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宿の計画実行開始2

熱いっすねぇ〜嫌ぁー熱い



マジファック

トラックに戻った三人は、再び出発した。

出発してすぐに、健太が真剣な声で言った。

「二人共、籍入れるまでは外ではイチャイチャはやめよう!

何処で誰が見てるかわからない。それこそSNSにでも上げられてゆかりの家に見つかったら本末転倒だ」

ゆかりも反省した様子で、

「そうね、ちょっと目立つ行動で軽率だったわ。ごめんなさい」

みよりも寂しそうに、

「ごめんね、私が抱きついちゃったせいで……」

健太ははっきりとした声で、

「何言ってるんだ。二人がそれだけ俺の事思ってくれたのは凄く嬉しかった。

俺も愛してるからこそ、ずっと一緒に居たいんだ」

二人は同時に、

「ありがとう健太」「ありがとう健太君」

と言い、車内は再び温かい雰囲気に包まれた。

途中、トイレ休憩でパーキングエリアに寄った。

トイレを済まして車に戻る途中に、みよりが指を差して言った。

「ねぇ二人共観て〜夜景の見える丘だって!」

ゆかりが興味深そうに、

「帰り遅くなるならこのパーキングで夕食軽く食べて、それから観に行ってもいいわね」

健太も頷きながら、

「そうだね。じゃあ帰りはもう一度ここに寄ろう」

そう言って、三人は再びトラックに乗り込み、浅川工務店に向かった。

工務店には約束の時間の20分前に到着した。

健太がトラックを停めて、

「はい到着! みより? 道中平気だったか?」

と後ろを振り返った。

みよりは笑顔で、

「全然平気だった。健太君の運転上手いんだもん!」

健太は「ありがとう」と言いながらニコッと笑った。

ゆかりが時計を見て、

「約束より20分早いけど大丈夫かしら?」

と聞いた。

健太が「大丈夫だよ、ほら」と言うと、ちょうど担当者が建物から出てきた。

健太がトラックから降りると、声をかけられた。

男性「嫌〜昨日は大変失礼しました。どうしても急な要件でって言われて予定を急遽変更してしまって……」

健太はニコッとしながら、

「いいんですよ。お久しぶりですね、浅川さん」

その人物こそ、浅川工務店社長の浅川大作だった。

浅川は笑顔で健太を迎え、

「遠いところからわざわざすみません。どうぞ立ち話もなんですから中へ……おや? そちらのお二人が健太さんのお連れさんですか? どちらが奥様ですかな?」

健太は苦笑いしながら、

「実は両方です」

と言うと、ゆかりとみよりが同時に驚いた声を出した。

「健太!」「健太君?」

健太は二人の肩に軽く手を置き、

「大丈夫、浅川さんは信用できるよ」

浅川は目を丸くした後、すぐに笑顔に戻り、

「そこまで信用していただいて嬉しい限りです。ですがなるほど、訳ありですか。ご安心ください、これでも人の良し悪しは沢山見てきました。

お二人共、健太さんとお幸せに!」

その言葉に、ゆかりとみよりは顔を真っ赤にして、

「あ……ありがとうございます」

と小さく頭を下げた。

その後、軽く雑談をしながら4人で事務所の中に入っていった。

応接室に通された三人は、大きな革張りのソファーに腰を下ろした。

浅川はテーブルを挟んだ対面のソファーに座り、設計図を広げながら本題に入った。

「さて健太さん、早速ですが、居住スペースについてはすぐに完成させるとして、宿スペースはこちらの好きにしていいと、しかも納得のいくまでと聞いて居ましたが、よろしいですか?」

健太は頷きながら、

「それでいいですよ。私からの条件は8組程が泊まれる宿で、全て和室。フロントは居住スペースに直結で、調理スペースは大きく、食堂とプレイルームは防音室で、お風呂は露天風呂と内風呂3つ位とサウナ付きで、とお願いしたので、その条件が叶えば好きにしてもらって大丈夫です。勿論建築基準法や旅館営業法などの兼ね合いの中で、最高のおもてなしを出来る宿と言う話にはなりますが」

