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魔物に包囲された塔で半年間の籠城を命じられた狩人部隊、仲間たちは少しずつ壊れていき、救援隊が来た時には俺しか残っていなかった  作者: りつりん
第一章

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2話 夜狼王《ナイトウルフ・ロード》

「俺は無駄を省いてるだけだ。お前みたいに遊んでるわけじゃない」


 冷たくヴェルナーが返した。


「おいおい、遊んでるわけじゃねぇよ。効率的に殺してるだけさ」


 煙草をくわえたまま笑い、ガロットは再び鎖剣を振るう。

 荷台の後方、カタリナ・ヴァルデンシュタインが魔術刻印杖(アレクトリウム)を構えていた。


 身長百五十八センチ、淡い薔薇金の髪を肩甲骨まで伸ばし、先端は自然な内巻き。

 前髪はふんわり重めに揃え、頬の横には長めの後れ毛が二筋流れている。


 大きなライラック色の瞳が無邪気に輝き、丸みを帯びた童顔気味のフェイスラインに、柔らかな微笑が浮かんでいた。


 ミスリル糸と黒絹を組み合わせた膝丈の魔術装束を纏い、スカートはプリーツ状でふんわり広がり、豊満な胸が揺れるたび視線を惹きつける。

 彼女は杖を振るい、氷結魔術を発動した。


「……ちょっと、凍っててね」


 カタリナの声は柔らかいが、その魔術は容赦ない。

 氷の槍が夜獣の群れを貫き、凍結させる。

 獣たちが動きを止め、次々と倒れていく。


「カタリナ、魔力は温存しろ。まだ先は長い」


 エリザベートが指示を出した。


「はぁい、了解です」


 カタリナは微笑んだまま答えたが、その目は冷たく敵を見据えている。

 荷台の中央、ユリウス・シュヴァルツが静かに、レイピア(ヴィスキュルム)を構えていた。


 身長百七十五センチ、銀灰色の髪を後頭部で軽くまとめたポニーテール。

 前髪は右目を隠すほどに長く、片目だけを覗かせている。


 白磁のような肌に整った中性的な顔立ち、伏せがちな蒼灰色の瞳が静かな吸引力を放つ。

 黒を基調としたロングジャケットに銀糸の刺繍が施され、胸元には細い革紐の編み込みがある。


 彼は無言のまま、迫る夜獣の急所を正確に突き刺していく。

 一撃、また一撃。無駄のない動きで、獣たちを次々と仕留めていく。


「ユリウス、右側が手薄だ」


 エリザベートが指示を出すと、ユリウスは無言で頷き、右側へと移動した。

 荷台の端、リュネット・ノワールが双刀(霧刃・左/黒炎・右)を構える。


 身長百六十七センチ、漆黒に近い深藍色の髪を肩よりやや下まで伸ばしたストレート。

 前髪は斜めに切り揃え、片目を隠すように流している。


 細めの淡い銀青の瞳が冷たく光り、無表情の奥に燃える激情を秘めていた。

 ダークグレーと漆黒の高機動戦闘衣を纏い、腿までのロングコート型の上衣は両脇が裂けており、背中と腰には双刀の鞘が固定されている。


 彼女は無言のまま、迫る夜獣を斬り裂いていく。

 霧刃が霊気を纏い、黒炎が爆熱を放つ。

 獣たちが次々と倒れていく。


「……うるさい」


 リュネットが小さく呟いた。

 夜獣たちの咆哮が耳障りだったのだろう。

 彼女は再び刃を振るい、獣の喉を切り裂いた。


 荷台の最後尾、セシリア・フィオーレが、杖剣(メルティ=ガーデン)を構える。

 身長百五十八センチ、淡いミルクティーブラウンのゆるふわウェーブが肩甲骨あたりまで伸び、無造作にまとめたツインお団子からふわりと毛先がほどけていた。


 まんまるな目に、ほんのりピンクがかった頬。

 タレ目気味の金色の瞳がいつもゆったりとした光を湛え、口元には柔らかな微笑が絶えない。


 生成色のロングコートワンピースを纏い、胸元と裾には淡い藤色の刺繍があしらわれている。

 豊満な胸が揺れるたび、視線を惹きつけた。

 彼女は杖剣を振るい、回復魔法と攻撃魔法を交互に発動する。


