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魅魔アートの衝撃


画廊の内部は、外見から想像するよりはるかに絢爛豪華だった。


壁は暗紅色のベルベットで覆われ、吊るされた魔法灯が柔らかく曖昧な桃紫色の光暈を放つ。空気には、強烈だが鼻につかない甘い香り、酒気、そして何か言い表せない、心をくすぐる気配が満ちている。


ゆったりとした幻惑的な音楽が流れ、様々な——典雅な、あるいは露出の多い(あるいはその両方の)——装いの賓客たちが、二、三人ずつ集まって、低声で談笑し、杯を交わしている。


——厳粛なアート画廊の開幕というよりは、ハイエンド(かつテーマ明確な)社交パーティーだ。


「内装は、なかなか豪華だな」


格賀が評価する。魂火は平静に周囲を撫でる。彼は環境の美的価値を認識してはいるが、この雰囲気には、明らかに無関心だった。


「前進!前進!」


ダイクは、もう抑えきれない。尻尾を興奮で小刻みに速く振り、琥珀色の目をきらきらと輝かせる。さっきまでの「氷のトラウマ」など、目の前の賑やかな光景で完全に治癒したようだ。


彼は待ちきれずに、期待の「魅魔アート」——特に、噂に聞く、致命的な魅力を持つ魅魔のお姉さま方——を見ようとしていた!


入口では、裁断が大胆で、身体の曲線を強調したドレスを着た、顔立ちが色っぽく妖艶な魅魔の改札係たちが、プロフェッショナルな魅惑の微笑みで招待状を確認している。


その中の一人、深い紫の巻き毛と猫の瞳を持つ魅魔が、わざわざウォフにウインクを送った。ウォフは居心地悪そうに鼻を鳴らしたが、耳の先が、怪しく赤くなっていた。


改札を通り、正式にパーティーの核心エリアへ踏み入れる。


「パーティーなの?」


爪原が、少し驚いたように小声で言う。犬耳を警戒して回し、鼻をひっきりなしに動かし、空気中の複雑な匂いの情報を分析している。


「静かに絵を見るのかと思ってたんだけど……」


ダイクは、すっかり浸りきっている。


「ウホホホ!やっぱり……ここは心躍る場所だな!」


——目がいくつあっても足りない。どこを見ても、装い華やかで容姿端麗な賓客ばかり。その中には、見た目の魅力に溢れた女性魔族も、数多くいる。


「どこもかしこも可愛いお姉さまばかり!これこそ人生だ!」


カフイの興味の矛先は、まったく違うところにあった。


彼女は、長テーブルに並んだ、盛り付けが美しく、誘惑的な光沢と異様な香りを放つ点心や軽食を、じっと見つめている。ピンク色の翼を嬉しそうにばたつかせて。


「うん!それに、どこにも美味しそうなものが並んでる!あの、自分でくにゅくにゅ動くゼリー、すごく面白そう!」


一行は、人波に乗って、賑やかな中央ホールへ辿り着いた。ここが一番の繁華だ。


ホールの中央には、絶えず七彩の光暈を変える巨大な噴水があり、水音がさらさらと響いている。


「ここがホールか。なかなか賑やかだ」


格賀が、また客観的な陳述をする。


ウォフは噴水の縁に歩み寄り、好奇心のまま手を水に浸してみて、すぐに引っ込めた。顔には驚きが浮かぶ。


「お!?なんでこの噴水、お湯が出るんだ?ぬるい!この場所……噂の高級洗浴センターみたいだな!」


爪原は、鼻をひそめて、必死に匂いを弁別している。


「ここは化粧品と香水、それに甘ったるい食べ物の匂いだらけ……でも、その下に……うん、変な匂いが混ざってる。何だか言い表せないけど、ちょっと胸が高鳴る感じ……犬人の鋭い嗅覚が、ここではちょっと試されてるみたい……」


——その時。また二人の、涼しげな装いで、甘い笑みを浮かべた魅魔の侍女が、飲み物を持って近づいてきた。目標は明確に、人型を保ち、背が高く、顔立ちがたくましく野性味のあるウォフの周囲を囲む。


