出会いは突然に
前回投稿した夢小説から早15年、社会人として楽しい事辛い事を経験する過程で、最近好きになり出した百合アニメを観て、愛の形は人それぞれであるとう言う事、果たしてそれは愛なのか依存なのかその境界線は何処にあるのか?など難しく考える内に自分で小説を書こうと模索して、今日ここに執筆に至りました。
ぶっちゃけ言いますが、最初は百合に挟まる男になりたかったのです。しかし、次第に男同士女同士でも愛の形は変わらないんだなって思いました。
でも皆さんすみません。この小説に出てくるヒロイン二人はバイセクシャルです。主人公の事を好きになります。
久しぶりの小説投稿なので、AIにも手伝っていただきました。
仕事のストレス発散の面で妄想を具現化している為、多少現実とかけ離れていても多めにみてください。
朝霧が山の木々の間にゆっくりと流れ込む頃、二階堂健太はいつものように鶏小屋の前に立っていた。
三十路を目前に控えた彼の体は、父から受け継いだこの土地を一人で守り続けるうちに、引き締まった筋肉を纏っていた。斧を軽く振り回すだけで木を割り、猟銃を構えれば山の獣を仕留め、川に網を下ろせばアユや鱒が銀色に跳ねる。
「今日も元気だな、お前ら」
鶏たちが慌ただしく餌を突く音を聞きながら、健太は小さく笑った。
村はもう、彼以外に住む者はいない。中学・高校と農業について積極的に学び、山向こうの農業大学に進学。その後この村に戻り、父と暮らした。父が亡くなって数年、母はもっと前に都会の病院で息を引き取っていた。
広大な田畑では稲が青々と育ち、牛の乳搾りを終えた桶が重く揺れる。
「よしよし、今日も沢山乳を出してくれてありがとうな」
牛を優しく撫でる健太。豚たちは泥の中で満足げに転がり、川の流れは今日も変わらず澄んでいる。
電気は細い電線で山を越えて届き、水は川から直接引いている。下水の浄化施設も、昔の村の設備がまだ健在だ。
週に一度、愛車で山道を下って小さな町へ行き、塩や醤油、灯油や電池を買い、自分の作った米や野菜を山の下の道の駅で売る。それだけで十分だった。
ハンティングの獲物を解体する作業は、もう彼の日常の一部。血の匂い、刃物の冷たさ、命の重み——それらを丁寧に扱うことで、健太はこの土地と深く結びついていると感じていた。
しかし、今日の朝は少し違った。
川の上流の方から、かすかな人の声のようなものが聞こえた気がした。
「上流の方に行ってみるか」
健太は川の岩場伝いに上流へと歩き出した。
川の岩陰に身を潜め、健太は息を殺してその光景を見つめていた。
二人の女性は、二十歳前後くらいだろうか。どちらも整った顔立ちで、一人は少し背が高く髪の毛は薄い茶色、もう一人は華奢で儚げ、こちらは髪の毛がピンクだ。物悲しそうな表情で川面を見つめ、互いの手を固く握り合っていた。
「そろそろ……行こうか? 最後に言わせて。大好きだよ、ゆかり」
「私も大好きだよ、みより」
その言葉を聞いた瞬間、健太の胸に冷たいものが走った。二人はゆっくりと川縁に近づき、今まさに足を踏み出そうとしている。
「やめろ! 早まるな!!」
咄嗟に声が飛び出した。
二人がびくりと肩を震わせ、こちらを振り向く。驚きのあまり、みよりの足が岩の苔で滑った。
「きゃあっ!」
「嘘……やだやだやだ! 置いてかないで、ゆかり!!」
川に落ちたゆかりを追いかけるように、みよりが必死に手を伸ばす。健太は迷わず岩場を蹴り、冷たい川に飛び込んだ。
激しい水流が体を襲う。必死に泳ぎ、沈みかけたゆかりの体を抱きかかえた。彼女はすでに意識を失っていた。
岸に引き上げると、みよりが泣きながら駆け寄ってきた。
「ねぇ、起きてよゆかり……やだよ。行くなら二人でって言ったじゃん……」
大粒の涙がぽろぽろと落ち、みよりは震える手でゆかりの胸や頰をさする。唇が青ざめ、息がない。
健太は「離れてろ」と言い、すぐにゆかりの体を真っ直ぐに寝かせ、人工呼吸を開始した。冷たい水と必死の行動で、自分の体も震えていたが、動作は確かだった。
何度目かの人工呼吸の後、ゆかりの胸が大きく波打ち——
「ブフゥゥッ!」
口から大量の水が吐き出され、激しい咳が続いた。
「ゆかり!?」
「みより……? 私……どうなったの?」
ゆかりの目がゆっくりと開く。みよりは声を上げて泣きながら、彼女の体に飛びついた。
「よかったぁ……目が覚めた! 本当によかった……もう離さないからね……」
二人は川縁で強く抱き合い、互いの体温を確かめるように震えていた。
健太はその様子を少し離れたところで眺め、濡れた服から滴る水を払った。心臓がまだ激しく鳴っているが、声は穏やかだった。
「二人共、何があったか無理には聞かない。取り敢えず俺の家に来い。服を乾かして、暖かい飲み物を出そう。話したくなったら、どうして飛び込もうとしていたのか教えて欲しい。今会ったばかりの男を信じてくれとは言わない。だが、君達の事が心配なんだ」
みよりとゆかりが、はっと顔を上げた。涙でぐしゃぐしゃになった顔で、初めて健太をまともに見つめる。二人の目には、警戒と、わずかな安堵が混じっていた。
みよりとゆかりは顔を見合わせ、少し迷うような間を置いた後、こくりと頷いた。
「わかりました。助けていただいた恩もあるので……付いて行きます」
道中、二人はずっと手を繋いだまま、しっかりとした足取りで健太の後ろをついてきた。
