校長は魔王、校歌は災厄——入学式狂騒曲
翌日。一年C組の四十名の学生は、不安と好奇、緊張、そして一抹の諦めが混ざり合った複雑な面持ちで教室へ足を踏み入れた。
陽光は窓を抜け、空気中に舞う微塵を照らし出すが、昨日から心に立ち込めるあの無形の圧力までは、追い払ってはくれない。
担任のレアンペ・ソサは、すでに講台に立っていた。
相変わらずの一糸乱れぬ深青色の長袍。銀灰色の長髪は乱れひとつなく、漆黒の双環角が冷たい光沢を放つ。
彼は何も言わない。ただあの氷藍色の、魂まで見透かすような目で、緩やかに教室内を掃視する。
その視線が届くたび、学生たちは無意識に背筋を伸ばし、弛みを引っ込めた。ウォフでさえ、無意識に立てていた尻尾を少しだけ伏せた。
「顔つきは……悪くないな」
レアンペがようやく口を開く。声は平淡で、褒めているのか、事実を述べているのか聞き分けられない。
彼の視線は数人の学生の顔で少し止まり、最終的にダイクへ落ちた。
ダイクは悪夢(夢の中は高空落下と龍翼の影だらけだった)のせいで寝ぼけた目を必死に見開き、少しでも元気そうに見せようと努力していた。しかし、目の奥の疲労と残り香のような恐怖は、容易に透けて見える。
「ダイク?」
レアンペがわずかに眉を上げる。
「なぜ疲れた顔をしている?ゴブリンの鉱車に一晩中引きずられて、沼沢を三つ渡ってきたのか?」
「えっと……それはですね、その……」
ダイクが口ごもる。
「もういい」
レアンペは遮るように言い、語気には反論を許さない距離感が滲んでいた。
「理由を知りたいとは思わない」
まるで、ダイクの言い訳など、彼の時間を浪費する価値すらないかのように。
ダイク:……
彼は黙って言葉を飲み込み、心の中でさらに鬱々とした。
「本題に入る」
レアンペは振り返り、黒板に指先で鋭利な文字をいくつか刻んだ。
「先学期の一部の……『不可抗力』(この言葉を口にする時、わずかに間が空いた)により、校長閣下が時期を逸して登校できず、お前たちの始業式は今日まで延期されていた」
振り返り、視線で全員を貫く。
「今日、ここで行う」
「全員、起立。ついて来い」
説明も、予告も、ない。ただ命令だけが落ちる。
C組の学生たちは顔を見合わせたが、それでも素早く立ち上がり、いささか整わない列を作って、レアンペの凛とした冷徹な背中に続いた。
廊下では、他クラスの学生たちもそれぞれの担任に引率され、この流れに合流していた。異なる種族、異なる姿の新入生たちが、小声で話し合い、好奇心で張り巡らせた目をきょろきょろと動かす。
一年生は全部で十二クラス。およそ五百十七名の新入生(この数字は毎年微妙に変わると言われている)が、なかなかに壮観な列を成していた。
彼らが連れて行かれたのは、まだ一度も足を踏み入れたことのない区域——外観が逆さにした巨大な碗のような、黒い建築だった。
中に入ると、内部は極めて広々としており、天井が驚くほど高い。まるで劇場のような円形の大広間だ。
光は薄暗く、壁に嵌め込まれた発光鉱石だけが、幽藍や暗紫の微光を放つ。雰囲気は粛穆で、どこか神秘めいていた。
案内に従い、各学生は自分の名前とクラスが貼られた席を探す。
これらの席は、明らかに手をかけて入念に設計されていた。
例えば、獣人族の席はより広く、分厚いクッションが敷かれている。不死族の区域は温度が低く、座面の材質も骨格や霊体に合わせてある。有翼族と鳥族の席は後方寄りで空間が開けており、水生種族は特製の、湿った水気と柔らかな波光に包まれた区域に座る……。
「なんだか変な感じがするね」
爪原が自分の席に座り、犬人族の背中の曲線に合わせて作られた柔らかなクッションを慎重に撫でる。
「この席、種族ごとにちゃんと設計されてるみたいだよ」
「確かに」
ウォフが隣で体を伸ばす。彼の席はより広く、よりしっかりしており、狼人の大きな体格と、時折やってくるそわそわした動きに耐えられる作りだ。
「座り心地が抜群だな」
ダイクの席は、やや前方の位置だった。
格賀の席は「幽寂」区域に片寄った隅にある。座面は、ゆるやかに負のエネルギーを放つ黒い石材だった。
マッシュルの席は、低い無害な蛍光苔を育てた一重の隔離帯に囲まれ、湿って静かな場所にあった。
骨折り損小隊は、きれいに一塊に座っていた。
すべての新入生が着席すると、大広間の最後の微かな物音も消えた。
突然——すべての光源が、壁の鉱石ごと、同時に消えた。大広間全体が、純粋な闇に沈む。
ただ、穹頂の極めて高いところに、星屑のような微光がかすかに瞬いているだけだ。
数秒後。
一束の強烈な、色彩が絶えず変幻するスポットライトが、《パッ》と音を立てて、正面の円形舞台を照らし出した。
同時に、一人の人影が——「校長登場」という厳粛な場面にはおよそ似つかわしくない軽快な動きで、ほとんど跳ねるように舞台の中央へ現れた!
