
職業①:拳闘士(Lv62)
職業②:裁縫師(Lv23)
体力:1,919(3,838)/1,919(3,838)
魔力:801(1,602)/801(1,602)
攻撃力:341(683)
防御力:243(487)
各種装備品:受付嬢の帽子、受付嬢のチェニック、受付嬢のスカート、受付嬢の靴下
所有スキル:注視、鑑定、看破、解析、護身術、二連脚、三連脚、四連脚、正拳突き、五月雨突き、連牙拳、飛連脚、鉄拳、鉄拳五月雨突き、金剛体、神速突き、足払い
状態:迷宮の呪い(大)
解析が無いなんて嘘だったか。
恐らく看破の上位互換なのだろう・・・それにしても今までに最高のレベルにステータスとスキル量だな。
受付嬢をやっている事が不思議なんだが、迷宮の呪いですべてのステータスが半減以下なのが原因なのだろう。
考えているうちに目的の扉前へとやって来る。
コンコン
ノックをして中から返事を待つ。
『入りたまえ』
ギルド長というからには年配の声かと思っていたが若々しい声だ。
ギィ
「ギルド長に呼ばれてきたアオイだ」
入るなり手短に自己紹介する。
パサッ
奥の事務机の向こう側にドッシリと構えていた人物が持っていた用紙を机の上に置く。
『君がアオイ君だね、別名採掘王としてこの街で有名となった。ギルドとして枯渇しかけていた鉱石系が潤って助かったよ』
「お礼を言うために態々?」
『いやいや、君にPT申請依頼が来ていてね』
「誰から?」
『勇者と言えば分かるかね?』
「ユン達か」
『彼らから君の実力とランクに伴っていないと直談判があったくらいだよ。一体何をしたんだい?普通はこんな事にはならないけどさ』
「ギルド長なら俺の素性くらい追えたはずだが?」
『まぁね。隣国剣の国マリス王国のトランブル領のギルドで登録し劇的な速さでランク上げをした事は調べ上げられた。その時に噂になっていたのが銀線の魔術師という冒険者も上がっていた。ここまでは調べ上げられた。けれど』
「その先は不明と?」
『そうだねぇ。時間も足りなかったのもあるけれど君の出自なんかは分からなかった。よくてルネ村出身だとか?』
「1日でそこまで調べあげられる物なのか?」
『ふふっ、ギルドにも秘密なこと位は持っているさ』
大方、長距離通信機の魔導具で問合わせた位だろう。勇者が推す位の人物だと説明すれば俺の情報位は開示するだろうしな。
『一番驚いたのは君のステータスの高さだった。レベル2で攻撃力魔力共に3桁を超えているなんてね。当時からAランク相当の実力を持っていたなんて信じられなかったよ』
「で?」
『勝手に調べ上げたのは悪かったと思ったけど、勇者達の推奨と今回のコガネタラテクトの討伐で君をランクAに引き上げようかと思う』
「ランクを数段飛ばす事になるぞ?」
『勇者の推奨、Aランクのコガネタラテクトの撃破で実力は見て取れたよ』
「それだとしても昇格試験はあるんだろう?」
『特例としてBランクとAランク昇格試験を一括で行う。内容はコガネタラテクトの単独撃破だよ』
「PT推奨クエストだろ」
『君の実力を見るために他の手を借りる事は禁ずるよ。でなければ昇格するには弱いからね』
「ランクをゆっくり上げていきたいんだが」
『それでも構わない。けれどギルド長直々の依頼を蹴ると言う事は内定にダメージを負うよ?外聞が悪いんじゃないかな?』
「謀ったな」
『これもギルド長の権限と言ってくれたまえ。なに、規定の貢献度さえクリアしていけばランクは自動的上がっていくのは変わらないさ。ただ、貢献度が倍化しないとも限らないし。僕の気分次第かなぁ?』
「腹黒め」
『よく言われるよ』
ニヤァといやらしい笑みをこぼすギルド長である。
こういう頭の回るギルド長は困る。
「分かった。受けよう。あくまで俺の力で討伐してくればいいのだろう?」
『えぇ』
「指名依頼の場合は特別報酬があると聞くが?」
『報酬の内容が飛び級と言うことでね』
