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人生色々 愛も色々

居間に着いた四人。

ゆかりは冷蔵庫から麦茶のボトルとコップを取り出し、テーブルに並べた。

「どうぞ。麦茶でよければ」

そう言って、静かにコップへ注いでいく。

四人は一旦着席すると、ゆかりが穏やかに口を開いた。

「改めて、自己紹介をしましょうか。

私は北条院ゆかりです」

みよりも笑顔で続けた。

「綾瀬みよりです。よろしくお願いします!」

愛莉が明るく手を挙げて、

「稲瀬愛莉です! 大学4年です」

祥子も落ち着いた声で、

「美濃祥子です。同じく大学4年です。よろしくお願いします」

と頭を下げた。

簡単な自己紹介が終わると、愛莉はすぐに身を乗り出し、明るく興味深そうに聞いた。

「ねえねえ、お二人ってどうやって出会ったんですか? 馴れ初めとか、あるんですか?」

ゆかりとみよりは一瞬、目を見合わせた。

みよりが少し考えてから、明るく話し始めた。

「私たちは昔からの付き合いで……。

色々あって、ここから離れた場所にいたんだけど、事情があってこの辺りに来ることになって。

その時に健太君に助けてもらって、それからここに住むようになったの」

ゆかりも穏やかに続けた。

「詳しいことは話せないんだけど、住む場所を探している時に、たまたまこの土地に辿り着いたの。

健太さんが快く受け入れてくれて……今に至る、という感じよ」

愛莉は少し首を傾げながら、

「へぇー、なんか色々ありそうですね」

と興味深そうに言った。

祥子は静かに二人の表情を観察していた。

祥子が静かに聞いた。

「その男の人とは、どう言う関係なんですか?」

ゆかりが目を丸くして答えた。

「どうも何も、夫よ。私とみよりの」

その言葉に、愛莉が驚きながらも冷静に、しかしどこか興味なさそうに言った。

「あぁ〜世間体ですよね。

やっぱり私たちレズって、そう言う方法取らないと法律の権利受けられないですもんね。

あーあ、早く同性婚実現しないかな〜。

そしたら私たちもゆかりさん達も、男と籍なんか入れなくても済むのに」

みよりが真剣な顔で首を横に振った。

「愛莉さんだっけ? 何か勘違いしてるみたいだけど、

私もゆかりも、本当に愛してるんだよ? 健太君の事」

その瞬間、愛莉の表情が一気に崩れた。

「は? え?

イヤイヤイヤ、だって二人は愛し合ってるんですよね?

それで二人共男も好きって……え? どう言う事?」

慌てた様子で身を乗り出してきた。

みよりは少し困った顔をしながらも、真剣に説明を続けた。

「私たちは最初、お互いしか見てなかった。

でも健太君に出会ってから……少しずつ、彼のことも好きになっていったの。

今は三人で家族として一緒にいる。ゆかりは籍を入れて、私は養子縁組の形だけど」

愛莉は大きく首を横に振り、はっきりと否定するように言った。

「いや、わかんない。全然わかんない。

だってレズビアンなんでしょ?

女同士で愛し合ってるのに、どうして男も好きになるの?

なんか無理があるっていうか……絶対おかしいって思う」

ゆかりも穏やかに補足した。

「私たちは無理をしてるわけじゃないの。

自然と、そうなった。

健太さんのことを、心から大切に思ってる」

それでも愛莉は納得がいかない様子で、腕を強く組んだ。

「うーん……私には理解できない。

好きな人がいるのに、他の人も好きになるなんて。

そんなの、どっちも中途半端じゃない?

私だったら絶対に嫌だよ」

一方、祥子は冷静に二人の話を聞いていた。

感情的になることなく、静かに状況を整理するように目を細めている。

「……つまり、最初はお二人の関係があって、そこに健太さんという存在が加わった、ということですね。

無理矢理ではなく、自然な流れだった、と」

ゆかりは頷いた。

「ええ。そういうことよ」

祥子は小さく息を吐き、静かに言った。

「少し複雑だけど……お二人の表情を見ていると、嘘ではなさそうですね」

ゆかりが静かに言った。

「私たちも、最初は自分たちをレズビアンだと思ってた。

でも今は……バイセクシャルに近いんじゃないかと思ってる」

その言葉に、愛莉ははっきりと顔をしかめた。

「なんかそう言うの、嫌です。

結局男も好きって事でしょ?