「ハロー〜!我が愛しき新入生諸君——!!!!」
活力に満ち、ほとんど誇張としか言えない朗々とした声が、瞬時に闇と静寂を引き裂いた。どこに仕込まれているのか分からない拡声魔法を通じて、一人ひとりの耳元に突き刺さる。
スポットライトの下に立つのは、外見がかなり若く、どちらかと言えば「おしゃれ」な男だった。
奔放不羈な暗紫色の短髪に、銀白色のメッシュが数筋。動きに合わせて揺れる。顔立ちは端正で、ふざけた笑みを浮かべていた。まとっているのは校長袍というより、華やかなパンクと古典魔紋を混ぜ込んだミックススタイルの服飾。マントの縁には、ひとりでに揺れる細かな装飾が縫い付けられている。
そして何より目を引くのは、彼の背中に畳まれた一対の翼——実体ではなく、流動する暗影と星屑で構成された、翼の虚影だった。
「校長が君たちに一番最初の大会を開いてあげられなくて、本当にゴメンね〜!」
まったく誠意のない両手を合わせた謝罪。しかし顔の笑みは眩しいほど燦然と輝いている。
台下が、瞬時に騒然となる。
ダイクの口角が引きつり、隣のウォフに小声で言う。
「こ、これが……校長?なんだか……頼りない大道芸人みたいなんだけど……」
ウォフはしかし、校長の背後のあの異形の影翼と、相手がまとう一見いい加減、実は底知れない気配をじっと見つめ、目を輝かせた。
「彼はきっと……すごく強い!あの気配……うまく隠してるけど!」
爪原が小声で呟く。
「な、なんだか……優しそう?話しやすそうに見える……かも」
少なくとも、自分たちの担任よりはずっと付き合いやすそうだ。
マッシュルの方角から、ぼんやりと《菇〜!》という声が聞こえた。感嘆なのか、彼の体のキノコが突然の音と光に刺激されたのか。
しかし、格賀の反応が最も異様だった。
ダイクが続けてツッコミを入れようとした時、隣の格賀に気づいた。
あの、普段は安定して燃えている魂火が、今まさに嵐の中の蝋燭のように激しく躍動し、揺らめき、わずかに《パチパチ》と音を立てている!
骨格全体がわずかに前傾し、指骨が座席の肘掛けを強く握り込んでいた。
「格賀?」
ダイクが驚く。
「どうした?まさか校長が何か集団精神攻撃をかけたとか?」
違う。他の者はそんな反応をしていない。
格賀の下顎骨が、興奮でわずかにぶつかり合い、《カチカチ》と慌ただしい音を立てる。魂火の色も、幽藍から、灼熱の明るい藍色へ変わっていた。
彼は、ほとんど震える声で呟いた。
「超、超感激だ……なぜなら……また魔王にお会いできるからだ!」
「何?!」
ダイク、ウォフ、爪原が一斉に息を呑み、驚愕の目で格賀を見る。そして、猛然と——台上でまだにこにこ手を振り、微塵も魔王の威厳など感じさせない「校長」へ視線を向け直した。
魔王?!また?!