「半強制的なクエストの癖にか」
『それが大人というものですよ。おっと、アナタも成人しておりましたね。一つ勉強になったと思ってください。手痛い事態になる前に経験できたと思えば儲け物でしょう?』
「言ってろ」
・・・
ギルドを出てオーガストの店へと向かう。
ギィイイイイイイイイ
鋼鉄の観音扉を開き中へと入る。
「例の物は出来たか?」
「あ、アオイさん。出来てるよ」
店番はニーナだった。
「糸はどうすれば良い?」
「ちょっと待っててね」
ニーナが糸を手に取ると出来上がったペンディラムガントレットに素早く収納していく。
「これくらいは教えてもらっているからね。出来たよ」
・ミスリル製のペンディラムガントレット
【ミスリル】によって魔力消費量は50%抑えられる。
【コガネタラテクトの糸】によって魔力消費量は25%抑えられる。
【ミスリルの杭】で貫通力重視の攻撃が可能。
限界距離50m。
切り離すことは出来ない。
糸は最大5本まで操作可能である。
攻撃力:63
防御力:44
移動速度-5%
耐久値:300/300
装備可能職業:糸使い
ランク:クリエイト
品質:2
いま装備している物より大分優れた装備だな。
「ありがとう」
「なんか、不機嫌?」
「分かるか?」
「声のトーンが低いよ?」
「ちょっとギルドから無茶な仕事を押し付けられたからな」
「断っちゃえば?」
「もっと面倒なことになる。だから嫌がらせすると決めた。また来るからコレのメンテナンスを頼めるか?」
右手のワイヤーアンカーを取り外してカウンターに置く。
「わかったよ。また来る?」
「あぁ」
ギィイイイイイ
ウィーリアを出て人気が居なくなったのを確認して駿馬を召喚する。
「≪サモン(駿馬)≫」
ヒヒィン
「存在進化してないか?」
【看破】
名前:なし
レベル:5
種族:幽馬
体力:2,500/2,500
魔力:0/0
攻撃力:100
防御力:50
所有スキル:消耗軽減(極大)、疾走、突進、逃走、スタンピング
状態:健康
「幽霊の馬って事か?」
モンスターにも特定のレベルになれば存在進化すると聞いた事があったが駿馬もモンスター判定だったとは知らなかった。
真っ白い毛並みが青白い毛並みに変り、足首辺りとタテガミから淡い青の炎が立ち上がっている。
ポンポン
「実態はあるんだな」
ヒヒィン
「じゃ、頼んだぞ」
鞍に乗り、鐙に足を乗せ、手綱を握り走り始める。
グンッ
グンッグンッ
走るにつれて速度が急速に上昇していく。
たったの1分程度で周りが流れる様に見え始めた。
時速90km位出てそうだな。
徒歩2時間掛かる距離をたったの5分で到着という驚異のスピード。
馬に乗ったまま森へと突入、木々で幽馬の速度は落ちるが意外なことに中央に向かって進んでくれる。
迷いの森の効果は幽馬には効かないようだ。
カサカササ
体長5mのコガネタラテクトとの遭遇は森に入って20分後であった。
道中のゴブリンなどの雑魚は新たに手に入れた武器ミスリルのペンディラムガントレットによって早々に退場してもらった。
ヒヒィン
「お前は離れていろ」
既にコガネタラテクトは戦闘体制に入っており真っ赤な眼が俺を見ている。
ググゥッ
【猛毒液ブレス】
俺と奴との間は15m程離れている筈だが唐突に放ってきた。
「ワイアーアクションっ!」
ヒュっ
ギュルゥウウウウ
15mに到達するのにそれなりに時間が掛かる。
その間に俺はワイアーアクションを使い木々に杭を打ち込み縦横無尽に飛び回る。
その速度にコガネタラテクトも付いてこれるようでギョロギョロと目を動かして体の位置を微調整している。
「魔力強化二段階、斬糸!!」
ギュオッ
余っている糸を使い、50mリーチを活かし背後から襲う。
光の斬糸を感知したのかコガネタラテクトが左後ろにジャンプする。
ヒュオッッ
更に1本の糸が避ける先に回り込んで接近する。
ザシュゥウウウ
キシャアアアアアアア!