「この麗しの狼人さん、特製の『月下の出逢い』はいかが?」


一人の侍女が、柔らかい声で尋ねる。指先が、ウォフの腕に触れそうになる。


ウォフは、火傷したように跳び退き、苛立たしげ(そして、少し気まずそう)な表情を浮かべる。耳を後ろに倒し、太い声で言う。


「お前ら!俺に絡むな!そういうのは興味がないんだ!」


——だが、赤くなった耳の根が、彼の内心を曝け出していた。


格賀は、この一幕を平静に見ている。


カフイは、隣でこっそり笑う。ダイクは、羨ましそうにウォフを一瞥し、それから自分を見る(豹人の姿も獣人の中ではそれなりに格好いいのだが、この種の場に対する「破壊力」は、人型のウォフには到底敵わない)。


——その時。彼らを連れてきたヴィグ・ヴィニンが、ひょこひょこと近づいてきた。光学センサーで一同を見渡し、合成音に笑みを乗せる。


「どうやら、もう『体験』を始めてるみたいだね。君たちはゆっくり楽しんで。ここの点心は美味しいよ、飲み物もおかわり自由だ。私はちょっと、他の場所を回って、面白い『アート作品』や『秘密の隠し要素』がないか見てくる」


——彼の興味は、どうやらパーティーそのものより、探索の方に強くあるようだ。


ダイクが爪を振る。


「ヴィグ先輩、またね!招待状、ありがとうございました!」


——彼は、この時、機嫌が非常に良かった。


ヴィグは頷き、その姿は、あっという間に華やかな人波の中へ消えていった。




この後、三十分。骨折り損小隊は、それぞれのやり方でこのパーティーを「体験」していた。


ダイクは、比較的「親しみやすそうな」綺麗なお姉さま方に勇気を振り絞って話しかけようとする。だが、近づくたびに舌がもつれ、最後に得られたのは、丁寧で、どこか距離のある微笑みばかりだった。


カフイは、楽しそうにテーブルの間を飛び回り、変で美味しそうな点心を、ほとんどすべて味見し、お腹が少し膨らんでいた。


爪原とウォフは一緒にいて、騒がしい環境と、濃すぎる匂いに、必死に適応しようとしている。


格賀は、比較的人の少ない隅に静かに立ち、魂火をわずかに揺らめかせながら、この空間の魔力の流れと社交の構造を観察・分析しているようだった。


マッシュルは、催眠的な香りを放つ巨大な魔花のそばに立ち、ぴくりとも動かない。まるで植物と一体化したかのようだ。時折、体に新しいキノコが生えてくることだけが、彼がまだ「起きている」証拠だった。


——ダイクが、そろそろ「美人は目の保養になるし、点心も美味しいけど、想像してた『魅魔アート特展』とは、ちょっと違うな」と思い始めた、その時。


ホール前方のステージ区域で、灯りが、突然、変化した!音楽が止み、すべての賓客の注意が引き寄せられる。


「レディース!ジェントルメン!ご来場の皆様!」


——情熱に満ち、魅魔特有の魅惑的な磁気を帯びた声が、拡声魔法を通じてホールに響き渡る。


「今宵のご来場、心より感謝申し上げます!それでは——最も熱い拍手と期待とともに、今宵の主役、魅魔族が百年に一度の芸術奇才——カリシー・ドマント師!!!」


「おおお——!!!」


——台下から、熱狂的な拍手と歓声が巻き起こる。特に、明らかに魅魔文化の愛好者らしき賓客たちは、ひとしお興奮していた。


ダイクは、瞬時に意気軒昂となり、人混みの前へ割り込んで、目をまん丸に見開く。


「ウフフフフ!ついに!ついに来たぞ!伝説の魅魔芸術の師匠!」


——彼の脳裏には、無限の艶めかしい情景が広がっていた。


舞台上に、濃密な、かすかにローズゴールドの粉を帯びた白い霧が、どこからともなく湧き上がり、瞬く間に広がって、すべての視界を遮る。灯りが霧の中に、幻惑的な光の束を投げかける。場の空気は、最高潮に達した。


ダイクは、興奮して爪をこすり合わせる。


「こんなに大掛かりな演出、やっぱり一筋縄じゃいかない!楽しみすぎる!」


——霧の中から、あの報幕の声が響いた。だが、どこか違う。より清らかに?昂揚と?いや、どこか演劇的な誇張を帯びて:


「間違いですよ、皆さん〜」


舞台の上の声が言う。一筋のからかいと、反論を許さない訂正を含んで。


「まず——『カリシー・ドマント』は、とっくに我が過去の名。我が芸術の道における、輝かしいが、もう乗り越えられた一章だ!」


霧が、わずかに揺らめく。


「今、あなたたちの前に立っているのは、最も美しく、最も優雅に、史上最年少にして、魅力の本質を見透かし、それを新たな高みへ推し進めることを決意した——芸術の革新者である!」


「我が名は——ホセ・カリシー!この名は、我が切り開く新しい芸術流派とともに、魔界に響き渡り、より高く、より純粋な成就をもたらすだろう!」


——言い終わると同時に、霧が、猛然と四方へ散っていく!


