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機巧のギルフェンセィア 天使の子守歌  作者: 胡桃リリス
第三章 夕闇に潜む怪異を暴け
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chapter31

お待たせいたしました。

 授業が終わると、ライカはアルファ、ミルシャ、マルタを呼び集めて説教をしていた。


「あのね、三人とも。流石に学校の授業でアレを真似するのはやめなさい。もし手からシナイがすっ飛んで行って誰かに当たったら大けがするわよ」

「「「ごめんなさい」」」

「よろしい。じゃっ、これで解散」


 ライカが手を打ちならすと、ミルシャとマルタは更衣室へ向かっていったが、アルファは残ってライカを見上げた。


「そうだ、ライカお姉ちゃん。コーシェお兄ちゃんが戻ってきたよ」

「あら、そうなの?」

「よかったら、この後、来る?」

「うぅん、この後は仕事があるから、また今度行くわ」

「先輩、後の事は私がやりますから、診療所へ行ってください」


 オージュはそう言うと、ライカの背を軽く押した。


「え? でも……」

「じゃあこうしましょう。ライカ先輩は街の異変がないかを調査するついでに診療所へ行くんです。これも立派な仕事の一つですよ?」

「アンタねぇ……」


 呆れた様子のライカだったが、オージュは気にした様子もなく、そのまま校舎へと行ってしまった。


「じゃあお姉ちゃん、校門で待ってるね?」

「あー、うん、わかったわ」


 これは逃げられそうにないな。ライカは苦笑いを浮かべた。




ααααα




 アルファたちとライカが校門を出ると、大広場の一画に人だかりができていた。


「何だろう?」

「あぁ、夜間外出禁止の報せね」


 アルファの疑問にライカが答えた。


「皆には関係ないけれど、居酒屋とかに行く大人はいるから、外出はやめてって話」

「まさか、この前の……?」


 貴族の子女故に情報を持っているミルシャは、言葉を途中で濁しながらライカを見上げる。マルタや両親の話では、不正入国事件は解決したと聞いていたのだ。


「そっちは解決したわ。ただ、前回のようなことがないように、見回りを強化したいってところかしら」

「そうですか」


 ミルシャはあっさりと頷くと、その話題には触れなかった。ライカたちの仕事に深入りすることになると察したのだ。


 街を歩いていると、小広場や四つ角で役人や騎士が人々に向かって報せを発しているところをよく見かけた。困惑する声や、文句を言う者も少なくなかった。


「しばらくは夜会も開けませんわね」

「そうね。まぁ、疲れなくていいけれど」

「セイクリッド様、あまりそう言うことは口にしない方がよろしいですわ」

「誰もこっちに意識を向けていないわよ。それに、ミルシャだって夜会はあんまり好きではないでしょ?」

「貴族として社交の場に出向くことは義務です……が、確かになければその分、屋敷でゆっくり過ごせますわね」

「でしょ?」

「お二人とも、ご当主様たちが嘆きますよ?」


 全くの無言だったマルタが静かに突っ込んだ。


「しかし、それでは早めに屋敷へ戻らねばなりませんわね。アルファさんのお家で昨日のお話しをたくさんしたかったのですが……」

「え?」


 振り返るアルファから顔を背けるミルシャ。


「なんでもありません」

「何でついてきているんだろうって思ってたけど……」

「別に私がどのように帰ろうと自由でしょうっ」

「本当は、寄り道せずに帰宅しなければいけませんが」

「マルタ、一緒に来ている貴女が言うの?」


 ミルシャから突っ込まれるが、マルタは澄ました顔だ。


「こほん。それより、アルファさんのお家にお邪魔してもよろしいかしら?」

「いいけど、お家に連絡しなくてもいいの?」

「えぇ、登校する前に母には伝えていましたから」

「じゃあ、朝に言ってくれればよかったのに」


 当然のアルファの意見に、リリアンとライカ、そしてマルタからも同意の視線を向けられて、ミルシャは目を彷徨わせた。


 しかし、アルファはそれ以上は追及せず、ミルシャたちも家に連れていくことにした。


「コーシェお兄ちゃんが帰ってきたから、ハーブクッキーがたくさん食べられるよ」

「コーシェさんと言えば、薬師の?」

「そうだよ」


 コーシェの作った薬は貴族の愛用者も多く、特にアスカスに住んでいる者であればなおのことだ。


「あの方の熱冷ましにはお世話になったことがあります。副作用もなく、すぐに効き目があったものですから、我が家では常備薬として購入しています」

「そうなんだ?」


 その時、アルファの脳裏には、数か月前、いつもよりも売り上げがよかったことに驚いていたコーシェの姿が浮かんでいた。購入先の名前をゼットから聞いて、卒倒していたことも思い出した。あの理由が今わかった。


「見た目麗しい方と伺っています。お会いするのが楽しみです」

「あー、うん、綺麗と言えば綺麗だけどね?」


 ライカが困ったような笑みで頬を掻いた。


「ま、会えばわかるか」


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