浅川は目を輝かせて、

「いやぁその条件で内の若いのと中心で設計案を考えてたんですよ。

真ん中に大きな庭を作ってポプラの木を植えます。

実はこのポプラ、内の知り合いが大型受注でホテルを取ったってんで用意したものなんですが、その会社が夜逃げしましてね。

仕方なくウチが引き取った物なんですよ。ざっと10株です」

健太は少し驚いた様子で、

「ポプラ! また珍しいな、真ん中に庭があるってことは……」

浅川が設計図に指を刺しながら、

「ええ、庭を中心に四角く廊下を引きます。その周りに部屋を配置しようかと考えて居ます」

浅川が設計図を指しながら言った。

「1階のみの設計で8室、居住スペースと完全に分離するのはとても理にかなってる設計だと私は思います。内の若いのもいい経験になりました。

建築基準法の避難規定も1階だけならかなり楽になります」

健太が頷き、

「旅館業法も簡易宿所として申請する予定です。客室は各8〜10畳でトイレ・洗面付きにしようと思っています」

浅川は笑顔で、

「それなら問題ないと思いますよ。防火区画と避難経路さえしっかり取れば、1階だけのこじんまりした宿は非常に現実的です」

浅川が設計図を指しながら熱心に説明を続けている間、ゆかりは健太の横顔をそっと見つめ、心の中で思った。

(健太、いつになく真剣な顔……。

そりゃそうよね。ここで確認しておかないと、後々ここが違う、あれが違うなんて言えないものね。

妻として私も出来ることはしなければ駄目ね……)

みよりも、健太の真剣な表情を見て心の中で強く思った。

(健太君、凄く真剣な顔……。

そりゃそうか、夢だったっていつか言ってたもんね。

妻として愛する人に出来ることは精一杯手伝って応援することだ!)

健太は図面を指しながら続けた。

「それで居住スペースの変更と頼んでおいた家具ですが……」

浅川はすぐに頷いた。

「あぁ承知してますよ。お二人の家具や家電は全て此方で揃えます。変更箇所も承知してます。大規模なものじゃ無くて安心しました」

健太は笑いながら、

「そこまで大きくしないですよ。じゃあ確認事項は?」

浅川はメモをめくりながら、

「旅館営業法の届け等は此方で済ませます。健太さんには役所に行ってハンコだけ押して貰えば大丈夫です」

健太はふと思い出したように聞いた。

「そう言えば浅川さんの、あの辺って温泉出ますか?」

浅川は目を丸くして、

「出ると思いますよ? おぉ! 天然温泉までご所望ですか?

でしたら知り合いの地質学者やら掘削業者を紹介しますよ?」

健太は頰を掻きながら、

「今はまだ大丈夫ですが……。

温泉が出たら宿の価値が一気に上がりますよね。

でも掘削って結構大変なんですよね?」

浅川は頷きながら、

「ええ、まず地質調査から始めて、許可を取って掘るんですが……

小規模でも数千万はかかりますよ。

出る保証はないですし、温度や成分も運次第ですからね」

ゆかりが興味深そうに、

「でも出たらすごく魅力的ね。お客さんも喜ぶわ」

みより「源泉掛け流しとか露天風呂とかもいいよね」

浅川がニコッと笑いながら、

「その時は是非よろしくお願いします」

その後、しばらくの間、雑談や近況を話した。

浅川が設計図をまとめながら、最後に確認した。

「最後に確認です。新居の建設中は今の家に住んでもらって、新居完成後速やかに現在の住宅の物を新居に移動+古い家電の引き取り、その後速やかに現在住んでいらっしゃる家を取り壊し、蔵の拡張と宿の建設を行います。

概ね6月の初めの週には全ての作業を完了させたいと思います。

それと玄関先に掘る木の札を作りたいので、宿の名前は決めましたか?」

健太は一瞬目を丸くして、

「あ! 忘れた……」

と頭を掻いた。

浅川が宿の名前を尋ねると、ゆかりがすぐに提案した。

「ポプラがあるなら『ポプラの宿』でいいじゃない?」

みよりが少し驚いた顔で、

「えぇーなんか安直じゃない?」

健太は目を輝かせて、

「いいねぇ! ポプラの宿か! ゆかりナイス!」

と指をぴっと上げた。

ゆかりは少し得意げにドヤ顔をした。

みよりもすぐに笑顔になって、

「うん、でもいいかも! 『ポプラの宿』!」

浅川はメモを取りながら、

「では『ポプラの宿』で、完成までよろしくお願いします」

と言うと健太が握手して「よろしくお願いします」と頭を下げる。

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