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魔物に包囲された塔で半年間の籠城を命じられた狩人部隊、仲間たちは少しずつ壊れていき、救援隊が来た時には俺しか残っていなかった  作者: りつりん
第一章

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10話 古代魔導師の書記

「……了解」


 双刀を握りしめ、リュネットは頷く。


「えへへ……みんなで探索しようねぇ」


 杖剣を握りしめ、セシリアは微笑んだ。


「まあ、探索するしかねぇな」


 黒蛇の鎖剣を握りしめ、ガロットは薄く笑う。

 深墨色のロングコートが裂け、背中から腰にかけて複数のホルスターが揺れる。


「了解した」

 

 黄金の大剣を握りしめ、ヴェルナーは頷いた。

 白と金を基調とした布鎧が裂け、銀縁のロングマントが焼け焦げている。


「わかった。やるしかねぇな」


 ルーカスは戦鎚を握りしめ、頷いた。

 鉄打ちの重コートが裂け、金属のプレートアーマーが砕けている。


「……了解」


 レイピアを握りしめ、ユリウスは頷いた。

 黒を基調としたロングジャケットが裂け、胸元の革紐の編み込みが完全に解けている。


 イグナーツは全員を引き連れ、塔の内部を探索し始めた。

 塔の内部は円筒形で、直径約十メートル。


 壁は石造りで、表面は苔と黴に覆われている。

 床は石畳で、至るところにひび割れがあり、石が欠けていた。


 天井は高く、約五メートルほどあり、中央には螺旋階段が設置されている。

 階段は木製で、手すりは朽ち、段板は所々欠けていた。


 イグナーツは壁を手で触れながら、慎重に歩く。

 壁は湿気を帯びており、冷たい。


「この塔……かなり古いな……」


 彼が呟いた。その瞬間、エリザベートが何かを発見した。


「イグナーツ、こっちを見て」


 エリザベートが指差す先には、壁の一部が不自然にへこんでいる。

 イグナーツが、そのへこみを押すと、壁が音を立てて動き始めた。


 隠し扉である。

 壁の一部が横にスライドし、その奥に下へと続く石段が現れた。

 地下へと通ずる謎の隠し通路である。


「地下……?」


 イグナーツが呟いた。

 隠し通路の脇には、古びたランタンが置かれている。


 錆びついた鉄製のランタンで、内部には蝋燭が残っていた。

 彼はランタンを手に取り、短銃(ルーンナイル)の火打石で火を点ける。

 ランタンが淡く光り、通路を照らす。


「全員、ついてこい。慎重に進むぞ」


 イグナーツが言い、ランタンを掲げて地下へと足を進める。

 エリザベートが続き、カタリナ、ヴィオラ、リュネット、セシリアが続く。


 ガロット、ヴェルナー、ルーカス、ユリウスが最後に続いた。

 石段は狭く、急である。

 一段一段が不安定で、足を滑らせそうになる。


 壁は湿気を帯びており、苔が生えていた。

 天井は低く、頭上すれすれである。


 イグナーツはランタンを掲げながら、慎重に石段を下りていく。

 ランタンの光が揺れ、影が壁に映る。


「この地下……一体何があるんだ……」


 彼が呟いた。

 石段を下りていくにつれ、空気が冷たくなり、湿気が増していく。

 壁からは水が滲み出し、床は濡れている。


「なんだ……この地下……」


 再びイグナーツが呟いた。

 一種の緊張感が、全員を包んでいる。


 そして石段を下りきると、地下室に辿り着いた。

 地下室は広く、幅約十五メートル、奥行き約二十メートルほどある。


 天井は低く、約二メートル程度で、圧迫感があった。

 壁は石造りで、表面は苔と黴に覆われ、湿気が凄まじい。


 床は石畳だが、至るところに水溜まりがあり、埃とカビが積もっている。

 空気は冷たく重く、呼吸するたび肺が冷えた。


 室内には、古びた木製の棚が所狭しと並んでいる。

 棚には様々な物が置かれている――錆びついた武器、朽ちた木箱、破れた布、欠けた陶器、そして無数の本。


 本棚には埃が厚く積もり、蜘蛛の巣が張っている。物置部屋のような場所である。

 イグナーツはランタンを掲げ、室内を照らした。


「ここは……物置か……」


 彼が呟いた。


「こんな場所が……塔の地下に……」


 室内を見回し、エリザベートが驚愕の声を上げた。

 白金の髪がランタンの光に照らされ、蒼い瞳が驚きに揺れる。

 深紅のロングコートが重く、豊かな胸が上下した。


「うわぁ……すごい埃ぃ……カビもすごいですねぇ……」


