5話 ついに塔への侵入を許す
「絶対の零度を以て、世界を隔てる絶望の檻を凍てつかせろ。理不尽な因果ごと、その扉を塵へと還せ。――氷結の聖剣」
呪文を連続で詠唱すると、カタリナの声は周囲に響く。
淡い薔薇金の髪が揺れ、大きなライラック色の瞳が魔力に光る。
魔法陣が連続して展開され、氷の刃の雨が降り注いだ。
氷の刃が魔物たちを貫き、次々と倒していく。血が飛び散り、魔物たちは塔から落下した。
だが、連続詠唱という無茶をしたせいで、彼女の肉体は悲鳴を上げる。
「げほっ……! か”は”っ”……!」
カタリナの口から大量の血が溢れ、それは地に垂れて足場を赤く染めた。
顔色は青白く、全身が震えている。
「……まだ……やれますぅ……!」
口元の血を手の甲で拭いながら、彼女は震える声で呟いた。
一方でヴェルナーは、叫びながら短銃を連射している。
「どんどん来やがれぇ! 今日でお前らともお別れだ! 楽しもうぜえぇ……!」
気分が高揚としているのか声が妙に高くなっており、彼の長めの金髪が乱れ、切れ長の蒼い瞳が狂気に揺れた。そして銃声が連続して響き、弾丸が魔物たちを貫く。
だがイグナーツと仲間たちが、塔の外壁を登る魔物たちを相手にしていると、突如として塔全体が激しく揺れた。それは、まるで地震が発生したかのように大きく揺れる。
塔が揺れた事で、仲間たちは姿勢を大きく崩した。
「くそっ! 今度は地震だと!? ふざけやがって……!」
エリザベートが愚痴を吐き捨てる。白金の髪が乱れ、蒼い瞳が混乱に揺れた。
「……しかも大きめの地震とはぁ……! ははっ……! ついてないですぅ……!」
僅かに笑みを零しながら、カタリナが愚痴を吐き捨てる。
淡い薔薇金の髪が乱れ、大きなライラック色の瞳が混乱に揺れた。
「最悪だ! このタイミングで!」
身を屈めながらヴェルナーが愚痴を吐き捨てる。長めの金髪が乱れ、切れ長の蒼い瞳が混乱に揺れた。
仲間たちが混乱している中、イグナーツだけが冷静に塔が揺れた原因を探る。
この揺れは地震のものではなく、人為的なものだと考えて。
彼が忙しなく、顔や体を動かして周辺を確認すると、塔が揺れた原因が判明した。
特殊個体の一体が塔の裏手から進行しており、塔に向けて全力の体当たりをしかけて、塔全体を破壊しようとしていたのである。
「くそっ! あの巨大な魔物、塔を壊す気だ……!」
諸悪の根源を発見して、イグナーツが怒気を孕んだ声で叫んだ。
特殊個体の魔物は、一見して塔に甚大なダメージを与えていき、完璧なる破壊を目論んでいる様子。
そして彼は早々に特殊個体を倒さないと、このままでは塔が崩壊して全員が瓦礫の下敷きになり、生き埋め状態になると判断した。
「全ての力を……この一撃に……っ!」
即座に大剣を抜くと、イグナーツはグリップ部分を両手で握り込み、全魔力を刀身に付与してゆく。
切れ長の黒目がちな瞳が魔力に光り、濃藍の羽織が風に揺れた。
やがて大剣が淡い光を放ち始め、魔力が刃に収束していく。
「天を衝く蒼白き断罪のよすが、大地を揺るがす轟音よ、我が剣に宿りて敵を滅ぼせ。世界を隔てる絶望の檻ごと、理不尽な因果をすべて塵へと還せ。――滅獣剣・天雷崩!」
大剣を高く掲げ、彼は詠唱を始めると、その声は塔全体に響き渡る。
魔法陣が巨大に展開され、天から雷撃が降り注いだ。雷撃は大剣に収束し、刃が眩い光を放つ。
そしてイグナーツは大剣を振り下ろした。刃から巨大な雷撃が放たれ、特殊個体の魔物に直撃する。
「グオオオオオオオオオオオオオオッ!」
特殊個体の魔物は悲鳴を上げ、身体が雷撃に包まれた。皮膚が焼け焦げ、肉が炭化し、骨が砕ける。
そして、特殊個体の魔物は倒れた。大地と塔が大きく揺れる。
「よし、やったぞ……ッ!」
右手を握り固めて、天へと掲げながら、イグナーツが叫んだ。
