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偽風のアトラ、☆スパイ☆になる。~風の国に逃げた極悪人3人を暗殺せよ!というスパイミッション!~  作者: ふるなゆ☆
魚の家編/〇〇〇〇〇〇編

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18/22

18.魚の家

 素直で優しい笑顔がそこら辺に湧いている。

 シスター・アリスの温もりが子ども達を笑顔にしていく。

「ねぇ、ママ。みんなに隠し事とかしてないよね……。」

「どうしてかしら。何も秘め事はないですよ。」

 純粋無垢の木漏れ日的笑顔が目に映る。

「ううん。何でもない。」

 そこを子ども達が遊ぼうと絡んでくる。その中で今日主役になるリオが手を掴んで彼女を率いた。「みんな、今日はリオが先着だから。」俺らも着いていく。

 彼女と遊ぶ約束はしていないつもりだったが、彼女が特別に約束していたのだろうか。

「今日はスミス君に付き合う日でしょ。ミスは許されないから。絶対にミスしないでね。もう……大切な人がいなくなっていくのはうんざりなんだから。」

 リオは本日誕生日であり人気者。そのため子ども達が遊ぼうと矢継ぎ早にやって来る。

 そこで別れて、俺らは屋敷の方へと向かう。

「何でママを疑ったんだろう。疑わなきゃ良かった。」後悔に塗れた言葉だった。

 少しだけ足取りが重いようにも感じられる。

「ずっと近くにいたから分かるのに。ママが子ども達を『手にかける(殺す)』訳がないって。だって、ママの……子どもへの……愛情は、本物だから――。」

 ママが犯人じゃなければ誰なのか。俺はある人物を疑っていた。

「この魚の家を知っている人物で、この謎に包まれた事件について知っている人物――」例えば、「この家の見取り図を持っていて、マスターキーを持っている人物だ」が挙げられる。

 脳裏に、紺色のレインコートを着て、魚のイヤリングをした片目が目隠れの男が浮かんだ。

「本当に怪しい奴ならいるじゃないか。」

 子ども達についても多分知っているのだろう。じゃなければ、ノープが死んだことや、孤児の中に国兵の息子に似た人物がいることを知らないはずがない。

「僕らからのSOSを受け取ってくれたんだね。気持ちだけ受け取って置くよ。残念だけど、計画は破綻したんだ。」

 そこにいたスミスが言う。

「ママに内緒でスったマスターキーのコピーを奪われてしまった。もうあの部屋には入れない。」

 あの映像で出てきた鍵は、シスターがスられた鍵を使って作られたものか。

 俺は先輩の王直兵から貰った鍵を見せた。

 それを見て驚いた顔をしている。

「これは驚いた。まさか本物のスペアキーを持っているなんてね。けどこれで、作戦が実行できそうだ。感謝に尽きるよ。」

 午前中は閉まっている図書館もその鍵一つで難なくあいた。俺らが入った後は、他の人達にバレないように図書館の鍵は閉めといた。

 例の本棚の前へと来た。

 本を取り出して奥のバーを持つ。そこを握るとカチッという音が聞こえた。その状態で本棚を横にしようとすると、すっと簡単に動いていった。

 奥にある庫を開いて、中のハンドルを回す。

 すぐ近くに秘密の部屋への扉がある壁が見えていく。

「この先にあるのはきっと"大人になれない病"の元凶だ。気をつけていこう。」扉が開かれる。

 スミスを先頭に階段を降りていく。

 ゆっくりと音を立てないように進んでいく。

 長い階段の先には大きな地下室が待っていた。映像で見た通りだ。機械がドンと存在し、横には謎のカプセル。側面には本棚がある。周りは全体的に薄暗い。

 ゆっくりと機械に向けて歩いていく。

 まだ、部屋の三分の一ぐらいしか歩いていない。そんな時に、突然スミスが苦しみ始めた。すぐに蹲り、唸り声を発していく。

 カツ。

 カツ。

 カツ。

 地下室に足音が鳴り響く。

「あーあ、スミス君はいい子だと思っていたのに……。あーあ、悪い子ね。」

 階段から降りてきたのはシスター・アリス。彼女の手にはスマホを持っていた。そのスマホを触ると、さらにスミスが苦しんでいく。

「あの板みたいなの……何?」

「思い出した。あれは……スマホだ。みんなそれを持って暮らしていた記憶が……あるんだ。」

 そのスマホというのは風の国にはないということをプリマお婆さんに聞いたことがある。

「風の国にスマホはないはずだけどな。」

 彼女は少し遠回りするように迂回して歩いていく。その間にベールを脱ぎ捨てて、長い髪が開放的に現れた。

「ええ、そうよ。風の国にはスマホはないわ。ただでさえ、電気は貴重なのに、電気を結構食ってしまうのですから。そのせいで普及しずに、電波もこの魚の家のみしか繋がりませんもの。」

