4-1. 宇宙へ
———城から離れ革命軍陣地へと来たアルファ。
疲れ果てた彼は道中アーシスに背負われ、テントの中で目を覚ました。
外に出てみると地平線に朝日が昇り始めた頃だった。
周囲で勝利を叫ぶ者に見知った顔はない。
アルファは手近な木の根本に腰を降ろした。
枝を拾い上げ、いじりながら目の前にいる人々を眺めた。
再会し抱き合う者、談笑する者、独りうなだれる者。
少年はため息をつき、アーシスを探しにその場から離れた。
戦いは帝国が優勢であった。
しかし街中で起きた不自然な争いが指揮系統を乱し、革命軍が息継ぎをする間を与えてしまった。
そのさなか、帝国の要である八人の騎士長は誰一人として表に立つことはなかった。
総司令官ルー・ア・シーさえもその姿を消す。
誰もが終わりの見えない争いを続けた。
皇帝捕縛により勝敗が決するその時まで。
その知らせが瞬く間に伝わり、戦争は次第に終結へと向かった。
すでに帝都東側の城壁は崩れ、もはや街は人の住む場所ではなくなっていた。
傷を負い、剣を持つ者は家路へとつく。
身を潜め家を失った者は、その対価を薪に新たな炎を燃やす。
輪廻の終わりを知る者はなく、時代は流れていく。
後の世の人はこの戦いをこう語る。
英雄の姿もない泥試合。
前触れもない権威失墜。
そして革命を指してはこう呼んだ。
主役なき革命、と———
一通りの処理が終わりアーシスが駆け寄って来る。
「アルファ! 良かった、目が覚めたんだな。 痛いところはないか? ないよな? 無いって言ってくれ!」
「どんだけ恐れてるんだ。大丈夫だよ」
「はぁ、生きた心地がしなかったぞ。心配で長老もつい全力で止めてしまった」
「折角かっこよかったのに、そういうの言わない方がいいよ。それとボクらを守るって言った割にすぐいなくなったね。役立たず」
「仕方がないだろ。ズィーに足止め喰らって、苛ついてるトーアが絡んできて、更にルーが”確かめさせてもらう”とか言って襲ってくるし」
「ご苦労さん」
「まったく、さすがに死ぬかと思ったぞ。見ろよこの火傷、手加減くらいしろって……うん? ライ、ズィー、トーア、ルー、ローゼ、ブルー……なんで俺、八公全員と戦ってんだ……」
「革命軍だからでしょ」
「……まあ、そうなんだけど。いや違くない?」
「で、僕らを無視して皇帝のとこまで行ったわけか」
「ルーから城に向かったって聞いた。知らん間に追い越してたみたいだな。ていうか先に行ったくせになんで遅かったんだ?」
「まぁ、ボクの方でも色々あったからね」
「何かあったのか」
「べっつに……あっ! ライさんだ」
「えっ! ど、どこに」
「うそだよ」
「お・ま・えっ!」
「ふふん、いい気味だ」
「ったく、お前はこの後どうするんだ? 一応功労者としてなら」
「すぐに帰るよ」
「……そうか。アイラ様もですか」
「はい」
「ここで残るとさ、ボクが帰るまでにまた時間がかかるからね」
「はい。何より万能で叡智を備える不滅の王女など存在してはいけません。早々に立ち去るべきです」
「そうそう。そんなものは独裁と更なる反乱の因子にしかなり得ないのだ」
「なんというか、お前らしいな」
「アーシス。ご苦労さまでした。本当にあなたには助けられましたね」
「もったいないお言葉です。私は巻き込まれただけです」
「それボクのセリフだから」
「ははっ、そうだな。悪かったよ。でも助かった。お前がいてくれたからこの結果にたどり着いたんだ。ありがとな、アルファ」
「ふん。日頃からもっと感謝すべきだよね」
「今後はそうするよ」
「ねえアーシス。皇帝が言ってたように戦後処理は生半可なものじゃない。いつか温泉で話したね。これからが大変だと思う」
「ああ。皆わかっているさ。ちょっとずつでも変えていかないとな。まずさしあたっては五郎臣だ。だが、一旦はここまでだ」
「そうだね」
「元気でな」
「うん。アーシスも」
「アイラ様も。どうぞお元気で。もうご無理はされないように」
「ご安心ください。このボディに斬り落とす首はありません」
「あ、そ、そうですね、ははは……じゃあ心はアイラ様ですし、どうぞご健全なままに、かな」
「はい。アーシスもあまり無茶をしないように」
「はい、ありがとうございます」
「ところで……どうやって帰るんです?」
その問に、アルファとアイラは2人して笑った。
訝しく首をかしげるアーシス。
そしてアルファは言った。
「こうするんだよ」
突然、光の柱がアルファを包んだ。
「座標特定。エネルギー問題なし。アルファ、行けます」
「うん。じゃあねアーシス課長」
唖然とするアーシスを笑いながら、アルファはあっという間に宇宙の彼方へと戻っていった。
アーシスは光に手を伸ばしかけて、ニヤリとして、その手を胸に当て敬礼した。
あばよ、ユラユラ星人———