不誠実な気がします」

祥子は隣で穏やかに首を傾げた。

「そうかな?

私は、愛の形の一つだと思うけど?」

愛莉は祥子の方を見て、少し唇を尖らせた。

「祥子までそんなこと言うの……?」

健太が収穫から戻ってきた。

「ただいま。あれ? お客さん?」

祥子は丁寧に頭を下げて、

「お邪魔します」

と言ったが、愛莉は警戒心が抜けないのか、顔を見ずに短く返した。

「どうも、失礼してます」

健太は空気を察したのか、穏やかに言った。

「ごめんね、話の途中で邪魔しちゃって。

ゆっくりして行って。二人共、今日の夜ご飯何が良い?」

ゆかりは「洋食がいいわね」と答え、みよりも続けた。

「いいねぇ。ハンバーグとかオムライスとか?」

健太は頷いて、

「わかった。佐久間さんももうすぐ帰ってくるから」

と言い残し、居間から出ようとしたその時——

愛莉が声をかけた。

「待ってください。ちょっと話、いいですか?」

祥子が穏やかに言った。

「こっちに来て一緒にお話ししましょう。ちょうど聞きたいこともあったので」

健太は素直に頷き、居間に戻ってきた。

「ここいい?」

そう言って、空いている場所に自然と腰を下ろした。

愛莉が少し身を乗り出して、ストレートに聞いた。

「あの、さっきから気になってるんですけど……。

ゆかりさんとみよりさんと、どういう関係なんですか?」

祥子も隣で静かに続けた。

「私たちは、お二人が指輪をしているのを見て、少し驚いてしまって。

夫がいると聞きましたが……三人で、どのような形で一緒にいるのでしょうか」

健太は二人の視線を受け止め、少し考えてから答えた。

「正直に言うと、ちょっと普通とは違う関係だよ。

ゆかりとは籍を入れて結婚してる。

みよりとは養子縁組をして三人で家族として暮らしてる」

ゆかりが穏やかに補足した。

「最初はみよりと二人だけでした。

でも健太さんに助けてもらって、一緒に暮らすうちに……自然と、三人でいることが当たり前になっていったの」

みよりも真剣な表情で続けた。

「無理にそうしたわけじゃないよ。

私もゆかりも、健太君のことが好きになった。

だから今は、三人で家族として生きてる」

愛莉は腕を組み、さらに質問を重ねた。

「でも、レズビアンだったんですよね?

どうして急に男の人も好きになるんですか?

好きな人がいるのに、他の人も好きになるって……私には理解できないんですけど、それって浮気じゃないんですか?」

彼女の声には、はっきりとした拒否感が混じっていた。

健太は静かに三人を見渡し、はっきりと言った。

「俺たちは、今の関係に納得してる。

無理をしてるわけでも、我慢してるわけでもない。

三人でいることが、今の俺たちにとって一番自然なんだ」

ゆかりも穏やかに頷いた。

「ええ。私もそう思ってる。

みよりも健太も、どちらも大切で……どちらも手放したくない」

みよりが少し照れながらも、真剣に付け加えた。

「私もだよ。

最初は戸惑ったけど、今はこの関係がしっくりきてる。

三人でいるのが、一番落ち着くし、幸せ」

その言葉を聞いて、愛莉は言葉を失った。

(……は? 待って。

レズビアンなのに男も好きなだけでもおかしいのに、

その好きな人も男の事が好き?それじゃまるで・・・

そんなの……ありなの?

普通に考えておかしいはずなのに……。

でも、この三人の顔を見てると、嘘をついてる感じがしない。

無理やりでもなさそうで……なんか、自然に見えてしまう。

わかんない。頭がごちゃごちゃする……)

愛莉は額に手を当て、混乱した表情を隠せずにいた。

一方、祥子は冷静に三人を観察していた。

(この関係は、下手をすれば危うい。

今は上手くいっているように見えるけど……。

私たちが真似したいとは思わないし、他のレズカップルが同じことをしようとしても、うまく行くものじゃないと思う。

特殊なケースなんだろうな)

祥子はそれ以上何も言わず、静かに状況を見つめていた。

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