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第6話 第2騎士団

 緊急会議が行われていることもつゆ知らず、エリスとジュリアスは試験会場を後にした。


「……疲れましたわね、お姉様。試験官の質があまりに低すぎて、手加減が難しかったですわ」


 ジュリアスが荷物を抱え、隣でけろりとした顔で歩く。


「本当にね。でも、ここに来るのもこれで最初で最後ですもの。もう二度とこんな退屈な場所に来たくないわ」


「でも、お姉様、このままだと、この学術院どころかこの国がどうなることか」


「ええ、それは分かってるわ。存続はさせるわ。だけどねぇ、クスッ♪……見せしめは大事よ?」


 ジュリアスはため息をつき、二人の足取りは優雅に馬車乗り場へと向かった。


(まだ、物語でいえば序幕……お姉様と私の舞台演出はこれからですわ)


 確定した未来を想像し、歓びに震えるジュリアスだったが、更なる驚きが待っていた。


 既に待機していたカレンとクロエに荷物を預け、馬車に乗り込む。


 だが、そこでカレンの口から語られたのは、想像を絶する『中継報告』だった。


「エリスお嬢様、ジュリアスお嬢様。……お二人の雄姿は、既にサリウス領、そして神聖界のビャク様のもとへ、リアルタイム中継済みです」


「「……はっ?」」


 エリスとジュリアスの声が重なった。


 どうしてもお嬢様たちの勇姿が見たい者たちが強力しあい、独自開発した映像転送魔道具により、セイドとその他試験官が吐いた暴言の数々、そして彼が二人に叩きのめされる様子は、サリウス領と全眷属、そしてエンケラド辺境伯家へとリアルタイムで配信されていたのだ。


「ミモラ様を筆頭に、エンケラド辺境伯家とサリウス伯爵軍は既に武装を完了。舞台は整ってます。しかし、ビャク様も『我が愛しき主を侮辱した報いを受けさせる』と息巻いており、王城を襲撃する寸前で、台本が早くも崩れかけました」


「……まぁ、大丈夫よ。ここまでは脚本通りね。おばあちゃまたち、やる気満々じゃないの……でも好都合ね」


 エリスが未来を見据えた目を澱ませ、ジュリアスは対照的に、目を輝かせていた。


「あら、お姉様。それなら話は早いですわ。序幕のまま、この腐った首都をお母様たちの手で更地にしていただくのも一興かと……来ましたわね、お姉様」


「ええ、そのようね」


 その時だった。


――ガツン!!


 激しい衝撃と共に、馬車が急停車した。


「サリウス伯爵家の馬車よ! 直ちに止まれ! 止まらねば反逆とみなし攻撃する!」


 外から響く怒号。


 カレンは困り果てたふりをし、クロエは新しい記録結晶を準備して御者に手渡す準備に入り、淡々と『証拠保存』の準備を進める。


「カレンは馬車と二人を守って。クロエと御者は記録を。……ジュリアス、行きましょうか」


「はい、お姉様。お行儀の悪いワンちゃんたちに、お仕置きをして差し上げましょう」


 エリスが馬車の扉を開け、予定調和の如く外へ出る。そこには、馬上から見下ろす百人の騎士たちが、殺気を剥き出しにして馬車を包囲していた。


「貴様が、エリスディーテ・サリウスとジュリアス・サリウスか!」


 エリスとジュリアスはにこりと微笑み、優雅にカーテシーを決めた。


「サリウス伯爵家が長女、エリスディーテ。こちらは妹のジュリアスですわ。お見知りおきを。……さて、騎士団の皆様。先ほど腐った試験官を掃除したばかりなのに、またお掃除が必要なのかしら?」


「貴様……! セイド・モビット卿への殺人未遂容疑だ! 騎士団詰所まで来てもらおう!」


「嫌ですわ。あれは正当な試験の中での事故。逮捕状も連行状もない、ましてや未成年の私達を連行するための同意状もなし……。そんな悪賊のような真似、騎士団として恥ずかしくありませんの?」


「貴様ぁ! 騎士団の命令だと言っているだろうが!」


「あら、貴方は騎士団を代表する立場の方? 百人も連れ立って、8歳の子供二人を囲むなんて……共和国の騎士団は、いつからこれほどまでに臆病な集団に成り下がったのかしら?」