 今まで丁寧な言葉だったその話口調が崩れている。そのせいで二律背反の雰囲気が漂う。

「使い勝手は最悪です。電気を食ってしまうから、本当に必要な時にしか使えませんからね。ただ、使う時はとても便利ですけど。」

 彼女は機械の近くへとやって来た。機械の上にスマホを置く。

 さっきまでの唸っていた声が……消えた。

 唸り声のバックグラウンドミュージックが消えた。つまりそれはスミスの死を表していた。

「スミス君は今、死んだわ。"大人になれない病"でね。」

 ど、ど、ど、という音がする。

 カシェルはふと立ち崩れた。

「嘘だと言って、嘘だと言ってよ。ママのみんなへの愛は本物じゃなかったの?」

「心配しないで、本物よ。だって私は、子どもが大好きだから。だって、子どもって可愛いでしょ。」

 美しい顔立ち。綺麗な金髪。そんな彼女は瞳を瞑って両手をセルフで握っていた。何故だろうか、彼女の言葉は本物のように聞こえる。まるで嘘偽りがないように。

「じゃあ、何で、何で――。」カシェルは過呼吸のようなものを起こし、ちゃんとした声を出さずにいた。

「君はどうして子ども達を殺したんだ?」とメイサが代わりに言い放った。

 彼女は純粋な態度で「わたくしは子ども(・・・)を殺しはしませんわよ」と言い切った。

 どうしてだろうか。何故か嘘をついていないような透き通った声。

「じゃあ、目の前のこの子の死はどう説明するだ。」

 嫌らしい程、透き通った瞳だ。

 彼女には罪意識など一切無いのだろう。

「可愛くない子は子どもじゃないわ。」

 あまりにも透き通った声だった。

 嗚咽になりかけの、そんな過呼吸の音が鳴り止んだ。絶望的な瞳でシスターを見つめるカシェルがそこにいた。何も言えずにただ眺めているだけの姿だ。

「可愛くない子は大人になったの。だけど、みんなは"大人になれない病"を患っているから、大人になった途端に死んだのです。」

「つまり、今まで死んだ子は大人だから子どもに入らないってか? だからって、大人だからって、殺していい訳がない。」

「殺した? いいえ、彼らはみんな病によって死んだだけなのよ。」

 どういう理由か、子ども達が全員、この地下室に集まった。さらにどういう訳か、子ども達は全員、俺たちを囲むように立っている。

「カシェルは優しい子よね。類は友を呼ぶ。そのお友達もお優しい。だから、子ども達を傷つけられないはずよ。……お願いだから傷つけないでね。本当に、子ども達を愛していますから。傷つくのは見たくないですもの。」

「どういう……こと?」

 子ども達は一律に無表情で、俺らに向けて目線を合わせている。

「あなた達三人には"風拐い"に会ったことにしましょう。」

 彼女が機械に触れた。

 突然、子ども達が俺らに襲いかかろうとした。

 と思いきや、すぐに動かなくなった。ただ、等しくみんな、牙は向いている。

「ねぇ、どうしたのみんな? リオちゃん? スオフェ君? レビル君? ねぇ……。」

「無駄よ。襲うようにプログラミングされているのだから。」

 薄明かりの光の下、チラッとだけ子ども達に着いた羽が見えた。「う、力強い」と彼女は言っている。つまり、子ども達が動かないのは、カシェルが羽で動きを止めてくれているからだ。

