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天才術師の存在証明《イグジステンス》  作者: 絢野悠
【サウザンドパルヴァライズ編】クロスオーバー:クオリア=ランゼルフ
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四話〈クロスオーバー:波佐間清〉

 清、尽、善、汐里、アラン、結の六名。そしてエレメンタルセブンを加えた十二名が大我との面会を終えた。軍服に身を包み第八支部を出た。


 攻撃、防御、救助の三部隊に別れ、互いに視線を交わらせてから任務についた。


 清、尽、火群、風音が攻撃要員。主に魔法力が大きな敵へと自分から戦いを挑む。他の軍人たちと一緒に駆逐するのが役割となる。


 善、汐里、影慈、土門が防御要員。救護班と共に移動し、救護班が住民の救助をしている間に敵を食い止める役目を負う。


 最後に、アラン、結、水希、雷蔵が救護要員。大型の自動車に乗って移動、逃げ遅れた住民を素早く収容するのが目的。だが、その際に必要があれば防御要員と一緒に時間をかせぐことになる。


 十人以上は収容できるだろうトレーラーに揺られながら、清は人差し指の指輪に視線を落とした。


 大我が全員に渡した、特殊な力を持つ指輪だという。時に身を守り、時に攻撃にも転用できる。しかし、自分からその力を使うのは難しく、生命の危機にでも瀕しなければ無理だろうという話もされた。


 指輪には赤い石が埋め込まれており、それを見ているとなんだか吸い込まれそうな気分を味わう。


 横揺れが収まり、軍人と共に外へと飛び出す。他の軍人は銃器をメインとして扱うが、学生四人だけは各々自由な武器を持っていた。


 車内でも感じていたが、外はより濃い魔法力が充満していた。軍用のトレーラーは外部からの魔法力を抑える力がある。それを透過してくるのだ、当然と言えば納得もできる。


 端の方に位置する住宅街。向こうからは小柄な少女が歩いてくる。


 後方を走っていた他のニ部隊は別の場所へと向かった。


 肌を燃え上がらせるような魔法力が全身を駆け抜けていく。戦闘を楽しむようなタイプでない清は、当たり前のように苦い顔をした。


「行くよ、清」

「わかっているさ」


 尽に促されて刀の柄を握る。


 その他の軍人たちが、少女を囲うように陣形を作っていた。が、清はあれほどの強さを持つ者に通用するかという疑問を抱く。


 名前はディオーラ。ミュレストライアの中でも指折りに強く、なによりもそのクローンたちがたくさんいる。大我の言葉を思い出しながら彼女を注視していた。


 いくつかの祠導術があり、どのクローンがどの能力を持っているかがわからない。能力の判別をする者達は皆負傷し、別の基地からの応援も難しい。それは、ここだけではなく他の基地もまた自分たちの生活環境を守るので手一杯だからだ。



1、【神の加護たる防御壁(ミスティックシールド)

広範囲、高硬度の障壁を展開する能力。


2、【孤独に佇む審司(ウォームソーサリー)

触れた者と魔法力を共有する。尚、自分以外の別の者同士の魔法力を共有させることもできる。


3、【その右腕は災厄なりウィッチクラフトコンフォート

右手に触れた相手に、無意識の行動を一つだけ植え付ける。


4、【その左腕は害悪なりウィッチクラフトバンデット

左手で触れた相手のなにかを奪う。五感であったり臓器の機能であったりと様々だが、一度に二つは奪えない。


5、【蓄積された怨恨(マジカルストレージ)

ダメージを蓄積させ、それを攻撃に転換するカウンター技。



 どの能力であっても面倒なことに変わりはない。ディオーラは単純な戦闘力だけであっても、清たちが束になっても敵わないのだ。


 周囲の軍人が銃を構えた。


「投降するのであれば」などといった口上を期待していたのだが、そんな期待は銃声の群れによってかき消された。特殊な銃弾を用いて、魔法力を直接ぶつける銃撃。世界中の魔法学者が造った銃弾と、魔導術の扱いに長けた軍人。並の魔導師が造った障壁など、そこに存在していなかったかのように貫通するほどの威力を持つ。


