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偽風のアトラ、☆スパイ☆になる。~風の国に逃げた極悪人3人を暗殺せよ!というスパイミッション!~  作者: ふるなゆ☆
魔王討伐編/天使族の村編

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40.巨大魔物襲来

4章開幕

 優柔不断な人がいる。それはお前だ。

 迷った末に選んだ答えが失敗かと思い込み落ち込む人がいる。お前だ。

 学校で教えてくれた丸か罰か。勝手にそれが当然なのだと勘違いしている。それもお前だ。

 お前はどうしようもない人間だ。進む事に躊躇っている。百点の答えなんて存在しないのに、百点があると妄想する。

 さて、ここに二つの選択肢がある。行くか行かないか。何もし無ければ行かないということで判断しよう。

 選んだか?

 その選択肢の点数を付けるのはこれから少しでもそれに関わる人間共だ。もちろん、多くの人が百点に近い点数をつけるかも知れない。しかし、必ず少数人は真逆の点数を付けてくる。理由は分からない。信条が違う、嫉妬心から、何となく気に食わない、理由は何であれ、だ。

 そして、全員がつけた点数の平均した物を見て、どう受け取るか。最後のジャッジはお前自身だ。その百点になることのない点数を見て、高くつけるも低くつけるもお前自身なんだ。

 何を伝えたいかと言うと、人生の選択において正解なんて分からないということだ。しかし、思い込むことはできる。幾ら逆風が吹いて他人から見た点数が下がったとしても、いつまでもウジウジとそれに囚われていては何もできない。

 そんな優柔不断で、段々と自信をなくして悪循環に陥るお前を見たくはない。自分を信じていけ。これが先輩からの言葉だ。



 それは夢だった。

 昔言われた言葉を思い出した。先輩は今でも元気にしてるかな。

 彼を思い出したことで、俺がこの国にスパイとして侵入してきた理由を思い返していく。

 俺は三人の雷の国における大犯罪人の始末のために送り込まれた人間だ。その内の一人であるベラトリクスは始末した。残るは二人だった。俺の故郷を滅ぼしたカストレと、大虐殺事件を起こしたミカエルの二人だった。


 俺はこの国で大切な仲間ができた。幸せな時間を過ごしている。だからと言って、浮かれていてはいけないな、と思う。夢に出たのは偶然じゃない。きっと心の底の俺が、今の俺に、浮かれすぎてんじゃないぞ、と警告しに来てくれたのだ。

 俺は夢の中で強く握り拳を握った。


◆


 重箱に入ったおかずは煌びやかな光を放っているかのように錯覚させた。その中でも艶やかな卵焼きが一際目立っていた。五人で囲まれたソレは早い者勝ちだ。

 刹那。俺の箸がさっとそれを掴みかけた。

 が、唐突に卵焼きが浮いてカシェルの近くへと漂い、彼女の箸に収まった。

「ずるい!」

「ふっふーんだ。先に羽が触れてたのよ。早い者勝ち~。」

 彼女はソレを口に入れようとした時だった。

 地震だ。

 彼女はソレを床に落として軽やかな悲鳴を上げていたが、それを上回る地震と地ならしの音が掻き消していた。

 やけに外が騒がしい。

 床が大きく揺れる、刻む。阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえてきた。急いで玄関を開いて外へと出た。