すべてのスポットライトが、瞬時に、ステージの中央へ集中する!


一人の影が、傲然と立っている。


まず目に入るのは、溶けた金を流したように眩しい、腰まで届く、微かに巻いた輝く金髪。


そして、世の宝石の輝きをすべて集めたかのような、流し目に致命的な魅力を宿す異形の瞳。


続いて、妖しいほどに整った、古典彫刻のように完璧なプロポーションの顔。


——だが、スポットライトが彼の全身を完全に照らし出した時。


ホール全体が、一瞬、完全な静寂に陥った。


骨折り損小隊の全員が、揃って石化した。


ステージの中央に、古代ギリシャ彫刻のように身体の曲線を誇示し、「妖艶」で表現力に満ちたポーズを決めているのは——


——男性だった。


全身、一糸まとわず、ただ要所を、巧みな光の効果と自身のポーズで暗示的に隠しているだけの、超絶的なスタイルと黄金比を持つ……


裸の男。


その肌は、光を受けてまるで自ら柔らかな光を放っているようで、筋肉の線は流れるように滑らかで、一寸たりとも丁寧に彫琢されていない場所はない。確かに「芸術のよう」だ。


だが、この芸術の形式は……ダイク(そして、ほとんどの人)が想像していたものと、天と地ほどの隔たりがあった。


死の静寂は、ほんの一瞬だけ。


やがて——さらに大きく、さらに熱狂的な歓声と拍手が、海嘯のように爆発し、ホール全体を呑み込んだ!


「ホセ様!美しすぎます!」


「これこそ真の芸術!真の魅力!」


「ホセ!ホセ!ホセ!」


——歓声の中、男女の比率は、どうやらかなり均衡が取れているようだ。多くの賓客の目に、恍惚と崇拝の光が浮かんでいる。


ステージ上のホセ・カリシー(それとも、もうホセと呼ぶべきか?)は、この喝采を、とても楽しんでいるようだった。流れるような顎を上げ、両腕を広げ、宝石のような瞳で台下を撫で、さらに声を張り上げて笑う。


「ははははははは!見えたか?感じたか?これこそが美の力だ!もっと見ろ!存分に讃えよ!我が示す、この至高の芸術の美に、溺れるがいい!はははは!」


——骨折り損小隊の側。


ダイク:「………………」


彼の顔の表情は、極度の期待から、衝撃へ、茫然へ、そして完全な崩壊へ——最後に、世界観が粉々に砕かれ、無理やり張り合わせたかのような、呆けた形に固まった。


格賀の魂火は、穏やかに燃えている。だが、いつもより「安定」しすぎているような気がする。まるで、この平静を保つのに、多大な努力が必要なようだ。


ウォフは、口を大きく開け、狼の耳をぴくぴくと動かす。裸の男一人に、なぜこれほどの騒ぎが起きるのか、分かっていないようだ。


爪原は、困惑して瞬きをし、小声で言う。


「これが……魅魔の芸術、なの?」


——小隊の沈黙を最初に破ったのは、カフイだった。数秒の呆けの後、彼女は、屋根を吹き飛ばしそうな勢いの爆笑を炸裂させた。


「あはははꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)!!!なにこれ!何が魅魔のカリシー師匠だ!これ、俺たちのクラスの、いつも隅っこで変なポーズを決めて、『身体で世界を感じる』って自称してる変人——ホセくんじゃないか!あははは!彼が魅魔?!しかもこんな大舞台をやってる?!あははは!」


——カフイの笑い声は、とてつもない貫通力を持っていた。周囲の歓声を一時的に凌ぎ、ステージ上のホセの注意を引いてしまう。


ホセ(あるいは、ホセくん)は、その宝石のような目で、正確にカフイと骨折り損小隊の位置を捉えた。


自分を芸術に陶酔させていた表情を、わずかに引き締め、眉をひそめて、「図々しい客に邪魔された」という不満を見せる。だが、すぐに「見られたからには、前もって見せてやろう」という傲慢へと転じる。


