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第1話 女神の台本・本来の終幕

 ミレニアム共和国とドラン帝国との戦争は、エンケラド辺境伯とサリウス伯爵の一方的な勝利で終戦したのである。


 工ンケラド王国は、早くも代官達の手によって、接収した領は安定と民の安寧が築き上げられた。


 その安寧の基礎を築いたのが、女神が監修したとされる。エンケラド法典で「神の法典」とも呼ばれていたのだ。


 いち早くリレトス新聖教国のタイタン教皇は「神の法典」を新聖教国の統治するための「神の法典」としたいと願い出てきた。


 その願いを叶える形で、贈呈式が行われ、メイル国王の手で副本を贈呈されたのである。


 リレトス新聖教国との関係が「蜜月の関係」から「盟友」にまで格上げされ、神の国とされる、エンケラド王国の傘下に入りたいとの申し出があり、実質的に「姉妹国」としなり、その偉業を両国民上げて祝ったのだった。


──その裏で⋯

「八歳の子供が書いたエンケラド法典が「神の法典」⋯…な、なんだそれは⋯…タイタン教皇が血眼になって「神の法典を寄越せ」と言うから渡しただけで⋯…我が国の傘下に入る?『姉妹国』?…いつから、この国は偉くなったんだ?なあ、セバス!?」


「それは、同じ「法典」を使い、これまで制度も法体系も異なる国同士が、揃って同じルールで国を治めることになれば、当然そうなるでしょうな」


「もし、他の国も欲しいって言って来て、渡したら⋯最悪、我が国の傘下に治まって大陸中が『姉妹国』なのか?」


「そ、そうですな、「神の法典」一つで、大陸の覇者……いえ、この国が唯一無二の『宗主国』となってしまいますな……」


「お、恐ろしいな⋯…」


「そ、そうですな……」


 二人が妄想だと戦々恐々としているのだが、近い将来それが実現される未来をまだ二人は知らない⋯。


 サリウス一家といえば、エリスとジュリアス監修の女神の台本のお陰で、戦後、光の速さで大陸中に「サリウスの地は神が住む聖地」と家族や使用人も含めて崇め奉(あがめたてまつ)られることとなっていた。そのため、サリウス一家は普段の生活もままならない状態となってしまった。


 慌てたミモラ達は、密かにサリウス領をエンケラド王国に返上する形をとり王国の直轄地として、治めてもらう事にしたのだった。


 サリウス一家と使用人とその家族全員が夜逃げ同然に、慌ててエンケラド王城へと転移し、避難して過ごしていたのだった。


 一方で、エリスから罰を償う形で人間界で暮らしていた天使達も騒動に巻き込まれ、エリスから力と権能を元に戻され、天界に帰るように、新たに命令が下されたが、人間界での生活が楽しかったミカエル率いる天使達はサリウス一家と離れがたく、猛烈にいじけたが再び会うことを約束し、天界へ泣く泣く帰されたのである。


 身を隠しながらも平穏な日々を過ごし2年の歳月が経った。

 エリスとジュリアスが10歳になった頃には、大陸中から多くの祈りと信仰が集まり、二人の神力は益々強まり続けた。


 そうして、王城での暮らしは、中々に自由にとは行かず、世間に身元がバレない様に気を付けながら生活するのが最大の悩みで、サリウス一家と使用人とその家族がうんざりし始めた頃に転機が訪れたのだった。


 ジュリアスの神力が、エリスの三歳の頃と同等の力まで回復したことで、エリスは自分の中にある『愛』と『絶望』の4つ権能をジュリアスにも与えたところ、ジュリアスも目出度く、双子の女神として世界の調律者の力を得たことを二人は手を取り合い喜び、ジュリアスの神としての神格が劇的に跳ね上がった事でこの世界にも大きな影響を与えたのである。


