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【ライト戦記】宇宙の彼方から革命を越えて_連載版  作者: Tongariboy
3. 燃える帝都、戦火の八騎士

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 3-2. 断崖絶壁、大空に羽ばたいて

———炎と奇襲が入り乱れる頃より遡ること数時間前。


「アルファ。俺達は生きたいから戦うんじゃない。先の未来を変えたいから戦うんだ。この命を賭してでもな」

「そうかい。アーシス達の思想を悪く言うつもりはないよ。だけどボクはそれに巻き込まれるのはごめんだ」

「ああ。お前の考えは知っているさ」

「ならいいんだ。革命、成功するといいね。じゃ」

「お前も来るんだよ!」

「い、いやだぁぁぁ! なんでボクが戦場なんかに行かないといけないんだよ!」

「大丈夫、戦場じゃなくて皇帝の居城に潜入するだけだから」

「一番危険だろっ! 軽々しく言うなら君達だけでやればいいじゃないか!」

「小柄で頭の良いアルファが適任なんだ。それにアイラ様の絶対防御があるんだろ? じゃあ安心だ」

「私にお任せくださいアルファ」

「いやだぁぁぁ……」

「さってと、登るか」



 帝国と革命軍が死闘を繰り広げたレングーア大橋。

その戦いの数日前のこと。

アーシスとアルファを含めた5人だけの少数精鋭は密かに大河を渡っていた。

彼らは皇帝を捕らえるか、もしくは暗殺するため戦争を囮に潜入を進めていたのである。

そして今、帝都南門から城に入るため、彼らは崖を登っていた。



 遮るもののない切り立った崖。

戦士の背中にくくりつけられた少年の髪を、風が優しく撫でる。

彼の視界を覆うのは海のように広く、朝日に煌めく静かなる大河。

波間に揺れる光の反射に目を細め、少年は遠くに霞む仮住まいの街を懐かしく思った。

「アイラ、海がとてもキレイだね」

「はい。海ではなく大河です」

「あの橋で大きな戦いがあったなんて思えない程静かだね」

「そうですね」


 少年が首を左に向けると大橋が視界に入った。

ここから見た橋は、大陸を渡る偉業を今尚保ち、激しい戦闘があったとは思えないほどの貫禄をもって鎮座する。

平和の象徴はその生傷をいずれ古傷へと変えるのであろう。


「アイラ」

「はい」

「海面からの高さは」

「現在およそビルの50階に等しいかと」

「もしここから落ちたら?」

「ご安心を。魚達より先に残さず回収いたします」

「……」


 もはや何も考えまい。

彼は遠い空の果てに漂う母船に思いを馳せる。

見上げた空は絵に描いたような雲を散りばめ、どこか立体感に欠けていた。


「おいアルファ、安心しろって。ここは以前にも来たことがあるから大丈夫だ。落ちたりなんかしねーよ」

「でもその時はボクを背負ってなかったでしょ」

「もっと重たい荷物を背負ってた。お前くらい楽勝だって」

「いいんだ。可不可ではなくただ文句を言いたかっただけさ……」

「そうか。まぁ文句くらいは聞いてやるが、ぅおっ、とっとっ」

「う、うわぁ、ちょっと! 大丈夫なの! そっち見えなくて、どうなってるんだよっ、見えないって怖いんだぞ!」

「冗談だよ。だが静かにしてろ。まだ半分ってとこだが、ここで見つかるとそれこそ後がない」

「……らじゃー」




 帝国を背後から秘密裏に襲う。

この作戦は苦肉の策であった。

革命軍は正面からの部隊と奇襲部隊による帝都攻略を検討。

しかし現在の戦力では勝ち目が薄く、奇襲で戦況を覆すことは難しい。

決め手にかける。

状況を鑑みた革命軍作戦本部は賭けに出た。

戦で負けても勝負に勝てばいい。

彼らは革命の行く末を託し、皇帝をじかに襲う計画を立てたのだ。

全戦力となる帝都正面及び奇襲部隊、その全てを囮として使うことで真の狙いを隠す。



 帝都へ潜入するなら西か南から。

西の崖は外にせり出していることから登るリスクが高く、それだけに時間もかかるため論外。

となれば南の崖。

ビルにして100階分だが、西側に比べればやや傾斜もあり、慣れた者なら比較的登りやすい。

潜入はアーシスら諜報部門が行う事になった。

崖登りに支障はなく、城への侵入経路も把握ずみ。


 だが一つだけ問題がある。