 城程の大きさのある巨大ゴリラが壁を破壊していたのだ。崩れ去る壁が終わりの鐘を鳴らしていた。

 壁が破壊されたその場所から巨大ゴリラ――いや、巨大な魔物がこの王都に侵入してきたのだ。

 家、地面諸共薙ぎ払う。たった一回の一振で地獄絵図を作り出す。

 その後ろから巨大な猿の魔物が何匹がぞろぞろとやってきた。また、空からは巨大な鳥の魔物が飛んでいる。

 鳥の魔物がこちらに向かって急降下してきた。

 目的は俺らみたいだ。


《Ω――オーム――》


 棘の盾で攻撃を受け止めようとしたのだが、受けきれない。そのまま背後へと吹き飛ばされてしまった。その時に玄関の扉すら破壊してしまった。

「敵襲か――」と二人を引き連れて外へと出る。

 外で氷で作られた三本槍を振り回して魔物と応戦している。しかし、倒しきることはできていないみたいだ。


《恋淡(れんたん)》


 飛んでいる魔物が瞳を閉じてゆっくりと落ち始めた。建物の二階の窓からメイサが顔を覗かせていた。

 氷の砕け散った礫が辺りに撒き散らされていく。とても冷たくひんやりする。

 少し離れた位置にいる噴水から続く水が大量に空中に漂い、その水が形を変えて氷になる。その姿はまさに鋭い棘の床とでも言い表せるだろう。

 その棘が魔物を貫いた。凍てつく冷気が周りを冷やしていた。

 鳥の魔物は破裂した。

 勝利の余韻はない。倒した束の間、次の巨大な魔物が現れた。巨大猿の魔物だった。

 近くでルマクが刀を回していた。ラスターカノンでも放つのだろうか。それにしては技を溜めすぎている気がする。

《巨獣弾(きょじゅうだん)》

 ラスターカノンよりも巨大な鉄屑の玉が魔物を襲った。魔物は思わず後ろに背けた。

《巨獣斬(きょじゅうざん)》

 追い打ちをかけるように胸元へと走り高く飛び出し、思いっきり斬る。が、魔物は倒しきれない所が踏ん張られ、倒れずにいた。

「アトラ、カシェルやっちまえ!」

 棘を四つ等間隔に並べて、空を翔ける。敵の付近へと来た。俺は浮いていた刀に足を置いた。羽のお陰できっちりと固定されている。さっき使った棘もすぐに拳に装着した。

《A――アンペア――》

 顎を撃ち抜く強烈なアッパーだ。

 だが、まだ倒れていない。

 いつの間にか俺の頭上に刀が置かれていた。羽で固定されているのだろう。

「そういうことか。了解!」

《A――アンペア――》

 今度は上から叩き込む。

 が、倒しきれなかった。

「コイツは俺が貰うぞ。――トドメをな。」

 人間に言わなくて良かったと思った。時々、勘違いを与えてしまうような発言をするのはルマクの悪い癖だ。


《徹底鋼戦(てっていこうせん)》


 強烈な太刀筋が猿の巨大魔物の一体を斬り裂いた。その攻撃がトドメとなって、それは破裂した。

 彼は血反吐を吐いた。

「この技は捨て身の技だ。反動がヤバい。」

 彼はもう動けそうになかった。

 一朝一夕では身につかない凄い技ではあるが、強すぎる技が故の反動が残念だ。一長一短があるなと思った。

 ここでの戦闘は終わったものの、街には他にも魔物が暴れていた。大きすぎるが故に魔物は見えるが、街の被害は分からない。きっと凄絶な被害にあっているのだろう。

 俺とカシェルは街での被害を食い止めるために向かうことにした。


◆


 逃げ遅れた人間が潰されたのを見た。目を塞ぎたくなる光景だ。破壊された建物が乱雑に地面と同化していた。

 目の先のゴリラの巨大魔物はその巨躯な腕を振り回すだけで凄絶な被害を与えていた。

「一気にやるしかないな。」

 普通なら尻込みしてしまいそうな圧倒的な大きさ。それでも俺の中の気持ちが心を震わせていく。

「おやおや、アトラ殿。カシェル殿。ここはワシが引き受ける。二人は他の所を助けてやってくれんかのう。」

 セルバンがゆっくりと歩いてきた。見た目通りの遅い徒歩だ。

 彼は鞘と刀の柄に手をかける。


《風剣・居合》


 スパッと進む風の斬撃がゴリラを真っ二つに断裂された。左右それぞれに落ちていく中で破裂していった。

 瞬きしてる間に戦いを終わらせる手腕に、思わずポカンと口を開いていた。

「ワシも歳での。若い頃のように走れはせん。他の所を助けにやってはくれんかの。」

 その言葉を受けて、ここから一番近い所にいる猿の巨大魔物の所へと向かった。


◆


 そこでは既に二人が戦っていた。魔物も相当ダメージを負っているみたいだ。

「一気に決めてやんぞ。」

「おー。」

 その二人が技を放とうと動きだした。

