↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽風のアトラ、☆スパイ☆になる。~風の国に逃げた極悪人3人を暗殺せよ!というスパイミッション!~  作者: ふるなゆ☆
魚の家編/〇〇〇〇〇〇編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/46

26.富

「あら、ルマクちゃんを知ってるの?」

「死に別れた友人……のはずだった。」

 あの惨劇の日、彼は左足と右腕を失い、その後――ずっと殺されてしまったのだと勘違いしていた。

「生きてた……のか。」

 嬉しさが込み上げる。だが、この現状も相まって、複雑な心境だ。

「初めてあった時、死んでないのが不思議だったわ。足首はなく、腕も片方しかない。全身大火傷。そんな状態で地面を這いながら移動して、生き長らえてたの。そんなルマクちゃんを拾って、機械化させることで生き長らえさせたの。今では機械によって肢体満足な状態よ。」

 モニターには刀を振るおうとする彼の姿があった。ただ、その刀が空中で動いていない。つまり、羽で止められているのだろう。

「そんなことができるのか。」

「貴方も知っているはずよ? ウヌク・アルハイ君も同じように機械化してるから。彼は自業自得だけどね。糖尿病で過度な食事を控え、薬を処方しなきゃ行けないのに、無視しちゃって、体が死を待つのみになっちゃったのよ。それで体を改造して死を回避させてあげた。ついでに、彼の要望で好きな物を好きなだけ食べれるように改造して上げたわ。」

 彼女が少しこちら側へと持たれかかった。圧力が増していく。痛みも増していく。

「そうそう、貴方、もしかして風の国の人間じゃないよね? 雷の国の人間?」

「ああ。そうだ。」

「やっぱりね。確かルマクちゃんは雷の国から引き上げた捕虜の一人だったもの。そこで爆発に巻き込まれて瀕死になった。だけどそれがきっかけでそこから逃げることができた。ってことを思い出したのよ。」

 数奇な運命が目の前にあった。

「さて貴方、雷の国の人間なんだから、わざわざ風の国の人間の言うことを聞かなくていいんじゃない? 貴方もフウライボウの一員になりなよ。そうしたら、死なずにすむよ。」

 本来ならその意見に乗って、状況を整えるのだろうが、そんな器用なこと、俺には出来なかった。「ならねぇよ!」咄嗟にそんな言葉が出ていた。

「あら、残念」と何も感じていないトーンで返された。

「わざわざあたしを殺す理由なんてないのに――。」「理由なら、ある。」

 彼女は不思議そうに首を傾げていた。

「雷の国から俺が送り込まれた理由は極悪人三人を殺害するためだ。その一人はお前だ、ベラトリクス。」

「何を言ってるの? あたしが? 極悪人?」

 彼女は笑っていた。「意味が分からないんだけど」と急に冷静なトーンで放たれた。

「教えてやるよ。お前は、雷の国に極悪人カストラを招いて大残虐事件を招いた首謀者。さらに、それに便乗して武器を広めて、雷の国を荒れた国に変えた。これのどこが悪くないんだ?」

 ため息混じりに放たれる「あたしはやっていないじゃない」の言葉。そこに罪悪感などまるでなかった。

「お前、分かってないだろ。直接手を下さなくても、悪人を招いたり、悪事を唆かしたりすることは悪なんだよ!」

 冷たい視線が送られる。

 この言葉もきっと届いていないのだろう。

「どうしてこんなことをしたんだ?」

「理解できない? あたしにとって人生とは『金』と『科学』なのよ。金がないと何も始まらないわ。贅沢できない。幸せになれない。だけど、金があっても生産性や未来性がなければ幸せは掴めないのよ。だからこそ、未来がより良くなるための研究をするの。まあ、そんな研究もお金がないと始まらないけどね。」

 そこまで言われてもまだ理解出来なかった。

「あたしはね、夢半ばで亡くなった兄を継いで研究に没頭したの。そうして、機械化整形に成功したわ。さらに、排出システムも完成して、金持ちになったの。そして独立したわ。利益は上々だったけど、限界があった。そこで武器部門を設立したのよ。初めは人間兵器に活用できるんじゃないかってね。けれども、武器知識の基礎や基盤がなかった。そこでカストレ君と連携を取ることにしたのよ。お陰で磐石なものとなったわ。彼はね、力を欲していたの。貪欲にね。だから、幾らでも金を落としてくれた。彼を国に招き入れたのも金を落としてくれるからなのよ。」

「それがどうなるか予測できてなかったのか?」

「できてたわ。もちろん、その通りになったわ。彼は力を欲するあまり、村を攻撃した。けど、それもビジネスチャンスじゃない? 丁度、あたしの周りにいた女の要望を叶えて上げたのよ。その子はね、女だけに武器を持たせろって言うの。そのために協力をお願いしてきたわ。だから、それに便乗して上げたの。すぐに武器を供給できるようにして、村が襲われていったら、すぐに売り出すことにした。ちゃんと理由はあるのよ。治安が悪化した暁に、自分の身を守れるように、武器を流通させた。」

「それでどうなったか、知ってるか。俺の故郷は滅ぼされ、雷の国は武器だらけになって、日夜銃声が鳴り響くようになったんだぞ。」

「そんなの知らないわ。けど、少し気になるわね。銃って男も持ってたの?」

 俺は「ああ」と答えた。

「やっぱりね。そうだと思った。女だけって言うのは通用しないって思ってたもの。だから、すぐに連鎖式に武器が全国民末端にまで流通するって。本当になんて言うビジネスチャンスなの。ほんと、すぐに追放した雷神様が憎たらしいわ!」