「いくぞ」


 火群が風音を連れて、銃弾の中へと駆けて行く。実力差はわかっているはずなのに、どうしてこう無謀なのかと頭を抱えた。風音と火群の気性は似ている。とても好戦的で前に進むことが戦士と疑わない。火群の方が思慮深く、風音の方が力に物を言わせるタイプだろう。


 清はその場で何度か刀を振り記憶点を生成した。これで二人になにかがあっても、自分が引っ張り戻ってこられる。


 尽は後方で弓を構えていた。目端で確認した清は、火群と風音の後を追う。


 近付けば近付くほどに、肌がチリチリと痛んだ。魔導術で身体をコーティングするも、強大さを思い知らされるほどに強烈な力を内包している。


 彼女たちの役目は時間をかせぐことにほかならない。全員がそれを理解している。好戦的に向くかっていく火群と風音もまた、脚の震えを隠していたのだ。力量差を理解した上で戦いを挑んだのは、彼女たちの性格の表れなのだろう。


 銃撃によって土煙が高く上がった。


 清が攻撃を仕掛けようとした時、土煙の中から火群と風音が吹き飛んでくる。二人は後方で着地したが、攻撃力の高い二人がまとわりつけないという現実が、清の思考を鈍らせた。


 銃声が止んだ。しかしそれは、軍人たちが攻撃の手を緩めたわけではない。


 急停止し、バックステップ。ディオーラとの距離を取った。


 攻撃の機会を失ったとは思わない。逆に、相手を見極めるための時間ができたとさえ言える。


「カウンター……!」


 土煙が晴れていく。ディオーラは右手を前に出し、青い光を纏っていた。


 彼女の祠道術が【蓄積された怨恨】であることがわかった。が、それがいいことなのか悪いことなのかは判別が難しい。


 障壁などの能力であれば、こちらがその障壁を貫通できるかという疑問がある。


 触れることで発動するものの場合でも、彼女から逃げ続けることは不可能。そして、受けたダメージを反射するタイプはもっと厄介だ。


 ダメージを受けてもなお戦える。治癒を匠に使うことが前提で、しかし攻撃は相手に依存する。単純な戦闘力でも劣っている清たちは、針を通すような攻撃でクリーンヒットを狙えない。返され、治癒されてしまうからだ。


「けっ、とんだ肩透かし食らっちまったな」


 と、ディオーラが口悪く言う。白いドレス、清楚そうな顔立ちからは想像もできないセリフだった。


「肩透かしとはまた言ってくれるな。本当の戦いはこれからかもしれないぞ?」

「はあ? 無理だろ。前衛二人があんなんで、銃持ってるヤツも考えなし。アンタがどれだけ上手くやろうとしても、私とアンタの力量差じゃ勝ち目はない。協力する気のない仲間を持つと大変だな」


 右手を顔に当て、彼女は「カカカッ」と笑った。


 左手には、長い長い鞭を持っていた。地面を這う蛇のようで、彼女の戦闘スタイルのいやらしさがなんとなくわかった。


 普通に戦っては勝てない。こちらの攻撃は返される。ダメージはゼロに戻されて、また立ち回りに戻ってしまう。相手の武器が鞭であるため、基本的には接近するまでにもかなり消耗するだろう。


 勝ち筋を模索するも、明確な答えは出てこなかった。


 回復が追いつかない、反撃もさせないほどの攻撃を浴びせ続けるか。答えはノーだった。魔法力が違いすぎる。


 祠道術などを発動される前に心臓を抉るか。答えはノーだ。そこまで接近させてはもらえず、ピンポイントで狙っても、魔導術で壁なんかを作られてしまうと貫通させられない。


 彼女の治癒力がどの程度なのか、そして【蓄積された怨恨】がどのタイミングで発動、隙があるのかどうかによっても戦い方はまた違う。


 応援は来ないと思っていい。来るとしてもクオリアなのだろうが、彼女は彼女で大勢のディオーラを相手にしているはずだ。


 細く長く息を吐いた


 可能性があるとすれば、一撃で仕留めるという作戦しかない。


 夕日が沈み始めたことで、尽が【泉に誓う月光】を発動させた。それによって治癒力が強化され、多少の攻撃であれば自動で傷が言える。同時に呪いや身体異常も耐性ができた。


 清は思わず笑っていた。


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