 エリスとジュリアスは扇を広げ、クスクスと笑った。


 その挑発に、騎士たちの顔が屈辱で赤く染まる。


 そこへ、リーダー格の男が前に出た。


「私は第2騎士団長、アレクレス・バイパス。貴様の連行は《《共和国の意志》》で決定事項である! 大人しく従え!」


「決定事項、ねぇ。言質は取ったわよ、アレクレス団長」


 エリスの声が、一段と冷たく沈む。その瞬間、彼女から放たれた目に見えぬ『威圧』が空気を震わせ、遠巻きに見ていた住民たちは呼吸を忘れ、街全体が墓場のような静寂に包まれた。


「8歳の子供相手に、第2騎士団総出で『お礼参り』ですか。首都の皆様、ご覧になりまして? これが共和国を守るはずの騎士団の正体ですわよ!」


「キャァァァ、怖いですわぁ、お姉様〜♪」


「ッ!? き、き、貴様ぁぁ!! 国家反逆罪だ! 総員抜剣しろ!! 抵抗する場合は処断しろ!」


――ジャキィン!!


 百振りの剣が抜かれ、夕闇に鈍い光を放つ。


 その時、エリスの隣に立つジュリアスの影が、不自然なほど長く、濃く伸びた。


「お姉様、もう我慢する必要はありませんわね。……この方たち、お掃除しても?」


「ええ、許可するわ。ただし、一人も逃さないで。……過ちをその体に刻み込んであげなさい。それに分かってるでしょ?楽しみは最後まで取って置くものよ」


「ええ、分かってるわ。お姉様」


 二人は微笑み合い、二人同時にが扇をパチンとたたみ、掌で鳴らした。


 同時に、ジュリアスの手首から不可視の魔力の鎖が溢れ出し、地を這う蛇のように騎乗している騎士たちの足元へと広がっていく。


「ふふ、アレクレス団長。貴方のその『決定』、後悔させて差し上げますわ。サリウス伯爵家を怒らせた代償は……この国一つ分で足りるかしら?」


 おもむろに、振り返りクロエと御者へ語りかけた。


「ああそれと、クロエと御者のおじ様。これまでのアレクレス団長たちの言動は記録結晶に保存できまして?」


「「はい、エリスお嬢様! バッチリです!」」


「ありがと。カレン、ちょうど『台本』の通りに王城で待機しているはずのザラス法務卿へ、この記録結晶の複製と、おばあちゃまからの書状を届けてきて頂戴。クロエは原本を収納しておいてね」


「御意」


 カレンが短く応じると、神級魔法である『転移』の術式が発動した。光が収まった時には、既に彼女の姿はない。


「て、転移だと!? 神級魔法をあんな小さな子供が……!?」


 驚愕に固まるアレクレス騎士団長。


「サリウス伯爵の手紙などいつの間に準備した! 偽の書状は犯罪だぞ!」


「いいえ、あちらの侍女と御者が持っているのが映像転送の魔道具らしいですわ。今も領主であるミモラ伯爵様とお母様が観ていらっしゃるから、不測の事態への書状くらい、転送機能ですぐに届きますわ」


 その瞬間、再び空間が揺らぎ、カレンがエリスの前に片膝をついて現れた。


「エリスお嬢様、只今戻りました。ザラス法務卿に書状と記録を直接手渡しました。こちらが、内容を確認した法務卿の受取状とサインです」


 エリスは受取状を高く掲げ、魔力で上空に大きく投影した。そこには確かに共和国の法務卿の印が刻まれている。


「ありがとう、カレン。さあ、アレクレス団長。法務卿が事態を把握した今、貴方たちはただの『暴徒』ですわ。……そろそろ、悪賊狩りを始めようかしら。入学試験のストレス発散も兼ねて、もうひと暴れしましょうか。ジュリアス」


「はい! お姉様!」


 騎士団に戦慄が走る。


 街路を埋め尽くす見物人たちが息を呑む中、8歳の少女二人と、百人の重装騎士。ミレニアム共和国の終わりの始まり、舞台の幕がいよいよ開く――。

 エリスよ!後書きが中々書けなくてごめんなさいね!

 作者が、阿呆だから、勢いで書いた『「冤罪で殺された私」は復讐を誓い何度でも返り咲いて咲き誇りますわ』の続きを書くため寝食と私達の物語を忘れて筆耕してるもんだから、神罰を与えといたわ。

 

 こうして私達の物語を読んでくれて本当にありがとう。

 これから、もっと盛り上がって来るから応援もお願いね(*^^*)⭐

 皆が楽しんで読んでもらえるように、私達二人も頑張るわね!

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