↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
18/21

軍師ロビン

インフルエンザで倒れてました。更新遅れ申し訳ない


  「ガタガタガタ、ガッチャンガッチャン」



 金属の鎧の音と馬車の騒がしい音で目が覚める。

義勇兵に、宿は用意されずほとんどがのじゅくだ。

馬車の中がそのまま宿舎となるが、要塞内なので安全とは言える。

朝から正規軍は慌ただしく動いている。

誰か重要人物の来訪に備えているようだ。



「総司令官がいらっしゃったぞー! トリン正規軍全体整列! 列を乱すは軍の恥だぞ!」


「義勇兵は邪魔だ! 道を開けろ! 手の空いてるものは道を整備しろ!」



 義勇兵とはいえ、所謂農民や町民の寄せ集めだ。

ヒラエルキーは正規軍の下。

雇用主が軍なのだから、自然と下請けの遠慮がつく。


 戦時以外は軍に従う必要はないが、農民あがりの義勇兵達はせこせこと手足のように動いている。

命をかけた戦場で、決定権を持つ集団に嫌われぬよう媚へつらう。

立場を自分で作るとはこの事だな。


 一方立場は義勇兵と何ら変わらない俺。

この砦ではパルスとドエムルのおかげで有名になり、顔の一人と言っても過言ではない。

奇襲された正規軍を庇い、単騎敵陣に突入し指揮官を討ち取った。

俺の見た目から来る威圧感も合わさり。

正規軍の兵卒も俺を見ると頭を下げてくる。



 パルスはトリンの町の方の牧草地に、馬を取りに行ってる。

俺は皮鎧を着て馬車から出ると、義勇兵達に混ざり井戸から水を汲み顔を洗う。



「プハー! 目覚めに顔洗うとさっぱりするぜ」



 義勇兵が上半身裸で、井戸前で口々に、総司令官の噂をしている。

まさに井戸端会議ってやつだ。



「総司令官ってロビンさんだよな!? 俺ファンなんだよな!」


「俺も俺も! ロビンさんが総司令官だから、勝ち戦に金稼ぎに参加したようなもんだぜ」



 どの傭兵も口々にロビンの賛辞を上げ、英雄譚を語る。

戦に強い将軍ってのは、千の兵より頼れるものだ。

自分の命をかけた戦場で、英雄と言われる指揮官がどれだけ心強いか。

俺ですらこの砦で情報収集している時、何度も耳にした。

ロビンって奴は相当できる将軍らしい。


 馬車に帰り、ドエムルから話を聞く。

なんでも全戦全勝、兵を手足の様に動かし無駄がない。

自身も高位魔法を自在に操り、平等かつ合理的な物に軍法を書き換えた。

冒険者でこの星の身分には縛られず、諸侯に気に入られ王にすら謁見できる。

様々な地域で災害を解決し、モンスター襲撃を撃退。

復興から、経済圏の立て直しまで迅速。

容姿も伊達男。




「話半分でも、使えそうなやつだ。自然にコネを作りてぇ所だが、まずは面でも拝むか」


「団長なら間違いなく重宝されますよ!」



 ドエムルは目をキラキラしながら俺についてくる。

別に話を聞いただけで、ついて来なくてもいいんだが……

まぁ、何かと知ってるし便利だろう。

俺はドエムルと団員10名そこらを連れ、正規軍の整列している方に向かう。

 案の定正規軍の列の後ろには義勇兵の人だかりが列になっている。

全員が興奮したように話しているので騒がしい。

軍楽隊が、音楽を奏でる練習をしている。

パレードなりでも始めるかの様だ。

身長の高い俺は遠くからでも見えるが、どうせなら前に行く。



「おぅ、通してくれ」


「あ? ……あ、狸さん、どうぞどうぞもう総司令官殿通られますよ」


「お、ありがとな」



 名前も何も知らない義勇兵だが、相手方は俺を知っている。

右拳を握ってグーにしてお互い合わせる。

これが義勇軍流の挨拶らしい。

ファミリーみたいな連帯感がある挨拶で俺は気に入っている。

