第7話 暗黒大陸RTA
一方、ユーリリア大陸へ赴いた、ミモラ、シルビア、ミツルギ、ビャク、クロエ、シヴァ、ミロク、ディア、ファルの9人は、ビャクの転移によって、大陸の結界手前の沿岸へとやって来ていた。
メフィストが張ったと思われる。星全体から瘴気を集めるための結界を見てみたいとビャクが言い出したからだ。
「これは、理を独自に書き換えたとか、干渉しているとかではなく。理を模して造られた呪術のようですね。一種の紛い物ですね。でも、良くできているわ」
呪術の精度に感心するビャクと早く突撃したい残り組達。
「では、この理擬きの結界を排除します。『清浄の浄化術式』展開」
大陸を覆っていた、星中から療気を集めるシステムをビャクは排除した。
茶褐色の瘴気収集結界は、波紋が伝うように広がり、虹色の輝きと共に大陸を覆おう瘴気と共に浄化されていった。
「綺麗なのぉ〜」
すぐさま9人は、大陸へ上陸し、メフィストの牙城がある方角をビャクが指し示し、3組に分かれて、大陸を縦断する形で目指すこととなった。ビャクの提案のもと、チーム分けを行った。
───ビャクの提案はこうだ。
「ミモラ、シルビア、ミツルギのチーム『脳筋組』。ビャク、ミロク、ファルのチーム『神獣組』。クロエ、シヴァ、ディアのチーム『猛獣組』。なかなかのチーム分けだと思いませんか?」
ビャクが腕を組み、自慢げに頷いて満足している。それを不服としたのが、チーム脳筋組の一部とチーム魔獣組の一同だった。
「チーム脳節組は理解できるけどさぁ、猛獣組ってどういうことなのさ!」
ディアは鼻息荒く、ビャクに食って掛かる。しかしビャクは⋯。
「そういうところです。クロエもシヴも同様にエリスお嬢様やジュリアスお嬢様のこととなると、猛獣以上に抑えが聞かないでしょ?だから猛獣組にしたの」
「「「………」」」
ディアとクロエとシヴァは思い当たることがあり過ぎて、ぐうの音もでないで唇を噤んだ。
「ビャク!?私のチームが何故チーム脳筋組なの!薔薇組とか百合組とかでしょうに!」
「「「「「「「「脳筋組で異議なし」」」」」」」」
ミモラ以外が納得してしまう始末。
「シルビア!ミツルギ!裏切ったわね!」
「マイマスター、裏切ってません。事実そのとおりですので」
ショックを受けるミモラと、うんうんと頷く一同だった。
落ち着いた一同は、ビャクが大陸全土を術式によって空間を地図化し、現在地と目的地とルートを示し、どのチームがどのルートを進むかを話し合った。
最も敵の数が多い右回りルートは、チーム脳筋組が…。
そこそこの敵がいて、縦断距離が長い左回りルートは、チーム神獣組が…。
大型の異形が多い中央ルートは、チーム猛獣組が…。
「どのチームが一番先に目的地に着くか競争よ!負けないわよ!」
「負けないにゃ!うちらのチームが勝つにゃよ!」
「当然、私達チーム神獣組が勝ちますわ」
こうして、3チームが鎬を削って、スタートした。
チーム脳筋組も即座に動き出した。知神ミモラが最速の演算能力で、コンマー秒の驚異的な速度で接敵ルートの演算を終え、最寄りの接敵エリアへ二人と共に転移していった。
続いて、ビャク率いるチーム神獣も負けず劣らず、ビャクの広域探知術式で接敵ルートを決め、即座に転移していった。
それを見たクロエ達は焦りつつ、目的地に向かって直走った。
チーム脳筋組が、転移した先は…。
「壮観の一言ですなぁ。地平線を埋め尽くしているのは、全て異形の魔獣ですかのぅ」
「そのようね!さあ、ここからは、早い者勝ちよ!」
「……」
「滾って来たわ!行くわよ!」
「参る!」
「イエス、マイマスター」
地面を爆ぜ疾走した3人…中央をミモラ、左翼をシルビア、右翼をミツルギ
「まずは、挨拶よ!」
ミモラは疾走しながら闘気と神力を解放し大剣に神気を集めた。そうして、横薙の一閃を繰り出した。横一文字の剣戟が目の前の数万の異形の魔獣に突き刺さる…同じく両翼からも怒号が鳴り響く………。
───ドゥォォオオン!!!
