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【ライト戦記】宇宙の彼方から革命を越えて_連載版  作者: Tongariboy
3. 燃える帝都、戦火の八騎士

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 3-7. 虚構の英雄

———帝都東。

戦闘は未だ続いていた。

軍の奇襲により後退を余儀なくされた帝国騎士団。

防衛線を張り帝都を死守する。

爆ぜる大地。

爆炎を避け進軍する革命軍。


 しかし、革命軍は優勢を演じているにすぎない。

折れた剣を携え、突撃する他に策はない。

皇帝暗殺。

帝国が知り得ない最後の刃に希望を残し、彼らは炎へと突き進む。


 状況を把握した総司令官ルー・ア・シー。

革命軍の劣勢を見抜いた彼は、帝都城壁から戦火を眺めていた———




 この混沌とした状況では出番はないか。

英雄の力など、所詮この程度。

いや、敵もなかなかにやるな。

称賛に値する勇者達だ。

惜しいものだ。


「騎士長ルー・ア・シー、報告がございます」

「副団長か。聞こう」

「敵奇襲部隊が帝都内に入り込み街を荒らしているとのこと。いかがいたしましょう」

「ふむ……よし、私が行こう」

「騎士長が? さすがにそれは、総司令官というお立場を」

「わかっている。だがあの状況を見ろ。勝敗は決したも同然だ」

「ですが」

「私にはやることがある。ここは任せたぞ、副団長」

「……仰せのままに」

「すまんな」

「言い出したら聞きませんからな」

「ははは。おい、間違っても負けるなよ?」

「やれやれ、重責を押し付けられましたな。騎士団長殿、お早いお戻りをお待ちしております」

「ああ。ではな」




 さて、報告の通りなら脅威が城に迫っているのだな。

帝都が攻められている。

そしてあろうことか皇帝の居城に敵主力が迫っているという状況。

このような事態はあってはならないことだ。

革命軍掃討作戦の総指揮官としては責任の所在が問われる。

わかっているさ。

だが今はやるべきことがある。

いや、正しくは……やりたいことか。




 これはまた、ずいぶんと派手にやってくれたものだ。

やれやれ、我らの美しき都がずいぶん荒れてしまったな。

革命の目的は恨みを晴らすためではないだろうに。

ふむ、この崩壊は私の落ち度と言えるだろうか。

であればよいのだが。


 帝都守護に就いたライ・ク・アーだが、今どこだろうか。

兄弟も手筈通りならここらにいるはず。

ん?

そうか、ここは。

向こうの通り、懐かしいな。

小さい頃によく通った書店だ。

店主は大丈夫だろうか。

ああ、あの家は、それに向こうのは……

むっ、なんだ?

戦闘音、近いな。


 この路地の先、あれか。

なっ、子供だと?

それにこの力。

この魔力、あの風、トーアか!

あいつ、子供相手に何をしている。

くっ、間に合え———




「亡霊が、革命ごと消えやがれっ!」

空間を歪めた一撃がアルファに眼前に迫る。

圧縮した空気に呑み込まれる刹那、炎が風を断ち切った。

爆散する熱波。

少年への余波を庇う騎士長ルー。

辺りを静寂が包んだ。

剣を握り直したルーは、トーアと対峙した。


「トーア」

「よう、ルーじゃねーか。こんなところで総指揮官が何してやがる」

「お前こそ、帝都の守備を任せたはずだが? 北から侵入されているぞ」

「そりゃ悪かったな。革命軍なんて眼中にないもんでよ」

「それで子供相手に本気か?」

「はっ。そこをどけ、ルー・ア・シー。その小僧、いや、アイラ・シーンを殺す」

「彼女はもう死んでいる」

「だが亡霊がいる。死んだくせに、まだ革命なんてやってやがる。気に入らねぇ」


 掌に収縮する暴風。

「あんたの事は嫌いじゃないんだぜ? 最後だ。そこをどけ」

再び燃え上がる炎の剣。

「剣を持たん者を追い詰めるような真似は見過ごせんな」

魔力の衝突に街が軋む。

空気が沈み、石畳に亀裂が走る。


 

