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第12話 天使の断罪

 その日、神聖界は『暴力的な神気』に包まれていた。中心に立つエリスの背後では、八枚の漆黒の翼と白銀の翼が苛立たしげに羽ばたき、周囲の空間をビキビキとひび割れさせている。


「よし!力の調整には実戦が一番じゃ!皆の者!妾に仇なす憎き天界の天使どもを、根こそぎ『殲滅』しに行くのじゃ!」


 エリスは極度の欲求不満に陥っていた。


 大好きな母テティアから引き離され、慣れない神聖界に閉じ込められたストレス。うまく昇華できない自身の力に苛つきが募っていた。


 それが、かつて自分を裏切った天界の天使たちへの八つ当たりへと変換されるのに時間はかからなかった。


「「「……殲滅」」」


 クロエと神獣たちの唱和が、戦慄と共に響き渡る。


 だが、瞳を冷たく光らせたビャクが、淡々と口を挟んだ。


「お嬢様。天界もまた世界の機構の一部です。すべてを殲滅しては世界のバランスが崩れ、ひいてはテティア様の愛するこの世界に歪みが生じます。リレトス聖教法国の時の罪業カルマによって選別されてはいかがでしょうか」


 一瞬、エリスの眉間に深い皺が寄る。神獣たちは『お嬢様の逆鱗に触れた!』と体を強張らせたが、次の瞬間、主の『考えなし』が炸裂した。


「そうじゃのう!細かいことは天界へ行ってから考えるのじゃ!皆の者、突撃じゃ!『境界跳躍術式』発動じゃ!」


 一方、リレトス聖教法国がエリスの手で事実上崩壊して以来、天使たちはいつ自分たちに矛先が向くかと怯え続けていたのだ。そう、天界は文字通り『お通夜』状態だった。


 ──そしてついに、真の神の審判…その瞬間が訪れる。


 晴れ渡っていた天界の空が、一瞬で深淵のような黒と、爆ぜるような金色の光に引き裂かれ、天界全体を絶望の重圧が満たした。


「……き、来た。しゅ、終末の主が……」


 熾天使ルシフェルを筆頭に、全ての天使たちは即座にエリスの前へ転送され、強制的に地に跪かされた。これまで、感じたことがない圧倒的な神威になす術がなかった。


 天使の前に権限した真の神…過去・現在・未来のすべてを見通すエリスの瞳の前では、どんな言い訳も通用しない。


「……貴様が天界を総べる者か。面を上げよ」


「は、はい……。創造主様……」


「なぜ妾がここへ来たか、理解しておるな?貴様ら天使を断罪に来たのじゃ」


 エリスの背後で、神獣たちが一斉に威圧を放つ。


 天界の境界にひびが入り、暴風が吹き荒れる。天使たちにとっては世界の終わりそのものだった。


「ど、どうかご慈悲を!善良な天使たちに、どうか贖罪の機会を……!」


 ルシフェルは必死に哀願した。自分たちは人間に心を教えた自負があるし、聖教会の件で負い目もある。ならば罰もまた、罪業カルマに応じて下されるべきだと。


「贖罪のぅ…相分かった。妾を不快にし、我が愛し子を食い物にして魂まで消滅させた報いじゃ。まず一つ目の裁きじゃ……『罪業断罪カルマだんざい術式・改』発動じゃ!」


 術式が発動した瞬間、天界に悲鳴が響き渡った。


──グッ!? ギャァァアアアッ……


──キャァァアアアッ…あ…っ…ぃ…


──イャァァァアア───────!


 罪業カルマの深い天使たちが、内側から吹き出す白銀の炎に焼かれる。自分たちより弱い人間たちを利用し、与えた苦痛がそのまま自分に倍になって跳ね返る天使限定の特別術式だ。


 智天使オフィリア達が炎に包まれるが、その体は焼け爛れることはない。死ぬことすら許されず、他者を傷つけ続けた期間、苦しみ抜くことになるのだ。


「最低でも五百年はこの罰を受け続けるがよい」


 エリスの声が、燃え盛る天使の羽魂に響く。痛みと苦痛、そして殺された者たちの怨念が炎を一層燃え上がらせた。そんな中、一部の武闘派天使が暴挙に出た。


「ふざけるな!仲間を見殺しにしては天使が廃る!一矢報いてやる!何が創造神だ!我らも天界を預かる神の末裔だ!力に差はそれほどない!かかれぇぇええ!!」


 力に溺れ、その力量の差も読めない、力天使バルカス率いる五十の軍勢が突撃する。エリスは鼻で笑った。


「力量差も分からぬのか…馬鹿な奴らじゃのぉ……。クロエ、少し相手をしてやるのじゃ」


 クロエが竜巻のごとく跳躍し、九本の尾を一閃させる。


───ドゥゴォォォォオオン!!


