悲惨と招待状——または「魅惑の夜」への誘い
自習室の「反省会」も、ようやく終わりに近づいていた。空気には、ダイクの遭遇への同情(そして、カフイの収まりきらない笑い)が、まだ残っている。
皆が荷物をまとめ、それぞれ寮へ戻ろうか、夜の活動に出ようかとしている、その時——
《カチッ》
扉が、そっと押し開かれた。
一人の影が、扉の枠に手を掛け、ふらふらと、よろめきながら入ってきた。全身の金色の毛は、ところどころ乱れている。特に頭頂と背中には、まだ完全には融けていない細かな氷の結晶が凝りつき、自習室の魔法灯の光を受けて、微かにきらめいている。
彼の顔の半分は、特に顕著だった。ゆっくり融けている薄い氷の粒が一面に張り付き、まるで半分だけ、奇妙な氷パック美容をしたかのように見える。
尻尾は濡れて、ぐったりと地面を引きずり、耳もぺたりと垂れている。琥珀色の目からは、いつもの輝きが失せ、濃い疲労と後悔、そして、いつまでも消えない一筋の寒さだけが残っている。
「ダイク?」
爪原が一番に声を上げた。犬耳をピンと立て、心配そうに駆け寄る。
ウォフも目を丸くする。
「戻ってきたのか!大丈夫か?」
格賀の魂火が、扉の方へ向く。平静に「注視」する。
カフイは、目を輝かせて、隠しもせずに笑い出した。
「えへへへヾノ≧∀≦)o おかえり!うわ〜、なんだか『涼しげ』だね!新ヘアスタイル?」
——彼女は、さらに近づき、好奇心のまま、指でダイクの顔の氷の粒を突っつこうとした。
ダイクは力なく彼女の爪を払い、重い足取りでいつもの席へと歩き、ほとんど「倒れる」ように椅子に沈み込んだ。魂まで凍りついたかのような長いため息を漏らす。
「お前たち……絶対に想像できないよ……俺がどんな地獄を経験したか……」
その声は、まだ少し震えている。寒いのか、怖かったのか。
「氷……どこもかしこも氷……それに、追尾する氷の針まで……あの先生……完全に動く吹雪だったんだよ!しかも『冷静になれ』『本当の合格とは何か、よく考えろ』って言いながら……うう……」
——この言葉と、半分氷の顔。その効果は、格別に哀れだった。
ウォフは、彼の姿を見て、頭を掻きながら、何とか慰めの言葉を探す。
「まあ……少なくとも……えっと……もっと……もっと威厳が出たんじゃないか?極地の氷河から狩りから帰ってきた戦士みたいに?」
——自分でも、その比喩が強引すぎると分かっていた。
爪原は慌てて頷き、相槌を打つ。
「そうそう!それに、氷ももうすぐ融けるよ!大丈夫だよ、ダイク!」
格賀が、平静に付け加える。
「レアンペ先生は、明らかに加減を弁えている。これらは毛に付着した凍結に過ぎず、永久的な損傷ではない。彼の実力なら、本当に罰するつもりなら、お前は『涼しげ』で済んではいない」
——これは、おそらく、格賀流の、変則的な慰めだろう。
マッシュルが、のろのろと近づき、体のどこかから、ほんのりと暖かさを放つ、変わった色の苔を一枚取り出し、ダイクに差し出す。
「……ぐ」
——意味は、貼って。温かいよ。
ダイクは、感動して苔を受け取り、額に貼り付けた。その暖かさは、骨の髄まで染みた寒さには、焼け石に水だったが——それでも、心遣いはありがたい。
——この、混乱(そして、どこか滑稽な)「いたわり」の雰囲気の中で、カフイが突然、《あれ?》と声を上げた。好奇心のまま、自習室の隅の床タイルを指さす。
「ねえ、あの床タイル……動いてない?」
皆が、彼女の視線を追う。
あの、他と何の変哲もない深色の魔法木の床タイルは——その縁が、極めて軽く、規則的に上下していた。まるで、下から何かが持ち上げようとしているかのように。
——彼らが反応するより早く。
《ガコン!バンッ!》
その床タイルが、突然、下から突き上げられ、横へ跳ね飛んだ!金属の頭部が、まっくらな穴の中から現れる。光学センサーが、薄暗い光の中で、見慣れた光を瞬かせる。
「はっは!ヴィグ・ヴィニン——堂々登場!」
改造人のヴィグが、器用な身のこなしで、床下の通路から「跳び」出してきた。ついでに床タイルを戻し、手の埃をぱんぱんと払う。
格賀の魂火が、穏やかに一跳ねする。
「ヴィグ先輩?どうして……床タイルの中から?」
——彼でさえ、この登場の仕方には、適度な疑問を呈した。
「秘密の通路だよ!」
ヴィグは得意げに頭を振り、光学センサーを愉快な弧に曲げる。
「学院の建物には、こういう誰も知らない小さな通路や隠し扉、廃棄されたパイプがたくさんあってね、思いもよらない場所と繋がってるんだ。歴史が長いからね!