後方の小さな騒動に気づいたのか、ずっとクラス方陣の最前列に背筋を伸ばして座っていたレアンペ・ソサが、わずかに頭だけを傾け、氷藍色の瞳で格賀の方角を掃った。
口角が、気づかれないほどわずかに動く。
一筋の細かな、少しばかり意外を含んだ精神伝音が、格賀の頭蓋骨の内側に響いた。
《なかなか、目があるな》
格賀は冷静さを取り繕い、同じく微細な精神波動で応じる。
《レアンペ先生……実は私は、元々『翼王』——ダボ・セイド様のお顔を知っていたわけではありません。彼が校長かどうかも、はっきりとは》
《おや》
レアンペの声が脳裏に響き、一筋の面白がる色を帯びた。
《では、どうやって分かった?何しろこの最高学府は、これまで校長の正体を大々的に喧伝したことはない。外界は、ここに多くの「凄い奴」がいるということしか知らない》
格賀の魂火はいくぶん落ち着いたが、依然として明るい。
《なぜなら……『真央学院新入生入学手帳及び生存指南(第170版)』の第647ページに、丸々一ページ、校長閣下の肖像と寄せ書きが印刷されているからです》
《肖像の作風は……かなり抽象芸術ですが、寄せ書きもかなり……ええと、気ままに書かれています。ですが、めくったあの日から、ずっと楽しみにしていたんです》
レアンペ:《……》
冷徹なレアンペでさえ、この時、精神波動に一抹の明確な無言の呆れが滲んだ。そして、校長閣下の退屈な悪趣味に対する、わずかな苦言も。
(まさか本当にあの分厚くて無駄話だらけの入学手帳を読む者がいるとは。……それに校長は一体何をやっている。まさか本当に自分の肖像画を載せたのか?しかも寄せ書きまで?)
台上で、校長ダボ・セイド——あるいは、十大魔王の一人、『翼王』——は、台下の担任と学生の無声の交流などまったく気づいていないようで、新入生たちの騒ぎにも一切意に介さない。
彼は咳払いをし、突然、どこからともなく閃光を放つハンカチを取り出し、勢いよく鼻をかんだ。そして——
「ううううう……」
なんと、本当に目尻を赤らめ、声に咽びが混じり始めた。
「君たちの……こんなにも多くの、若くて活力に満ちた(一部は間抜けに見えるが)顔を目の当たりにして、本校長は……本校長は本当に感動した!
真央の未来、魔界の希望は、君たちの肩に掛かっている——!!!」
彼は、声を張り上げ、身振り手振り、完全な台本なし、しかもまるまる二十分に及ぶ「熱血演説」を始めた。
内容は、学院の輝かしい歴史(大量の誇張された個人英雄譚が混ざっている)から、魔族平和発展の輝かしい未来(ついでに彼名義の某チェーン店の割引券を販売)まで。
さらには、新入生たちへの熱い期待——「楽しく遊べ!もちろん、校舎を壊さない前提でな。修繕費が高いんだぞ!」——にまで及ぶ。
途中、何度も突然の咽び泣き、大笑い、そしてわけのわからない手品(例:帽子から火を吹く小悪魔を出し、また押し戻す)が挟まれた。
新入生たちは、最初の衝撃から、やがて麻痺し、最後には笑いや欠伸を必死に噛み殺すようになった。
この校長は、あまりにも……一風変わりすぎる。
「よし!こんなに喋ったが、最も重要な部分が残っている!」
ダボ校長がようやく演説を締めくくる。
「本校長が、自ら君たちに教えよう——真央学院の校歌を!!!」
この言葉が落ちた瞬間、台下のすべての担任——レアンペ・ソサを含めて——の体が、気づかれないほど一瞬硬直した。その顔にはそれぞれ、極めて複雑な、苦痛と諦めと「またか」が混ざり合った表情が浮かんだ。
「さあ!私と一緒に歌おう!私が一句歌うから、君たちが続くんだ!」
ダボ校長は教師たちの反応を完全に無視する。
どこからともなく意匠の派手な魔法拡声ラッパを取り出し、咳払いを一つ。そして——音痴でしかも異常なほど朗らか(しかも感情たっぷり)な、ガラガラ声で叫んだ。
「この魔王城の麓で——!!!」
(新入生たち、戸惑いながら、揃わずに続く:「この魔王城の麓で……」)
「ここが魔界の最高学府——!!!」
(声が少し大きくなる:「ここが魔界の最高学府……」)
「知識は牙、智慧は鋭き爪——!!!」
(「知識は牙、智慧は鋭き爪……」)
「愚昧を裂き、迷妄を呑み込め——!!!」
(「愚昧を裂き、迷妄を呑み込め……」)