 唯一の安全圏であるルーの背後から成り行きを見守るアルファ。

理不尽な帝国の化け物達から離れたい。

しかし強烈な力を前に身動きが取れずにいる。

体力は限界に近い。

彼は思考を整理し、動き出す瞬間を見極めようとしていた。


 その時、遠くで凄まじい雷鳴と爆炎が轟いた。


 2人の騎士は空を仰いだ。

「ふん、ライ・ク・アーか」

「どうやら始まったようだな」

「ちっ。時間切れか」

「そのようだ」


 霧散する風と炎。


「じゃあな。こんな戦い、さっさと終わらせるに限るぜ」

「ああ、同感だよ。トーア」


 風の騎士は瞬く間に走り去っていった。

その背から目を離し、炎の騎士は座り込んだままの少年へと向き直った。

騎士を見返す落ち着いた瞳。

ルーは剣を納めて跪き、少年の目を覗き込んだ———


 怯えているが強い意思を感じる。

トーアはアイラの亡霊と言っていたな。

ではこの少年が噂の。

しかし、何者であろうと子供を見殺しには出来まい。

帝国の行く末はとうに決まっているのだ。


 ふっ、以前トーア達が言っていたな。

心の赴くままに。

ならば、私の取るべき行動は。


「少年よ、あれが見えるな? 皇帝の居城だ。あそこに行けば追われる心配もないだろう」

「でも皇帝の城なんて行っても門前払いされるだけだ。実際どうしたものか」

「ならばこれを持っていけ。我が家紋だ。門番に見せるといい」

「えっ、あ、ありがと」


 さすがに意外そうだな。


「君も、八公の騎士なんだよね」

「いかにも。我は八公が1人、騎士長ルー・ア・シー」

「ルー・ア・シーといえば、掃討作戦の総指揮官じゃないか。なんでここにいるんだ?」

「なぜかと聞かれると、ふむ、困ったな。強いてあげるなら郷愁といったところか。君は1人か?」

「うん、いきなり追われて……はぁ、いい加減走り疲れたよ」

「そうか。ならば安心しろ。この先は何人も進ませはしない」

「へぇ、さすが真なる騎士(ナイト・オブ・ナイト)は頼りになるね。はぐれた誰かさんとは大違いだ」

「誰と比べているのかは知らんが、私など取るに足らんさ」


 そうだとも。

取るに足らん、ただの騎士さ。


「帝国の英雄が?」

「ああそうさ。知っているか少年。私の二つ名は耳障りな虚構なのだ」

「英雄が虚構?」

「私の功績は仕組まれたものでね。出自は平民、貴族様にいいように使われているというわけだ」

「貴族主義社会か。大変だね」

「ははは。そうだな、大変だったよ」

「なんで急にそんなことを」

「君を見ていると色々と思い出す。君の年の頃に教養を詰め込まれていきなり騎士長だった。ああ、懐かしいな」

「へぇ。ボクにも似た覚えがあるよ」

「ほう、苦労人だったか」

「こんなとこにいるくらいだからね」

「ふっ、違いない」


 この街を見ていると思い出す。

家族、友人、住み慣れた街並み。

帝都に住んでいたとはいえ、そこまで裕福ではなかったが十分守るに価する。


「……仕組まれたものか。だが、これだけは言える。例え演者であったとしても、我が使命に変わりはないのだ」

「国の礎か。ほんとに、君達はよくやるね」

「ははは、騎士とはそういうもの。俺は魔王の抑止力として置かれた駒ではあるが、民の平穏を守りたいという想いは本物だ」

「ふーん。君はさ」

「ん?」

「この戦争で出会った中で一番共感できるよ」

「そうか」


 この少年は一体。

宮司の後継にしては、何かが違う。

いや、もう問うまい。

我々は進む他ないのだからな。


「さあ、もう行くがいい。時間は進み続け、後悔を残していく。引き受けたくなければ我々も進むしかないのだ」

「それじゃ、お言葉に甘えて」

「ああ、待ってくれ。最後に君の名を聞かせてもらえないか」

「皆聞いてくるな。ボクはアルファ」

「アルファ。気を付けてな」

「うん。ありがと」



———ルーは立ち去る少年を見届けた。

しばらくの間、周囲を警戒する。

不穏な気配がないことを確認した彼は、その場を後にする。

これ以上の犠牲を出さないためにも、抑止力たる自分が先陣に立たねばならないのだ。

そう言い聞かせ、戦いの場へと戻る。


 ルーは立ち去る前に一度だけ振り返った。


 少年時代を過ごした懐かしい街並み。

彼は遠い幻影をその目に焼き付け、満足すると、剣を携え戦火へと姿を消した———




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