幕間 エリスと愉快な仲間たち
神聖界──。
そこは至高の神気が満ちる場所だが、最近は『最強の双子』とその『守護者』による騒がしい笑い声が絶えなかった。
「わっはっは! ビャクよ、妾の歩みについてこれぬとは、神獣の名が泣くぞ!」
レッドブロンド髪を翻し、短い足で草原を駆けるエリス。
その後ろを、白銀の毛並みを誇る神獣ビャクが、過保護な親戚のおばちゃんのような目で見守っている。
「主よ、あまりはしゃいじゃだめよ。……うん? また良からぬことを考えてますね?」
「失礼な! 妾は、地上の『魔の森』とやらを、もっと住みやすくしてやろうと思うたのじゃ。あそこは暗くてジメジメしておるからのぅ!」
エリスの隣で、双子の片割れ、ジュリアスが『名案ね!』とばかりに手を叩く。
「そうね、エリスお姉様! 私が光を注いで、お姉様が緑を育てれば、あそこはきっと素敵な楽園になるわ!」
「うむ! 皆の者、妾たちの『創世』を手伝うがよいわ!」
主たちの号令に、眷属たちは「またか……」と思いつつも、抗えない。
フェンリルのビャク、九尾のクロエ、猫又のシヴァ、白龍のミロク、麒麟のディア、不死鳥のファル。最強の六人が、エリスとジュリアスの無邪気な神力に自分たちの力を上乗せした。
「「えいっ!!」」
そこは、本来なら強力な魔物が潜む、人類未踏の危険地帯。
しかし今、その森は物理法則を完全に無視した『超・生命爆発』に見舞われていた。
「な、なんだ!? 毒キノコが……光り輝きながら巨大化して、踊りだしたぞ!?」
森の境界で警戒していた冒険者たちは腰を抜かした。
エリスの闇の神力(生命活性)とジュリアスの光が混ざり合った結果、ただのシダ植物が大木の高さまで急成長し、凶暴な魔物たちは『あまりの多幸感』に、牙を抜いて寝転がっている。
さらに、森の中央には、エリスの無意識の願望か、巨大な『キャットタワー型の神殿』が、樹木を編み込んで勝手に形成されてしまった。
「……これ、魔の森っていうか、『狂ったお花畑』になってないか?」
次元の窓から地上を覗き、ビャクたちは揃って冷や汗を流した。
「……主よ。あの巨大化したウサギが、街に向かって跳ねていったぞ」
「クロエ……。わたくしたち、またやってしまいましたわね……」
シヴァは猫耳を完全に折り曲げて震える。
そこへ──。
「……あら、随分とサリウス領の『魔の森』を賑やかにしてくれたわね?」
氷点下の微笑みを湛えたテティアが、腕を組んで立っていた。
「「……あ、お母様」」
最強の双子が、同時に直立不動になる。ビャクもクロエも、その場に速攻で正座した。
「エリス、ジュリアス。お母さん、魔の森を『自然のままに』守りなさいって言わなかったかしら?」
「だっ、だって……お母様! 妾は、森の者たちが暗くて可哀想だと思うたのじゃ……!」
「私も、エリスお姉様を助けてあげたかったの……!」
テティアは二人を優しく引き寄せると、その頬をムニィーッ!と挟んで、左右に引っ張った。
「「ひゃ、ひゃわわわっ!」」
「『可哀想』と『余計なお世話』は違うの。ビャク、クロエ! あなたたちもよ。子供たちが生態系を破壊しようとしたら、全力で止めなさい!」
「「「「「申し訳ございません、聖母様ぁぁっ!!」」」」」
その日の神聖界には、テティアの『愛の雷』が鳴り響いた。
最強の神獣たちが一列に並んで正座し、エリスとジュリアスはテティアの膝の上で、メソメソと泣きながら『ほどほどの緑』について学ぶことになった。
説教が終わった後、テティアは神獣たちを連れて地上へ降り、踊るキノコを鎮め、巨大化したウサギを元のサイズに戻す『剪定作業』に追われた。
ビャクの背中で、テティアの後姿を見つめるエリス。
「……お母様は、厳しいのぅ」
「フン、主がやりすぎるからよ。だけど……」
ビャクはチラリと、かつてより少しだけ『明るくなった』魔の森を見下ろした。
「あの森の魔物たちも、主の無邪気な力に、少しだけ救われたのかもしれないわね」
「わっはっは! さすがは妾じゃな!」
「こら、エリス! 反省しなさい!」
テティアの鋭い声が響き、エリスは慌ててビャクの毛並みに隠れた。
最強の母と、最強の双子。彼らの創世は、今日も『魔の森』を少しだけ賑やかに変えていく。
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