ドスゥウウウン
片側の脚が全て刈り取らて着地に失敗する。
「自律型魔導人形《NALL》、サンよ出てこい」
パァアア
インベントリからサンが姿を現す。
ッタ
地面に降りてもがき苦しむコガネタラテクトを視界に収める。
「今回の敵は如何いたしますか?」
「出来るだけ傷つけず抵抗が出来なくしろ」
「畏まりました。無力化いたします」
チャッ
ドラゴンの爪で作られた細剣を構えてサンはコガネタラテクトへと接近する。
キシャアァアアア
新たな敵に威嚇の声を上げるが接近してきたサンが動き出す。
「スピンストライク」
クルゥン
軽やかな回転、細剣がその鋭い牙に刃を向ける。
スパァン
綺麗に切り取られて地面に落ちる。
「ヘビィストライク!」
スババババババババババ
生き残っていた左側の脚にパワー重視の10連撃が叩き込まれ根元から切り落とされる。
シャヤアアアアアア
左右の足に牙を失ったコガネタラテクトの動きを完全に封じた。
【猛毒液ブレス】
最後の抵抗なのかサンに向かって放たれる。
「無駄です」
ビチャビチャビチャビチャッ
猛毒の液体はドラゴンのウロコによって全て弾かれる。
「私は人形、非生物に毒液は通用しません」
ザンッ
最後に首を断ち切って戦闘を終わらせる。
シュルルルルルッ
スタッ
「ご苦労」
「ハッ!解体は如何いたしますか?」
「素材は全て剥ぎ取る。俺は右側、お前は左側を担当してくれ」
「畏まりました」
ザクザクザクザクッ
牙、爪、脚、甲殻等の素材を剥ぎ取りイベントリにしまう。
「じゃぁ、戻れ」
パァアア
サンがインベントリに入り帰る支度を整える。
「幽馬」
ヒヒィン
少し離れた所から幽馬が現れる。
ドッ
素早く乗り込み帰路へと付く。
ドドドドドドドドドッ
土煙を上げながら幽馬は来た道を戻りウィーリアへと帰ってきた。
茂みに幽馬から降りて徒歩に切り替える。
見た目モンスターの幽馬を街に入れられないだろうしな。
シュォオオ
幽馬は亜空間へと帰っていく。
道へと戻り徒歩で門をくぐり抜けてギルドへと直行する。
ザワザワザワザワ
いつも以上にギルド内は騒々しかった。
受付嬢達もワタワタと動いている。
「何かあったのか?」
ちょうどユン達が居たから聞いてみる事にした。
「あ、アオイさん。よかったぁ~、無事だったんですねぇ」
「ほらな、ピンピンしてるって言ったじゃねぇか」
「心配無用と言ったばかり」
「状況が分からん」
「いま、迷いの森に続く道で正体不明のモンスターが爆走しているという情報がギルドに入ってきて冒険者たちを募っているんですよ」
「正体不明のモンスター?」
「見えないんです」
「見えない?」
「速すぎて目で追えない速さで駆け抜けていくモンスターらしいのです。それ以外はまったく情報が入ってきません。それで調査隊として」
「収集中って奴か」
受付カウンターでは名のあるギルドのPTが何組かが話しかけている。
バタァン
『出たぞ!今度はこっち側に向って来たぞ!!』
冒険者の一団が入ってきて受付カウンターへと殺到した。
「目撃場所は?」
『迷いの森入口付近からこの都市に真っ直ぐ一直線に走り去っていくのを確認した。俺たちの馬すら置き去りにする速度だったから途中で置いてかれた』
「この情報は門番には?」
『既に報告済みでアッチ側の門は既に閉鎖状態だ。塀の上で数人の弓兵達が周辺を警戒してくれている』
「分かりました。この都市周囲に潜伏しているのかもしれませんね。ご苦労様です」
「他に調査隊志望の人はいませんか~」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
暫く待ちギルド内が落ち着きを取り戻し始める。
