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魔物に包囲された塔で半年間の籠城を命じられた狩人部隊、仲間たちは少しずつ壊れていき、救援隊が来た時には俺しか残っていなかった  作者: りつりん
第三章

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4話 轟く悲鳴と魔物に堕ちた狩人

「きゃああああああああああっ……!」


 しかし突然――病室からセシリアの物凄い悲鳴や物音や雄叫びが響き渡った。

 彼女の悲鳴が塔全体に響き渡る。


 爆睡していたイグナーツは、病室から響き渡る悲鳴と物音を聞いて、心臓が破裂するような感覚を覚えた。すぐさま彼は跳ね起き、即座に濃藍の羽織を纏い、身支度を済ませる。

 切れ長の黒目がちな瞳が鋭く光り、右耳の真鍮の耳飾りが揺れた。

 

 他の仲間たちも仮眠していたが、イグナーツと同様に悲鳴を聞いて飛び起きる。

 一部の者は先に起きて食事もしていたが、悲鳴を聞いて即座に動き出した。

 エリザベートは、白いシャツとズボンを纏い、聖銀の槍を握りしめる。


 白金の髪が揺れ、蒼い瞳が不安に揺れた。

 カタリナは、ミスリル糸と黒絹を組み合わせた魔術装束を纏い、魔術刻印杖を握りしめる。

 淡い薔薇金の髪が揺れ、大きなライラック色の瞳が不安に揺れた。


 ヴィオラは、深紅と墨黒の軽装甲を纏い、刃付き鞭を握りしめる。

 深い漆黒に紫を滲ませた長髪が揺れ、紅い瞳が不安に揺れた。

 リュネットは、ダークグレーと漆黒の高機動戦闘衣を纏い、双刀を握りしめる。


 漆黒に近い深藍色の髪が揺れ、細めの淡い銀青の瞳が不安に揺れた。

 ヴェルナーは、白と金を基調とした布鎧を纏い、黄金の大剣を握りしめる。

 長めの金髪が揺れ、切れ長の蒼い瞳が不安に揺れた。


 ルーカスは、鉄打ちの重コートを纏い、戦鎚を握りしめる。

 焦げ茶の短髪が揺れ、琥珀色の瞳が不安に揺れた。

 ユリウスは、黒を基調としたロングジャケットを纏い、レイピアを握りしめる。


 銀灰色の髪が揺れ、伏せがちな蒼灰色の瞳が不安に揺れた。

 イグナーツと仲間たちは病室へと走り出す。

 螺旋階段を駆け上がり、病室の前に到着した。


 イグナーツは蹴破るように、勢いよく扉を開け放ち、その中へと入る。

 すると病室の中では――魔物に肩を噛まれて寝込んでいたガロットが、完全なる魔物の姿へと変貌を遂げて、セシリアを食い殺していた。


 彼は二足歩行型の夜狼へと変貌している。

 身の丈約二メートル、黒灰色の体毛が逆立ち、赤く爛れた瞳が憎悪に燃えていた。

 両腕には鋭い鉤爪が生え、口からは涎と共に腐臭が漏れる。


 だが、その顔には何処となく、人間の頃のガロットの面影が微かに残されていた。

 漆黒の髪の名残、金茶色の瞳の名残が、僅かに見える。

 セシリアの遺体は半身が完全に裂けて、腹部は既に原型を留めていない。


 彼女の淡いミルクティーブラウンのゆるふわウェーブは血に染まり、まんまるな目は見開かれたまま、光を失っている。


 豊満な胸は引き裂かれ、肋骨が露出していた。

 内臓が飛び散り、床を赤く染めている。

 腹部は完全に抉られており、腸が床に散乱していた。


 生成色のロングコートワンピースは、血と肉片で汚れ、原型を留めていない。

 太腿は引き裂かれ、骨が露出している。


 絶命している事は調べずとも分かるぐらい悲惨な状態であった。

 病室内で起きた阿鼻叫喚な光景に、他の仲間たちは動揺と困惑と悲鳴の声を漏らす。


「な……なに……?」


 震える声でエリザベートが呟いた。白金の髪が揺れ、蒼い瞳が恐怖に揺れる。


「……嘘……ですよねぇ……?」


 震える声でカタリナが呟いた。淡い薔薇金の髪が揺れ、大きなライラック色の瞳が恐怖に揺れる。


「セシリア……!」


 ヴィオラが叫んだ。深い漆黒に紫を滲ませた長髪が揺れ、紅い瞳が涙で潤む。

 だが、即座にイグナーツが場を無理やり沈めた。


「全員、静まれ……!」