 一人は正面から正々堂々と対峙した。右手を真っ直ぐ伸ばして敵側へと向ける。

 もう一人はライターに火をつけていた。

 その火を操っていく。


《神喰殺音(ガブリコオン)・不零無(フレイム)・我爆暗(ワイバーン)》


 炎の龍がタリタにぶつかり、彼に自らの炎を付与していく。炎を纏った彼が目の前の魔物を捉えていた。


《五本指・風炎(ふうえん)大剣》


 炎を纏った大剣の手刀が猿を斬り裂いた。その一撃が決め手となって、爆散させることができていた。

 イクリールが「遅かったじゃねぇか。丁度、やっちまったぜ。他当たれや」と別の所へ行くことに発破をかけたため、目に見えた魔物の所に急ぐ。


◆


 骨が空中に浮かぶ瓦礫に塗れたフィールド。

 その中に骨を操り、骨を纏っていく男がいた。


《巨大蠍の装甲尻尾(スコーピオン・テール)》


 骨がくっついていき尻尾のように見える。

 そんな彼に向かって放たれた拳。それを骨で見立てた尻尾でガードしていた。何重にも束ねられた骨が攻撃を防いでいる。

「ちっ、攻撃は重ぇし、防御は硬ぇ。まじで面倒だ。」

 そこにアイスクリームのコーンを食べている、女みたいな男が笑っていた。「けど、もう倒せそうじゃん。」

 それをチラッと見た彼が「お前ぇも少しは手伝えよ」と言い放つ。

 最後のトンガリが口の中に入っていった。

「全く……だね。妾がアイスを食べ始めた途端に襲ってくるなんて。でも、安心してね。ワチシが今から参戦するから。」

 彼は落ちてる石を拾った。その石をお手玉のようにポンポンと上に上げてはキャッチを繰り返している。「これぐらいでいいかな。」

 次の瞬間、そこから石が見えない速さで飛んでいった。残像が出来そうな程の速さで放たれた石が魔物の体制を崩す。

 そして彼はいつの間にか空中にいた。そこから石を飛ばす。その際、手の付近から衝撃波のような物が見えたような気がした。

 さらに、彼は一瞬にしてさらに上空にいて、そこから石の銃弾を飛ばした。そこにいた巨大な猿の魔物は攻撃を受け、背中から地面に伏せた。

 今度はアンタレスの番だ。背中に生やした骨の尻尾を地面に叩きつけて、高く跳ぶ。敵の上へとやってきていた。

 尻尾が腕に巻かれていく。

 腕に巻きついた尻尾の拳が敵を襲った。触れたその瞬間に指先から爆発が起きたのだ。その爆発によって、魔物は遅れて爆散した。

 レグルスもアンタレスも「遅い!」と言い放ってきた。ここはその言葉を受け流そう。

 ふと、王宮が狙われていることに気づいた。そこにはまたもや巨大な猿の魔物がいた。

 四人で王宮へと向かう。


◆


 城の三階。外壁を壊して顔を覗かせているのは魔物だった。そこは王様が居座る部屋だ。魔物は壁を掴んで城に張り付いている。

 ふと爆発の音が聞こえた。

 それと同時に落下していく魔物。

 地面に落ちた魔物に荒々しくも細々と分かれた人間の骨がそれに向かって落ちていく。その骨共が爆発を引き起こした。

 だが、まだ死んでいない。

 三階の壁が壊れ穴となった場所から王様が顔を覗かしていた。王様が杖を下へと下ろすと、骨が落下し、骨は魔物にぶつかって爆発した。

 しかし、魔物はしぶとく、城をよじ登ろうとする。そこにまたもや骨爆発が放たれて、猿はまたもや落下した。

 そこに水の槍が現れた。

 水は氷になり、氷の槍が魔物を貫き、魔物を爆散させた。

「間に合いましたわね♪」

 凍てつく氷の霧が辺りに広がっていた。

 近づいてきたメリディアナが微笑んでいた。


 残る魔物は残り一体だ。

 それは王宮の敷地内を跨ぐように立っていた。

 近くへと向かうと、もうそこには先着がいたようだ。

《雷砲――ライトニングレーザー》

 箱に繋がれたホースの先にある掌と掌を合わせて溜められた電撃を放つ攻撃。その攻撃は直線的に進み、長くそこに留まった。

 バタン、と魔物が地面に倒れた。

《風の重力》

 その猿の魔物は身動き取れなくなった。

 そして、その戦いの終わりを示していた。

 ふとカストラの顔が赤く見える。よく見ると体が小刻みに震えているように見える。

「下民共めが。さぞ当たり前のように要求だけはするのに、いざ身に危険が及ぶと我々のせいにする。私達が手を抜いていたように見えるか。このような非常事態を事前に察知して対処せよ、だと。貴様ら下民共は、この事態を察知できていたのか。違うだろ、できていなかったから逃げ惑うことになったのだろ。」門の外に向かってそんな言葉を言い放っていた。

