第16話 第三幕の閉幕
双方の王城の謁見の間が虚空に映し出された。
国王に皇帝の双方が同じ状態に目を見開く、その場に居合わせた当事者や関係者も驚愕に息を呑む。
「お母様、無事、第三幕の幕を開けたのですね」
「ええ、テティアも同じ状況のようね」
お互いに、エリスとジュリアスが創作したバトルドレスと錫杖を見て顔を赤らめ微笑んだ。
((私もあんな風に着飾っているのね…やっぱり恥ずかしいわ//////))
「さて、敗戦した国同士、戦勝したエンケラド辺境伯とサリウス伯爵の元に下ってもらいますわ」
テティアの冷めた声が、静かに両謁見の間に響く
国王に皇帝も顔を強張らせる。方や命を奪われそうになった国王、方や全てを企んだ首謀国の皇帝、立場は違えど同じ敗戦国だ
テティアの冷徹な声がさらに響いた
「宰相、あなたに聞きたいことがあります。まずは名前を名乗りなさい。」
「……」
宰相は固く口を噤んでいる。
「話す気はなさそうね。ビャク、お願い」
「はっ!」
ビャクは、立ち上がり、宰相の面前まで進み、錫杖を宰相の顔に軽く添えた。
「「傀儡自白術式!」発動!さぁ、宰相貴方の名前を名乗りなさい。」
「ドラン帝国宰相ジュール・エラルド公爵」
「ジュール公爵、貴方は、この騒動の裏で、魔王軍と手を組み、ミレニアム共和国とドラン帝国の滅亡を画策しましたね。」
「··········ニアム共和国の内戦を勃発後に、ユーリリア大陸から異形の魔獣を魔王様が転移呪術で送り込み、エンケラド辺境伯領の魔の森を通り、ミレニアム共和国を破壊後、残存勢力をドラン帝国内へ送り込み、ミレニアム共和国が謀ったことにして、全ての国が争いこの大陸で戦争を誘発させようと魔王様とともに企てました。」
「そう、残念なことに、その異形の魔獣達は、既に、我が『主神』が殲滅しましたわ。近い将来、この世界からユーリリア大陸、いいえ、暗黒大陸は消滅することになるでしょう。」
クロエは、傀儡・自白術式を解除し、テティアの隣に戻った。
「皇帝陛下、国王陛下、これでお分かりかと思いますが、我が聖城を犯す今回の件は、魔王が裏で操った事、それに、釣られたのが、アルデバラン公爵とこの宰相です。」
アルデバラン公爵は、驚愕と戦慄に目を見開き、悔しさから歯を強く噛み締め涙をながした。
「私達は、警告を発しましたね。共和国の宰相閣下、そうですね」
「は、はい…賜りました……」
次いでミモラ伯爵が語りだす──
「開戦は望む所でしたが、両国を支配下に置くことは、望んではいません。」
その言葉を聞いて、安堵の顔を浮かべる皇帝と国王
「しかし、看過できる範疇は超えました。だから、我がエンケラド辺境伯領を独立して、新たに『エンケラド王国』を興します。そして、新国王を私の弟メイルとします。」
静寂が両謁見の間に広がる
「先ほど我が軍が占拠したミレニアム共和国の17領地とドラン帝国の8領地を我がエンケラド王国、私の弟が既に接収し、代官を置き統治下におきました。
今後、両国は我が国との関税撤廃と和平協定の締結、我がエンケラド王国への恒久的な不関与を魔法契約すること、それと…」と続く賠償の数々を宣言する二人。
「今回の件に関与した者全ての粛清をもって、この度の贖罪としましょう。
これに異を唱えるなら、1カ月後に両国が完全に滅亡するか否かを選ぶことになります」
皇帝も国王も両国の執政官達も慌てふためく
「ちょっとまってくれ!そのような要求を全て呑むことはできない!帝国の滅亡とはいっ
たいどうなる!?」
「要求を1つでも飲まなければ、我が『主神』による神罰により帝国全土、共和国全土を『洗練の浄化』で、悪しきもの全てを焼き払い焦土と化し、悪しき者は住めない土地として、見せしめとします。今から1か月間は猶予期間としますが、その間、悪しき者が、国内から誰も逃れられないように、制約を課します。」
「……制約とは?」
「この帝国と共和国から出ようとしても、生きとし生きるもの全ての生命と両国内にある物質や病原菌も含めて、空気の対流も入るので、雨は降らないと思った方がよろしいですね。」
「ふざけるな!!そんな神がかった魔法など存在せんわ!」と七魔帝の賢者が雄叫びを上げた。
「「『理に干渉し超越結界』発動!」」
ミモラとテティアは同時に詠唱し、錫杖を掲げコンと軽く床を叩くと、ミモラとテティアから莫大な魔力と神力が溢れ出し、七色に輝く半円形の結界が煌めきながら、ゆっくりと拡張しはじめ、帝城や王城の壁や床や屋根を素通りし、一気に拡張し、両国の上空を覆い国境を境に固着したのだった。
「「これで、両国を完全閉鎖しました。1か月後の午前10時に約束が守られるか、ま
たは守られたか、謁見の間にて確認と結果を尋ねます。その時にお返事をお願いしますわ。」」とミモラとテティアが揃って、謁見の間に声を響かせた。
ビャクとメアリーとファルがテティアの両サイドで、さっと錫杖を掲げ、サリウス領軍二百名を転移の光に包み、ドラン帝国から消えた。
同じく、クロエとカレンがミモラの両サイドで、さっと錫杖を掲げ、サリウス領軍二百名と暗部と暗殺組織を転移の光に包み、ミレニアム共和国から消えた。
そして、謁見の間に残ったミモラとテティアは、高らかに錫杖を掲げ、荘厳なまでの神聖を纏い光の柱となって、浮上し空間の裂け目に消えていった。エリスとジュリアスの演出により華美とも言える演出で第三幕を閉幕したのだった。
──ここに第三幕を閉幕。
戻ったミモラとテティアは、家族に囲まれ、拍手喝采のアンコールを受け、二人は顔を真っ赤にし照れていた。
一方で認見の間に残された、帝国皇帝や七魔帝、宰相、関係する重鎮は、半信半疑で夢でも見ていたかのような感慨に呑まれ、七魔帝の賢者と呼ばれる白髪の老人は、ヨロヨロとテラスへ進み、七色に輝く空を眺め絶句し、床に膝を突き、力量の差をかみ締め、驕り高ぶった自身を恨むほかなかったのだった。
ドラン帝国国内では、虹色の障壁が帝国内を囲って以降、経済は停滞し、日に日に物価が上昇し、国民の生活に打撃を与え、ミレニアム共和国とドラン帝国が仕出かした首都や帝都での一見が瞬く間に国内の各領や国民に広がり、連日、領民から領主への陳情や領主から皇帝への陳情が後を絶たず、帝国内は不安と絶望が蔓延していた。
それと、同じ状況がミレニアム共和国にも起こっていたのだった。




