chapter59
半年ぶりに再開です。暑さは大部和らいできましたが、蚊は活発になる気温になってまいりました。蚊がアホほど飛んでいます。蚊取り線香や虫除けスプレーが欠かせない、そんな九月ですが頑張ってあらすじ行きませう。
あらすじっ:アルファ・ワンダーは街医者をしているゼットと仲良く暮らす十歳の少女。彼女が平和に暮らすアスカスの街に、ゼットの弟子を名乗るファング・ディメンジョンが現れた。彼女は診療所にやって来たフィナとシューの姉妹に、ゼットへ課せられた邪神残党の討伐依頼が終わっていない理由を問い詰めるのだった。
剣術の授業でミルシャをあっさりと返り討ちにしたアルファは、そのまま破竹の勢いで連勝を重ね、気合十分で挑んだライカに完敗した。
「うーん、また負けちゃったなぁ……」
「王国騎士からそんな簡単に一撃は取れないって、前から言っているでしょ? でも、動きは良くなっているわ。この調子で精進しなさい」
「ありがとう。でも、次は勝っちゃうんだから!」
「楽しみにしているわね」
ライカは軽く手を挙げると背を向け、試合を申し込んできた騎士見習いの生徒たちの相手にかかり始めた。
その後ろ姿を一瞥し、アルファは今日の具合を確かめるようにライカとの試合を思い返す。
隙が全く見当たらないライカの構え。僅かな隙があっても、それは誘いだということを知っているから、どれだけ誘われても待ち受ける構えを取っていた。
そこへ、何の前触れもなく、突然目の前にライカが出現するのと同時に、左脇腹を打たれて負けたのだ。
ライカが接近してくるのもわかっていたし、視界外からくる一撃も咄嗟にいなせるようにしたはずなのだが、電光石火の一撃は、アルファに防御一つ許さなかった。
「帰ったらパパと特訓しちゃうんだから」
「その前にもう一戦していただきますわよアルファさん!」
アルファがシナイと防具が破損していないかどうか確めていると、気合に満ち溢れたミルシャが本日二度目の試合を申し込んできた。
授業終了までに後一戦はできそうなため、アルファはそれを快く引き受けた。
そして、開始と同時に自ら前へ踏み込んでミルシャを瞬殺した。
「やっぱり、ライカお姉ちゃんのようにはいかないか……」
ライカの真似をしてみたのだが、納得できるできではなかったようだ。
「王国騎士と一緒の動きをしようという考え自体が恐れ多いとあれほど……あぁ、でも速かったですわ……」
「うぅん、アルファちゃんも十分に強いと思うけどなぁ」
本日二度目の敗北に意気消沈するミルシャを、取り巻きの少女と一緒に介抱しながら、
リリアンは頬に手を当てながら笑みを浮かべた。
その様子を離れて見ていた担当教師が呆れ混じりに肩を竦めていると、ライカがやれやれとつぶやきながらやってきた。
「お疲れ様です」
「アンタもお疲れ様」
「かなり再現されちゃいましたね」
「多分、明日には完成してるわね、アレ」
「やっぱり、騎士団に欲しいですよね」
「本人にその気がないからねぇ」
何気ない様子で話し合いながら、ライカは校舎へ戻っていくアルファたちを見やる。
漆を流したように美しい黒髪がほとんど揺れていない。重心もブレず、頭がほとんど上下していない。
騎士の動きの、基本の基本であるそれを、十歳の少女が熟練の騎士さながらにこなしている。意識することなく、日常的な動きに取り入れている。
「アレ、十歳の市民の動きって言って、誰も信じないわよね」
「絶対に、見た目と実年齢がチグハグなだけの新米騎士だと思われますね。もしくは、特別措置で叙勲された幼い騎士と言ったところでしょう」
「まだまだ見習いよ」
厳しい評価を下しながらも、ライカは内心で後輩の評価も間違ってはいないと苦笑する。
アルファのシナイを受けた時、感じた衝撃の強さを思い出す。
前よりも強くなっている。
羨ましく、同時にゾッとする、彼女の才能だ。
アルファ・ワンダーという少女は、次に手合せする時、必ず以前よりも強くなっている。
それはライカだけにではなく、勝ち負けに関係なく、誰に対してもそうである。
ミルシャがアルファ対策を兼ねて修行を積んでいるのと同時に、アルファはその日その時のミルシャの試合を反芻し、更に強くなっているのだ。
ミルシャが勝てない理由の一つだ。彼女もその辺りは薄々感じとっているはずだが、それでも諦めずに挑み続け、己を高め磨く姿には、ライカも敬意を抱いている。
当たり前のことを、当たり前のように、そしてそれ以上の事をミルシャは、将来有望な剣の使い手なのだ。
それを超えて行くアルファは、騎士になれば、確実に歴史に名を残す傑物となるだろう。それほどの力がある。
そして、アルファの力は、新米騎士のそれより、少し強かった。
シナイを持っている手が、未だに痺れている。
「でも、手加減、できなくなりそうねぇ」
「楽しそうですね、先輩」
「そりゃそうよ。可愛い妹分だもの。成長を直接確かめられるのは、役得だわ」
ライカの目は、慈愛に満ちていた。
「本当、先輩はアルファちゃんが好きなんですね」
「えぇ、赤ちゃんの時から見てるからね」
脳裏に浮かぶ十年前のあの日。
親友が保護した、見たこともない顔の造りをした少年と、彼に抱かれた赤子を、ライカたちの隊で世話することになった、あの日。
すやすやと眠る小さな命に、自分が守るべきものが何なのであるのかを再確認した日。
それが、ライカ・セイクリッドが、騎士としての自覚を真に持った日だった。
「あの子が診療所を継ぐか、別の道を見つけるか。それから、結婚して、子どもが生まれて……」
「ずっと見守るつもりですね」
「ま、そう言う事よ」
「それなら、先輩の方が先に見せないといけませんね?」
後輩の言葉の真意がわからず、ライカは首を傾げた。
「何を?」
「結婚式ですよ、コーシェとの」
その後、校庭で教師がシナイを振り回す騎士と追いかけっこをしていたと話題になった。
お読みいただきありがとうございます。胡桃リリスです。
再開シリーズ第五弾は、機巧のギルフェンセィアでした。
この度、タグに新たなワードを追加いたしました。これ、最初は入れていたんですが、ネタバレになるかも、と思って外しておりました。という訳で、ロボット、異世界、女神を追加いたします。また、新たに<G>というタグを入れました。
これからも機巧のギルフェンセィアをよろしくお願いいたします。
新作を二つ始めました。
○ヒナタ・ガーディアン
○サクニール! ~最終戦争を未然に終わらせた男とベテラン戦乙女の共同生活(フェンリルもいるよ!)~
こちらもよろしければご覧ください。




