表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ライト戦記】宇宙の彼方から革命を越えて_連載版  作者: Tongariboy
3. 燃える帝都、戦火の八騎士

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/23

 3-6. 迫る暴風、裂ける大地

 えらく派手に戦っている奴がいたが、あの方角はライ・ク・アーか。

ったく、帝都を守るのが仕事だろうに、壊してどうすんだ。

このトーア・ル・オーを差し置いて随分楽しいことしてくれやがって。


「なあズィー、さっきのは」

「ああ。同じ事を考えていた」

「行ってみるか」

「ライ・ク・アーがあそこまで戦ったのだ。何があったか確認はしたい。トーア、兵はどうする?」

「ここらで待機させときゃいいだろ。兵といえば、特務中のセーツも来てんだよな?」

「長老の情報通りならな」

「魔王が言うならそうなんだろ。進路からすると巻き込まれてるかもな」

「そうだな。セーツに万一のことがあっては困る。よし、行こう」





 トーアは楽しそうだが、思っていた以上に酷い有様だな。

これを立て直すのは容易ではあるまい。

帝国を形作るもの全てが憎いんだろうが……あの女、憂さ晴らしも大概にしてほしいものだ。

やれやれ。

おや?

ふむ、情報通り。

あの2人か。

「金髪の少年と護衛、あれだろうな。トーア」

「あの2人でライ・ク・アーと戦ったのか? 勝てたとは思えんが、外傷はなさそうだ。どうなってんだ」

「戦嵐の騎士相手に無傷。護衛の方は手練れかもしれん……しかし」


 逃げ切った?

周囲を把握出来るあの女から?

ありえん。

あの2人、何者だ?


「ズィー、気づかれたか?」

「かもな」



「アーシス、高エネルギー反応あり。相手は2人です。立ち位置からこちらを捉えています」

「くっ、またか。油断したぜ」

「アーシスって頼りになるね」

「ぅるせっ……とにかく、お前は守ってやるよ」

「でないとおねーさんに、だもんね」

「ちっ」



 気づいた。

奴らも魔力感知が出来るのか?

