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【ライト戦記】宇宙の彼方から革命を越えて_連載版  作者: Tongariboy
3. 燃える帝都、戦火の八騎士

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 3-3. 我が剣にかけて

———どさっ、っと音を立てアルファは城壁の上に降り立った。

数秒見つめ合う2人。

少年は丁寧に起き上がり、背中とお尻をぱっぱと払う。


「えっと、こんばんは」

「あ、ああ、こんばんは」


 突然の出来事に思考が停止した門番。

下から心配になったアーシスらの囁き声が聞こえ、理性を取り戻し襲いかかる。

アルファは振り返らず一心不乱に城門の裏へと続く階段を目指す。

追われる恐怖から周囲の状況など把握出来るはずもない。


 剣を振りかざす門番。

少年の首を跳ねるかどうか逡巡し、剣の平で横薙ぎを放つ。

しかし一瞬の閃光が瞬き、僅かな拮抗の末に剣が弾かれる。

端末から流れ出るエネルギーがシールドを張り、門番の剣を退けたのだ。

背後をついた一撃を防がれ怯む門番。

そしてアイラは科学を使い、昔なじみの電気ショックで気絶させた。


 もう1人の兵も気づき向かって来ていたが、僅かな攻防の末に昏倒させ事なきを得る。

アイラは限りあるエネルギーを上手く調整し、最小限の力で敵を退けていったのである。

少年の姿に油断した彼らはその実力を見せることなく倒れていった。

そうとは知らずに階段へ駆け込むアルファ。


「うぅぅぅぅ、世紀末な環境でボクが生き残れるわけないじゃないかぁぁぁぁっ」



 城門の操作レバーを目指す2人。

アイラの指示に従い進むアルファ。

「アルファ。そこを左です。あ、誰か来ます」

「ひぃぃぃ」

幾人かの兵をやり過ごしやっとの思いで辿り着くと、彼はすがり付くようにレバーを操作した。


 押し下げるだけ。

その簡単な仕組みのはずが、思いの外レバーは重く思うように動かない。

身長の低いアルファにはなおさら困難である。


 床を踏む硬い音が近づいてくる。

レバーは軋むが動かない。

掴む位置を変え、体の向きを変え、試行錯誤するアルファ。

物理に手が出せないアイラは黙して見守る。

「ぐぬぅー……なん、で、こんなに、硬いんだよ。こうなったらっ」

壁に足をかけてぶら下がり、全体重を預けて思いっきり引いた。


 どかっ、と地面にぶつかるアルファ。

レバーから滑り落ち尻もちをつく。

ぎこちなく何かが噛み合わさり動き出す門。

遂にレバーは下がった。

派手な音と共に城門が上がる。

少年は急ぎのぞき窓から外を見た。

物陰から滑り込むように帝都へと侵入した姿を確認した。



「誰だ!」

開門に気づいた兵が慌てて個室に飛び込んでくる。

彼の目に映ったものは小さな机と、押し下げられたレバーだけであった。

「誰もいない……いや、襲撃だ、くっ、敵のしゅぅ———」

応援を呼ぼうとした兵士はアイラの電気ショックで昏倒した。

机の影で縮こまっていたアルファ。

そこから這い出てきた彼は、その場に座り込んでしまった。


「た、たすかった。さすがに魔法の世界でも背後からは防げないんだね」

「はい。魔法であれば魔力に敏感な者は気づきますが、科学現象を認知する力ではありませんので」

「そっか。やっぱり科学は最高だね」

「はたしてそうでしょうか」


 アイラの言葉を不気味に思いつつも、無事に役目を終えたアルファは安堵した。

その後は兵士達の足音を聞きながら物陰に隠れやり過ごす。

いっそこのまま隠れていようかと思案した。

そんな思考を看破したアイラ。


「そろそろ物陰から出てもいいかと」

「う、うん。だけど大丈夫かな? 皆が来るまでここにずっと」

「4人はすでに進んでいます。ここに残っているのはアルファだけです」

「え、それって置いてかれてるってこと?」

「立ち止まる猶予はありません」

「うわぁぁぁ、待ってよみんなぁ、ボクを置いていくなよー!」



 城壁の内側に出ると、街まで並木道が続き、梢が広がるのどかな景色だった。

周囲には人影はなかったが、アイラが潜入した4人を検知。

木の陰に潜む彼らの元へアルファは素早く駆け寄った。

「置いてくなんてヒドイ」

「のんびりしてる暇なんてないんだ」

「無理やり連れてきたくせに」

「チュニー、ここで別れよう」

「そうだな」

「えっ? なんで」

「アルファ少年。私には別の任があるのでね。では皆、城で会おう」

「気を付けろよ。相手は狡猾だ」

「承知している。貴君も油断なきように」

「ああ」

1人だけ何も知らず、利用され気が立っている少年。

子供など眼中にない大人たちは大義だけを見据えていた。



 それぞれの役目のため二手に分かれる潜入部隊。

城を目指すアルファとアーシス、街の方へ向かうチュニーと戦士2人。

4人が動き出そうとしたまさにその時、東で炎の柱が立ち昇る。


「アーシス、あれは何」

「……騎士長ルー・ア・シー。帝国が誇る最強の騎士だ」

「ふむ。帝都正面の戦いも難航している頃なのであろうな。しかし、早くも奴が出たか」


 遠く、苛烈に天を刺し、燃え上がる炎。

ないはずの熱と焦げ臭さを感じ、アルファは身震いするのを止められなかった。

炎が柱のようになっているということは、常に噴射し続けているということだ。

最近魔法を覚えたアルファにも、それがどういうことなのか十分に理解ができた。

光を照射し続けるのは消耗が激しかった。

それをあのような規模で行える人間がいる。


「あれが、あの炎が人間の力なの? ……あんな力、個人が持っていいものじゃないだろ」

「同感だな。アルファ、八公は化物揃いだ。この戦いで奴らに出会った者は不運だろうな」

「アーシスは勝てるの?」

不安が込められた質問に、彼は苦々しく応えた。

「無理だな。俺があいつらと同格なわけがない。だが、同等なのがこっちには1人いる」

「そうなの? それって」

「武闘派ではない。少年、あまり期待はするな」

口を開いたのはアーシスではなくチュニー。

しかしそれが誰なのかは教えてはくれなかった。


「さてそろそろ行こう。外があの様子ではな、いよいよ時間が惜しくなってきた。皆、無事にな」


 彼らはそれぞれの目的のため、街の影へと紛れていった———





 そうだ。

もう時間に猶予はない。

我が君の意思を、この私が、私が成さねばならんのだ。

さもなくば、この革命に意味などないのだから。


 アイラ様と、そしてアルファ少年。

このイレギュラーが現れたことで我らの目的は達成に近づいた。

かつては不穏分子として処理も考えたが……ふっ。

なるほどどうして。

なかなかに役に立つ。


 少年を戦地へと赴かせる私は正気だろうか。

いや、たとえ我が心に狂気が満ちていようとも、この歩みを止めることはない。

ここで止まってしまえば全てが無に帰すのだ。

止まってなるものか。

仮にアルファ少年の身に何かがあったとしてもだ。

少年の犠牲、無駄にはすまい。



 さて、予定通り進むとしよう。

あの老獪共との約束もある。

守ってやる道理はないが、邪魔されても困る。

今は見逃してやろう。

だが、いつまでも逃げられると思わんことだ。

必ずその息の根を止めてみせる。


 我が剣にかけて。





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