まあ、大概の場所を知ってるのは、私みたいに『深度進修』をして、あちこち探索するのが好きな奴だけだけどね!」
——彼は、自分が「学院の生きた地図」であることを、心から誇りに思っているようだった。
そして、センサーが、椅子に瘫れ、半顔氷碴、生気の抜けたダイクに焦点を合わせる。合成音に、適度な同情が滲む。
「おやおや……これは惨い。この『涼しげ』なスタイル……レアンペ先生の傑作だろう?ふふ、さすがは『氷霜の環』、今回も『加減の仕方』が相変わらずだ」
——ダイクは、ヴィグの声を聞くや、まるで踏まれた尻尾(今は動く元気もないが)のように、はっと顔を上げ、弱々しい目で彼を睨んだ。
「ううう……!全部先輩のせいだ!先輩さえいなければ……!」
——だが、言いかけて、声が小さくなる。自分でも、これが全部ヴィグのせいではないと、分かっていたからだ。
自分が欲張って、無分別で、「外部支援」を安易に受け入れ、いい気になっていた。ヴィグは「手助け」をしただけ。そして、それを受け入れて得意になったバカは——自分だ。
ダイクの、責めたいのに、どうも言い切れない、もじもじした様子を見て、ヴィグの光学センサーは、いっそう深く彎んだ。
彼はダイクのそばへ歩み寄り、胸の冷蔵庫の中を探り、そして、何本か——今度は、湯気を立てる飲み物を取り出した!
「落ち込まないで、ダイクくん〜」
ヴィグは、熱い飲み物を、ダイクの冷えきった爪に一本押し込む。
「私も、だいたい予想してたんだ。レアンペ先生の性格とやり方なら、最終的にこうなるだろうってね。
だから、事前に冷却モードを、加熱モードに切り替えておいたんだよ!できたての『熔岩の心』スペシャルドリンク。お腹も心もポカポカになるよ!さあ、飲んで、冷えを追い払って」
——瓶は、手に持つと温かく、少し熱いくらいだ。だが、まさにダイクが今、必要としていたものだった。
彼は少し迷ったが、蓋を開け、慎重に一口飲んだ。
灼熱だが刺激のない暖流が、一瞬で喉から胃へ滑り込み、寒さを追い払っていく。思わず、心地よい吐息が漏れた。
カフイが、すぐに寄ってきて、目をキラキラさせてヴィグの胸を見つめる。
「私も私も!『飲み物マシン』先輩!私にも熱い飲み物!」
「どうぞどうぞ!」
ヴィグは何本か取り出し、皆に配る。格賀も、熱いミルクを受け取った。マッシュルは、熱い飲み物には興味がないようで、静かにしている。
ダイクは、温かい飲み物を数口飲み、また顔を机に埋めた。声はくぐもっている。
「……どんなに熱い飲み物でも、この冷えきった心までは、回復させられないよ……うう……芯まで凍らされたんだ……生活への情熱まで、いっしょに凍りついちゃった……」
爪原が、爪でそっと彼の背中を叩く。
「まあ……そんなに物思いにふけらないでよ、ダイク。次から気をつければいいんだから」
「次?」
ダイクは悲鳴を上げる。
「次なんて、もう御免だ!」
——その時。ヴィグが、何かを思い出したように、機械の手で自分のヘルメットを《カンカン》と叩いた。
「あ!そうだ!ひょっとしたら、君の心を再び『燃やし』て、『雄雄しい炎』を灯せる方法があるかもしれないよ!」
ダイクが、腕の間から、水滴のついた半顔を上げ、力なく言う。
「……もう、どうにもならないよ……俺の心は、先生が作った氷室と同じ温度だ……」
