約二ヶ月、ここでの生活はまだまだつづぅく!
続けての更新です。
「いらっしゃいませぇ」
「いらっしゃいませぇ」
「らっしゃぁい」
「良く来たなぁっ!」
さて時は夕暮れ、店内に挨拶が飛び交います。それぞれちがった挨拶、ほんと聞いただけで個性が解っちゃう様な挨拶……。
特に最後の人、長門さんにいたっては個性が強すぎます。
「ふふふ。ここに来たと言うことは、私を口説く言葉の一つや二つを……って、おわっ! なっ、くっ胡桃!! うっ後ろから羽交い締めするなっ、今接客の途中だろぉがぁぁぁぁっ」
「はいはい、迷惑ですから止めましょうねぇ」
「ぐっ、くそっ! はっ、はなせぇぇぇっ、離せってば!!」
あぁぁ、あぁぁ、ほんっと毎回毎回息を吸うようにお客様にちょっかい掛けて……迷惑だってこと自覚できないんですかね?
って、私もいい加減学習しないとですね。今まで言って来てこれだから学習なんてしてません!
「はぁ……。こんなのが店長なんて不思議ですねぇ、なんでこの店潰れないんでしょ」
「おい。さらっと失礼な事言うな! あと離せっ、なんか徐々に力強くなってるぞっ、このままじゃ腕がもげる!」
「いやですねぇ、人の腕はそう簡単にもげませんよ」
「いや、胡桃の力だとほんとにもげ……ぁいたたたたっ!! おぃっ、ちょっ、まて! ほんとにもげっ、いだ! ぁっ、わがった! わがったから!! はなせぇぇぇぇっ!!」
ふむ、ちょぃと力入れたら分かってくれましたね。初めからそうすれば良いのに……。
「やれやれ、手が掛かる店長ですねぇ」
「手なんて掛けなくて良いのに」
「なにか言いました?」
「いっ、いや……なにも?」
……長門さんは足早に去っていきます。あぁ因みに、長門さんに止められてたお客様は私が後ろから羽交い締めした瞬間、今だ! と言わんばかりに去っていきました。
逃げときを見極めてますねぇ。
「相変わらず、てんちょににきびしぃね」
「あ、恵さん」
ちょんっとほっぺを突っついてきたのは、苦笑いした恵さんです。学校終わって直ぐバイト……疲れてる筈なのに凄く元気そうです。すごい。
「まぁ、あの人にはあれくらいやらないと聞かないって分かりましたからね」
「あ、あはははぁ……。まぁ否定はしない……かな」
うん、でしょうねぇ。実際そうですからねぇ。困ったものです。
「はぁ……。なぁんであれで社長とか店長とかやれてるんでしょう? 不思議で仕方ないですよ」
「それねぇ……。多分あれっしょ。やれば出来るんだよ、きっと」
「でしたらきちんとやってほしいですねぇ」
そしたら、私の気苦労が減るのに。
「くるちゃぁん、ちょっとこっちきてぇ」
と、その時でした。店内に止さんの声が響きました。
え? なんですいきなり……大声出す様な事でも起きました?
若干怖くなって私は足早にそこに向かいます。あ、恵さんも気になったのか着いてきましたね……。
という訳で二人揃って行きました。声はバックヤードの方から聞こえました、早くいかないと!
◇◇◇
「あ、きたな? 見てみて、これっ! このポテチ新しい味だよっ、美味しそうなんだぜ……ぁいた!!」
……はい、来てみたら超しょうもない用件でした。ですから凸ピンかましました、痛そうに床にうずくまって私を睨んでますねぇ。
睨みたいのはこっちなんですよ? 仕事中にそんな事で呼ぶのはやめましょうね。
「なにするんだよぉ、痛いじゃんか」
「しょうもない事で人を呼ぶからですよ」
「んなっ! しょうもなくないぞっ、新作ポテチは目が離せないんだぜ!」
あぁ……。なんか謎の熱が入りましたね、こんなにもポテチに情熱的な人、始めてみました。
というか、ぴょこんぴょこん跳ねてますね……可愛いです。
「ポテチはゲームのお供! きっても切り離せない存在! それを分かってないとは何事だ!!」
「え? あ、はい……すみません」
「ふふんっ、分かれば良いんだぜ!」
なんか怒られたのでなんとなく謝ったら……うん、簡単に許されましたね。むんっ! って胸をはってます。
って、恵さん? 後ろで苦笑いしてないでなんか言ってくださいよ。さっきからずっと黙ったままじゃないですか!
「……はぁ。じゃぁ、用がすんだみたいなので、もう行きますね」
そう言って私はくるんっと向きを変えて出ていこうとしたその時……。
「あら、三人でなにをしているのかしら?」
出口に七瀬さんが立ってました。メガネをくいっと上げて壁を背に立ってます。
「あ、いえ……ちょっと止さんに呼ばれたんです」
「あら。そうなの?」
「あ、あはは。そうなんですよぉ」
まぁ、呼ばれた理由はほんっとしょうもない事なんですけどね。ソレいったら面倒なので口には出しませんが……。って、うわっ、恵さんの顔が険しくなってます、どっ、どうしたんです?
「くるみ?」
「っ! ちっ、ちか!! なっ、ななっ、七瀬さん!! ちかっ、近い……ですっ!」
恵さんを、それとなく心配してたら……七瀬さんが急接近! こっこれ! キスされそうな距離ですよ!
「長門一人残して来ちゃダメよ? いま一人なんだから好き勝手やってるわよ?」
「……へ? あ、えぇっ! ほっ、ほんとですか? すぐいきますぅぅぅっ!!」
こっこの距離で何を言われるかと思ったら、大変な事を言いましたね。これは急がないといけません! あの人を放置したら……お客様が危ない! 主に男性客がっ!!
という訳で急いで向かいますっ!
◇◇◇
「……いや、あのな? ちょっとな……その、あれだよ。別に監視がいなくてラッキーとか思った訳じゃないぞ? ほんとだぞ? だから……もう正座しなくても……」
「だめです、長門さんはずっとそのまま……今日の営業が終わるまでその体制でいてください」
「うぐっ! もう脚が限界なんだぞ!!」
「おあいにく様です、私も我慢の限界なので……」
「……うぅぅぅ」
はい、なんか良く分からない事が起きてますので軽く説明しますね。
私は、バックヤードから戻ってきました。そしたら長門さんが男性客に「ほら、私を口説いてみろっ! 少女漫画的ノリで!」なんて事を言いながら迫ってたので、素早く後ろに近付き羽交い締めにして、強制的に土下座させたんです。
で、さっき言った通りそのままいるように言いました。これで静かになる筈です。
「うわぁ……。てんちょ、正座してるし」
「あ、恵さん」
おっと、恵さんもバックヤードから戻ってきた見たいですね。七瀬さんと止さんも来ました。
「あらあら……。大変な事になってるわね」
「正座……。五秒が限界なんだぜ」
ふふふっ、と麗しく笑う七瀬さん……。なぁんか面白くて笑ってる様に見えます。
そして止さん? もうちょっと耐えましょうね……。
「はぁ……。今日もある意味大変ですねぇ」
つい、口に出ちゃうくらい大変ですよ。まぁ……楽しくは有りますけどね。
この二ヶ月間はほんっと濃い日々でしたから……。って、染々想いを馳せていたらお客様が来ました!
「いらっしゃませっ!」
なので、元気良く挨拶です!!
さぁ……今日も明日も明後日もどんどこ頑張りましょう! この濃すぎるコンビニ生活を!
はい、という訳で最終回となります。
短い物語となってしまいましたが、今まで読んで頂きありがとうございました!