時折、互いの指を強く握りしめ、さっきの出来事を思い出すように肩を寄せ合う。
健太は前を歩きながら、無理に話を振らず、時々足元が悪い場所を声をかけて注意するだけだった。
みよりがゆかりに小さく耳打ちをする。
「ねぇゆかり、どう思う、あの人?」
「少なくとも悪意は感じない。純粋に心配しているだけだと思う」
「だよね。でも男の人はわからないからなぁ。身体を差し出せなんて言われたらどうしよう」
みよりが少し肩を落としながらビクッとする。
ゆかりはニコッと笑い、
「その時は隙を見て逃げ出そう!」
そう言いながら歩く。
山道を少し下った先に、広々とした平地が開ける。平地には田んぼや畑が広がっている。奥にはビニールハウスもあった。
その先の坂道を登ると、そこに父から受け継いだ大きな木造の家が現れた。古さを感じさせるが、手入れは行き届いており、近くにはこちらにも田畑と家畜小屋が広がっている。
「ここが我が家だ。ちょっと玄関で待っていてくれ」
健太はそう言い、二人の前で先に家に入った。すぐにバスタオルを二枚持って戻ってきて、二人に手渡した。
「……ありがとうございます」
そこで初めて、二人の口から言葉が出た。小さく、か細い声だったが、確かに「ありがとう」と言っていた。
健太は少し照れくさそうに頭を掻きながら続けた。
「身体が冷えるといけない。まずは風呂に入った方がいい。ちょうどこの後入ろうと思って焚いておいたんだよ。風呂場は廊下の角を曲がって左だ。好きなだけ使ってくれ」
「ありがとうございます……」
健太は続けて言う。
「それと悪いが、着ているものを洗濯してしまってもいいか? 家のは洗濯乾燥機だからすぐ乾くと思うが」
と優しく問いかける。
「すみません、色々ご迷惑かけてしまって。よろしくお願いします」
ゆかりは小さく会釈した。
健太は「気にするな」とニコッと笑う。
二人はもう一度小さく礼を言い、会釈をして風呂場へと向かった。手を繋いだまま、互いに寄り添うように廊下を進んでいく後ろ姿を見送り、健太は小さく息を吐いた。
家の中は広く、木の香りが漂っている。台所では湯を沸かす準備をし、温かい飲み物を用意し始めた。外はもう薄暗くなり、川の音が遠くに聞こえてくる。
(あいつら……一体何があったんだ……)
健太は内心で呟きながら、乾いた服に着替え、二人が風呂から上がるのを待った。
健太は台所で湯を沸かし、二人分の温かい飲み物を用意しながら、ふと目を上げた。
風呂場のほうから、微かに水音が聞こえてくる。
(……服が濡れたままだと、身体が冷えるな)
彼は静かに動き出した。玄関近くに置いてあった二人の濡れた服を丁寧に拾い上げ、洗濯機へ入れる。
山奥の家とはいえ、洗濯乾燥機は数年前に買い替えたもので、使い慣れていた。洗剤を入れ、コースを選んで回す。乾くまで少し時間がかかるが、彼女達が上がってくる頃には乾いた服を渡せるだろう。
湯を沸かしながら、健太はぼんやりと考えていた。
二人はなぜあんなに悲しげな顔で川に飛び込もうとしたのか。無理に聞き出すつもりはないが、もし話したくなったら……その時はちゃんと聞こう。
やがて乾燥機の音が止まる。健太は乾いた服を丁寧に畳み、バスタオルで包んで風呂場の方へ向かった。
廊下を進むと、風呂場のドアが少し開いている。湯気がもれてくる中、脱衣所の奥から——
「……ごめんね、みより……私、怖くて……」
「ううん、私こそ……ゆかりを一人にしちゃいけないって思ってたのに……」
二人の泣き声が、静かに聞こえてきた。
互いの名前を呼び合いながら、抑えきれない嗚咽が漏れている。抱き合っているのだろう、声が少し重なっていた。
健太は足を止め、息を殺した。
(……無理に声をかけちゃいけないな)
彼はそっと、畳んだ服を脱衣所の棚の上に置いた。バスタオルごと、丁寧に重ねて。
二人が気付かないように、音を立てないよう細心の注意を払って。
一瞬、ドアの向こうの泣き声に耳を傾けたが、すぐに背を向けた。
健太は静かに廊下を引き返し、台所へ戻った。
(あいつら……相当、辛いことがあったんだな)
彼はもう一度、湯を沸かし直しながら、二人を待つことにした。
無理に慰めたり、詮索したりはしない。ただ、必要なら話を聞く。
それが、今の健太にできることだった。
その頃、風呂の中で二人は落ち着いた様子で話していた。
「あの人、意外に優しいね。お風呂まで貸してくれて、しかもここのお風呂めちゃくちゃ広いし」
「あの人ずっとここに暮らしてるみたいね。建物も年期入ってるけど綺麗だし、車も大きなトラックみたいなのだし。それにみよりも見たでしょ? あの大きな畑や田んぼ、全部一人で管理してるのかな?」
「牛とか豚、鶏も居たよね。自給自足ってやつかな。兎に角、最初に心配してた嫌な感じは無い。信用してもいいかもね」
「でもまだ、警戒はしないとね」
そう言うと二人は風呂から上がり、脱衣所で身体を拭いた。
みよりがふと気付いた。
「あれ? いつのまにか服が畳んで置いてある」
ゆかりが少し驚いた様子で言う。
「あの人来てたんだ? もしかしてわざと声掛けなかったとか?」
みよりがニコッと笑いながら、
「ありえるね。なんか優しそうだもん」
二人は乾いた服に着替えて、廊下を歩いていった。
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