───ドゴォォォオオオン!!
───シュキィィィイイン!!
「さ、最高ね♡濡れるわ…」
チーム脳筋組は、ひたすら力にものを言わせ、大剣や刀や素手で薙ぎ払いながら進んだ。
「全てを滅せよ『神雷』」
「焦土とかせ『神焔』」
「砕氷砂嵐」
──ゴロゴロ…バッシィィィィイン!!
──シュボゥゥウ…ゴォオゥゥゥウ!!
──シュゥゥウィィィイイン!!
チーム神獣組は、ビャクの神雷とファルの神焔で焼き払いながら、ミロクの神の砕氷
砂嵐で氷の粒子を研磨剤とした超細糸のウォーターレーザーで何もかもを分断し進んだ。
「行くわよ!九尾『金剛力』!薙ぎ払い」
「喰らうにゃ!『崩山圧殺』にゃ!」
「突撃なのぉぉぉおおお!!」
チーム猛獣組は、クロエの九尾での薙ぎ払いやシヴァの土の大質量での圧し潰し、ディアの角での突撃で進んだ。
三者三様のチームの特性を活かした神滅攻撃により、瞬く間に目的地にたどり着く三組であった。
「私達が一番乗りのようね。あら、あちらも終わったようね」
「ビャク様!早すぎるにゃ!でも、うちらが2番だったにゃ!ミモラ様達大丈夫かにゃ?」
「ミモラ様達はこちらに向ってられますわ」
最も早く到着したのは、広域殲滅攻撃が特異なチーム神獣組で、次にチーム猛獣組だった。
「ビャクもクロエも早いのね!」
最後にミモラ率いるチーム脳筋組だった。チーム脳筋組が選んだルートの異形が余りにも多すぎたからだ。
「「「えっ!?テティア様?」」」
爽やかな笑顔を振り撒くミモラ、しかし、チーム神獣組もチーム猛獣組も首を掲げて考え込んでいる。
「どうしたの?ビャクもクロエも何かあった?」
ビャクは、驚きの余り目を見開いたまま、ミモラに伝えた。
「い、いいえ、到着された時に、髪色は異なりますが、てっきりテティア様かと⋯」
「えぇ〜びっくりなの!ミモラ様若返りすぎなの!」
「にゃ!にゃんと!ミモラ様だったのかにゃぁ〜驚いたにゃ〜!?」
戦闘を続けているうちに、ミモラの神気と闘気が細胞を活性化させ、若返りを加速させたのだった。シルビアも同様に若返っていた。ミツルギだけはそのままだったが腕を組み平然としている。
その変わりようと言うと、家族以外はテティアとミモラの認識が困難なほどに⋯…髪色で判断が出来るレベルだった。
「やっぱりそう!前々から思っていたのよ!戦うたびに若返るなって!娘と間違えられるなんて、嬉しいわ!」
その背後で、若返ったもう一人がミモラを見て欲望を滾らせ妖艶に目を輝かせていた…。
こうして、九人は暗黒大陸を温泉地の観光に来たような和気藹々とした雰囲気で、メフィストの牙城一歩手前のミュニル高原まで攻め込んでいたのだった。
「な、何事だ!」
「メ、メフィスト様!大変です!瘴気回収呪術が何者かに破壊され、破壊と同時に攻め込んで来ました!現在、ミュニル高原で交戦中で、援軍を大陸中から呼び寄せている所です」
「そ、そうか。なら、急がせよう、『強制分体呼寄呪術』。ガリレア大陸に攻め込むために新たに準備した40万の軍勢だ!これなら、星の管理者であろうと、一溜りもないだろう!」
しかし、40万の軍勢は待てど暮らせど来ることは無かった⋯そう、チーム脳筋組の若返りの糧になったのだった。
城を守る異形の数、約5万の軍勢を前に九人は横一列に並びミモラが告げた。
「ここからは早い者勝ちよ!広域殲滅術式は禁止よ!最後の楽しみよ!皆行くわよ!!」
血気盛んに我先に飛び出したのは、ミモラ、シルビア、ミツルギの三人だけだった。
「「「「「「……………」」」」」」
「さあ!どんどん来なさい!」
「参る!」
「⋯…」
「「「「「「チーム脳筋組は間違いなく脳筋ね」」」」」」
「ヒャッハーー!!」
───チュドォォォオオオン!!!
