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第6話 魔王バエル

 強制集団転移した魔界の住民は、突然目の前に現れた神々の威光と圧力プレッシャーに恐れ戦いていた。


 天界や冥界の強者を知り、自分たちもそれに匹敵する強者であると自負していた者達も同様に抗う事も烏滸がましい力の差を目の前にいる者達から感じ取っていた。


 魔王様でさえ、吹けば飛ぼ様な力量さを知った魔界の住民達は、これまでの自分たちの驕りを改めなくてはと誰もがそういう考えに至った。


 魔王様と話をしていた、目の前の者達は、星の管理者ではなく、創造神であることを事も無げに話し、それを聞いた。魔界の住民は誰もが納得した。


 また、その話の中に「魔界を滅ぼすつもりできた」という創造神の言葉に、これまでにない恐怖と絶望を感じ、全身から冷たい汗が滴り落ちた。


 しかし、魔王様がその場を執成とりなしてくれたおかげで、魔界の住民は無事帰還を果たすことができたが、未だ、魔王城に創造神達がいると思うと誰もが戦々恐々と唯ひたすら逆鱗に触れることなく帰ってくれることを祈るばかりだった。


 魔王城に訪れた一行は、重厚な造りでありながら、飾られた芸術品の数々に派手さもなく、質素絢爛とはこのことかと感心していた。


 そして、魔王とその側近に案内され、貴賓室へ通された一行は、エリスとジュリアスとテティアとミモラが長ソファーに腰を掛け、その他一同は、その背後に控えた。


 その壮観な様相に、魔王バエルと側近のアスモデウスは、冷や汗をかきながら慄いていた。


「なかなか、魔王城も素敵な場所ね。想像していた場所よりもとても素敵だわ」


「そうね、ジュリアス。それで、魔王バエル、話してくれるんでしょうね」


「は、はい。女神様!実は⋯」


 魔王バエルは、500年前の経緯から話始めた。魔界の悪魔公爵のメフィストの謀反により、魔王バエルが油断した隙に智天使オフィリアが創造したレガリア擬きにより、操り人形となり、メフィストとオフィリアの言うがままに、ユーリリア大陸の全生命を刈り尽くしてしまったこと。


 そして、現在、暗黒大陸として、地上界の瘴気を一手に集め、魔界に流れ込まず魔族の多くがひもじい思いをして暮らしていることや、メフィストの能力である分体を作成し、魔獣へ憑依させることで、暗黒大陸に作り変えたこと。


 そして、星の管理者と誤解はしていたが、そのお膝元であるガリレア大陸でも同様に暗黒大陸へと支配域を拡大しようとしていることを伝えた。


「そ、そこで、我らは、星の管理者が現れたと思い、11年前から境界跳躍術式を覚えようやく術式に成功したかと思ったら、弾き返され、創造神達が現れたということです。」


 魔王バエルとアスモデウスが冷や汗を掻きながら、必死に説明を行った。


「分かったわ。ねぇ、お母様、おばあちゃま、魔王が言ってたユーリリア大陸はこんな所らしいわよ」


 エリスが映し出した俯瞰映像は、元々魔界の姿を想像していたとおりの、生物が存在しない死の大陸だった。


 そこに徘徊するのは、異形の生物たちが闊歩し、瘴気を糧に生存する悍ましい生き物とも言えない存在だった。


「うぇ〜お姉様この悍ましい生き物はなんですか。それに、この大陸に生命の反応がありませんわ」


 ジュリアスは、顔を顰めとても嫌そうな顔で言い放った。


「この、大陸を覆うように、独自の理を設置しているようね」


 ビャクは、大陸の境界を眺めそう呟いた。


「メフィストと言いましたか。ならば、私の世界に必要ありませんね。大陸事処分しましょう」


 エリスは、もうどうでもいい素振りで、既に興味を無くしたように素っ気なく答えた。


「ちょっと待ってエリスちゃん!乗り込んでそのメフィストやらにも、オフィリア同様の炎獄界へ落として罰を与えてはどう?」


 何故か焦ったようにミモラがエリスに追いすがる。


「おばあちゃま。それめんどくさくありません?態々行かなくても、ここからでも罰を与えることはできますよ?」


 エリスは、本当にどうでもいいという感じで、早く終わらせようとしていた。


「エリスお嬢様、ミモラ様は最近、満足に戦えていないので、思いっきり暴れたいのでしょう」


 メアリーが、ミモラの様子を戦神の加護にヒシヒシと戦意を感じ、エリスに伝えた。


「そうなの、おばあちゃま…?」


 エリスは、本当にめんどくさそうに答えた。


「ま、まぁ、そんなところかしらね!ね、ねえ、シルビアもそうでしょ!」


「私は、ミモラ様の行くところならどこまでも着いて行きますので」


 ミモラとシルビアの返事に一同が思った「脳筋」と……。


「なら、全員で行くと過剰戦力になるだろうし、遊びに行きたい人だけで行ったらどう」


 普段のエリスなら我先に「胸熱展開じゃ!」と言ったところだが、淑女教育の賜物か、ただやる気がないだけか、誰もが首を掲げた。


「お姉様、いつもなら我先に戦闘に参加してましたのに、どうしたの?」


 ジュリアスもいつものエリスでないことに不振に思い問うた。


「ほら、今日エバちゃんとルルアちゃんと会ったでしょ。これから遊ぶ約束しているのよ」


「えっ!?エバちゃんとルルアちゃんと!ずるいわ、私も行くわ!」


「お母様と、私と、ジュリアスは留守番組で決定だけど、皆はどうするの?」


「私は、エリスお嬢様とジュリアスお嬢様の侍女ですので、着いて参ります」


「テティア様が行くところに私有りです」


 カレンとメアリーは、即答した。


 ユーリリア大陸殲滅組と帰還組に分かれ、挨拶もそぞろに魔王城を去って行っ

た。まるで、嵐が去った後の様だ。


「「……………」」


 その場に放置された魔王バエルと、側近アスモデウスは、顎が外れんばかりに口を開け、放心していたが、これがメフィストの最後になるのだと確信したのだった。


 魔王城から神聖界に帰ったテティアとエリスとジュリアス、カレンはメイド達に囲まれ、魔界の状況について質問攻めにあっていた。説明は、ジュリアスに任せ、テティアとエリスは、武装を解除するため部屋へと向かった。


 しばらくしたら、メイドに掴まっていたジュリアスも部屋に戻ってきたので、二人で神衣を脱ぎ捨て、エリスは橙色を基調としたシンプルなドレスに着替え、ジュリアスは水色に白銀のフリルをあしらえたドレスに着替えた。


 三人は、改めてエンケラド王国の王城へ転移した。


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