 俺が攻撃しようとするが、カシェルが制止した。下手な攻撃は子ども達を傷つけない。

「もちろん、記憶にも残らない。ただ、面倒ね。今日はリオの最後の誕生日。記憶がないみんなにどう説明したら良いか……。そう思うと、余計に死んで欲しくなったわ。」

 カシェルが段々辛くなっていく。

「なあ、ということは、子ども達はみんな、最初(はじめ)からプログラミングされているのか……。」

「ええ。10歳になれば死ぬことも、わたくしのボタン一つで10歳に満たずに死ぬことも、柵外では呼吸が出来なくなることも、わたくしの命令に忠実に従うプログラムも、全て生まれた時から決まっていることなのよ。」

「どうして、そんなことをするんだ。何で、長く生きられないようにしたんだ!」

 ため息が吐かれたような気がした。

「私は子どもを愛していたいの。私は子どもがとても好きだから。ねぇ、知ってます? 子どもってね、2歳から6歳ぐらいが一番可愛いの。けど、7歳ぐらいから、反抗期が始まってくる。10歳になったら、もう子どもっぽさはなくなってしまうわ。なら、最初から10歳以上にならなければ良いのよ。そしたら、変に巣立ってこの秘密がバレるようなリスクも減って一石二鳥じゃないかしら。」

 気持ちよく語り始めた。

 少しだけ近づいて笑顔で俺らを見ている。

「アンタにとっての子どもってなんだ。反抗期の子どもは子どもじゃないのか?」

 メイサもまた、俺らと同じような怒りを抱えていたようだった。

「子どもはね、愛して上げると必ず愛を返してくれるのよ。とても純粋な存在なの。とっても可愛いの」と話した後、けど、と繋げ「反抗期はどんなに愛しても、反抗したり、愛想を尽かしたり、愛されることが当たり前だと思って愛を返してくれなくなったり、もう愛せる所なんてないじゃない。大人になればなるほど、余計にそうなるの」とどこか冷たい表情で言い放っていた。

「聞いてるのは、反抗期の子どもは子どもじゃないのかってことなんだがな……。」

「子どもじゃないわ。わたくしに逆らう子や反抗する子は……子どもじゃないですもの。」

 両手を胸に当てている。そんな一々美しい所作が苛立ちを増加させる。

「ここは孤児院よ。子どもを育てるための場所。育てなきゃいけない大人なんて必要ありませんから。」

 もうメイサは堪忍袋の緒が切れかけていて「さっきからふざけたことを言って」とグツグツと煮えたぎっていた。

 大きく足音が立てられる。「生命を粗末にするな!」

 その大声が地下室にコダマした。

「そうかもな。反抗するかも知れないし、愛想尽かすかも知れない。だけどさ、されでもちゃんと向き合えば、いつか必ず愛してくれるはずだ。態度で示すことはなくても心では思っているかも知れない。返すのがいつになるかなんて分からない。だけど、それでも愛して上げるんだ。それが保護者(おとな)としての愛し方だろ?」

