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【ライト戦記】宇宙の彼方から革命を越えて_連載版  作者: Tongariboy
1. 科学と魔法と革命と

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 1-5. 星のキラメキと狂気のAI

———翌日、革命軍本部へ向け移動が始まった。

移動は徒歩。

まずは宿営地から北へ進み森を抜け、草原へと出ると山脈沿いに西へと進路を取る。

アルファは監視役のアーシスと並び歩いていた。

普段なら文句を言うアルファだが、この時は周囲の環境に魅入っており、珍しく不満を言うことはなかった。


 明るい鮮やかな空。

天然の優しい太陽光。

森と違い歩きやすい道を通る風は心地良い。

さして長くはない金色の髪を、軽やかな風に遊ばせる。

落ち着いて改めて見る山々の深い緑に、少年は目も心も奪われた。

道中には澄んだ湖も見かけ、星が持つ色彩の豊かさにアルファは感じ入っていた。



「アイラ」

「はい」

「この星も、いつかボクらの星のようになるのかな」

「人間がいる限りいずれそうなるのでしょう」

「そっか」



 革命軍と帝国の戦い。

これについてアルファはまだ知らないことが多かった。

だが、アイラやアーシスと話すために時折チュニーがやって来る。

耳を塞ぐわけもなく、自然とこの大陸の情勢を把握していった。


 現在の革命軍の戦力は底が見え始めている。

つまり決戦の日は近い。

帝国もそのことはわかっている。

物資の豊富な帝国は、戦を引き伸ばす持久戦を軸に作戦を練っているのだとチュニーは語る。


 このままでは革命軍の敗北は決まっている。

それは革命という火種が(つい)えることを意味していた。


 帝国を抑えるにはその象徴たる皇帝を仕留めるしかない。

チュニーとアーシス、そしてアイラはその見解を一致させていた。

3人の声色は重苦しく、聞く者に苦渋の決断が待ち構えているのだと知らしめる。


 その決断が何かを知らないアルファだが、彼らが何かを犠牲にして進むつもりなのだということは感じ取っていた。



 西への行軍は足早であった。

もはや猶予はない。

目指す本部は大陸の南西にある。

大陸北部に比べ、現在進行する南東寄りの地域は帝国の勢力が薄く、中には革命軍に協力的な集落も少なくはない。


 しかし山脈を越えた北側は帝国の完全なる領土。

壁一枚を隔てて西への最短コースを進めば、いずれ両勢力の境目を通ることになる。


 北西部にある帝都に近づく程どこかで衝突の可能性がある。

その緊張感が次第に高まることもまた、行軍が早まる原因となっていた。




 本部へ向かう最中、いくつかの村や集落を通過する。

観察するアルファの目に、彼らの生活は慎ましくも活力を秘めた比較的健全な集団に映った。

年齢や性別など似通った者が集まり談話する姿、仕事に従事する者達。

外的な要因でリズムを崩されずに営まれる光景。

それが少年には平和に見えた。



「ねえアイラ」

「はい」

「帝国の領土だとこんな風景は見られないのかな。平和だなって思ってさ」

「場所によります。帝都周辺は豊かな生活を送っていますが、一部の農村では治安維持さえ困難な場所もあります」

「そう。大体わかったよ」


「アルファ、この国の未来は革命に」

「真なる平等は機械によってもたらされる」

「マシナスキー教授の言葉ですね。それは機械の設計者・管理者が優位に立つという矛盾を(はら)んでいると揶揄された言葉でした」

「高い理想を掲げたかつての帝国と同じだ」

「はい」

()の教授が言う通り、全てを機械に任せられたら平等は可能だけど」

「欲求を抑えられない人間にそれは出来ません」

「人類史はいつでもどこでも変わり映えがしない。革命軍はどうだろうね」



 帝国の理想はいつから変わってしまったのか。

アルファはその問いをアイラに投げた。


 帝国の(まつりごと)は5人の五郎臣(ごろうじん)と呼ばれる者達が主導している。

彼らが台頭した頃から帝国の政治は大きく変わっていった。

彼らこそがこの国の圧政を敷いている張本人なのだ。


 つまり皇帝を退(しりぞ)かせたとて、五郎臣(ごろうじん)をどうにかしなくてはならない。

しかし、まずは象徴たる皇帝を討たなければ新たな五郎臣が現れ続けるだけ。

この戦いは簡単には終わらないのだと彼女は言う。


 まるでイタチごっこだな。

沈む夕日を見ながら、アルファは革命の先にあるものについて考えずにはいられなかった———




 いい加減歩き疲れた、というか飽きた。

そろそろ魔法の練習を進めたいな。


 アイラの座学によれば、結局ボクが魔力なるモノを感じられるかがポイント。

アーシスは魔力を感じられないと言っていた。

つまりこの星で生まれることが絶対条件ではないのかもしれない。

アイラはその点に可能性を見ているわけか。


 しかし、そんな抽象的な概念をどうやって具体にしたらいいんだよ。

感覚的にもほどがある。

チュニーに聞くのも嫌だしなぁ。

うーん、でもこれやらないと身を守れないし。


 いや待てよ?

ポッドが故障しているなんてアイラにしかわからない。

エネルギーが補充されて喜ぶのは何もボクだけじゃない。

よく考えるとアイラにのせられているだけな気も……



「アイラ」

「はい」

「アーシスと会った時に稼働し始めたけど、随分タイミングがよかったね」

「はい。アルファは気づいていませんでしたが、この星に来てからずっと稼働していました」

「え、そうなの?」

「でなければ免疫のないアルファは病で倒れています」

「うっ、なるほど。そういえばアーシスの翻訳も最初から出来てたし。ああ、現地人だったアイラなら即時翻訳が可能か」

「仰る通りです。タイミングが良かったのはエネルギー残量の乏しい中、帝国兵に近づいたあの状況において会話機能の修復が最善と判断したためです」

「そっか」


 理にかなってはいるか。


「でも、会話機能は最初に直してほしかったな」

「あなたの生命維持こそが最重要でした」

「わかったよ。ありがと」


 本当に突発的な状況だったのか、それとも全て計算の上にあるのか。


「けど未だに信じられないのは君の存在だ」

「はい。私も解を求め思考を続けていますが、未だに明確な答えを得られません」

「何が不思議かっていうと、君に主導権があることなんだよ。自分のために存在しているあのAIがそんなことを許すだろうか。何度考えてもありえない」

「同意です。そういえば、あの船のデータを読み込んでいる中で一際ひときわショッキングだった情報があります」

「……何を見たの」

「アルファがスリープ中のことです」



「ピピッ、ピピピー。敵影確認。排除開始……敵影ロスト。優先順位変更。進路変更。追撃開始。殲滅(せんめつ)殲滅(せんめつ)殲滅(せんめつ)———」



「目的が違うだろ! くっ、たまに予定より到着が遅いことがあったのはそういう……あ、あいつぅー!」

「とても個性的ですね。ある意味究極のAIです。さすがアルファのAI」

「どういう意味だ! もー、AIなんてきらいだぁー!」

「おいアルファ、うるさいぞ」

「ぐぅぬー! 帰ったらあいつの痕跡を根こそぎデリートしてやるっ」

「また難しいことを。あっ……もしかして私を通して魔法という新たな力の解析を今……主導権もそのために……」

「いやいやいや、もういいよ、あいつのこと考えるのはもうやめよう」

「そうですね。少し怖くなってきました」


 早く帰りたいけど、ボクも帰るのが怖くなってきたよ……




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