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第9話 女神アウロラ

 消滅した跡には、煌めく神気の残渣と『一粒の涙』が結晶化したものだけが漂っていた。

 一粒の涙の結晶が、彼女がこの世界に生きた証しとなった。


『あの結晶を使って何があっても必ず蘇らせるわ。そして、幸せにしてみせる!』


 アウロラは、闇の神界が、光の神界に取り込まれる前に、娘が残した一粒の『涙の結晶』にアフロディーテの魂の残渣を集めるように力を与えた。そして、世界を創造するための力の種を植え付けた。


 力を与えられた涙の結晶は、闇の神界そのものを取り込み、魂の再構築はできた。世界の創造の種も芽吹いた。


 しかし、『深い絶望』から生への執着を失い、全てを諦め、何も望まない存在として、深層を漂っている魂を目覚めさせるのは、アウロラでも困難を極めた。


『諦めない!必ず、目覚めさせるわ!アフロディーテ!生きるのよ!』


 アウロラの娘を想う愛が力となって、やがて、娘の魂を包み込んだ、冷え切った魂に温もりを与え、閉ざした魂に優しく語り掛け、魂の開放を助けたのだ。


(あ、た、たかい⋯⋯)


 アウロラは、想いが届いたことに歓喜した。しかし、これからだと改めて想いを乗せ力を届ける。


 娘は、その温もりに触れるたび、深層から表層へ浮かび上がり、やがて意識は微睡のなかを漂う。


『頑張ってアフロディーテ、生きていれば必ず幸せは見つけられるわ!今度こそ私は間違わない!』


 娘は、微睡のなか、自分が何者か、何故ここにいるのか、焦燥と諦念を感じるのは何故か⋯様々な思考の波が交差し、迷走する意識の波に迷い、彷徨、溺れている。


(どうして⋯⋯…)


『アフロディーテ、しっかりしなさい!貴女は生きるのよ!そして、その新しい世界を育みなさい!そうしたら、貴女に会いに行くわ!愛してる。アフロディーテ』


 再び、アウロラは愛の力で、娘の魂を包み込み、魂に温もりを与え続け、魂を優しく開放する。


(あぁ、この温もりに溺れたい⋯)


 娘は、手を伸ばし、意識が浮上する。次第に意識が覚醒し、魂に集まる力が一層強くなるのを慈愛の目でアウロラは見つめる。


(かつて、わらわは、消滅したはず⋯⋯)


『私が見守っているわ。一人じゃないわ。頑張って、私の愛する娘…』


 アフロディーテの魂は、目覚め動き出した。しかし、再び安堵したのも束の間──


 アウロラの元に微かな想いが届いた。

 なぜ自分が生き長らえているのかと苦悩する想い…そして、娘の心に刻まれた深い傷跡と消えない『焦燥』と『諦念ていねん』。その想いだけが魂の深奥に刻まれ、今も鋭い痛みとなってアフロディーテを苦しめていた。


『アフロディーテ!?記憶を封印したのね!なんて事を……』


 アウロラは、悠久のときに刻まれた娘の心を癒やしたかった。


 しかし、アウロラ自身が娘に刻んだ『孤独』がアフロディーテにとって記憶を封印するほど残酷な事だと知った。


『なんてこと……私は……私が娘を壊したの………アフロディーテもマーキュリアスも私のせいで────』


 アウロラは絶句した。自身の自己満足に二人の娘を悠久のときを無駄に振りまわしただけの事実に…


『アウロラ様、落ち込んでいる場合ではございません。このままだと、再びお嬢様の魂が消滅します。』


 側近の神々は、冷徹に事実だけを伝えた。


 アウロラの魂にアフロディーテの魂の叫びが届く

──さみしい……温もりが、欲しい……

──永遠に独りは嫌だ……


『アフロディーテ、貴女を縛る者は、誰も居ないのよ。だから、自分の足で立ち上がりなさい。』


 涙を流しながら、アウロラは、娘の魂に、懺悔するかのごとく、祈りを込めて愛を送る。その想いの力を受けたアフロディーテの魂は少しずつ癒され、輝き始めた。


──自らが世界の内側へと干渉する強い想い


──この寂しさを……焦燥を、温もりという名の揺り籠で眠らせるために……


 前を向いて動き出した彼女を温かく見守る。例え何があっても、命に変えてもこの子を守り続けると()()()()()


