第8話 新生ユーユリア大陸
──ズゥドォォォォ────ン!!
メフィストとの最強の防御呪術を施した大扉が、いとも簡単に破壊されたことに、目を見開き驚愕し、見目麗しい血だらけの女性が飛び込んできたことにも驚いた。
「残念ね、貴方がメフィストね」
颯爽と現れたのは、ミモラとシルビアとミツルギの三人だった。
「貴様らは誰だ!何故、俺をメフィストと知っている!?」
「そうね、まず自己紹介ね。私は、ガリレア大陸のエンケラド王国、サリウス領、元領主、ミモラ・サリウスよ知神の座を預かっているわ。そして、こっちが私の専属侍女長兼侍女頭のシルビアで地神よ、それでこっちが、我が家の家令のミツルギで剣神よ」
「サ、サリウスだ、と⋯⋯⋯⋯「《《ち》》神」に「《《ち》》神」だと?⋯何の『ち神』だ!?分かるように説明しろ!?」
「し、失礼ね!知識を預かる私こそどう見ても《《知》》識の神、《《知》》神のミモラでしょうに!」
「全身血だらけで説得力あるものか!全身血塗れの『血』神だろ!?そうでなかったら恥ずかしい神の『恥』神だろ貴様は!?」
シルビアとミツルギから惜しみない拍手が送られた。
───パチパチパチパチ……
「先ほどはメイル国王から、恥の神の『恥神』の称号を頂いておりましたな。新たに『血神』ですか」
「貴方達!どっちの味方なの!?ま、まあいいわ、どうせ今からこの大陸事滅ぼすのだから!」
「遅くなりましたにゃ!」
後にさらにチーム猛獣組が到着し、メフィストの『ち』の下りを三人に説明したミツルギ。
──「おぉぉ!」パチパチパチパチ…
そして、拍手喝采している。チーム猛獣組の三人だった。
「貴方のせいよ!!メフィスト!訳の分からないこと言うから皆おかしくなったでしょ!?」
「もういいわ。これで終わりよ。『テティアとエリスちゃんちょっとこっちに来られるかしら?エリスちゃんに大陸ごと浄化の洗礼をしてほしいのよ。それと、テティアには大陸中に命の息吹をお願いできない?』」
『『いいわよ♪』』
ミモラは、テティアとエリスを召喚した。
部屋中一体に神聖な神気が充満し、光り輝く中から、エリスとジュリアスに手を繋がれて現れたのはエバ、そして、テティアに抱っこされたルルア、その後ろに何故かメイル国王とセイラ王妃が並び立つ。
「おばあちゃま来たわよ」
「お母様来ましたわよ」
「姉上、私達も来た」
「お姉様、来ちゃった!」
「メイルにセイラにエバとルルアまで来ちゃったの」
和やかに談笑するミモラ達の背後では、エリスとジュリアスの登場にこれ以上ない恐怖と畏怖を覚え、メフィストは先ほどまでのふざけていた態度とは裏腹に地面へ崩れ落ちた。
「位階の上限が、わ、わからん⋯星の管理者じゃなかったのか……」
「あら、この方、宰相の記憶に出て来た魔王を名乗っていたメフィストさんですわよ。エリスお姉様」
「そうね、ただの公爵級の悪魔ね。まぁ、どうでもいいわ、さっさと済ませて、エバちゃんとルルアちゃんと遊ばないとね」
メフィストには眼中にも入らないエリスだった。
「念話で伝えた通り、浄化の洗礼と、その後に生命の息吹をお願いね」
エリスは、右手を上げ、膨大な神力を膨らませた。
───浄化の洗礼
大陸の中央付近の遥か上空に、白銀に輝く光球が現れ、徐々に膨れ上がり、エリス手を振り下ろした瞬間に…、閃光が大陸を覆い尽くし、沿海も地下も含めて浄化の焔に焼かれ、生き残った不浄な者(物)をまとめて焼き払った。
───ボオォォォォゥ─────!
──ぐぅぁぁああ───!!?
──ぐっ!!ギャャァぁアアッ!?