ギィイイ
受付カウンター横の扉からギルド長が姿を現した。
「今回の緊急クエストが決まりました。種類は2つになります」
--------------------探索隊メンバ募集-------------------------
クエスト名:正体不明のモンスターを発見せよ。
要件:ウィーリア周囲に潜伏中の正体不明のモンスターの発見。
参加人数:無制限
発見報酬:銀貨300枚の分配
要注意:馬以上の速度を誇る事から突進などの攻撃に注意する事。最悪一撃死もありえる。
依頼人:ウィーリアギルド
-------------------------------------------------------------
--------------------討伐隊メンバ募集-------------------------
クエスト名:正体不明のモンスターを討伐せよ。
要件:ウィーリア周囲に潜伏中の正体不明のモンスターを討伐する。
参加人数:無制限
発見報酬:金貨500枚の分配
要注意:馬以上の速度を誇る事から突進などの攻撃に注意する事。最悪一撃死もありえる。
依頼人:ウィーリアギルド
-------------------------------------------------------------
以上2つのクエスト内容が読み上げられる。
「探索隊メンバについてこれ以上の参加意思がいなければ発見後の情報を元に討伐隊メンバを募集致しますので皆さんは話し合って決めてください。では頼みました」
ギルド長は言い終わると奥の部屋へと引っ込んでいった。
ウォオオオオオ
発表内容に周囲の冒険者達が活気づいた。
『銀貨300枚だとよ!たった見つけるだけなのにな!』
『討伐に至っては金貨500枚とは太っ腹だぜ』
『正体不明のモンスターだから報酬もはね上げているんだろう』
『参加人数無制限ってのがスゲェぜ。つまり何十人っていう奴が組んでいいって事だろう』
『発見者だけが報酬対象者じゃねぇってんだから驚きだぜ』
ドドドドッ
様子を伺っていた冒険者達がカウンターに押し寄せる。
討伐の自信がなくても参加するだけで普段貰ったことが無い金額を貰えると分かれば参加するのも致し方がないな。
「僕達はどうします?」
「そりゃ、討伐隊への参加だろ」
「ん。見つけるのは他の人の仕事」
「では、受付けて来ます」
「アオイは勿論参加だろ?」
ガインが訪ねて来る。
「いや。俺は参加しねぇよ」
「なんでだ?」
「俺の目的は迷宮で外じゃないんでね。他の連中に任せる」
どうせ見つかりっこないし時間の無駄だしな。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
暫くは受付カウンターが騒然としていたが時間経過と共に収まっていく。
その間は食事スペースで飲み食いして待つことにする。
なぜ、ユン達も同席である。
「アオイさんは目撃しなかったんですか?」
「してないな」
ソレに乗っていたなんて言えないしな。
「そろそろ俺も報告に行く」
落ち着いた頃合いを見計らってカウンターに向かう。
「アオイ様も参加希望で?」
「別の報告だ。ギルド長の指名依頼を果たしてきた。証明部位はコレだ」
ゴロッ
コガネタラテクトの頭部をカウンターに置く。
「確かにコガネタラテクトの頭部ですね・・・ギルドカードの提出を」
「あぁ」
クエストを受ける際と報告する際にカードの提出は欠かせない。
誰がどのクエストを受けたのかを記憶する為に必要になる。
「本日狩られたという記録もしっかりと残されていますね」
そしてこの討伐記録機能がギルドカードの便利でいて偽れない物だ。