「そんなに早く諦めないで!」
ヴィグは、神秘めかして(効果は薄いが)合成音を少し潜める。そして、鎧のどこかの収納スペースから、慎重に一枚の……極めて華麗で、どこか妖艶なカードを取り出した。
カードは暗紅色の地に、縁にはきらめく砕け光が嵌め込まれ、中央には、金の燙金文字で、華麗な花文字が記されている。
《魅惑の夜——サキュバス芸術家カリシー巡回特別展・真央学院限定公演》
《特別招待状》
その下には、小さな文字で、日時と場所(学院の非学習区にある某画廊)が記されていた。
「見て!」
ヴィグは、招待状をダイクの目の前で揺らす。
「『サキュバス特展——カリシー』の特別招待状だよ!どこを探しても、これがどうやってシュタインのガラクタの山に紛れ込んだのか分からないけど、彼がぽいって私に投げてくれたんだ。
どうだい?興味ある?芸術と美で、傷ついた心を癒してみるのは?」
——ダイクの、曇っていた目が、その招待状を見た瞬間、《シュッ》と輝いた!
サキュバス特展?芸術?どう聞いても上品で(?)、温かくて(?)、悩みを忘れさせてくれそうだ!
特に「サキュバス」の三文字は、思春期の魔族の少年にとって、それ自体が何か言い表せない魅力(と危険)を帯びている。
彼は、すぐに背筋を伸ばした。顔の氷の粒まで、その動きで数粒落ちる。
「ぜ……ぜひ、この心を再び燃やさせてください!ヴィグ先輩!招待状を!」
——彼は、爪を差し出した。
残りの一同は、ダイクのこの瞬間「復活」の変顔ぶりを見て、一斉に、仕方なさと、分かってたという表情を浮かべた。
ウォフ/爪原/格賀/マッシュル:┐(´ー`)┌
——やっぱりな。
カフイは、遠慮なく笑い出した。
だが、ヴィグは《えへへ》と笑って、招待状を引っ込めた。
「待って待って。ちなみに……」
——彼は、また収納スペースから、まったく同じ招待状を何枚も取り出し、皆の前でひらひらと振った。
「私、招待状をコピーしたんだ!だから——一人一枚ずつ、全員分あるよ〜。骨折り損小隊、全員出撃、どうだい?」
——さっきまで死んだ魚の目をしていた一同の目が、瞬時に輝いた!
ウォフ/爪原/格賀/カフイ:(・∀・)
——これは、いい。
賑やかにもなるし、「芸術展」も見られる(ついでにサキュバス文化への好奇心も満たせる)し、今まさに「悲惨」を経験したダイクに付き添(そして笑)える。やらない手はない。
こうして、計画は、瞬く間に決まった。
夜、八時半。学院の非学習区、ある灯りが怪しく揺らめく、独特の雰囲気の通り。
「冷蔵庫/暖房/飲み物マシン/秘密通路マスター/招待状提供者」ヴィグ・ヴィニンの先導のもと。
「骨折り損小隊」の全員——半顔がまだ少し赤い(凍えた)が、精神はもう高揚を取り戻したダイク。期待しつつ、必死に真面目ぶろうとしている格賀。興奮してあちこち見回し、翼を時折ばたつかせるカフイ。同じく好奇心旺盛だが、平静を保とうと努力する爪原。闘志満々(何にでも闘志満々)のウォフ。そして、歩みは遅いが、確実についてくるマッシュル——が、集結した。
「心に火を灯す」と噂の、サキュバス特展へ、向かって。
ダイクの「悲惨」は、ひとまず頭の片隅へ追いやられた。新しい「温もり」(あるいは「熱さ」)の旅が、始まろうとしている。
——少なくとも、彼は、そう信じていた。