「うん〜?」


——彼は、甘く回る鼻音を発し、どこからともなく(動作が速すぎて、ほとんど見えない)……質の薄い絹のような、ハイエンドのシーツを適当に切ったような白い長袍を取り出した。


優雅に羽織り、どうにか身体を隠す。だが、その若隠れの効果は、むしろ何か風情を添えているようだ。


彼は、ランウェイモデルのように自信に満ち、リズムのある歩調(ただのシーツ姿だが)で、まっすぐステージを下り、自動的に割れていく人混みを通り、骨折り損小隊の前に立った。


——見下すように(彼は長身で、ダイクの人型より高い)この、呆気に取られた同級生たちを見て、ホセは、得意と、仕方なさと、「この凡夫たちにはまだ分かるまい」が混ざり合った、複雑な笑みを浮かべる。


「ふふ……」


彼は軽く笑う。その声は、やはり、意図的に作られた磁気を帯びている。


「本来なら、次にもっと完璧で、もっと衝撃的な準備ができた時、君たち『特別な』同級生を、正式に私の芸術の躍進を目撃するよう招待するつもりだったんだ。


だが……君たちが『何らかのルート』で先に来てしまった以上、仕方ない。……まあ、プレビュー公演だと思ってくれ」


「あ·る·か·よ·お·まえ!!!」


——悲憤と絶望と怒りが入り混じった咆哮が、ダイクの喉から炸裂した!彼の呆けは、瞬時に引火し、猛々しい怒りへと変わった!


一目散に飛びかかり、鋭い爪を伸ばし(危うく豹型に戻るところだった)、ホセの「シーツ」の襟(そんなものがあるなら)を掴み、彼をよろめかせた!


ダイクの顔は、ホセの端正な顔に、ほとんど張り付きそうなくらい近づいている。琥珀色の瞳には、騙された、弄ばれた、希望が粉々になった炎が燃え上がっている。声は、興奮で掠れていた。


「俺は!魅魔を見に来たんだ!綺麗なお姉さまを見に来たんだ!凍えた心を癒しに来たんだ!お前の……お前の裸の男が、腰をくねらせて芸術面してるのを見に来たわけじゃないんだよ!俺の期待を返せ、この野郎!!!」


——場が、一時的に静かになった。周囲の賓客が、驚いてこの突発的な一幕を見ている。


ホセの護衛(体格の良い、礼服を着た悪魔たち)が前に出ようとしたが、ホセが一睨みで制止した。


骨折り損小隊の面々:「……」


——いったい、なだめるべきか、それともダイクと一緒にツッコミを入れるべきか。


ホセは「襟」を掴まれたまま、しかし、微塵も動揺しない。むしろ、慈愛に満ちた目で、暴れるダイクを見つめ、そっとため息をついた。その態度は、まるで、芸術の分からない子供を見るかのようだ。


「やはりな……」


彼は首を振る。金髪が、ふわりと揺れる。


「君たちには……まだ、私の芸術を理解できない。レベルが足りない。境地に達していない」


「何が芸術だ!」


ダイクが吼える。


ホセは、慌てず騒がず、一本の長い指を優雅に伸ばし、ダイクの、彼の服を掴む爪を、つんと軽く叩く(少し離せ、という合図だ)。それから咳払いを一つし、叙事詩を朗誦するような調子で、解説を始めた。


「誰が——魅魔は、女だけだと決めた?」


彼は、その場の皆を見回す。特に、格賀とウォフの顔に、長く視線を留めた。


「伝統に溺れ、女の形と低級な誘惑の技巧しか知らない、いわゆる『色香』の類——それが魅魔の大多数を占めている。彼女たちにも、確かに彼女たちの『魅力』はある。だが、あの魅力は、浅い!先読みされてしまう!……挑戦性が、ない!」


彼は両腕を広げる(シーツが少しずり落ち、周囲から低い悲鳴が上がる)。まるで世界全体を抱きしめるように。


「そして、私、ホセは——違う!私が追い求めるのは、もっと上の芸術だ!女の魅力など、私は幼少期に、とっくに開発し尽くし、悟り尽くしている!あれでは、『美』と『吸引力』の極致への、私の探究欲を満たせない!」


——彼は、猛然と自分を指さす。


「私が思うに、男性の躯体こそ——この力と、線と、矛盾と、可能性に満ちた形こそ——が、真にすべての人を、性別も種族も関係なく、魅了できるのだ!これこそが、魅魔芸術の究極の形!これこそが、真の、純粋な、『吸引力』そのもののための芸術だ!特定の欲望に迎合するものではない!」


——彼は、語るほどに興奮していく。宝石のような目に、狂熱の光が煌めく。


「最も剛毅な戦士を、私のために失神させ。最も聡明な学者を、私のために傾倒させ。最も冷たい亡霊を、私のために横目で見させる……それこそが最高の成就!それこそが、私が『魅魔』の二文字に与えたい、新しい意味だ!」


一同:「……」


——この男、どうして、こんなにも真剣に、胸を張って、殉教者のような表情まで浮かべて、こんな目を丸くする屁理屈を、まくしたてられるのだ?