「確認が取れました。おめでとう御座いますこれでアオイ様はAランク冒険者に昇格致します。ギルドカードもゴールドに変えますので手続きに暫くお待ちください。ほかの素材が余っている場合はコチラが買取いたします」
「一匹分の素材を買い取ってもらいたい」
「では、奥の解体場へお願いします」
「あぁ」
再び解体場へ続く通路を通り血の匂いが充満した場所へと向かい指示に従い素材を置いていく。
「お疲れ様でした。コチラが報酬と買取金額になります」
カウンターに戻ってくると金貨96枚と買取金額の金貨49枚が入った袋が置かれていた。
随分早い査定だったな・・・
「ギルド長が奥でお待ちです」
「わかった」
奥へ続く扉を潜りギルド長室へとやって来る。
「随分早かったみたいですね」
「それはどうも」
「勇者の推薦された人ではありますね。が、早すぎないですかね?」
「それが俺の実力だったって事だろ?」
「ギルドカードにも一人で討伐した記録は残っていたので疑いようもないのですがね。別の話ですが例の件は参加しないので?」
「俺の目的は迷宮だからな。外の事は他の連中に任せるだけだ」
「勇者PTも参加するらしいですよ」
「で?」
「興味がないのですか?」
「元々俺は彼らと利害の一致で行動をしただけだ。彼らが外に行くなら俺は中に行くだけだ」
「PTとしては動かないと?」
「PTになった覚えはないな。ギルドカードにも反映されていないからな」
「分かりました。ギルド長の権限で出来る範囲も限られていますしね」
「其れだけか?」
「えぇ。話は以上です」
「分かった」
クルッ
踵を返して俺はギルドを後にする。
・・・
・・・・・・
ザッザッザッ
装備を整え終わり、数週間分の食料をインベントリへと入れ迷宮の目の前にやって来る。
「暫くはこの風景とはオサラバだな」
迷宮は山に近い麓に入口を構えている。
それは都市を一望できる場所でもあるという事だった。
「さてと、行くとしようか」
ギィイイイイ
迷宮を塞いでいる石の扉を開き中へとはいる。
アォオオオオン
地下30階層、ボス部屋にてコボルトキングが吠え、コボルトロード2頭がコボルト系を197頭を従えて俺に迫る。
「斬糸」
ヒュンヒュンヒュンヒュンッ
斬属性の乗ったコガネタラテクトの糸は素の攻撃力と合わせて強力な一撃と化した。
ガウゥウ
ギャンゥン
キャワァアアン
俺の射程距離50m圏内に入ってきたコボルトソルジャー達が尽く両断されて地面に付していく。
10本もの糸はこのフィールドでは十全に効果を発揮してくれる。
「耐久値は凄いな」
・コガネタラテクトの縦糸
コガネタラテクトの糸袋から生成された糸。
魔力消費を25%に抑えられる。
耐久値:400/400
ランク:ノーマル
品質:1
さすがA級モンスターから作られた糸だ。
これならこの迷宮攻略でも耐えてくれそうだな。
更に装備強化スキルが役立っている。
・装備強化
魔力を消費して装備品に対して性能を上げる。
前提:傀儡師レベル30
基本性能の1.5倍上げる
通常、一段階(2.0倍まで)消費で性能を2.0倍上げる。
製作、二段階(3.0倍まで)消費で性能を3.0倍上げる。
魔法、三段階(4.0倍まで)消費で性能を4.0倍上げる。
特異、四段階(5.0倍まで)消費で性能を5.0倍上げる。
伝説、五段階(6.0倍まで)消費で性能を6.0倍上げる。
消費魔力:30/5s
CT:1s
結構えげつない性能だ。
普通の装備の攻撃力が50や防御力100だと、魔力30消費すれば1.5倍の性能が上り攻撃力75、防御力150となる。もちろん耐久値なども上がる事になる。
