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取り敢えず酒飲もうか?

因みにここに出てくる日本酒は全てを飲んだ訳ではありません。

飲みたいですよチキショー 十四代と伯楽性飲めただけでも良きです。意外と現地行けば買えたりします。ただし財布とご相談を、アルプス政宗は比較的手に入りやすいですよ。私は好きな味です。

健太は台所で手を動かしながら、二人が風呂から上がるのを待っていた。

自分で獲ったイノシシの肉を薄く切り、季節の野菜と山で採れたきのこをたっぷり用意する。今日は牡丹鍋だ。大きな土鍋にだしを仕込み、火にかける。ご飯は自分の田んぼで取れた米を炊き、香ばしい湯気が立ち上る。シンプルだが、健太にとっては日常の贅沢だった。

やがて、風呂場の方から足音が聞こえた。

二人が居間に入ってくると、健太はにこりと笑って迎えた。

みよりが苦笑いしながら言う。

「すみません、居間が何処かわからなくて、取り敢えず電気が着いてる所を目指しました。」

そう言われると健太が頭を抱え、

「しまったぁ! 二人に居間の場所言うの忘れてたか。でもよかった、場所がわかって。座ってくれ。ちょうど飯ができたところだ」

ゆかりとみよりは、少し恥ずかしそうに座布団に腰を下ろした。乾いた服に着替えた二人は、さっきより血色が良くなっている。

「お風呂、ありがとうございます」

ゆかりがぽつりと礼を言った。

みよりも深く頭を下げて続ける。

「感謝しても仕切れません……あの時は覚悟は決まっていましたが、ゆかりちゃんが意識を失っているのを見たら、急に怖くなりました。本当に……ありがとうございます」

健太は鍋をかき混ぜながら、穏やかに首を振った。

「いいんだよ。それより風呂の湯加減は良かったか? 俺はちょうどいいが、女性にはちと熱い気がしてな」

二人は顔を見合わせて小さく頷いた。

「ちょうど良かったです……温まりました」

「丁度飯を作った。お酒を飲みたければ言ってくれ! なんでもあるぞ」

健太はにっこり笑いながら、そう言って二人の前に湯気の立つ牡丹鍋を置いた。イノシシの脂が野菜ときのこに染み込み、食欲をそそる良い匂いが居間に広がる。

「イノシシと山菜、きのこの牡丹鍋だ。自分の田んぼの米でご飯も炊いた。ご飯が欲しい時は言ってくれ」

二人は鍋を見つめ、目を少し潤ませていた。

温かい湯気と、優しい匂いに包まれ、さっきまでの冷たい川の記憶が少しずつ溶けていくようだった。

鍋がぐつぐつと煮立つ中、健太が酒の話を振ると、みよりの目がぱっと輝いた。

「じゃあ、日本酒ってあります?」

「みより、こんな状況でよく飲めるね?」

ゆかりが少し呆れた顔で言うと、みよりは肩をすくめて笑った。

「いいの。考え過ぎたらなんか急に飲みたくなったの」

ゆかりはため息をつきながらも、健太の方を向いた。

「じゃあ……私はハイボールってありますか?」

健太はにっこり頷いた。

「あるぞ。日本酒もハイボールも。日本酒は丁度もらった十四代の生酒があったな」

その瞬間、みよりの動きがぴたりと止まった。目が点になり、健太を見る。

「じゅう……よんだい? え? 本当ですかぁーーー? しかも今生酒って言いました? 言いましたよね?」

目を輝かせ、身を乗り出してくるみよりに、健太は少し驚きながらも答えた。

「一升瓶であるぞ。飲むか?」

「ちょっとみより、そんなに取り乱さなくてもいいじゃない? そんなに凄いお酒なの、十四代って?」

ゆかりが呆れ顔で言うと、みよりは興奮した声でまくしたてた。

「凄いなんてもんじゃないよ! 幻のお酒だよ! しかも生酒? 絶対飲ませてください!」

健太は苦笑しながら言った。

「他にも陽乃鳥、信州亀齢、金雀、而今……他にも100種類以上あるな」

その言葉を聞いた途端、みよりはまだ一滴も飲んでいないのに、完全にキマった顔になった。

「うぅーーーー全て幻のお酒! 今言ったやつ全部持ってきてください!!」

「はぁ〜……ごめんね? こうなったみよりはもう止められないの」

ゆかりが深いため息をつきながら、健太に申し訳なさそうな視線を送る。

健太はニコッと笑いながら言う。

「大丈夫だよ。待ってて、今持ってくるから」

テーブルには湯気の立つ鍋を美味しそうに見つめる二人。さっきまで川で泣いていた二人が、今は少しだけ、日常の温かさを取り戻しているように見えた。

健太は近くにある酒専用の蔵に行き、しばらくして居間に戻って来た。

「お待たせ。これが十四代の生酒、角新 中取り純米吟醸 無濾過 生酒。こっちが陽乃鳥、信州亀齢、金雀、而今。君には割るようにウィスキー持って来たんだけど、ニッカでいいかな? 炭酸水はここの水に炭酸入れる機械使ったから、美味しいよ!」