ホセは、どうやら喋り疲れたらしく、少し呼吸を整えて、さらに付け加えた。


「あ、そうそう。本来、この特展の最高目標の一つは……『釈雷王』ウラミシュタイン様だったんだ」


彼は、口をとがらせる。


「彼が学院の近くに移ってきたと聞いて、苦労して調べて、最も精緻な招待状を送ったんだ……結局、来なかった」


「ちっ。彼は、そういう恋愛沙汰には無関心で、研究だけに没頭するタイプらしい……私は、もし彼のような伝説の人物でさえ、私の『新たな芸術の美』に、ほんの一瞬でも心を動かされたなら——私こそ本物だと証明できると思ったのに!ああ、計画失敗だ」


——その頃。


学院の僻地、石屋の中。


ウラミシュタインは、突然、理由もなく身震いを一つ。複雑な実験から顔を上げ、異色の瞳に、困惑と苛立ちを走らせる。


「ここまで引っ越してきても、こんなよく分からない奴らに見つかるのか……ちっ。明日はまた引っ越さないとな。面倒だ」


——画廊に戻る。


ダイクは、もうホセと「芸術」について争う気力もなかった。爪を離し、負けた雄鶏のように、耳と尻尾を垂らし、生気の抜けた顔で。


「……もういい。お前みたいな『芸術家』とは、話が通じない……」


ダイクは力なく手を振り、振り返り、重い足取りで、出口の方へ歩き出す。


「帰ろう帰ろう……つまらない……俺の心……また冷えてきた気がする……」


——骨折り損小隊の面々も、それに続く。カフイは、去り際にホセへ、舌を出して見せた。


「ホセくん、次に『芸術展』をやる時は、ちゃんと内容を事前に説明してよね!期待を裏切られて、心に傷を負う人が出るから〜」


——そう言って、ぴょんぴょん跳ねながら、ダイクの後を追った。


ホセは、その場に立ち、去っていく背中を見ながら、首を振り、低く呟く。


「凡庸な目……結局は、束縛に過ぎない」


そして、振り返り、再び魅惑の笑みを浮かべ、まだ熱狂的に追い捧げる賓客たちの方を向く。


「さあ!この美しい芸術の夜を、もっと楽しもう!」




画廊を出ると、夜の涼しい風が顔に当たる。ダイクは、深く、比較的すっきりした空気を吸い込んだ。さっきまでの甘ったるい香りが、まだ鼻にこびりついている気がする。


「冷えた心は……一応、温まった、のかな?」


爪原が、おずおずと尋ねる。


ダイクは自分の胸を触った。そこには、熱い飲み物の残り香が、まだわずかに残っているようだ。だが、それ以上に、何か言い表せない疲労と幻滅の感覚があった。


「温まった?」


彼は苦笑する。


「たぶん……別の意味で『頭に血が上った』、だな。……まあ、いいや」


彼は、そばの仲間たちを見る——平静な顔の格賀。まだこっそり笑っているカフイ。少し困惑しているが、彼を支えてくれるウォフと爪原。そして、のろのろと追いついてきたマッシュル。


——少なくとも、今回の「骨折り損」な冒険も、この連中と一緒に経験したのだ。


「帰ろう」


ダイクはため息をつき、尻尾で無力に地面を掃く。


「明日も、ソサ先生の授業があるし……それに、生徒会予備部の『活動』も……ああ、豹生は、なかなか大変だ」


——とは言うものの。寮へ戻る道すがら、カフイが、ホセの、クラスでは知られていない変な癖の話をし始め。


ウォフが、「魅魔の侍女たちの絡みを、俺がどう軽くかわしたか」を自慢し始め。


爪原が、会場の様々な匂いの分析結果を共有しているうちに……


ダイクの顔には、いつの間にか、また、少しだけ生気が戻っていた。


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