顔の広いドエムル達も各々挨拶しながら、俺についてくる。




「ドン! ドン! ドン!」




 大地を振るわすような、太鼓の音と義勇兵達の地を割るような歓声。

それと共に、赤い二足歩行の竜にのった真っ赤なフルプレート

黒いマントと黒槍を携えた兵士達が列をなす。

 真っ赤な竜はは二本足で立っており、足と正面の3本指カギ爪と牙が鋭い。

ダチョウのフォルムで、羽はないが体高は首まで入れて2メートル。

爬虫類の肌に、鳥のような黄色い眼球に縦線の黒目。

簡単に言うなら、二足歩行の足早そうな赤い恐竜って感じだ。


 風に煽られ、旗がばたばたとたなびく。

真っ赤なフルプレートに、赤い二足歩行の竜騎乗で数をそろえた軍は威圧感だ。

数でいうと500程か、赤い鎧・黒いマントに黒い槍。

全てが統一されている。


戦場でこの赤備えが、黒いマントを翻し突撃して来たら。

民兵では圧を感じるだけで、立ち尽くすか逃げ出すだろう。

戦いもせず狩られ、肉塊になる味方達。

返り血に濡れた赤い重装騎兵が、随時突撃するビジョン。

その恐怖は戦場に伝染していく。

視覚効果というものは実戦で敵を数倍の強さにする。



「かっけえな、俺も作るか、総司令官はどこだ」




 この雰囲気ある精鋭。期待させる演出だ。

総司令官の場所は探さずとも、目の前を通る。

馬車の屋根を取っ払い、赤い鎧を着せた大きな4匹の筋骨隆々な雄牛の後ろ。

兵に手を振りロビン様ロビン様と崇められる男がいる。



「ん? あれ、まさか! あの時のカウボーイじゃねえか」


「団長? まさかロビン将軍とお知合いですか?」



 この星に来て、同じファーストクラスに乗っていた。最初に話した冒険者だ。

俺は義勇兵の中からずいずい前に出て、ロビンの方へ向かう。



「な! 団長! 流石に生き急ぎ過ぎですぜ!」



 ドエムルが真っ青な顔をしてついてくる。

そして白目を向きながらドエムルの部下達も俺についてくる

俺やパルスが決めた事は、忠告しても止めはしないこれがドエムル傭兵団の決まりだ。



「挨拶するだけだ、気にすんな」



「揉めた場合相手が相手です。ロビン将軍の近衛は戦場で無礼打ちの権限持ってます。洒落にならないっす」



「だったら俺と関係ないって言っとけ、お前の傭兵団ここの主力だろ。連帯責任で処罰するほど戦況よくねー。ロビンってのが前評判通りなら大丈夫だ」



 ドエムルは何か言いたそうに口を動かし止める。

俺を見上げた顔は歴戦の傭兵団の頭であるドエムルの顔だった。

覚悟を決めた表情で言い放つ。



「戦闘になったら、我々は砦の様々な場所に火を放ち各自撤退。パルス様と合流後、スカライトで合流させて下さい」



「俺のせいにして、逃げていいぞ」



「親父、俺や俺の部下を安く見ねーでくれ。死戦にお供できない男はうちにはいないっす」



 目を細くし、真剣な表情で頷くドエムル。

こいつは変態だが、確かに男だ。

俺はドエムルを一瞥して、ニヤッと笑う。



「かっけぇ事言うじゃねーか」


「命に代えても完遂いたします。……兵も何人か確実に死亡、よくてお尋ね者っすね」



 腐ってもトランメル最大の軍だ。確かにそうなるだろうな。

単純に挨拶して、コネクション掴む感覚だった。

俺ならどうにでもなるだろうと思っていたが、今は下もいる。

下手するとトリン軍と敵対したらファルッカに移住せざる負えないかもしれない。

正直、ロビンと後で話をする事はできるだろう。

だが、トリン全市民全軍が注目している今だからこそリターンがでかい。



「やっぱびびったか?」


「差し出がましい事は承知していますが。死地に仲間を送るんで、成功の暁には褒美を受けたまわりたいっす」