メフィストと側近は白銀の焔に焼かれ続け、絶叫が城内に木霊した。
そうして、エリスによる『焔獄牢門』が召喚され、漆黒の鎖に囚われた、メフィストとアスモデウスは「炎獄界」への幽閉が決まった。
「い、嫌だ!?た、助けてくれぇぇぇえええ!!やめろぉぉおお!離せぇええ!や、やめてくれぇぇぇえええ…ぇ……ぇ…」
「大陸を滅ぼしたのなら、魂一つにつき100年は苦しみ抜きなさい。終わったわ。次はお母様、お願いね」
「ええ、分かったわ。さっきエリスちゃんがやったみたいに、大陸中央から光球を発生させて、地中も含めて術式を展開したらいいのね。それではいくわよ!」
───生命の息吹
テティアはエリスと同様、右手を上げて、座標を定めた。エリスが放った場所とほぼ同じ場所に、エメラルドのように眩い緑色に輝く球体が現れ、テティアが力を注ぐ…。
球体は膨れ上がり、「「今よ!お母様」」とエリスとジュリアスの掛け声にあわせて、手を振り下ろした。
───ぱぁぁぁぁぁぁあああ───
その刹那、春の陽だまりのような温かい風に乗って生命力が大陸に注がれ、様々な小さな芽が「ピョコン」と飛び出し、見る見るうちに岩だらけの死の大地が新緑に覆われた命溢れる大地へと変貌を遂げた。
「ふぅ、これで終わったのね。エリスちゃん、ジュリアスちゃんお母さんどうだった。きちんと出来てた?」
「お母様!凄いわ!ばっちりよ!」
「ええ、この術式だけはお母様しか使えないからね。不浄な物もいなくなったしこれで、この星の瘴気の発生源もほとんどなくなったわ」
「い、いや、実際に見ると凄いな。エリスもテティアも女神様って言われて、今初めて納得したよ。いつもは、仕出かした後の処理に追われてばかりだったからなぁ」
メイルは、改めて二人の力に畏怖と尊敬を覚えた。
「エリスお姉ちゃん、凄いね!妾も、『浄化の洗礼』って!やってみたいのじゃ!」
「わらわも、やりたいのじゃ!」
「エバちゃんもルルアちゃんにはまだ早いわ。大きくなったら教えてあげるわね」
「「分かったのじゃ!」」
二人はぴょんぴょんエリスどジュリアスの周りを飛び跳ね歓び、微笑ましい光景に誰もが相好を崩すのだった。
「ところで、ミツルギかビャクよ。この中で二人だけ見たことない人がいるのだが、誰か紹介してくれないか」
メイルはミモラとシルビア二人に指を指してミツルギとビャクに聞いた。
誰もが「えっ!」と驚き、セイラはエバとルルアを抱え、その場をスッと離れた。
「メイル⋯…私が誰だか分からないの?」
「いやぁ、血だらけのアマゾネスには知り合いは⋯⋯」
「誰が!?アマゾネスよ!メイル!そこに直りなさい!」
「そ、その…立派な上腕二頭筋は!?も、も、もしかして姉上か!?姉上!何で若返っているんだ!おかしいだろ!?脳筋が悪さをして、頭だけじゃなく、身体までおかしくなったのか!?ぐ、ぐふっ!!!ブホッ!!!」
「美しくなった姉に何てこというのかしら!?このクソ弟わ!!」
「えっ、ええぇ、ミモラお姉様ですか?それに、こっちはシルビアさんですか!?何故そんなに若返ったのですか?」
「前からね、戦えば戦うほど若返るなぁって思っていたのよ。この大陸に来て数十万単位で敵を倒し続けたらこうなったのよ。セイラも一緒に戦ってみる?」
「す、す、数十万、い、いいえ、遠慮しておきますわ。私は普通の人間でいたいので…、普通に老いていくので大丈夫ですわ」
「そう?」
「おばあちゃまがお母様と双子のようになってしまわれたわ!?」
「ふふっ、ジュリアスも上手を言うようになって〜♪一気に二十歳近くは若返ったってことかしら〜」
「母なる世界のお母様と一緒で、お姉様も、おばあちゃまに加護の付け間違いをしたのよ」
───カァァァァーーーーン
「ぐぅへっ!?」
「久しぶりにタライが落ちてきましたわね。母上〜♪見てますか〜」
エリスは満面の笑みで上空に向けて手を振り続けた。
こうして、暗黒大陸と言われた死の大地は浄化され、新たな命を吹き込まれ、地上世界の不条理は一掃された。




