chapter21
前話と同タイトル・同内容のままでした。大変申し訳ありませんでした。(2019/4/30)
日もだいぶ傾いた時間に、一台の馬車が駐屯地へ向かっていた。
朝早くに出掛けた第一小隊の副隊長が、視察から戻ってきたのだ。
カーテンを少しだけ開けて外の様子を眺めていた副隊長は、何気ない様子で口を開いた。
「ベルさん」
「何でしょうか?」
答えたのは対面に座る部下ベルだ。彼女は読んでいたメモ帳から顔を上げた。
「もしもの話ですが……赤く染めた鎧を全身に纏った騎士がいたら、どう思いますか?」
「目立ちたがりの新人か、酔狂な武士だと思いますが、どっちにしても関わり合いになりたくありません」
仮にいたとして、戦場で目立つに決まっており、狙撃の巻き添えは食らいたくないため、近くには居たくない。
戦いを知らない民衆でさえわかる。
真意の読めない副隊長の問いにベルは首を傾げた。
「まぁ、そうなりますわよね……すみません、今の質問は忘れてください」
「はい」
軽く目を閉じて気分を変え、副隊長は別の質問を投げかけた。
「次に……最近、学校で面白い生徒がいると耳にしました。何かご存じですか?」
「はい。どのような生徒でしょうか」
「何でも、スクーテ様のご息女に連勝しているという生徒です」
「あぁ、それは、アルファ・ワンダーという女子生徒ですね」
「ワンダーと言うと、稀に貴方たちの会話に上がる、ワンダー診療所ですか?」
「えぇ」
ベルは表には出さないものの、内心驚いていた。まさか、自分たちの何気ない日常会話を気に留めていたとは、と。
一方、副隊長はベルの心が読めるはずもなく、それよりも、往来の中に見知った顔を見つけ、そちらに注意が行っていた。
「止めてください」
「副隊長?」
緩やかに止まった馬車から降りると、副隊長は目的の人物二人へ足早に近づいた。
その後ろ姿を見て、ベルは何故だか否な予感を覚えるのであった。
数分後、その予感は的中することになる。