 拳を握り締め、震えながら決意した目で俺を見上げるドエムル。

こいつ根性はあるんだよな……確かに、言っている事は的を得ているし土壇場でも信頼に値する。



「そうだな、褒美を出そう。金か?」


「パ、パルス様のつ、つ……」



 つがい? パルスと結婚したいのか、パルス男なの知らないんだよなこいつ。

取引で嘘はつきたくない、しかし露見させるわけにも……どうしたものか。



「パルス様のつばをください!」



 歓声が聞こえなくなるほどの静寂に、俺は精神から引っ張られた。

混乱の中から、一般的に命を賭けた男の欲しい物からかけ離れた提案。

長い無言の後、俺は口を開く。




「……ん もう一度言ってくれ」


「パルス様のつばをください!」



 こいつ本物の変態だ。

真摯な表情から本気で考え抜いて、俺に勇気を振り絞って言っている。

その命を賭けた台詞がこれだ。



「お前はそれでいいのかもしれないが、部下達は……」



 部下は皆下を見て震えている、こんな隊長持ちたくないよな。

てかよく今までついて行ったもんだ。



「ドエムル隊長! 一生ついて行きます!」


「おぉおぉぉぉおおおおおお! 隊長あんた最高の男だ!」


「隊長……あんた眩しすぎるよ、神だったのかよ」


「パルス様の唾液があの口から流れる所を見れるんすね!」



 周りの声援と別種の、ドエムル傭兵団にあがる声援。

ドエムル率いる10名全員が、一点の曇りもない戦にいく男の顔だ。

俺の頭は混乱、思考が停止する。



「分かった、約束する……頼んだぞ」



 10名全員が一列に並び敬礼する。

全くブレのない動きは、一流ダンサーチームの如く。

ドエムル傭兵団皆が顔を上げ、闘志が瞳に宿る。



「この命に代えましても!!」



 兵達の中にバラバラに消えていったドエムル傭兵団。

ため息以外もう何も出ない、俺がおかしいのかとすら思える。

気を取り直して作戦実行だ。

列で道を作ってた正規兵が、4人がかりで俺を止めに来る。



「おぃ、貴様列から出るな! ……あ、狸さん駄目ですよ。さすがにそれだけは駄目です!」


「ちげぇ、知り合いだ! いいから俺が優しいうちに道を開けろや」


「いや、でも……おぃ隊長呼んできてくれ!」



 隊長来るまで待つはずもない俺は、正規兵の肩を掴みどかして進む。

ここらで名を上げていたオークの進化種ブユウを打ち取って、同じく有名なアロを追い詰めた。

この前線基地じゃ俺は軽い英雄といっても過言ではない。

 ちょっと進むと赤い陸戦型ドラゴンライダーとも言うべきか、近衛兵に囲まれる。



「曲者だ! 密集陣形! ファランクスのB本隊は後退! 前衛回れ! 回れ!」



 号令と共に、俺を中心に円を描きながら走る赤い兵士達。

兵士が横一列に並び、左手に盾、右手に槍を構える。

盾で「自分の左半身」と「左隣の兵士の右半身」を互いにカバーし合う陣形。

正面に盾で作った赤い城壁が、一瞬で現れる。展開速度から練度は高い。

パレードの中心に俺を囲む円ができる。



竜騎兵が俺の背後を、走り出す。

サメのように俺の背後、一定距離を保つ。

騎兵は走って初めて力を発揮する。背後から竜騎兵の突撃か。

正面のウニのようなファランクスに串刺しされるか。



「練度も中々なもんだ、噂通りの将軍ってわけだ。あのカーボーイ坊ちゃんがねぇ」



 口から息を深く吐き出す。

そして大きく吸い込み、俺は大声で叫ぶ。



「俺の名は狸! スカライト市長の責務から、義勇軍としてはせ参じた! ロビン将軍とは縁あって旧知の仲だ確認しろ!」



 低いが遠くまで通る声が広がっていく。

赤竜騎兵の隊長格らしき人物が円から出てきた。

