5話 仲間を殺した隊長
「ぐ……あ……」
彼は声を漏らした。心臓を突かれたガロットは、一瞬だけ正気を取り戻すと涙を流す。
「す……みま……せん……隊長……」
涙を流しながら彼は、魔物の声で拙い人語を口にした。
だが、それだけ言うとガロットは絶命。
そして、彼の身体は手足の先から灰となり消えていき、やがて跡形も無くなった。
「こちらこそ、すまない……。俺の力不足で、お前を魔物の身に堕としてしまった……。お前を救えなかった……。どうか、許してくれ……ガロット……」
床に突き立てられた大剣から手を離すとイグナーツは、最後の最後で自我を取り戻そうとした仲間の事を思い呟く。彼の声は震え、涙が頬を伝う。
切れ長の黒目がちな瞳が悲しみに揺れ、濃藍の羽織が揺れる。
イグナーツは仲間のガロットを救う事が出来なかった事で、不甲斐ない自分の力を呪うように拳を握り固めた。爪が皮膚に食い込み、手から血を流す。
「くそ……! 俺の……力が足りなかった……!」
彼の声は震え、拳から血が滴る。
仲間を殺した不快な気持ちと感触を覚えたまま、その場に崩れるようにイグナーツは膝をついた。
「ガロット……セシリア……すまない……」
彼の声は震え、涙が止まらない。
仲間たちは祈りの言葉を辞めて、部屋に入ると、呆然とした様子で場に立ち尽くす。
室内は惨状そのものであった。
セシリアの遺体は半身が完全に裂けて、腹部は既に原型を留めていない。
髪は血に染まり、目は見開かれたまま、光を失っている。
豊満な胸は引き裂かれ、肋骨が露出していた。
内臓が飛び散り、床を赤く染めている。
ガロットの身体は、既に灰となり消えており、跡形も無い。
「セシリア……ガロット……」
嗚咽を漏らして、その場にエリザベートが座り込んだ。
白金の髪が揺れ、蒼い瞳が涙で潤む。
「……嘘……ですよねぇ……?」
涙を流しながらカタリナが呟いた。
淡い薔薇金の髪が揺れ、大きなライラック色の瞳が涙で潤む。
「セシリア……!」
涙を流しながらヴィオラが叫んだ。
深い漆黒に紫を滲ませた長髪が揺れ、紅い瞳が涙で潤む。
「……セシリア……ガロット……」
涙をリュネットが流しながら呟いた。漆黒に近い深藍色の髪が揺れ、細めの淡い銀青の瞳が涙で潤む。
「セシリア……」
涙を流しながらヴェルナーが呟いた。長めの金髪が揺れ、切れ長の蒼い瞳が涙で潤む。
「ガロット……」
涙を流しながらルーカスが呟いた。焦げ茶の短髪が揺れ、琥珀色の瞳が涙で潤む。
「……ガロット……セシリア……」
涙を流しながらユリウスが呟いた。銀灰色の髪が揺れ、伏せがちな蒼灰色の瞳が涙で潤む。
セシリアの死体から流れ出る血が室内の床に広がり、その場に鉄の匂いが充満する。
イグナーツは立ち上がると、崩れ落ちた仲間たちや、死亡したセシリアを静かに見下ろした。
「……埋めて上げよう。セシリアが安らかに眠れるように」
彼の声は静かで、だが力強い。切れ長の黒目がちな瞳が決意に燃える。
それを聞いて仲間たちは、次々に賛成の声を出した。
「っ……アイツは埋めて上げる事もできねぇ……くそ……」
その時、ルーカスが悔しそうに呟く。彼の声は悔しさに満ちている。
焦げ茶の短髪が揺れ、琥珀色の瞳が悔しさに揺れた。
魔物と化したガロットの事を思い、供養すらできない事に悔やんでいる。
それから仲間たちはそれぞれが動いて、毛布や遺体袋など埋葬に必要な物を集めて、再び病室へと戻った。イグナーツは部隊の隊長として、血や肉片で汚れたセシリアの遺体を慎重に扱う。
髪を優しく撫で、目を閉じさせた。豊満な胸を布で覆い、引き裂かれた腹部を隠す。
太腿を布で包み、全身を毛布で覆う。
「セシリア……安らかに眠れ……」
彼の声は優しく、涙が頬を伝う。
イグナーツは仲間たちと埋葬場所を相談して、塔の裏手にある花畑地帯へと向かうことにした。
遺体を乗せた荷車を引きながら、彼と仲間たちは無言の行進を続ける。
荷車の車輪が軋む音だけが、静寂を破った。
全員の表情は虚ろであり、涙が止まらない。