ドン引きする神獣たちであった…。
全ての敵を殲滅し終えたミモラ達一行は、メフィストの城壁の前に立ち並んだ。
「逃さないわ『次元隔絶結界術式』発動!」
自分たちを囲う形で次元隔絶結界を発動し、どうあがいてもこの空間から逃げられないようにしていた。
九人は、再び三チームに分かれ、城壁に聳える東門、南門、西門の三門に分かれ、念話で突撃を合わせた。
「「「せーーーの!」」」
──ドゥゥウォォォォォォン!!
──ドォガァァァアアアアン!!
──ドゥドゥォォォォオオン!!
三門は壁を抉るように爆散し、城内を守る異形諸共吹き飛ばした。そのまま、三チームは足場を爆散させながら、一目散に城内を目指した。
「弾き飛ばすの気持ちがいいの〜♫」
「串刺しだにゃ〜♫」
血まみれになりながら、拳で粉砕して行くミモラと、レイピアで小間切れにして行くシルビア、刀で一刀のもと断ち切って行くミツルギ
「気持ち良すぎて…いきそうだわ…」
「マイマスター…あちらで休憩でも…」
「刀筋が冴え渡る!参る!」
目の前にある防壁をものともせず、全てを破壊し、蹂躙しながら進む三チーム。
そして、三チームは正面入り口から侵入する組と、城の通用口から侵入する組と、城上空で全体を俯瞰しつつ念話で指示を出す組に分かれ突撃した。
───ドゥォォォォオオン!!
当然、正面入口はチーム脳筋組、通用口はチーム猛獣組、上空待機はチーム神獣組に分かれた。
「おい、何が起こってる!何故、我の分体達が来ない!おい!応えろ!!」
「メ、メフィスト様!?ミュニル高原の仲間五万が全滅しました」
「な、何!四十万の我の軍勢はどうした!」
「軍勢も何も、現れたのは千も満たない者達が、怯えながら転移してきましたが、直ぐ様、消滅しました…」
「敵の数は!どれだけだ!以前のように五国連合軍並みの軍勢か!?」
「いいえ、初老の人間が一人と若い女性が二人、人外が人化した者が六人で、九名が攻め込んで来ています。」
その言葉を聞いたメフィストは、驚愕のあまり力が抜け、後ずさった……
───チュイ───ンッ…
「!?…………」
立っていた場所を、超細糸のウォーターレーザーが城を切り裂いた。そのお陰でギリギリ命を救われた…。
それは、ミロクの神の砕氷砂嵐で氷の粒子を研磨剤とした術式だったものだ。
空中で待機している三人に向けて、翼有型の異形が迫りつつあった、それを遊撃するためのミロクの攻撃だったのだ。
城のあちらこちらで、「ミロク!危ないでしょ!」「しっぽの毛が切れたにゃ!?」という怒号が飛び交う。
「「………」」
メフィストと従者は、腰を抜かし床に這いつくばっていた。
「メ、メフィスト様!こ、このままでは!」
「う、うむ。そうだな。転移で逃げるぞ!『転移呪術!』!?『転移呪術』、『転転移術』、『転移呪術』!!な、なぜ、転移できないのだ!?」
迫りくる恐怖に二人は、身体を震わせ敵の実態が全く掴めない恐怖に怯えるしか無かった。