 埃を手で払いながら、カタリナが棚を見つめる。

 淡い薔薇金の髪が埃に汚れ、大きなライラック色の瞳が驚きに揺れた。


「うっ……カビ臭い……こんなところ、長くいたくないわね……」


 鼻を押さえながら、ヴィオラが顔を顰める。


「……古い。かなり古い」


 無表情でリュネットが棚を見つめた。


「えへへ……でも、何か役に立つものがあるかもしれませんねぇ」


 微笑みながら、セシリアが棚に近づく。


「まあ、探してみるか」


 ガロットが棚を漁り始めた。


「何かあるかもしれない。慎重に探そう」


 冷静にヴェルナーが棚を見つめる。


「おい、この棚、結構頑丈だぞ」


 棚を叩きながらルーカスが呟く。


「……何かある」


 無表情でユリウスが棚を見つめた。

 全員が自由に棚を物色し始める。


 イグナーツはランタンを掲げながら、室内を歩き回った。

 その視線は、一つの本棚に惹かれる。


 その本棚は、他の棚よりも整っており、埃はあるが、本が丁寧に並べられていた。

 彼は何かに導かれるように、その本棚に近づいてゆく。


「この本棚……なんだ……」


 イグナーツが呟く。

 彼は本棚の中から、一冊の本を取り出した。


 その本は、古びた革装丁で、表紙には文字が刻まれているが、摩耗して読めない。

 本の背には金糸で模様が刺繍されており、かつては高級品だったことが窺える。


 だが今は埃とカビに覆われ、ページは黄ばんでいた。

 イグナーツは本を開き、中身を読み始める。


 ページは古く、インクは褪せているが、文字はまだ読めた。

 彼は目を細め、文字を追っていく。

 そこには、様々なことが書かれていた。


『黒燭の塔 記録書』


 ――この塔は、約三百年前、魔導師エルヴィン・アークライトによって建てられた。

 目的は、夜間に大量発生する夜獣たちを監視し、周辺地域への侵入を防ぐためである。


 この地域は、かつて夜獣の巣窟と呼ばれ、夜になると無数の夜獣たちが森から湧き出し、人々を襲った。

 エルヴィンは、この地に塔を建て、夜獣たちの動きを監視し、必要に応じて討伐を行った。


 塔の名は黒燭の塔――夜を照らす蝋燭のように、闇を監視する塔である。

 塔の最上部には、巨大な灯火が設置されている。


 この灯火は、魔力で燃え続け、周囲を明るく照らすことができる。

 夜獣たちは光を嫌うため、灯火を点ければ、夜獣たちの侵入を防ぐことができる。


 だが、灯火を点けるには大量の魔力が必要である。

 エルヴィンは、塔の地下に魔力貯蔵庫を設置し、魔力を蓄えた。


 夜獣たちは、夜間にのみ活動する。日中は森の奥深くに潜み、夜になると大量に湧き出す。

 夜獣たちの種類は様々であり、二足歩行型の夜狼、四足歩行の血餓狼、そして指揮官種の夜狼王などが存在する。


 本には、夜獣たちの絵が描かれていた。

 イグナーツが見たものと同じ――黒灰色の体毛、赤く爛れた瞳、鋭い鉤爪と牙。


 禍々しく、人の血肉に飢えた姿。

 この塔で生き延びるには、以下のことを守らなければならない。


 一、食料の確保。

 塔の地下には、保存食料が保管されている。

 木箱の中に、乾燥肉、硬いパン、塩漬けの野菜、そして水が入っている。

 これらは長期保存可能であり、慎重に使えば数ヶ月は持つ。

 

 また、塔の周辺には狩猟可能な動物が生息している。

 日中であれば、森に出て狩りを行うことも可能である。

 ただし、夜間は絶対に外に出てはならない。夜獣たちが襲ってくる。


 二、武器と弾薬の確保。

 塔の二階には、武器庫がある。

 そこには、剣、槍、弓、弾薬、そして魔導具が保管されている。

 これらは、夜獣たちとの戦闘に使用することができる。


 三、魔力の確保。

 塔の地下には、魔力貯蔵庫がある。

 そこには、魔力結晶が保管されている。

 魔術師は、この魔力結晶を使って魔力を回復することができる。


 四、灯火の管理。

 塔の最上部には、巨大な灯火がある。

 この灯火を点けることで、夜獣たちの侵入を防ぐことができる。

 だが、灯火を点けるには大量の魔力が必要である。

 慎重に管理しなければならない。


 最後に、この記録を読む者へ。

 もし貴方がこの塔に辿り着いたならば、貴方は既に夜獣たちに追われているだろう。

 この塔は、貴方を守るための最後の砦である。

 

 この記録に従い、生き延びよ。

 そして、いつか、この地を脱出せよ。

 ――魔導師 エルヴィン・アークライト。

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