伝説級の装備なら魔力180消費で攻撃力防御力耐久値が5秒だけ6倍にも跳ね上がる。斬糸や斬鋼線の上位互換で装備破壊のリスクが殆ど無いスキルだ。
時間が過ぎるにつれてコボルト系のモンスター達が数を減らしていく。
時よりコボルトメイジから放たれる魔法を弾き返したり射掛けられる矢を切断して防いだりしてコチラの被害を抑えている。
ダッ
前衛の殆どを両断し終えて俺は前進を開始する。
矢やら魔法やらを弾き切断しつつ進みコボルトキングが射程圏内に入ってくる。
ガァアアアアア
ゴァアアアアア
コボルトロードが糸の嵐を血だらけになりながら接近してくる。
「斬鋼線!」
斬糸の上位互換であるスキルで迎え撃つ。
スパッ
鋼鉄製の防具を着込んでいた2頭のコボルトロードが豆腐を切るような手応えで両断される。
ブシャアアア
大量出血をして空中で分解されて行く。
ガラン
ゴロッ
残ったのは魔石(大)が2つ。
タジッ
「次はお前だ」
俺の強さにコボルトキングが一歩下がるが逃すことなく糸の餌食にする。
ゴゴゴゴゴゴゴッ
コボルトキングを倒して31階層へと続く階段が姿を現す。
周囲に散らばった魔石を回収してから俺は階下を目指す。
・・・
・・・・・・
地下31階から迷宮の様子が変わり、石の回廊といった感じで人工的に作り出された感じとなった。
ギャァアアギャァアアア
グルウルルゥ
ガルルルルッ
出てきたモンスターはゴブリン、ウルフ、ワーウルフの3種族だ。
ゴブリンはウルフの背中に乗ってライダーの様になっている。
【看破】
名前:NoName
レベル:40
種族:ゴブリンライダー
体力:1,657/1,657
魔力:199/199
攻撃力:268(+15)
防御力:268
各種装備品:鉄の槍、腰布
所有スキル:棍棒術、槍術、突撃、狼上槍、乗狼
状態:健康
【看破】
名前:NoName
レベル:40
種族:ライドウルフ
体力:1,647/1,647
魔力:194/194
攻撃力:269
防御力:269
所有スキル:棍棒術、双爪、噛み砕き、遠吠え
状態:健康
【看破】
名前:NoName
レベル:40
種族:ワーウルフ
体力:2,495/2,495
魔力:317/317
攻撃力:459
防御力:497
所有スキル:双爪、噛み付き、俊足、遠吠え、リーダーシップ
状態:健康
3種族を鑑定してみるとレベル40超えで今までの雑魚と比べてステータスは上回っている。
ザクゥ
糸で一閃しモンスター達は両断されて消滅していった。
ゼェゼェ
なんと、ワーウルフだけが瀕死だったが生き残っていた。
ザンッ
トドメを刺して消し去る。
攻撃力2,972の前では雑魚同然だったようだ。
この世界のダメージ計算は単純で攻撃力が相手の防御力を上回っていればその分が体力から引かれるという計算のようだ。
つまり、2,972(自分の攻撃力)-497(相手の防御力)=2,475ダメージが相手の体力を削って20という事だ。
しかし、レベル40のワーウルフが20まで俺の攻撃力を抑えてくるという事はそれ以上の格上が現れたら俺でも苦戦する事が間違いないだろう。
制作級装備を手に入れている条件で50m以上の離れている所からクリティカル狙いで魔力強化版二の斬鋼線で計算をすると2,972(自分の攻撃力)×5.5(魔力強化スキル)×3(飛距離ボーナス50m)×2(クリティカル判定)=攻撃力98,076となった・・・普通の装備があれば誰が相手でも不意打ち初撃で倒せそうだな・・・消費魔力は84でこのレベルだからこそ容易に使えるスキルとなるな。
防御力9万超えの化物ってなんだろうな
憤怒のインテリジェンスタートルが防御力14,000だったから、8,4076ダメージ。
