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【ライト戦記】宇宙の彼方から革命を越えて_連載版  作者: Tongariboy
2. 革命軍本部

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7/22

 2-1. 本部到着

———行軍を開始して一月(ひとつき)程。

革命軍の進路に帝国はおらず、想定されていた戦いは一度も起こらなかった。

誰もが不審に思いながらも、不自然な行軍は穏やかに進んだ。



 本部到着が間近となっていた、ある村に滞在した時のこと。

魔法の発動に苦心するアルファに、にじり寄る影があった。

背後を縫うように近づくその影。

それはアーシスのヤナギ課所属で、たまに話しかけてくる兵士の1人であった。


「ようボウズ」

「こんばんは」

「これやるよ」

「えっと、焼き茄子だね。ありがと」


 兵士は棒に刺した茄子をアルファに差し出す。


「茄子は南の名産品でな、こうして棒に刺して焼くのが古くからの風習なんだよ」

「そうなんだ。いただきまーす」

「俺も小さい頃からこれが好きだった。今は中々手に入らないんだが、たまにこうして皆で分け合うんだ。他所から来たっていうボウズにも食べてもらいたくてな」

「へー。美味しいね」

「だろ。見ろよ、あいつらも喜んでる」



 やったー、棒茄子だぁ!

 棒茄子さいこー!

 これで明日を生きていけるぜ!



「……すごく喜んでるね。でもなんていうか」

「明日を生きる、か。お前の故郷にもこんな風習はあったのか?」

「どうかな。ボクにそういう思い出はないよ」

「ボウズは……孤児なのか?」

「孤児ではないけど、身近に親がいないという点では似てるね。ボクの出自に関しては、まぁ、君たちには理解できない話だよ。これ、ごちそうさま」

「おう。あとちょっとで本部に到着だ。あと少し。じゃあな、早めに寝ろよ」

「うん」



 焚き火を囲み棒茄子に喜ぶ戦士たち。

その様子にアルファは少し、同情した。

「アイラ」

「はい」

「はやく革命が成就(じょうじゅ)するといいね」

「はい。私もそう願います」





 革命軍の本拠地。

そこは、北にそびえ立つ帝国を睨む最前線である。


 北の帝国と南の革命軍。

その間には南北を分かつ大河があり、そして北には大軍の進行を妨げる断崖が続く。

近くて遠い両勢力の本陣。

革命軍は今、この距離を縮めるべく作戦を練り上げていた。



 アルファ達は遂にその本部へとたどり着く。

不時着してからこの規模の街に来るのは初めてのアルファ。

活気あふれる情景に少年の心は弾んでいた。


 街に入り一行は解散。

チュニー率いる兵は本部へと向かい、アーシスは所属する諜報部門の兵舎へと向かう。

理由はわからないが、アルファはアーシスに着いて行くことになった。


「ここが革命軍の本拠地か。活気あふれる街だねぇ。色々見て回りたくなってきちゃうよ」

「はい。きっと楽しめますよ」

「でももう少し近代的かと思った。やっぱり古典の世界そのままだね」

「そうですね。さてアルファ。ようこそ(やなぎ)(その)へ」

「そっか、アイラの古巣だったっけ」

「はい。また来ることが出来るなんて思ってもみませんでした」

「帰って来れて良かったじゃん」

「そう、ですね」



「今更だけど、革命軍の名前がなんで柳なの?」

「それは、では順を追って、この地の宗教から。まず柳は私達の宗教において神聖な木とされています」

「柳が神聖だから由来に使われたと。ふーん、それで?」

「おっほん。よいかアルファ。柳とは、決して折れず静かなる抵抗を続け、しなやかに幾重にも広がる枝は多彩な人脈を示し、その悠然なる枝垂(しだ)れをもって邪気を払うものなのだ。故に、我々の革命は柳の園なのである」

「アイラさんキャラ変わってるよ」

「教えてくれた人の真似です」

「誰それ」

「革命軍の創設者です。人前には決して姿を見せない方です」

「ふーん。名前の由来もなんだか古風だね」

「我々は古典に出てくる存在ですから」

「もしかして自分のルーツを冷やかしたことを根に持ってる?」

「まさかまさか、根に持つなんて機械となった私が、ま・さ・か、ですよアルファ」

「……君って結構わかりやすいよね」



 アイラについて、理解を深めた少年であった———




 これから部隊長へ報告に向かうって言ってたけど、なんでボクまで行くんだ?

必要ない気がするけど。

やっぱりアイラかな?