 彼の声が響き渡る。切れ長の黒目がちな瞳が鋭く光り、濃藍の羽織が揺れた。

 イグナーツは仲間を殺した元仲間のガロット――現在は魔物――を殺すべく、大剣を引き抜いて構える。


 仲間を捕食した元仲間のガロットを見て、これはもはや救えないものだと彼は瞬時に判断した。

 ガロットは、完全に魔物へと変貌しており、人間に戻る術はない。


「黒燭の牙の掟に従い、魔物の身へと堕ちたガロットを処刑する。他の者たちは祈りを捧げよ。死にゆく者への、せめてもの慈悲の為に。これは命令だ」


 イグナーツの声は冷徹で力強く、切れ長の黒目がちな瞳が決意に燃える。

 そして彼は他の仲間を室内から追い出した。

 仲間たちは涙を流しながら、室内から出てゆく。


 イグナーツは首飾り――黒燭の牙が発行する十字架――を空いている左手で触ると、それを口元に近づけてキスをした。


「天なる父よ、どうか見届けてほしい。今より私は、かつて背中を預けた同胞を討つ。……この罪、この罰、我が魂のすべてを以て生涯背負い続けよう。――せめて、安らかに眠れ。」


 神に対して彼は、仲間殺しの罪を静かに、だが力強い声で告げる。

 そして魔物と化したガロットが捕食行為を辞めて振り返ると、血まみれと肉片が付着する口を開きながら、圧倒的な狂気を見せた。


「グルルルル……ガァアアアアアッ!」


 彼の雄叫びが響き渡る。

 部屋の外では、イグナーツに言われた通りに、仲間たちが祈りを捧げていた。


「神よ、我らが仲間、ガロットとセシリアの魂を天国へ導きたまえ……」


 エリザベートが祈りの言葉を唱えた。白金の髪が揺れ、蒼い瞳が涙で潤む。


「神よ、彼らの魂を救いたまえ……」


 ヴェルナーが祈りの言葉を唱えた。長めの金髪が揺れ、切れ長の蒼い瞳が涙で潤む。

 だが、仲間の一人。カタリナがセシリアの死体を見て、激しい嘔吐を繰り返した。


「うっ……げぇ……!」


 彼女は床に膝をつき、胃の中のものを吐き出す。

 淡い薔薇金の髪が揺れ、大きなライラック色の瞳が涙で潤む。


 狩人として幾度の血生臭い光景を見てきたと言えども、仲間の死体というのは堪えるようだ。

 仲間たちの祈りの声は、次第に力強さが増していき、塔全体に響き渡る。

 それは家具や窓や扉が震えるほど。


「「「神よ、彼らの魂を救いたまえ……!」」」


 祈りの声が響き渡る。

 だが病室の中では、魔物と化したガロットが雄叫びを上げると、敵対の意志を見せた。


「グルルルル……ガァアアアアアッ!」


 イグナーツに狙いを定めて彼は、鋭利な爪を伸ばして突進を仕掛ける。

 反射的に大剣で、魔物の攻撃を受け流すと、そのままイグナーツは反撃を行った。


 刃が魔物の腕を掠め、血が飛び散る。

 ガロットが魔物に噛まれてから変異した事を十分に理解している事から、彼は噛まれないように注意しながら立ち回った。


 魔物と化したガロットは、通常の魔物よりも数段強化されており、異常な筋力と速度を発揮した。

 魔物は室内を縦横無尽に動き回り、室内に置かれている色々な家具や物を破壊していく。

 棚が倒れ、椅子が砕け、ベッドが引き裂かれる。


 部屋の外では、仲間たちの祈りを唱える声に、更に力強さが増す。

 その祈りの言葉を聞いて、魔物は一瞬だけ動きが鈍った。


「ぐ……う……」


 彼の動きが止まる。イグナーツは魔物が生んだ一瞬の隙を見逃すことなく攻めた。

 大剣を振るい、彼は一閃を与えると、魔物の足を切り落とす。


 刃が魔物の足を切り裂き、足が床に落ちる。

 血が飛び散り、床を赤く染めた。


「グアアアアアアッ……!」


 ガロットは悲鳴を上げた。

 足を切られた魔物は床を転がりながらも、腕で這って尚もイグナーツに襲い掛かる。


「グルルルル……ガァアアアアアッ!」


 鉤爪を振るい、ガロットは彼の首を狙う。

 イグナーツは魔物の攻撃を軽くあしらうと、魔力を大剣に宿して、上から刃を突き立てた。

 ガロットの心臓を刃が確実に貫く。

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