「落ち着け。」

「落ち着いていられるか。」

 今にも血管が浮き出てきそうだ。

「お前は次期国王ではないのか。全ての上に立つ者になるのではないのか。これはお前の言っていた言葉だぞ。」

 リベルの言葉で一旦、口を閉じていた。

「理性が負けて感情に支配されることは悪いことではない。だが、人の上に立つ器ではない。上に立つ者は理性で動ける者でなければならない。」

 それを聞いて「そうだな」と冷静を取り戻していっている感じがした。

「お前は強き者のはずだ。弱き者ほどよく吠えるものだ。それが摂理。赤ん坊が泣き喚くのと同じなのだ。理性ではなく感情で動く様は、泣けば欲しいものが手に入るという赤ん坊の手法。大人になってしても吠えれば手に入るものという考え方と何ら変わらない。目立つあの者共は赤ん坊当然の弱き者。しかし、お前は理性で動ける大人であり、強き者。そのはずだろう?」 

「まさかオヌシに諭されるとはな。貴様はやはり平民には勿体ない。貴族に婿入りすべきだ。」

「考えておくが、期待はするな。」

 二人の会話が終わった。踵を返したリベルは俺らの近くにきた。

「いたのか……。あの魔物はこのまま拘束し研究に宛てがうようだ。このデカさだと、どこに匿うのか分からぬが、山奥にでもラボでも作るのかも知れぬな。」

 少しだけ間が空いて「先程の会話、聞こえていたか」と言われ、反応に困ってしまった。

「少しな。市民のバッシングの嵐があったんだ。戦闘で敵を拘束している間にも幾度も批難されたよ。デモを無理やり押さえつけて終わらしたのも良くなかったのかも知れぬな。その不満を戦闘中にも関わらず吐き捨てられていたのが原因でカストラ君は怒り心頭となってしまったのだよ。」

 それは……辛いな。

 市民のために命懸けで戦っているのに、守るべき市民から批判されていくのは心に響くものがある。

「ただ、そ奴らは等しく愚者だ。その者の言うことに価値などはない。」

 彼はそんな人達を言葉でグシャッとひと握り。思わず「愚者?」と聞き返してしまった。

「ああ。不満を漏らす者はその事実や現状に満足していない者だ。不満を言いふらす者は、単に自身は不幸だと言いふらしている者だ。そして、そのような不幸に乗っかり、誰かを非難したり蔑んだりする者は、自らをマイナスの存在だと言いふらし、敵を作るだけの何もできない愚か者なのだよ。」

 どんな批判にも屈しないその姿はとても強くカッコよくすら見えた。

 

 破壊された壁が見える。

 壊されて瓦礫の山に変わった建物が建ち並ぶ。それに加えて、硝煙と虚しい雰囲気だけが残ってきた。まさに悲惨な光景だ。

 人々の批判だって、致し方ない所はある。命を、尊厳を、住む場所を脅かされたのだから。どうしようもないストレスの行き場の矛先を俺ら王宮の人間に当てていただけだ。矛先をしまうことなんて難しいことなんだ。

 ふと風の国で良かったよな、と思った。故郷だとスマホという機器があり、そこで昼夜、矛先が探されている。少しの粗を見つけ、全員で攻撃する。匿名性がさらに攻撃を加熱させ、そこに加わる人を増やしていく。例えそれが王直兵のような身分の者じゃなく、市民の身分でも、だ。そうして矛先を向けて攻撃だけをして満足をする。ただ、自分はこう思ってるってことを示したいだけかも知れない。ストレスを発散させたいだけかも知れない。何れにせよ、それは全部無責任な行為だ。なぜなら、攻撃だけして救いの手を差し伸べることをしないのだから。叩いて終わりで、チャンスを与えない。敵対する言葉を鵜呑みになんて尋常なことじゃない。だからこそ、受けた側も何故矛先が向いているのか分からないことが多い。寄り添って是正していくことなど行われない。そんな無慈悲で救えない現状が雷の国なのだ。便利なものは悪事、悪意にも便利だ、という言葉が雷の国の先輩の嘆きと共に思い出された。

 そんな事を思い浮かべながら、この惨憺たる現状を眺めていった。

 こんな現状にだって、夜は来るし、朝日も昇る。そして明日がやってくるんだ。

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