目的の地に着くと、イグナーツと仲間たちは協力して、黙々と穴を掘り始めた。
イグナーツは大剣を使い、地面を掘る。
切れ長の黒目がちな瞳が虚ろに揺れ、濃藍の羽織が汗に濡れる。
仲間たちの瞳も虚ろに揺れ、各々が自身の武器を使い掘り続けた。
イグナーツと仲間たちは一定の深さの穴を掘ると、そこにセシリアの遺体を慎重に動かして、穴に埋め る。彼女の遺体は毛布に包まれており、優しく穴の底に横たえられた。
そして彼と仲間たちが、順番ずつ砂を上から掛けていく。
「セシリア……お前は優秀な狩人だった。お前のおかげで、俺たちは何度も救われた。ありがとう……安らかに眠れ……」
砂を掬い、セシリアの遺体の上に掛けながら、イグナーツは呟いた。その声は震え、涙が頬を伝う。
「セシリア……あなたはいつも笑顔だった。その笑顔に、私たちは何度も救われた。ありがとう……安らかに眠って……」
砂を掬い、セシリアの遺体の上に掛けながら、エリザベートは呟いた。その声は震え、涙が頬を伝う。
「……セシリア……あなたはいつも優しかった。その優しさに、わたしたちは何度も救われましたぁ……。ありがとうございますぅ……安らかに眠ってくださいねぇ……」
砂を掬い、セシリアの遺体の上に掛けながら、カタリナは呟いた。その声は震え、涙が頬を伝う。
「セシリア……あなたは私たちの仲間だった。その仲間意識に、私たちは何度も救われた。ありがとう……安らかに眠って……」
砂を掬い、セシリアの遺体の上に掛けながら、ヴィオラは呟いた。その声は震え、涙が頬を伝う。
「……セシリア……ありがとう。安らかに眠れ」
砂を掬い、セシリアの遺体の上に掛けながら、リュネットは呟いた。その声は震え、涙が頬を伝う。
「セシリア……お前は俺たちの希望だった。その希望に、俺たちは何度も救われた。ありがとう……安らかに眠れ……」
砂を掬い、セシリアの遺体の上に掛けながら、ヴェルナーは呟いた。その声は震え、涙が頬を伝う。
「セシリア……お前は俺たちの光だった。その光に、俺たちは何度も救われた。ありがとう……安らかに眠れ……」
砂を掬い、セシリアの遺体の上に掛けながら、ルーカスは呟いた。その声は震え、涙が頬を伝う。
「……セシリア……ありがとう。安らかに眠れ」
砂を掬い、セシリアの遺体の上に掛けながら、ユリウスは呟いた。その声は震え、涙が頬を伝う。
暫くして、セシリアの遺体が完全に地中に埋まると、そこに即席で用意した小さな石碑を立てた。
石碑には、彼女の名前が刻まれている。
そして埋葬地の周囲には、綺麗な野花が沢山咲いていた。
「セシリア……この花畑が、お前への手向けだ。お前はいつも花が好きだったな……。ここで、安らかに眠ってくれ……」
石碑を見ながらイグナーツは、セシリアに語り掛けるように呟く。彼の声は優しく、涙が頬を伝う。
切れ長の黒目がちな瞳が悲しみに揺れ、濃藍の羽織が風に揺れる。
「……黙祷」
皆を見渡してから、イグナーツは静かに告げた。彼を含めて全員が一斉に頭を垂れる。
静寂が花畑を包み込んだ。風が吹き、花が揺れる音だけが聞こえる。
黙祷を終えても、周囲の空気は張り詰めたものであり、誰も口を開かない。
埋葬という全ての工程を終えると、全員が塔へと帰還した。
塔へと帰還して、全員が寝室に戻ると、誰一人として何も手がつかない状況が続く。
仲間を一気に二人も無くしたという事実は余りにも大きく、全員が精神的なダメージを受けている。
静寂が支配する空間で聞こえるのは、互いの息遣いのみ。
室内の空気感としては重たく、雰囲気は最悪なものである。
誰一人として言葉を放つ事はなく、全員が項垂れている状態。
イグナーツは壁にもたれかかり、床を見つめている。
切れ長の黒目がちな瞳が虚ろに揺れ、濃藍の羽織が揺れた。
仲間たちは床に座り込み、全員が膝を抱えて瞳を虚ろに揺らしている。
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