 その影響を直に受けたのが神聖界であった。ビャク達が境界跳躍術式で慌ててエリス達の前に転移して来た。


「し、神聖界が、た、大変なの!?」


 神聖界に異変が生じたことがビャク達から再び伝えられ、元々あった神聖界の下層に三分の一程度の神力を持った妹となる神聖界が誕生していたのだった。


「予定どおりね…。さあ、本当の終幕はこれからよ…うふふっ」


 予定通りにジュリアスに力が戻り、エリスはほくそ笑んだ。女神の台本の終幕は本当の終幕ではなく、ここからがエリスが望んだ本来の終幕だったからだ。


「お母様、私が三歳の頃にリレトス聖教法国を滅ぼした後に、今と同じようになったこと覚えてる?」


「急にどうしたの?ええ、覚えているわ。あの時も大変だったけど今回は、それ以上ね。それがどうしたの」


「ふふっ、その時の約束は覚えてる?」


「えっ!?約束なんてしたかしらー」


「これを見て」


 エリスは、思考共有でその時の光景をテティアへ送った。


──約束の回想


「勿体無いけど仕方が無いのじゃ。せっかく、善行ブームが流行しているのも無くなるのじゃが、それでも良いかのう?」


「ウッ!?⋯し、仕方が無いわ、次に同じよう事があったら、その時は覚悟して表舞台に出る事にするわ。それでいいかしら?」


 テティア、シルビア、ジグルド、メアリー、カレンは頷いた。


 エリスは『言質を取ったからの〜』と、不敵に笑ったのだった。


────


「そ、そんな事もにあったわね⋯」


「そうね、約束は大事よ。お母様がいつも言ってるものね」


「そ、そうね、エリスちゃん。何だか悪い顔になってるわよ」


「ウフフ⋯そうね。それは、今はいいわ、それより、皆で神聖界へ引っ越しできる様になったの。お母様」


「ええ本当に!?私達のような神様属性がなかったら入れなかったんじゃないの?」


「ええ、そこは考えてあるわ。ジュリアスに力が戻ったから、新たな妹の神聖界が私の神聖界の下層に生まれたの。だから、大丈夫よお母様」


「そうなのね!?きっと、皆が喜ぶわ!!」


「ええ、そうね。──約束は守ってもらうわ。うふふっ──」


「エリスちゃん、何か言った?」


「いいえ…何も…ふふっ」


 ミモラおばあちゃまと母テティアにエリスとジュリアスは提案し、家族一同大賛成された。皆が安堵の息を吐いたのだった。不自由だったエンケラド王城を出て、新たな新天地に向けて皆が動き出した。


 そうして、ジュリアスは、新たに産まれた妹の神聖界に新たな理を設け、使用人たちとその家族に『神の使用人』と称号を与えたところ、無事、妹の神聖界に入界を認められ、移り住むことができたのだ。皆は歓喜した。


 しかし、姉エリスの神聖界は、『神の使用人』であっても入ることが叶わなかった。神の位階が違い過ぎたからだ。


──その裏でエリスは、過去に掛けた『大規模記憶改変術式』を誰にも知られる事なく密かに解除したのだった。


「本当の終幕をさあ演じなさい。《《妾》》のかわいい写し身達よ!『大規模記憶改変術式』解除!」


───サリウス一家と使用人達が妹の神聖界へ移り住む日が来たのだった。


 サリウス一家と神の使用人達が住める世界とするため、サリウスー家がワイワイ楽しみながら妹の神聖界のコンセプトを話合い、コンセプトに基づいて構想を練りと設計に落とし込んでいた。


「ここに宮殿を建てて、宮殿の前に湖なんてどう?」


「いいわね!でも、宮殿はあまり大きくしないようにしましょ!お掃除が大変だわ」


「テティア様との愛の巣…」

「…ミモラ様と一緒の部屋で…」


 ニヤリと悪い笑顔を振りまきながら、メアリーとシルビアの二人は煩悩が赴くまま、構想を絵にしていた。


 サリウス一家と神の使用人達が賑やかに次々と神殿や居住区画を創世術式で創生し、建物の中を神の使用人達が順次整備していった。


 その創生の合間をぬって、神の使用人達への創生術式基本講座がミモラとシルビアの手で開かれていた。


 森や湖や山や川といった自然をエリスとジュリアスとビャクが創生し、神聖界での役割を与えられた新たな神獣や精霊をテティアが創生した。神々が住む世界として相応しい環境を皆で騒ぎ楽しみながら創生し、自慢の神聖界となったのだった。


「「やったわ!私達の世界が完成したわ!」」


「やりましたね!ミモラ様、テティア様」


「素敵な所になったわ!」


 自分達の手で創り出した。新しい世界に全員が感嘆の声を響かせ、自身の手で創生した家具や小物に囲まれ、神の使用人達も大喜びをしていた。


 その一方で、メアリーは血眼になって、時折、鼻血を出しつつ創生した。テティアとメアリーの愛の巣も完成していた。常時発動型の遮音結界に常に綺麗なままの清浄結界に包まれた居室にテティアは驚きの声を上げていた。


「メアリー!?やり過ぎよ!」


「ええ!今晩から、やり過ぎますわ!」


「……///ほどほどにね……」


 また、シルビアもクールビューティーを装い、血眼になってメアリー同様にミモラとの愛の巣を完成させていた。


「ミモラ様、私達の部屋も完成しました」


「私達?今日から一緒に寝るの?」


「はい、そうです。テティア様とメアリーの用に同室にしました」


 その、真意を知ったミモラもクネクネしながら「あらあら、まあまあ」と照れながらも受け入れていた。


「た、滾るわね……」


──その裏で、地上世界は大変な事が起こっていた……。大規模記憶改変術式が解かれたことで、各国の上層部が慌てふためいた。


 特にミレニアム共和国の国王を含め、記憶が蘇ったことで、知神ミモラと女神の聖母テティアを誰もが鮮明に思い出した。


「な、何故こんな重大なことを!今の今まで皆が忘れておったのじゃ!?」


「か、神のなせる業かと…」


「い、急げ!?エンケラド王国へ確認を急げ!!」


 ドラン帝国、アーク王国、シェード公国も然り。唯一、リレトス新聖教国だけは術式の対象から外されていたため、通常運転だった。その煽りは全てエンケラド王国に向けられ、メイル国王がその対応に追われた。


「セバス!?な、何が起こっているんだ!?急に各国から問い合わせと、使者を送ってきたぞ!?」


「メイル国王様、問い合わせの内容はどこも同じみたいで、サリウス一家の事ばかりですね」


「また、姉上達が何かやらかしたのか!?」


 何も聞かされていないメイル国王はセバス宰相と二人頭を抱えたのだった……。

いつもお読み頂きありがとうございます。

とうとう新章に突入しましたわ!

私の真の終幕に向けて地上世界が動きだしたわ。神聖界にいるおばあちゃまやお母様や皆も地上世界に意識が向かないように頑張っているの。

さあ、真の終幕へのカウントダウンに入ったわ!

続きを楽しみにしていてね♡

応援と⭐を楽しみにしているわね!


また、明日お会いしましょうね!



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