ライじゃあるまいし。

ふーむ。

「トーア。やはり俺達を認識しているな」

「あいつら何者なんだろーなぁ」

「さあな。だが手強そうだ。少なくともライ・ク・アーから逃れたのは運ではないのだろう」

「ちょっと試してみるか」

「どっちをやる?」

「あの少年が気になる。直感だが、何かある」

「わかった。俺は護衛を引きつけよう。状況次第では始末する」

「ああ、頼む」




———兄弟の騎士がアルファ達の前に現れる。

互いに気づいてはいたが、正面から対峙すると異様なプレッシャーが肌を締め付ける。

猟犬めいた鋭い視線。

引き下がろうとする少年を、乾いた殺気が射すくめた。

不意にどこか遠くで街が崩れる音が聞こえた。

だが猟犬は意に介すことなく軽薄な口調で切り出した。


「よう、革命軍のお2人さん。どこに行くところなんだ?」

「もし教えてくれたら我々がエスコートしてやろう」

「はっ、じゃあ皇帝のもとに連れて行ってくれないか? お前ら騎士長がいれば誰も襲ってこねーだろ」

「アーシスも騎士長じゃないの?」

「……黙ってろ」


「そうか。なんなら俺達が案内してやってもいいぞ」

「ほぉ、そりゃ助かるな」

「だが、駄賃は高くつくぜ?」

「じゃあこれなんてどうだ? 革命軍印の万年筆。非売品だぜ?」

「はっ。見ず知らずの奴を会わせるんだ。お前らにとってもっと価値のあるものをよこせ。それ次第じゃ本当に案内してやってもいいんだぞ?」

「見ず知らずって、トーア、いい加減に冗談はよせ。俺だ、ポーだ!」

「知らねーな。ズィーは知ってるか?」

「ポー、どこかで……」


「ちょっとポーシスさん? 知らないって言ってるけど? 君本当に八公なの?」

「そういえばあいつらと顔合わせたことって少ないな……俺、八公の中じゃ新参だし」

「あのお2人は、会議などほとんど欠席されていましたからねぇ」

「八公の選抜基準ってどうなってるんだ」


「くそっ、仕方がない。おい、騎士長さんよ、駄賃がほしいんだよな?じゃあこれなんて……どうだっ!」

アーシスは2人にナイフを投げつける。

騎士たちは笑いながら冷静に避け、左右から襲いくる。

「アルファ、逃げろ!」

「うぅ、またかぁぁぁ……」



 崩落を間逃れた街並みの中を一目散に逃げるアルファ。

整ってはいるが石造りの路面は走りやすいとはいえない。

足の痛みをこらえ、それでも少年は走った。

「ね、ねえアイラ」

「はい。あれは騎士長トーア・ル・オーと同じくズィー・ル・オー。兄弟騎士です」

「あれも八公なんだよね? なんでそんなのが皆して出てくるんだよ」

「……きっと帝都の防衛を重視しているのでしょう」

「絶対おかしいって!」

「……」


 普段の軽快な講釈はなく、端末は沈黙したままであった。

問い詰めようとするアルファ。

突然、アイラのバリアが悲鳴のような音をたてて弾ける。

「う、うわぁ、なになにっ」

あわてて振り返ると、右手から暴風を溢れさせ、獲物を前にした騎士長が冷笑を浮かべていた。

「少年! 俺はなトーアという。これでも騎士長だ」

「うわぁぁぁ、き、来たぁ!」


 実用性重視の軽装を着こなす姿は騎士というより傭兵のようである。

唸る風を操り少年の足を止めようとするが、風を焼く電磁バリアが全てを弾く。

アルファの魔法と勘違いしたトーアの瞳は、興奮を隠しきれずに輝いていた。





「なんでさっきから騎士長がぁ!」

「さっきから? ああ、ライ・ク・アーか。ふーん、やはり出会っていたか。あの女、子供には甘いようだな」

「いきなり、突撃してきてっ、殺されそうになったけどねっ!」

「ははは! そりゃ災難だったな坊主。おお、そういや自己紹介がまだだったか。俺と弟は騎士長で兄弟騎士なんて呼ばれていな。信条は絶対に生きて帰ることだ。よろしくな」

「だ、だったら、ボクも生かして、帰してよー!」

「はっはっはっ! なら上手く逃げろよ! 革命ボーイ!」

「ボクは本来関係ないのにー! アイラ、ちょっとアイラ! 助けてよ!」

「……アイラ、だと?」

アイラの名を聞いたとたん、トーアの風が霧散した。

「まさか……そうか、お前が噂の。お前が宮司の後継か」

足を止めたトーア。

無防備な騎士を前にしても、逃げ切れる気がしない。

アルファも足を止め、呼吸を整えることに専念した。



「騎士長トーア・ル・オー。お久しぶりですね」

「お前は死んだだろ。だがその声は確かに……」

「説明は難しいのですが、私は間違いなく社の宮司アイラ・シーンなのです。あなた達兄弟とは交流もありました。ですので証明のための思い出話ならいくらでも」

「どっちでもいいさ」

「えっ」

「お前が生きていようと、偽物だろうとな」

「トーア……」

「俺達にとって邪魔なものは排除する。それだけさ。革命にもじーさんの腹芸にも興味などない」

「分からず屋」

「ふん。信じる方がどうかしていると思うがな」


「おい少年、名乗れ」

「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ」

「ゼハー?」

「ボ、ボクは、アルファ、だ」

「アルファ。さっきまでの物言いからするとお前は巻き込まれたんだろうな」

「そう! そうなんだよ! ああやっとわかってくれる人が」

「その嘆き、この手でとめてやる」

「うがぁー! 結局走るんかーい!」

「逃がすかっ!」


 トーアの手から暴風が巻き起こる。

荒れ狂う風圧が石畳を叩き、空へと弾く。

少年を守る機械の力は破られ、彼は唸る風にひれ伏す。

仰ぎ見た騎士の手には、音も、光も、空間をも潰す圧力が収縮する。


「亡霊が、革命ごと消えやがれっ!」


 歪む世界を手に、トーアは踏み込み、アルファへと叩きつけた———





 正午を過ぎた頃か。

そろそろ時間がなくなってきたな。

トーアがやりすぎないか心配ではあるが、まずは目の前のこの男か。


 少年の護衛。

ポーだったか。

聞き覚えのある名だ。

ポー、ポー……


 ポー・ツ・イー。

思い出した。

皇帝のお気に入りだ。

確か魔法が使えないと聞く。

帝国騎士のトップが魔法を使えないとはな。

この地位に興味はないが、同列というのは気にいらん。

どれ、この騎士長ズィー・ル・オーが試してやろうっ!



———ズィーが剣を突き立てると、大地が蠢き、獣の爪が空へと突き立つ。

足元から握りつぶすように迫る無数の岩爪がアーシスを襲う。

隆起する大地を縫い、壁面を駆け、路面を滑るように疾走する。


 狙いを定めた岩爪は、紙一重でことごとく避けられる。

しかしこれは想定内。

戦士の軌道を読み、そして握りつぶす。

魔力を帯びた大地が咆哮を上げる。

彼の鋭い眼差しの先から大地を割り、現れたのは獣の顔。

家を噛み潰す程巨大な顎が広がり喰らいつかんと迫る。

背後からは血肉を求めて岩爪が伸び、アーシスの行く手を阻む。


 壁を蹴り、空へと高く飛んだアーシス。

逃げ場のない空中を獣が襲う。


「取ったっ!」


 そう確信したズィーは驚きに目を見開いた。

喰らいついた刹那、牙に足をかけ跳ねるアーシス。

爪は背中をかすめ空を切る。

接地の一瞬を見極め、空中で軌道を変え、戦士は逃げ延びた———




 なん、だと……これを避けたのか。

あのタイミングで、いや、俺の狙いを読んだ?