 それだけで二十の天使が吹き飛んだ。圧倒的な蹂躙。絶望が天界を染め上げ、バルカスを除いてすべてが倒れ伏した。


「なっ!?い、一瞬……だ…と…」


「力天使バルカス。残るは貴様だけだ。主の足元にも及ばぬ貴様らが、女神エリス様に挑もうなどとおこがましいわ!」


「くっ……!」


「もうよい、クロエ。下がれ」


 エリスが制止し、冷徹な瞳で見下ろした。


「よく分かったじゃろ。妾の眷属一人にすら歯が立たんということが。大人しく、そこで他者を苦しめ抜いた己のカルマを思い知るのじゃ」


 阿鼻叫喚の地獄絵図が広がる中、カルマの浅い天使たちは一瞬炙られる程度で済んでいた。ルシフェルは無傷だったが、同胞の姿に心を引き裂かれ、内なる権能が揺れ動く。


「熾天使ルシフェルよ。見て見ぬふりをした結果がこれじゃ。それを受け止めよ。それがお主の贖罪じゃ。……次に、二つ目の裁きじゃ」


 エリスの声が冷たく響く。


「天界とは、地上界を導き、この星を健やかな揺り籠にする定め。それを、神へ至る贄として、妾の写し身たる愛し子たちの魂を千名余りも弄んだ罪は重い。魂を喰い漁り、輪廻の輪から外した者は、魂一つにつき千年の炎獄牢へ落とす。永劫の苦しみの中で懺悔せよ」


───『炎獄界創造』


 新たな異界が創造され、世界に激震が走った、冥界にも影響を及ぼし、輪廻の輪に「罪業」を贖罪する機構が新たに生み出されたのだ。


───『炎獄牢門開封』!


 その、新たな異界を繋ぐ巨大な漆黒の門が隆起し、罪深き天使たちは絶叫しながら次々と吸い込まれ消えていった。


──イャァァァアア!?許して──!


──は、離せぇぇええ!?ぐぅぁぁあ!?



 格の違いを見せつけられ、ルシフェルは項垂れる。揺れ動く権能が震え出す…。


「……ルシフェル。そなた、なぜ人間に悪意の種を植え付けた?」


「な、何のことでしょうか……」


「惚けるだけ無駄じゃ。妾にはすべて見通せる」


 ルシフェルの中で、憎しみの心に触れた震える権能は、溢れ出すように瞬間的に爆ぜ憎しみと憎悪を増幅させた…。


「クッ……。黙れ!!創造神がなんだ!私こそが至高の存在でなければいけないのに!人間?あんな貴様の写し身、勝手に落ちればいいわ!!全てを『絶望』に塗り替えてやる!」


 豹変したルシフェルに天使たちが驚愕する中、溢れ出す権能の力に完全に呑まれ、善性が『絶望』の色へと反転し、ルシフェルから禍々しい邪気が溢れ出した。


「この世界は私の物だ!貴様はいらない!」


「……無性に腹が立ってきた。すごいデジャヴじゃ。前にジュリアスに言われたような記憶が……」


───この世界に復讐ダァァァアア!!


 ルシフェルの純白の翼が漆黒へと染まっていく。ルシフェルから放たれた邪気が陽炎のように揺らめき、邪気が天界を塗り潰していく。


 その呪詛に当てられ、天使の四割までもが堕天し、おどろおどろしい様相へと変貌した。


 堕天使たちは力を増し、エリスを憎々しげに睨みつける。


 一触即発の緊張感。


 もはや争いは止まらない……。

読んでくれてありがとうなのじゃ!

いっぱい応援してくれて心から

感謝なのじゃ!


(*´ω`*)/応援これからも頼むのじゃ⭐

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