顔は赤いフルプレートで覆われていて見えないが、武器は先端が三つに分かれた槍。

海の神が持つ武器と形容するか、バースプーンの槍型というべきか。

統一された軍で武器違いが許されるのは、隊長格だろう。

鎧も他の兵より重厚で圧迫感がある。



「その言、信に値する証拠はあるか?」


「宇宙連合の制服アバターと、ファーストクラスと伝えてくれ」



 隊長らしき男が左手を上げると、近くの赤兵士が本陣に走る。

確認に行ったらしい。隊長様は目は兜で見えないが熱い視線を俺に送っているだろう。

俺は堂々と腕を組み、相対する隊長だけを真剣な瞳で見つめる。

今義勇軍、正規軍両者が俺の動向を見ている。

この噂が今後に繋がる、舐められるわけにはいかない。


 だが、正直戦闘になるとは思って居なかった。

最悪戦闘になっても、誰か殺してファルッカ行きの逃げ道がある。

そもそも前線の英雄かつ、同盟町のスカライトの市長を切ることはないだろう。

そもそもここはトラメルだ、いきなり殺される事はない。

拘束されても、身元照会があるはず。


しかし、全て机上の理論であり博打だ。

俺の運命を握る、赤鎧が帰ってきた。



「将軍がお会いになる様だ、警備の任故、騎上からの口上で失礼する」


「我が名は、イルマリと申します。このロビン将軍近衛赤備え隊の隊長をしている。以後お見知り置きを」



赤鎧の隊長イルマリがそう告げると、周囲を固めていた竜騎兵たちの槍が一斉にスッと引かれた。

緊迫していた空気がわずかに和らぎ、俺は内心で大きく息を吐き出す。

――賭けに勝ったな。

 


「あぁ、すまねぇな。案内を頼むわ」



俺が不敵な笑みを浮かべてそう言うと。

隊長は小さく頷き、ロビンの乗る馬車の方へと道を空けた。

正規兵の列をかき分け、野戦の真ん中を大股で歩いていく。

周囲の正規兵たちが「あのデカい男は一体何者だ……?」とばかりに、物珍しそうな視線を俺の背中に浴びせていた。

少し進むと、馬車の屋根の上で優雅に腰を下ろしている男の姿が見えてきた。

カウボーイ風の衣装は消え、黒い革鎧の上から指揮官の証である真紅のマントを羽織ったロビンだ。

周囲を固める近衛兵たちの視線が痛いほど突き刺さる中。

ロビンは俺の姿を認めるやいなや、パッと表情を明るくさせた。



「あの時の、いかついお兄さん!確か、名前は……」


「『狸』だ。そっちはトリン軍の総司令官様におなりとは、出世したもんだな、カウボーイ坊ちゃん」



俺がニヤリと笑いながら声をかけると、ロビンは苦笑いしながら、ひょいと馬車から飛び降りてきた。

その身のこなしは軽やかで、騙した鴨のイメージと違和感を感じる。


「いやぁ、まさかこんな最前線の泥臭い場所でアンタに再会するとはな。ファーストクラスで一緒だったときは、まさかこんなガチの戦争に巻き込まれるなんて思ってもみなかったぜ」



ロビンは周囲の兵士たちに「持ち場に戻れ」と手で合図を送る。

近衛兵たちが一斉に敬礼し、足早に持ち場へと散っていくのを見届ける。

護衛はイルマリのみだ。


本来なら、警戒心を解くことが早すぎる。

甘ちゃんとロビンを心で馬鹿にするのだが。


このイルマリという、武将から出る威圧感。

一切油断せず、仮面の下で俺を睨んでいる。


三又の槍には、刃の部分に光が灯って揺らめき消える。

俺のハンマーと同じマジックアイテムだ。

正規軍近衛兵だろうが、撤退前提なら負ける気はしない。

だが、魔法や手練が絡むと不確定だ。



散々戦った俺だから分かる。


武将イルマリ、この世界で会った誰よりも強い。





更新遅れて申し訳ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。