帝都には西の崖よりも登りにくい城壁があるのだ。

どうすれば突破出来るのか……

この問いの答えに、アルファはうっかり関わってしまったのだ。




 それは遡ること開戦前の革命軍本部。

自転車の練習をしていたアーシスとチュニーが城壁突破について論じていた。

「ふむ。門を開けてしまおう」

「おいおい、それが出来れば苦労しないだろ」

「……我々ならば可能だ」

「どういうことだ? あんたにしては珍しく根拠がないな」

「うむ……」

僅かに目が泳ぐチュニー。

智謀の真意を推し量り、アーシスも押し黙った。


 自転車にのって遊んでいたアルファが口を挟む。

「その自信はどこから来るんだ?」

彼は嫌いな参謀を冷やかしたのだ。

そしてそれが災いした。

生意気な少年を冷ややかに見返す参謀。

先程までとは違い、その目に宿る意思は明確なものへと変わった。


「城壁を越えて内側から開ける」

「ははっ、だからどうやって?」

鼻で笑いながら突き返すアルファに無言で迫る参謀。

自転車から降り、見下ろす彼の目は本気(マジ)だった。

チュニーが大きく息を吸うと彼の身体が一回り膨れ上がった。

びびるアルファ。

そして解決案を実践する。

自転車に乗る少年をがしっと捕まえ、空に向け叫んだ。

「こうやってだ!」


「へっ?」


 地面に言葉の残し彼は宙を舞った。

意外と力がある参謀が少年を高々と放り投げたのである。


「うわぁぁぁぁぁっ!」

アルファは引き合う重力と推進力に振り回されながら悲鳴をあげる。

やがて頂点からの落下へと変わる。

間近に迫る硬い地面。

激突の感触を思い描いた少年は青ざめた。


 だが衝突の寸前でアーシスがキャッチ。

一連の流れを見ていた彼は納得した。

「つまりアルファを城壁の上に放り投げて内側から開けようってわけか。なるほどなぁ」

そして参謀は迷いなく言った。

「よし、作戦名【大空に羽ばたいて】。これでいこう」


 開発部員の案が花開いた瞬間であった。




 大河を渡る前日のこと。

お気に入りの温泉から戻り投げ飛ばされたこともしっかり忘れ、ぐっすりと眠ったアルファ。


 翌日。

振動と背中の硬さに顔をしかめながら目が覚めた少年は、布団ごとアーシスにくくりつけられていた。

混乱しながらも視線を動かし、状況を整理しながら理解していく聡明な少年。

アーシスらは自転車に乗って大河を目指していたのであった。

大河を渡り、崖を登り、そして今に至る。

この数日の出来事を思い浮かべたアルファは、この状況にただただ放心するほかなかったのであった。




 そうこうする内に、崖を無事登りきった潜入部隊。

じきに日の出だが辺りはまだ暗い。

「見回りは、城壁の2人だけか」

「問題はなさそうだな」

アーシスと会話しているのはなんとチュニー参謀であった。

共にクライミングを行い、ここまで登ってきたのである。

他2名は万一のための陽動となるため、背中に担いでいた自転車を組み立てる。



 この南門は、レバーにより開閉が可能。

門の機構は上下に開くタイプである。

南門横から城壁に乗せるように放り投げ、アルファはレバーを操作しに行く手筈となっている。

「行くぞ」

アーシスの号令によりチュニーとアルファも速やかに南門の横に移動する。


 城に潜入して城門を開ける役目を負ったアルファ。

アーシスは少年の上半身を持ち、チュニーは両足を持つ。

そして振り子にして遠心力をつける。

アルファは胸元で両腕をクロスし、ひたすら無心でいることに努めていた。


 皆は無音のまま、頷きあいリズムを整える。

もっとも、アルファは恐怖で声が出なかっただけであるが。

アーシスが大きく頷く。


 1,2、3!


 声にすればそのような掛け声が聞こえそうなやり取りの後、アルファは空へと羽ばたいた———




 ああなんだろう、上に進むのはちょっと心地良い。

すぐに城壁の上に来たな。

狙いはバッチリ。

着地の衝撃も少なそうだ。

浮力と重力の境で束の間の浮遊感に包まれる。

そして、懐かしい無重力を楽しむボクと門番さんの視線が交差した瞬間、世界が止まった。


「詰んだ……」





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