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天才術師の存在証明《イグジステンス》  作者: 絢野悠
【ファーランガル編】
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十話〈クロスオーバー:シンドラ=ファルエン〉

 ミュレストライア兵が駐屯する基地の中で、三人の祠徒が陰に隠れていた。


 シンドラ、クラリット、パンドラである。


 リュノアはこの世界の住人であるため、縁が召喚することはできない。ルキナスはいざという時のために縁が自分で抱えている。


 シンドラたちは基地に到着してすぐに召喚されていた。


 お手洗いに行きたいと言った縁がトイレで召喚したのだ。


 祠徒の召喚は、なにも主人の近くでなくてもいい。隙間さえあれば、換気口の裏にだって召喚が可能なのだ。祠徒の身体の大きさを調整することはできないが、半径十メートル程度ならば距離が調整できるのだと、縁もその時初めて知った。


「さて、どうするかな」


 無理矢理換気口に押し込められた三人だが、なんとか換気口を抜け出し、ひらけた場所で密談を始める。白い部屋にはなにもなく、ミュレストライア兵も見えないためしばらくは安心だろうとシンドラは考えた。


「今の状態では祠導術が使えません。私の能力もパンドラの能力も意味をなさない」

「いや、俺の能力があればなんとかなる。導術が完全に使えないのならば駄目だが、針一本分の穴さえ空いてれば、そこから無理矢理広げることができる。使えさえすれば、導術を使えないという状況を呪いとして反転させられるからな」

「しかし、それはまだとっておきましょう。縁の動向が定まらない限り、私たちにできるのは情報収集だけでしょうし」

「そうだな。あのイクサードとかいう奴、どうあがいても俺たちじゃ勝てないだろう。そもそもの自力が違いすぎる」

「戦闘は避けた方がいいでしょう。しかしできるのなら、縁が自由に動けるようになった時、スムーズに外に出られるようにしたいですね」

「まずはこの基地の地図だな。それと安全地帯の確保だ。縁の元に戻ると、次出られるのがいつになるかわからない。俺たち三人が隠れられる場所を探さないとな」

「本当に安全であるのならばここでも良い気がしますけどね」

「一応ここを基点にするか」

「気をつけなければいけないのは監視カメラでしょうね」

「その辺は気をつけて行動するか。身体を半透明にすることはできても、完全に透明にはできないからな」


 戦闘力は下がるものの、魔法力を薄めて目立たないようにできる。あまり極端なことをすればコントロールできなくなりそのまま消失する可能性もある。消失というよりも主人に戻るという言い方が正しい。が、この状態で主人に戻るということは、縁と分離した意味がなくなってしまう。


 それだけは避けなくてはいけない。シンドラもクラリットも同じことを考えていた。


 ふと、一度も口を開いていないパンドラに視線を移した。


「パンドラもそれでいいか?」

「うん、パンドラもそれでいい。パンドラは一人じゃなにもできないから」

「一人じゃなにもできないのは俺たちも一緒だ。三人で協力して、この状況を打破するんだ。いいな?」

「うん、みんなで、がんばる」


 笑顔になったパンドラの頭を、シンドラはその手で優しく撫でた。


「大丈夫ですよパンドラ。きっと、縁がなんとかしてくれる」


 クラリットもまた微笑んだ。


「さて、反撃の準備を始めようか」


 こくりと頷く二人。


 三人は顔を見合わせて、口元に小さく笑みを浮かべた。

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