「骸骨も歌い、スライムも思考する——!!!」
(「骸骨……ぷっ……」誰かが吹き出す)
「異種族、共に光を築く——!!!」
(声が、ますます乱れる)
「真央!真央!我らの誇り——!!!」
(必死に付いていく)
「魔界の星々よ、我らのために輝け——!!!」
……。
校歌の旋律は、形容しがたい。
戦歌の激昂と、民謡の悠揚と、そして一種の……童謡の単純な反復を、無理やり融合させたような代物だ。加えて校長の、あの極めて「個性的な」歌唱が重なり、効果は災害と言うほかない。
歌詞も、魔族特有の直截さと野性に満ちており、かなりの新入生が顔を歪め、笑いたくても笑えなかった。
【全員の心の声:下手すぎる。これが本当に校歌なのか?!】
長い二分間(二時間に感じられた)がようやく過ぎた。最後の歌詞の余韻が大広間に響き、やがて消えていく。
ダボ校長は満足げにラッパを置き、額の存在しない汗を拭った。
「よし!元気がいい!今後、大きな集会のたびに歌うぞ!声が小さいクラスは……へへ、『特別なご愛顧』があるかもしれないな〜」
台下は、瞬時に死んだような静寂に包まれた。
「よし!始業式はこれまで!」
校長が手を一振りすると、スポットライトが消え、大広間の壁の鉱石が再び幽光を放つ。
「本校長のサインが欲しい者は、式典終了後に裏手へ来いよ〜機会を逃すな、二度とないぞ!」
新入生たちは、赦しを得たように次々と立ち上がり、この「音楽地獄」から脱出しようと動き出す。
ほとんど全員が、校長のサインを丁重に遠慮した——一人を除いて。
格賀は迷わず立ち上がり、まっすぐに舞台の裏手へ歩いていく。
裏手で、ダボ・セイドは調子外れの校歌の一節を口ずさみながら、派手な衣装を整えていた。格賀が歩いてくるのを見て、目を輝かせる。
「お?本当に目利きの小僧がいるのか?」
「校長閣下」
格賀は恭しく礼をする(骨格の礼は、少しばかり奇妙だ)。
「私は新入生の格賀と申します。ぜひ、私の骨にサインをいただきたく」
彼は、あの馴染みの滑らかな予備の骨片と、魔法のペンを取り出した。
ダボ校長は彼を見て、突然——何の前触れもなく——
「ううううう〜!(T口T)」
なんと本当に泣き出した。涙(本物かどうかは分からない)が大粒でぼろぼろと零れ、格賀の骨の手を掴む(幸い、力は入れなかった)。
「こんなに長い年月……こんなに長い年月だぞ!ついに!ついに自ら私にサインを求めてくる者が現れた!
入学手帳に隠し要素を仕込み、わざわざ肖像画をあんなにカッコよく描いてやったのに!
あの小僧どもは、まさか誰一人気づきやしない!傷ついたぞ、本当に!
たった一人だけ……でも、一人でも愛だ!」
彼は感動で老泪を流し、泣きながら愚痴をこぼす。先ほどまでの台上の派手な姿はどこへやら、まるで悔しがりながらも嬉しそうな、老いた子供のようだった。
格賀の魂火は安定して燃え、静かに彼の感情が落ち着くのを待った。
「よし!いい子だ!」
ダボ校長は格賀の肩甲骨を力強く叩いた(幸い、骸骨は叩かれても平気だ)。魔法のペンを奪い取り、《サラサラ》と、格賀が差し出した左胸の第三肋骨に。
流れるような筆致で、こう書いた。
《ダボ・セイド——目利きの格賀に贈る》
さらに、口を裂けて笑う蝙蝠の図案まで添えた。
「さあ!これはやるぞ!」
校長は、まるで全世界を収納できそうなポケットから、いくつかの品を取り出して格賀に押し付けた。
——黒い羽根の栞(触れると、わずかに羽ばたく)。
——小瓶に入った、星輝を放つ粉末(「少し撒くと、君の魂火が一時的に虹色になる!パーティーに必須だ!」)。
——軽い寝息を立てる鬼の小玩具(「音量はかなり大きく調整できるぞ」)。
格賀は厳かにこれらの「魔法の小物」を収め、改めて礼を述べた。
彼がサイン入りの肋骨と土産を抱えて仲間たちの元へ戻ると、待っていたのはダイクたちの、尊敬と同情と「やはりお前は正常じゃない」が混ざり合った複雑な視線だった。
「行こう」
格賀は平静に言った。魂火は、しかし、いつもより明るく温かい。
「『正式課程』の準備に戻る時間だ。レアンペ先生は……我々を長く遊ばせてはくれないだろう」
一同は担任のあの冷たい瞳と「賢いバカ」の宣言を思い出し、揃って身震いした。