でもそれなら本部に行ったチュニーと一緒の方がいいはず。

まぁ、行けばわかるか。


 それにしても、アイラの説明通り拠点と街が同化してるな。

軍事施設と共に一般的な施設も立ち並んでいる。

諜報部門の施設はあれかな。

なんていうか、普通だ。

アーシスっぽくてなんか安心の納得感。

「お前、この建物見て普通で俺っぽいとか思っただろ」

「ま、まさか、そんなまさか。ははは……なんでわかったんだ」


 魔法かっ……!


「アルファ、この先に部隊長がいる。くれぐれも失礼がないようにな。いいな」

「念を押さなくても大丈夫だよ」

「どうだか。ほんと頼むぜ」

「だったら連れて行かなければいいでしょ」

「そうもいかねーの。おら、行くぞ」

「はーい」



 奥にややがっしりとした扉がある。

あれが部隊長のいる部屋か。

アーシス、ちょっと嬉しそうだ。

珍しい。


「部長、只今戻りました」

「おお! 貴君らの生還を待ちわびていたぞ! ふむ。して、その少年は?」


 いつもの遠慮のない視線。

さすがに辟易(へきえき)する。

にしても。


「今度は部長か」

「どうかしたのか?」

「いや、なんでもない」



 アーシスは一通り部長に報告をしている。

その間ボクは待ちぼうけ。

はぁ、まったく。


「ではよろしく頼むぞ」

「承知しました」

「ところで、アルファ君だったね。こっちへ来てくれるかな」

「うん」

「初めまして」

「こんにちは」

「その腕輪が、アイラというのは本当なのかね」

「みたいですよ」


 アイラ? なんか親しみがあるような。


「ご無沙汰しております。叔父上」

「おお、その声、間違いない。アイラ、アイラではないか! 生きていた、というべきなのかな」

「生存に関しての定義は難しいところですが、とりあえず私という人格との意思疎通は可能です」

「お、おお、なんだか随分と難しいことを言うようになったな。あのアイラが……難しいことを……本当にアイラか?」

「え、ええ! もちろんですよ叔父上! アーシス、私だって以前から難しいこと言ってましたよね? ね?」

「えっ? は、はい。たぶん……」


  目をそらすなよ。


「そ、そうか。ははは、確かにその感じはアイラだな。本当によく帰ってきてくれた」

「はい。叔父上もお元気そうでなによりです」

「積もる話はあるが、ふふふ、アルファ君はお疲れのようだ。今日はもう帰って構わないからゆっくり休みたまえ」

「ありがとう、叔父上」

「ぜひまた来てくれ」

「はい。では行きましょう、アルファ」

「うん。じゃあね」



 アーシスが連れてきた理由はわかった。

でもまた取り残されてしまったよ。

アイラと思い出話する人がいるといつもこうなる。

ボクもその場にいないといけないから仕方がない。

だけど入り込めない会話をずっと聞いているのって辛い。

まぁ、叔父上さんはまだいい方だ。

この間の、ずーっとしゃべり続けるおばちゃんは、あれはしんどかった。

しんどすぎて脳だけスリープモードだった……



 やっと宿に行ける。

と思ったのに、アーシスがすれ違う知り合いといちいち談話するから全然進まん。

「あの、アルファ」

「なーに」

「すみません。付き合わせてしまい」

「いいよ。今は離れるわけにはいかないからね」

「はい」


 さすがにわかってたか。

けどそこまでしおらしくされるとなぁ。

やれやれ。


「じゃあさ、お礼をしてもらおうかな」

「お礼ですか?」

「そ。この街のガイドがいいかな。色々あるんでしょ? あ、美味しいもの食べたい」

「わかりました。お任せください」

「でもボクぅ、考えてみたらお金ないなぁ」

「ご安心を。アーシス」

「え? はい、どうかしましたかアイラ様」

「重要なミッションです。叔父上にアルファがこの街で不自由しないよう取り計らってください」

「こいつが不自由しないように……ですか。はぁ、わかりました。さしあたり、部長から軍資金を頂いてきますので少々お待ちください」

「よろしくお願いします。やはりアーシスは頼りになりますね」

「あの、アイラ様。アルファを甘やかさないようにしてくださいよ。すぐ調子にのりますから」

「はい。ご安心ください」

「大丈夫だよ。ほら、さっさともらって来てね、アーシス」

「そういうとこだっつーの! お前はいいかげん感謝することを覚えろ!」

「はいはーい、ありがとー、いってらっしゃーい」



 この後のことは忘れない。

戻ってきたアーシスが軍資金の受け渡しに条件を出してきた。

「おいアルファ。これが欲しけりゃしっかり頭を下げて礼を述べろ。へっへっへっ」

すごく嬉しそうに、にったり笑って言いやがった。



 ……ぐぬぅー! アーシスのくせにぃ! おぼえてろよっ!




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