だが、倒れた特殊個体の屍を踏み越えて、更に多くの魔物たちが塔に突撃を仕掛ける。
ついに塔の裏手の出入り口が破壊されて、魔物たちの侵入を許してしまう。
木製の扉が破壊され、魔物たちが塔の内部に侵入し始める。
「隊長! 塔の中に侵入された!」
塔の出入り口が全て破壊され、魔物の侵入を許すと、エリザベートが即座に報告を行った。
白金の髪が揺れ、蒼い瞳が焦りに揺れる。
イグナーツが塔の上から現状を確認してから、即座に考えて、ヴェルナーとカタリナを下の階に派遣することにした。
「ヴェルナー、カタリナ! 下の階に降りろ! 内部の魔物は任せた……!」
右手を大きく振り、彼は二人に指示を飛ばす。
切れ長の黒目がちな瞳が真剣に光り、濃藍の羽織が風に揺れる。
「「了解……!」」
命令を受けた二人は敬礼と返事をした。そして二人は下の階へと降りる準備を行う。
ヴェルナーは、武器箱から弾薬を取り出し、鞄に詰め込んだ。
短銃の弾倉に弾丸を込め、黄金の大剣を腰に差す。
カタリナは、武器箱から火炎瓶を取り出し、鞄に詰め込んだ。魔術刻印杖を握りしめる。
その場に残るイグナーツとエリザベートは、下の階へと降りる仲間たちの準備が整うのを援護しながら、魔物の迎撃を続けた。
イグナーツは短銃を連射し、塔の外壁を登る魔物たちを次々に倒す。
エリザベートは聖銀の槍を振るい、魔法を放った。
閃光が魔物たちを貫き、浄化しながら塔から落としていく。
「なんとしてでも! 塔に侵入した魔物を一匹残らず駆逐せよ!」
魔物を迎撃しながらイグナーツは、準備をしている仲間たちに言葉を送る。
ヴェルナーとカタリナは、大きく頷く事で力強く答えた。
そして二人は下の階へと降りようとしたが、そこへ突如として魔物の咆哮が下の階から響く。
その咆哮を聞いて、既に多くの魔物が着実に階層を侵攻して上がってきている事を、ヴェルナーとカタリナは把握した。しかし、二人は魔物の咆哮を聞いた事で、たじろいでしまう。
「ちっ……もう来てやがる……」
舌打ち混じり言葉を、ヴェルナーが呟いた。長めの金髪が揺れ、切れ長の蒼い瞳が不安に揺れる。
「……怖いですぅ……」
全身を震わせながらカタリナが呟いた。
淡い薔薇金の髪が揺れ、大きなライラック色の瞳が不安に揺れる。
だが、それでも意を決した様子で、二人は下の階へと降りることにした。
「まあ……出来る限りやってみっか……」
「……ああくそぉ! あとちょっとで帰れるんですぅ……! 絶対に死にませんぅ……!」
ヴェルナーが軽口を叩くと共に、カタリナも冗談めいた口調で放つ。
二人は塔の内部へと戻り、迫り来る魔物の迎撃を開始した。
螺旋階段を降りていくと、下の階から魔物たちの足音が聞こえてくる。
ヴェルナーは短銃を構え、階段の下を見つめた。
カタリナは魔術刻印杖を握りしめ、階段の下を見つめる。
そして、魔物たちが姿を現した。複数の夜狼が階段を荒々しく駆け上がる。
「来たぞ……っ!」
ヴェルナーが叫び、短銃を連射した。弾丸が夜狼の頭部を貫き、夜狼は階段から転げ落ちる。
カタリナは魔術刻印杖を振るい、雷撃を放った。雷撃が夜狼を貫き、炭化させながら倒していく。
「くそ……! なんで今日に限って奴らは本気なんだ……!」
二人が下の階へと向かう所を見送ってから、イグナーツは愚痴を吐き捨てた。
切れ長の黒目がちな瞳が苛立ちに揺れ、濃藍の羽織が風に揺れる。
今までにない活気が溢れる魔物たちの行動に、彼は苛立ちすら覚えていた。
そしてイグナーツが塔から身を乗り出して下の様子を伺うと、そこには尋常ではない数の魔物たちが居て、続々と魔物たちは塔に侵入してくる。
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