その後、クリティカルがなくなって耐久値を考えて2発か3発かは当てられれば合計は49,038ダメージを与えて俺は無力になると・・・ソロじゃ勝てない相手だって事は分かった。
しかもヘイト値は俺が独占する計算だし確実に死ぬな。
地下40階のボスはワーウルフロードだったが、初撃で葬った。
地下41階層からは岩の回廊と呼ぶにふさわしくツルツルと綺麗な壁だ。
ノシノシノシ
現れたのは亀である。
【看破】
名前:NoName
レベル:51
種族:トーラス
体力:2,338/2,338
魔力:305/305
攻撃力:554
防御力:571
所有スキル:噛み付き、突進、スタンピング
状態:健康
二撃で倒せる感じだな。
トーラスを倒しながら進み続ける事2時間・・・地下44層で変化が訪れた。
【看破】
名前:NoName
レベル:54
種族:ファイアトーラス
体力:3,739/3,739
魔力:505/505
攻撃力:1,064
防御力:1,089
所有スキル:噛み付き、突進、スタンピング、ファイアブレス
状態:健康
【看破】
名前:NoName
レベル:54
種族:ウォータートーラス
体力:3,739/3,739
魔力:505/505
攻撃力:1,064
防御力:1,089
所有スキル:噛み付き、突進、スタンピング、ウォーターカッター
状態:健康
【看破】
名前:NoName
レベル:54
種族:グランドトーラス
体力:3,739/3,739
魔力:505/505
攻撃力:1,064
防御力:1,089
所有スキル:噛み付き、突進、スタンピング、ストーンブレス
状態:健康
【看破】
名前:NoName
レベル:54
種族:ウィンドトーラス
体力:3,739/3,739
魔力:505/505
攻撃力:1,064
防御力:1,089
所有スキル:噛み付き、突進、スタンピング、ウィンドブレス
状態:健康
属性違いのトーラスが現れだした。
各自属性違いのブレスを放ってくる。
厄介だと思うのは水と風のトーラス達だ、水のブレスは貫通力重視で迷宮の壁すら穴を開ける威力を誇っている。
風のブレスは不可視ゆえに避けづらく俺の装備では防ぎきれない強さだ。ここはサンに防いでもらっている形で突破している。
【看破】
名前:NoName
レベル:58
種族:トーラスキング
体力:8,818/8,818
魔力:1,215/1,215
攻撃力:3,152
防御力:3,190
所有スキル:常時硬化、噛み付き、突進、スタンピング、ファイアブレス、ウォーターカッター、ストーンブレス、ウィンドブレス
地下50階のボスはトーラスキング。
全てのステータスにおいて最大の数値をたたき出している。
防御面にいたっては3,190である、常時硬化で更に防御力をはね上げている。
・常時硬化
魔力を使用せずに体の一部を鉄並みに硬化させるスキル。
俺の通常攻撃では突破は不可能。
サンの攻撃力とスキルでも多少ダメージが入る程度か・・・サンには遊撃として動いてもらう。
「先手必勝!装備強化二段階版、魔力強化二段階斬鋼線!」
2,972(自分の攻撃力)×5.5(魔力強化スキル)×2(装備強化)×3(飛距離ボーナス50m)=攻撃力51,117である。
8,818(相手の体力)-(3,190(相手の防御力)-51,117(攻撃力))=-39,108の大オーバーキルでトーラスキングは沈んだ。
「案外、あっけ無かったな」
「私の出番は無かったですね」
「行くか」
「はい」
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
地下51階層へ下る階段が現れて俺とサンは降りていく。
お疲れ様でした。