 いつになく感情的なメイサの芯のある言葉が不思議と気持ちを昂らせていく。

「可愛いを理由に愛する期間を設けるなよ。愛することに"期間"なんていらない!」

 彼女の勇気ある言葉に元気を貰った。子ども達を傷つけてしまうからって何もしない訳にはいかないよな。

 あまりにも狭いから技アンペアは使えない。

 下手な攻撃は子ども達を傷つけるから使えない。

 一か八か、だ。「カシェル、羽で真上に行く足場だけ作ってくれないか」と聞いた。そして、それに頷いてくれた。

 透明な羽が浮く。その上に足を乗せた。

「もう限界になってきた。後は頼んだよ。」

 羽が上昇して俺を天井付近まで浮遊させた。

 次の瞬間、子ども達が動き出して、カシェルもメイサも捕えられた。

「やるしかねぇな。」

 ニードルアームを天井に突き刺し、それを基軸にして反発させた。シスター目掛けて飛んでいく。

 彼女は「きゃっ」と頭を抱えてしゃがんだ。

 そのシスターを守るようにラペとヤペオシカが盾になった。

 喧騒の中から聞こえる「駄目っ」の声。そんな事分かっている。

 俺はラペの肩に触れた。

「んなこと、分かってるよ。」

 そして、力を少しだけ込めて手を離した。俺は再び空中を舞う。もう目的の機械の目の前だ。

 天井にある武器を呼び寄せた。

 足元に向かって進み、俺の足先にくっついた。それをそのまま振り下ろす。

 言うなれば、ニードルスタンプ――。

 と、言った所か。

 機械はバリバリとなり始め、壊れたそれらが小さな火花を散らす。「来い!」と願う。

 俺の思惑通りになった。

 子ども達が正気に戻ったのだ。

「くそっ。ふざけるなっ。」先程までの余裕のある優しさは、もうそこにはない。凄ぶる睨んできた。

 そんな彼女の背後では、子ども達が浮いて行った。反抗さえしなければ浮かすのも容易いということか。

 今度はボーラ――鉄玉のついたチェーンが横に振られて、遠心力によってチェーンが彼女に絡みつく。

 これでもう身動きは取れないだろう。

 一応、念の為に残りのボーラを使って完全に動けないように拘束した。これでもう一安心だろう。

 子ども達は動揺していた。

「ねぇ、ここどこ?」「薄暗くて怖いよ。」「何で僕はこんなとこにいるの?」声が止まない。

 そんな時、カシェルが飛び切りの作り笑顔で子ども達を仕切っていく。

「ごめん。ちょっとした悪戯なの。お化け屋敷の練習しようと思ったらこうなっちゃった。てへっ。」

 あんなに嫌なことがあったのに――。

 彼女の優しさには一目置かれるものがあった。

「アトラ君。メイサちゃん。子ども達を連れて外にいるね。……ママの処遇についても考えたいからさ。」

「分かった。俺はちょっとだけここにいるわ。気になるものがあるからさ。」

 カシェルは着いてきて、と子ども達を先導する。スミスやシスターのことが気になる子ども達もいたが、この状況を察したこの事を知っているだろうリオとニグルが協力して、何とかみんなを外へと向かわせた。

 急に落ち着きを取り戻した地下室。

 俺は本棚に手をかけた。

 応用生物学など、どれも工学系に関わる本がずらっと並べられている。その中でも一際目立つのが、何もタイトルが書かれていないファイルだった。

 ふと、目につく「クローン……」という言葉。

 もしかして「子ども達は科学によって作られたのか」もしれない。

 その答え合わせはすぐにされた。

 拘束されているものの、口は拘束されていないからだ。

「ええ。そうなのですよ。元の人間の遺伝子から、子ども達を創り出す。その際に、機械を入れて置くのです。」

 言うなれば、創られた人造人間という所だろうか。

 開いた先には、左側にカシェルの顔写真と情報、右側にはルシェの顔写真と情報があった。

 つまり「ルシェは――」「ええ、ルシェはカシェルのクローン。だから、来ないで欲しいと念を押していたのですけどね」ということだ。

 それに新たな生活に慣れるため、というのも嘘だったとは。本当はこの事実を掴むきっかけにしたくないっていうことを知った。どこか敵対心ではないものの、それに近い気持ちが芽生えてきそうだ。

 一枚一枚捲っていく。

 カジキとかじき。ルマフォとフォーマル。レビルとアルビレオ。

 そして、スオフェとケフェオス。それを見て「あっ」と声が出てしまった。国兵のおじさんが涙を流したのはこれが理由なのか。クローンなのだから、昔の姿に本当に似ている訳だ。

「スオフェの元になったケフェオスはどうなったんだ?」

「殺したわ。確か闇市で購入した人ね。風拐いで闇市に売られた人を返す訳にはいかないですもの。」

 分かっていたことだが、行方不明事件にも関わっているのか。

「アンタは行方不明事件に関わっているのか?」

「ちょっとだけです。行方不明事件になった人を買っただけ。」

「どこで買ったんだ?」

「わたくしは知らないわ。カタログで注文しただけだから。」

「カタログ? どこに注文したんだ?」

「本当に質問が多いわね……。フウライボウよ。それ以上は私も知らないわ。」

 フウライボウ……。どこかで聞いたことがある。確か、武器に関する所だったような気がする。確認しなきゃならないな。

 再びページを捲った。

 ラペとカペラ。ヤペオシカとカシオペヤ。ノープとカノープス。

 またもや手が止まってしまった。

 知っている人がまたもや現れたからだ。

 ニグルと「ルグニテ……。」思わずそのページから目を離せなくなっていた。

まさかの【アケル・ナルからの一言】


それは子どもが好きなんじゃなかね。それは"自分の言う通りになる人"が好きなだけなんだがね。履き違えとるがね。

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