 俺はお前が憎たらしい。

「金のために何でもするのか……。」

 結局、そういう事だと思った。彼女は金を行動理念にしているのだろう。

「そんな事ないわよ。」

 そんな返答に少しびっくりした。金のため、じゃないのか、と。

「現に、貴方、排出システムを受けた時、性欲を抑えるシステムも導入されてるわよね。それを作り上げる時にね、左翼勢力達からの支援は受けたけど、儲からないと思ってたわ。けど、やった。それは何故だか分かる。」

「分からねぇな。」

「面白そうだったからよ。排出システムも作り終えて次の研究を考えてた所に、性欲抑制システムの導入の研究。メカニズムを解明して実験して行く手立て、どれを取っても面白いからやった。『科学』って面白いのよ。社会を変える未知なる力があるもの。」

「分からねぇな。全く理解できねぇ。」

「理解されなくて結構よ。あたしは科学者。素晴らしい研究で素晴らしい発明できることの幸福感は計り知れないわ。世の中を便利にして上げるのよ。それがどう社会に影響を及ぼすのか、それすらも余興じゃない?」 

「お前とは相容れなそうだ。」

 

 ギシギシ。

 壁にめり込んでいく。少しずつ増えていく重みが体を潰していく。

「あたしね、風の国で大虐殺をしようと思ってるのよ。」

「お前、ふざけてんのか。そんなこと許されてたまるか。」

「そんなに威勢を張らなくても。貴方、雷の国の出身じゃない。風の国の人達が死んでも関係ないんじゃないかしら?」

 今まで会った人達の顔を思い浮かべる。浮かぶ度にそんなことは許されないと思えてくる。

「この国に機械化整形や排出システムを導入して一躍有名になったわ。それだけで女性の地位が向上したらしいわよ。それでみんなからさらなる女性の地位向上を求められているわ。だから、あたしがそれに応じてあげるのよ。それが風の国の大虐殺って訳。」

 全く意味が分からなかった。

 そもそも、理解しようとも思えなかった。

「ただ、女性の地位を上げた所で望むものは手に入らないのよ。少しは幸せにはなるかも知れないけど、結局満たされない。何が満たされないかって……求愛欲求よ。あたしもね女だから、愛されたいし、愛したいのよ。等しく価値を上げた所で見向きされなければ意味がないの。浮気だってそう、他に女がいるから悪いのよ。何だかんだ最後に厄介な敵になるのは、価値観の違う同性。結局、女の敵は女なのよね。ほんと邪魔。だったら、間引きすればいいの。機械化整形を受けている人達は等しく、あたしのボタン一つで死に至るわ。男の数だけ増やすのは難しくても、女の数だけを減らすのはカンタンよ。数が減れば、それだけ貴重な存在になれるわ。それだけで価値が上昇するとは思わない? 価値が上がればもっと大切にされるの。深く広く愛されるの。特別な存在になるの。敵対者も少なくなるわ。だって貴重な存在なんだから。もちろん、金と権力の力で男の地位を底辺にして少しでも偉ぶることが出来ないようにしておくわ。思い上がった男はクソだからね。女に従順じゃない男は罪人として処罰しておけばいいのよ。どうせ大量に人は死んでいるし、処罰なんて微塵な事よ。」

 大人になれない病と方法は一緒だろう。本当に容易に殺せるのは想像にかたくない。

「生きている女にとっては幸せになりそうじゃない? でも、大抵の人はそんなことにも気付きはしないのよね。どうしてか分かる? 大抵は、どんなに文句を言っても本当に社会を変える気がないからなのよ。理不尽な社会でストレスを溜めて、そんな日々を変えたい、発散したい、それだけなの。誰も本質を捉えられないし、実行にも移せない。そもそも大抵は気持ちを理解して欲しいだけか、それ以上を求めたいだけのわがままか、何にせよ、本当に社会を変えようとする気はない。だけどね、それでもね、言葉では社会を変えたいって言ったり、批判したりするのよ。図々しい程にね。だから、代わりにあたしが叶えてあげるの。そんな下層で文句しか垂れ流せない女達の願いを……叶えてあげるのよ。ふふ、そんな奴らの命と引き換えにね。」

 赤いカーテンを束ねる宝石の付いたタッセル。大理石製の物もずらり。そんな豪勢な部屋がミシミシと鳴っていく。

「社会は変わるわ。女性の地位も向上する。きっと死後の世界でも崇拝してくれるに違いないわ。」

 彼女は独創的なエゴを持っている。それを無視できない程の影響力を持っている。

 ただ、一つだけ分かることがある。

 ベラトリクスはここで殺らないといけない人間だっていうことだ。恐らくこのまま自由へと放たれたら、大量虐殺が起きるだろう。罪に罪を重ねるのだ。何としてでも避けなければ。


「あら。話してたら、戦局が動き出しそうね。」

 モニターに視線が向いていく。

 モニター越しのルマクは剣をその場で振り回していた。そして「ようやく動く」と言う。一方で、カシェルは「重い」と文句を言っていた。

「ルマクちゃん、ああ見えて、機械化の影響で重量級なのよ。羽じゃ持ち上げることも吹き飛ばすこともできなさそうね。」

 つまり、だいぶピンチとも捉えられる。

「もうカシェルさんには勝機はないんじゃない?」

 俺はじっとモニターを見ていった。

 二人だけの戦いが音と共に映し出されていく。

ずきり【シェルタンからの一言】


金でしか人を見れない人って、人間性終わってるよな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。