死して導く浮世かな
———帝都の東。
戦場となった草原よりもずっと東。
質素な馬車が3人の老人を乗せ静かな街道を走っていた。
そこに早馬が駆け寄り、一枚の手紙を差し出す。
中を確認した老人たちは同様に笑みを浮かべた。
「そうか、皇帝は捕えられたか。帝国も終わりだな」
「どうされますかな?」
「帝国に住まう身では逃亡しかありませんなぁ。あなたはどうされるおつもりで?」
「今の生活は手放せん。なぁに帝国は複合組織だ。頭が潰れた程度、いくらでもやりようはあろう」
「そうだな。私も口実をつけてどこかの領地をいただくさ」
「して、五郎臣には2人足りないが、ライ・ク・アーが上手くやったのか?」
「問題ない。屋敷で憤怒の炎と轟く雷を見たそうだ」
「ふっふっふ、そうか。あれは仇をとったのだな」
「セーツ・マ・ルーは」
「あの愚か者の屋敷で鬨の声があがったそうだ。兄弟騎士もいたという」
「そうか。では契約通りだな」
「闇の怪人が我らに情をかけるとは思えんがなぁ」
「同感だ。あれらを売る代償がこの逃亡。だが追手を向けているだろうな」
「まぁ、それも徒労に終わるさ。ふむ、これでもう五郎臣とは呼べなくなったか」
「三郎臣とでも名乗るか?」
「語呂が悪い」
「今後我らの関わりも薄まろう。こだわることもあるまい。あの2人を思い出すのも癪に障るしな」
「確かに。あの2人は性急過ぎた」
「内側で反感を育てては首を絞めるだけ」
「もう少し上手くやってもらいたいものだ」
「その結果がこの革命か。くだらん」
「ふん。何も変わらんということがわからんのだ」
「道化どもめ」
「コーンは」
「斬首だろう。でなければこちらで手配する」
「まぁ、奴は処刑を望むであろうがな」
「死して導く浮世かな」
「ははは、あれには勿体ない唄だな」
「ふふふ、せめてもの手向けだ」
「ふっ、皇帝如きが。面倒なことをしてくれたものだ」
郎臣達を乗せた馬車は、夜の闇へと紛れていった———