まさか、能力を把握されている?

だが、牙は切り札の1つだ。

おいそれと使うことはない。

では、あの瞬間に判断した?

死と隣合わせの状況で、ああも冷静に……


 は、ははっ……ははははははっ!

いいじゃないか、やるじゃないかっ、素晴らしいぞポー・ツ・イー!

瞬発力、認知の速さ。

身体能力が尋常ではない。

化物か、こいつは。

ああ、たぎるな。

トーア程ではないが俺も戦いは好きだ。

こいつは本当に楽しませてくれる。


 ふっ、だが。

ここでこれ以上時間を使うわけにはいかんか。

口惜しい。

だがいいさ。

生きていれば次がある。

この続きはいずれやればいい。

こいつはトーアにはやらん。

俺の獲物だ。


「さすがは騎士長といったとこか」

「ちっ、お前らに比べた、ら……ん? って、ズィー! お前わかっててやってんのか!」

「ああ、すまんすまん。その戦い方を見て魔法が使えない騎士長のことを思い出したんだ」

「すまんで済むか! くそっ」

「悪かった、気づくのが遅れたのは謝罪しよう。すまんな。一連のことに関わる気がないし、それにお前のことはあまり知らないしな」

「よく言うぜ。一連どころかいつも好き勝手にやってるだろう」

「ははは」

「ったく、面白くねーよ。こっちはライのせいで疲れてんだぞ」


 やはりライ・ク・アーとも一戦交えたか。

「そうか。腕が鈍っていないようで何よりだ」

「俺のこと知らんくせに」

「社交辞令だよ。騎士らしいだろ?」

「どこがだ」

「だが俺が仕留め損ねた。実力があるのは事実だ」

「本気出してねーくせに」

「そう卑下するなよ」


 本当にな。

こいつの実力は凄まじい。

確かに俺は全力ではない。

だからといって手を抜いていたわけでもない。

いや、手を抜けなかったのだ。

俺は殺す気で斬りつけた。

だが、こいつは避けた。

避け続けた。


 ライ・ク・アーのことだ。

あれが手を抜くとは考えられん。

おそらく彼女とて同じだったはず。

俺達を前にして、この男は致命傷を負っていない。

つまり俺達はこの男を殺せなかったのだ。

魔法を使わずに同等とはな。


 ああ、なるほど。

皇帝が八公に迎え入れ、気に入っているのも頷ける。

影と呼ばれた元殺し屋。

騎士長ポー・ツ・イー。

恐るべし。



「そういえば、セーツ・マ・ルーは一緒じゃないのか?」

「あいつとは別行動だ」

「そうか、いないか……ふっ」

「なんだ急に」

「いや、騎士長が揃って戦場におらず、革命軍の主要人物も不在。真面目にふざけた戦争だと思ってな」

「ふん。そりゃ全部コーンのおっさんが悪い」

「たしかにな」


「それで、ポー。お前はこの後はどうするつもりだ」

「コーン・ク・リートに会いに行く」

「その意志は変わらんか」

「ああ」

「例え革命が成就しても、未来はそう変わらんかもしれんぞ」

「……だとしても、可能性があるのならやるしかないだろ。それに、これは(やなぎ)(その)計画で決まったことでもある」

「革命軍創設者か。回りくどいことをしたものだ」

「と言いつつお前らだってセーツと合流する気なんだろ?」

「お見通しか。そうだよ。その方が俺達に都合がいいからな。帝国はともかく、あの老人達にはいい加減頭にきている」

「その点には同感だ」


「なぁ、トーアの方は大丈夫か? さすがにアルファが心配なんだが」

「トーアか。ふむ」

「なんだ?」

「あいつは風で相手の態勢を崩し斬りつける。時にその風で頭を吹き飛ばす事もある」

「なぜそれをいう」

「心配だというから身内の情報を売ってやったのだ。親切心だ」

「嫌がらせだろ。ていうか知ってるし」

「ははは、まぁ多分大丈夫だろう」

「戦闘狂のトーアだぞ?」

「いくらなんでも子供を容赦なく……いや、うーん。トーアだし、止めに行くか」

「俺も行く」

「あの子供が余程大事なんだな」

「ああ。あいつにもしものことがあったら俺は、俺は……こ、今度こそライ・ク・アーに殺される」

「……お前、何したんだ?」

「色々あったのさ。はぁ、どこまで行ったんだよ、あいつら」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