ゆかりは「大丈夫ですよ。ありがとうございます♪」

みよりが俯きながら言う。

「ゆかり、ここは天国だよ。そうに違いない、だってぇーーー!」

顔を上げるとニコニコした顔で、目がハートマークになっている。

「幻の日本酒達が目の前にあるんだよ? ねぇゆかり? 総額いくらだと思う? 下手しなくても10万は余裕だよ!」

みよりはニコニコしながらスマホで写真を撮る。

ゆかりが苦笑いしながら、

「そんなに高いの、これ?」と半信半疑で言う。

健太は二人の反応を見て、嬉しそうに笑った。

「じゃあ、酒に合うつまみも出そうか」

そう言って台所と行き来し、次々と追加の料理を運んでくる。

新鮮な鮎と川魚のお造り、ヤマメの塩焼き、山で採れた山菜の醤油和え、きのこのバター炒め、自家製の漬物……。どれも今日の朝や昨日までに獲ったり採ったりしたものばかりだ。牡丹鍋の良い香りと一緒に、居間は一気にごちそうの匂いで満たされた。

二人はお猪口とハイボールグラスを手に、そろそろと飲み始めた。

みよりは十四代の生酒を口に含んだ瞬間、目を大きく見開いた。

「こ れ が 十四代の生酒!!! 美味し過ぎる。やばすぎ!」

お猪口をぐいっと一気に空けると、すぐに自分で継ぎ足す。頰がみるみる赤くなり、目がうるうるとしてきた。

健太は自分の持って来た日本酒をお猪口に入れた。そして満足げに頷いた。

「いい飲みっぷりだね。俺も嬉しいよ」

みよりがふと気付く。

「あ、お兄さんの飲んでるの伯楽星とアルプス政宗だ。どちらも美味しいですよね。てかその伯楽星も純米大吟醸じゃ無いですか。後で飲ませてください」と興味津々に言う。

みよりは杯を置くと、恍惚とした表情で天井を仰いだ。

「はぁ…十四代が飲めるなんて幸せぇ〜!」

その言葉に、ゆかりが思わず吹き出した。

「みより……もう完全に酔ってるじゃない」

ゆかりもハイボールを一口飲んで、ほっと息を吐いた。

鮎の刺身を箸でつまみ、口に運ぶと、川の清流のような繊細な味わいが広がる。ヤマメの塩焼きは皮がパリッと香ばしく、山菜の醤油和えは山の風味が凝縮されている。

「本当に……全部美味しいです。こんなに沢山の心がこもったごちそう、久しぶりかも……」

ゆかりの声はまだ少し震えていたが、さっきより柔らかくなっていた。

みよりはもうお猪口を片手に、十四代を大切そうに眺めながら、幸せそうな顔で鍋をつついている。

健太は静かに杯を傾けながら、二人の様子を温かく見守っていた。

酒と料理が、二人の心の凍えた部分を少しずつ溶かしているようだった。

みよりは十四代の生酒をもう一度お猪口に注ぎ、目を輝かせながら鼻を近づけた。

湯気の立つ牡丹鍋と山菜のおつまみを横目に、彼女は興奮を抑えきれない様子で語り始めた。

「はぁー美味すぎる……十四代の生酒!!!

香りだけでヤバいよ……熟したメロンみたいな甘くて華やかな吟醸香がふわぁっと来て、ちょっとパイナップルやマスカットみたいなフルーティーさも混じってる……!」

みよりは早口で感想を言う。

ぐいっと一口飲むと、みよりは目を閉じて小さく身を震わせた。

「んっ……! 口に含んだ瞬間、トロッとしたまろやかな甘みがじゅわぁっと広がって……和三盆みたいな上品な甘さなのに、ぜんぜんくどくないの!

酸味が繊細に効いてて、全体をキレイに引き締めてくれる……。

後味はスッキリとドライで、ほんのり苦味が残るんだけど、それがまた心地よくて……余韻が長いの!