「みんな、怪我してない? もし痛いところがあったら言ってねぇ」


 セシリアの声は優しく柔らかいが、その手は迷いなく敵を貫いていた。


「セシリア、後で頼む! 今は攻撃に集中しろ!」


 イグナーツが叫んだ。


「はぁい、わかりましたぁ」


 セシリアは微笑んだまま、杖剣の先端から刃を展開し、迫る夜獣を斬り裂く。

 馬車は激しく揺れ、車輪が軋む音が絶え間なく響く。


 四頭の馬は必死に駆け、泡を吹きながらも速度を落とさない。

 だが、夜獣たちの追撃もまた、止まらなかった。


「クソ……まだ追ってくるのかよ!」


 ルーカスが苛立ちを露わにした。


「当然だ。奴らは血肉に飢えている。諦めるわけがない」


 冷静にガロットが答えた。


「ガロット、お前は冷静すぎるんだよ」

「冷静じゃなきゃ死ぬだろうが」


 二人のやり取りを聞きながら、イグナーツは前方を睨む。

 視界の先に、僅かに地形が開けた場所が見える。

 あそこを抜ければ、渓谷だ。


「全員、掴まれ! これから急カーブだ!」


 イグナーツが叫んだ瞬間、馬車が激しく右に傾く。

 荷台の全員が体勢を崩し、必死に手すりに掴まる。


 ヴィオラの鞭が宙を舞い、カタリナの杖が揺れた。

 リュネットの双刀が鞘に収まり、セシリアの杖剣が地面を突く。


「ちょ、ちょっと! もうちょっと優しく曲がってよ!」


 カタリナが叫んだが、イグナーツは無視して手綱を引いた。

 馬車が再び直進し、速度を上げる。


 後方から、夜獣たちの咆哮が響く。

 まだ追ってくる。まだ、諦めない。


「くそ……しつこい……!」


 イグナーツは歯を食いしばり、手綱を強く握った。

 左手の数珠が揺れ、死んだ隊員たちの名が脳裏をよぎる。


(――ここで死ぬわけにはいかない。まだ、やるべきことがある)


 彼の瞳が鋭く光り、獣の血が体内で滾る。

 だが、まだ使うわけにはいかない。

 まだ、その時ではない。


「全員、耐えろ! あと少しだ!」


 イグナーツの声が、闇夜に響く。

 そして馬車が前方の開けた場所へと突入した瞬間、車輪が泥濘にはまった。


 鉄製の車輪が深く沈み込み、四頭の馬が悲鳴を上げる。

 速度が急激に落ち、馬車全体が激しく揺れた。

 荷台の全員が体勢を崩し、手すりに必死に掴まる。


「クソ……泥か!」


 イグナーツが舌打ちした。

 手綱を強く引き、馬に鞭を入れる。

 だが、泥濘は深く、車輪は容易に抜け出せない。


 馬たちは必死に脚を動かすが、泥が足を取り、前進は遅々として進まない。

 その瞬間、後方から何かが飛来した。


 緑色に発光する液体――腐食液である。

 それは弧を描き、馬車の後輪に着弾した。


 鉄板が激しく音を立て、煙が上がる。

 腐食液は鉄を溶かし、車輪の表面を焼いていく。

 金属が溶ける臭いが鼻を突く。


「腐食液だと!?」


 驚愕の声をエリザベートが上げた。彼女の蒼い瞳が鋭く後方を睨む。

 白金の髪が風に煽られ、深紅のロングコートの裾が激しく揺れる。

 豊かな胸が呼吸と共に上下し、コルセット型の革鎧が食い込む。


「まずい……あれは……」


 ガロットが呟いた。

 金茶色の瞳が細められ、傷だらけの頬に薄い笑みが浮かぶ。

 だが、その笑みには警戒の色が滲んでいた。


 彼は深墨色のロングコートの裾を翻し、黒蛇の鎖剣を構え直す。

 夜獣の群れの中に、一際大きな影が見えた。


 身の丈三メートルはあろうかという巨体。

 二足歩行型の狼だが、その体躯は他の夜狼とは明らかに異なる。


 全身を覆う黒灰色の体毛は逆立ち、赤く爛れた瞳が知性の光を宿していた。

 両腕の鉤爪は刃のように研ぎ澄まされ、口からは緑色の腐食液が滴り落ちている。


 額には角のような突起が生え、背中には棘が並ぶ。

 指揮官種――|である。

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