 アウロラの神気に変化が現れた、放たれる慈愛のオーラはを暖かな陽だまりへと変わり、アウロラの神性に母性の権能が開花した瞬間だった。


──最高位の神─『母性神』への覚醒


『焦ってはだめよ。アフロディーテ、私がそばで守るからね。愛しているわ』


 それから幾億の時を、私は娘の傍らで支え続けた、それが、母性の権能から獲られた『共感共育』という力だった。


 娘のアフロディーテが『絶望』が積み重なっていく様を共に感じ、『いっそ、消えてしまいたい』という想いを共有し、心が壊れないように寄り添い、苦悩を肩代わりし癒やす。


 母性の権能を得て、アフロディーテの魂に常に寄り添う感覚で、共に悠久のときを歩んだ、そしていよいよ娘が求める写し身が誕生した。


(……あっ、妾の『写し身』が……生まれた)


『そうね、写し身として生まれ変わって、温もりと、家族の愛情を得なさい。』


 アフロディーテの魂に優しくアウロラは語りかける。


(そうだ……あの写し身として、生まれ変わることができれば……)


『そう、それでいいのよ。本当の幸せを得なさい。』


 決意した女神は、自らの依り代となるべき輝きを探し始めた。


 そして、ついにその瞬間が訪れる。


──魂が惹かれ合う感触


 女神は人々の営みに心を躍らせながら、目的の場所へと辿り着く。


『人生は女神と一緒じゃないのよ。きちんと人生を知りなさい。備えあれば憂いなしよ。』


 人の生涯という『理』はすべて学習済み。備えあれば憂いなし──そんな()()を思い出しながら、アフロディーテは母体となる女性の精神世界へ静かに語りかけた。


 闇の女神としての真実。焦燥、諦念、孤独、絶望……そして希望。


 語らいの末、女性は慈愛に満ちた聖母として、女神を受け入れることを承諾した。


「……感謝します。お母様……」


 こうして、娘は新たな母テティアと出会い、新たな人生が確約された


──ごめんね。だめな母親だったね…と、常に寄り添っていたアフロディーテから、アウロラは寂しげに愛した娘から離れ、見送るしかなかった。


 アフロディーテは一歩ずつ歩みを進める


 最後になるかもしれない娘との別れ…


──また、会える日がきっとあると信じて


 また一歩とアフロディーテは歩みを続け、そして立ち止まった。


 歩みを止めたアフロディーテはゆっくりと振り返った。


 見えていないはずのアウロラと対面する。


『えっ!アフロディーテ…貴女、見えて…』


 アフロディーテは、アウロラに微笑みながら『ありがとう、母上。いつまでも、愛しています』とハッキリ告げた。


 アウロラに彼女の深い感謝の気持ちと確かな『母への愛』が届いた。アウロラは溢れ出る想いをぐっと堪え、そっと、愛する娘の背中を押す。


『貴女は、もう一人ではないわ、今度こそ本当の幸せを見つけて来なさい…』


 こうして、アウロラは娘が旅立つのを見送った。


 力が抜け、押し留めていた溢れ出る想いに身を委ねた。アウロラは膝から崩れ落ちた…


 次から次へと溢れ出る涙、でも不快じゃない…それは寂しさや悲しみからではないから……


 娘からの最初で最後の深い感謝の言葉…


──『ありがとう、母上

 いつまでも、愛しています』──


 旅立つ娘からの『母への愛』を受取り、アウロラは嬉しさと、愛する娘を失った喪失感でいつまでも泣き続けた…


──永く続いた不幸の後には、必ず幸せが待っているのだから、アウロラはまだそのことに気づかない。

読んでくれてありがとうなのじゃ!

いっぱい応援してくれて心から

感謝なのじゃ!


母様テティアとは、別の親子の真実の別れをお楽しみいただくにはのう…

・第三章「第9話 絶望と希望の果に…」

・プロローグ「始まりを告げる夜明け」の中盤からの波線以降

・第三章「幕間 相対する光の贖罪」

・本章の「第2〜3話」

・本章の「第6〜9話」の順に読み替えして頂くと、母アウロラと双子の女神の親子の葛藤が明らかとなるのじゃ(*^^*)/時間があれば試しに読んでほしいのじゃ


それでは、引き続きお楽しみ下さいね。


(*´ω`*)/応援これからも頼むのじゃ⭐

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