生酒特有のフレッシュさで、果実をそのままかじってるみたいなジューシーさがある……これ、幻って言われるの納得だわ……!」

お猪口を空けると、すぐにまた継ぎ足す。頰は真っ赤で、目は完全にトロンとしていた。

健太は笑いながら自分の杯を傾けた。

みよりは杯を両手で包むように持ち、恍惚とした顔で言った。

「死ななくて本当に良かった……。

こんな美味しくて上品で、しかもジューシーな日本酒、他にないよ……ゆかりちゃんも一口飲んでみて! 絶対ハマるから!」

ゆかりは呆れつつも、微笑みながらハイボールを飲み、みよりの興奮した様子を温かく見つめていた。

みよりの熱い感想を聞いたゆかりが、興味津々で身を乗り出した。

「そんな味なの? 私にも飲ませて」

そう言って、みよりのお猪口にそっと口をつける。

一口含むと、ゆかりの目がぱっと開いた。

「わ……この味、まるでジュースみたい。これなら日本酒が苦手な私でも飲めそう……甘くてフルーティーで、後味もすっきりしてるのね」

健太は二人の様子を見て、にこっと笑いながら言った。

「十四代は女性に特に人気がある銘柄の一つなんだよ。フルーティーで飲みやすいから、日本酒が苦手な人でも意外とすんなり入っちゃうんだ。

もし日本酒に苦手意識があるなら、ここにあるのは全部おすすめだな。

• 陽乃鳥は白桃みたいな華やかな香りがして、甘みも優しい感じ。

而今じこんは酸味が綺麗で、軽やかでジュースみたいに飲めるよ。

金雀きんじゃくは柔らかい甘みで上品な味わい。

• あと信州亀齢の大吟醸も、フルーティーで初心者さん向けだな。

うちには甘口寄りや飲みやすいやつが他にもたくさんあるから、好みに合わせて出そうか? 遠慮なく言ってくれよ」

ゆかりは少し頰を赤らめながら杯を返し、みよりは嬉しそうに十四代をさらに注いだ。

「ほら、ゆかりちゃんも気に入ったでしょ? 今日は飲み比べしよ!」

「はぁーー……首都圏じゃ高くて絶対に手に入らない日本酒達が私の眼前にぃー……

次はどれから飲もうかな〜うーん……」

みよりは本気で悩みながら瓶を順番に見つめ、指でラベルをなぞっている。

ゆかりはそんなみよりを呆れ半分、優しい目で見つめながら、ふと健太の方を向いた。

「そういえば……まだお名前を伺ってなかったですね?」

健太は少し照れくさそうに頭を掻きながら、穏やかに答えた。

「俺の名前は健太だ。二階堂健太にかいどう けんた。よろしくな」

ゆかりは丁寧に頭を下げた。

「よろしくお願いします、健太さん。

私はゆかりです。北条院ゆかり(ほうじょういん ゆかり)と言います。

そっちの、日本酒にゾッコンの子が綾瀬みより(あやせ みより)と言います」

「改めて、よろしく」

健太はにこっと笑ってそう返した。

みよりは瓶と格闘しながら、ようやく顔を上げて小さく会釈した。

「……み、みよりです。よろしくお願いします……(でもまずは十四代をもう一杯……)」

三人の間に、初めて互いの名前が交わされた。

酒の香りと鍋の湯気の中で、少しだけ距離が縮まった気がした。

夜は更け、居間は酒の良い香りと笑い声に包まれていた。

三人は夜中まで飲み明かした。驚いたことに、ゆかりもみよりも酒が異様に強かった。

日本酒を何合も空け、十四代や而今、陽乃鳥を次々と飲み比べしても、二人は顔色一つ変えず、むしろ頰をほんのり赤らめて楽しげに話す。

健太でさえ「これは敵わんな……」と苦笑するほどだった。

しかし、さすがに飲み過ぎたのか——。

「……ん……」

「ゆかり……もっと飲む……?」

二人は鍋の残りを囲んだまま、ぽつぽつと会話をしていたが、徐々に声が小さくなり、ついにテーブルに突っ伏すようにして寝入ってしまった。

健太は静かに微笑み、起こさないよう慎重に動いた。

押し入れから清潔な枕を二つ取り出し、そっと二人の頭を起こして優しく乗せてやる。

次に、厚手の毛布を二人の肩まで丁寧に掛けた。

みよりは十四代の空き瓶を抱きかかえるような格好で、ゆかりは穏やかな寝顔でみよりの肩に寄りかかっていた。

健太は静かに食器を片付け、残った鍋やつまみを下げ、テーブルを拭いた。最後に居間の電気を消す前に、二人の寝顔をもう一度見つめた。

「今日はゆっくりおやすみ。

もし理由を話したくなったら、いつでも言ってくれ」

小さく、そう声をかけた。

居間の明かりを落とすと、月明かりだけが窓から差し込み、二人の寝息が静かに響いていた。

健太は自室に戻る前に、もう一度だけ振り返り、心の中で呟いた。

(……本当に無事で良かった)


しっかり書けてるかわかりませんが、感想とかあったらよろしくお願いします。

もしここに出てる日本酒飲んだ事あるよーとかいうめっちゃ羨ましい方は、作者まで味の感想をお願いします。


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