29.静寂の中で
ダズ・レイブンとの激闘から数日が経ち、カイルたちはようやく安全な場所を見つけて休息を取っていた。洞窟の中には焚き火の光が揺れ、静寂と温かさが漂っている。
「ここで少し休もう。さすがにみんな限界だ。」
カイルが全員に声をかけると、アリが肩を回しながら座り込んだ。
「マジで疲れたな。ずっとこんな調子じゃ体が持たねぇ。」
ケンも焚き火に木の枝をくべながら頷く。
「確かにな。だけど、あいつらの動きを見る限り、ここで立ち止まるのも危険だ。」
ミゲルが杖を壁に立てかけ、ため息をつきながら答えた。
「だからこそ、こういう時に体を休めておかないと、次で終わっちまう。」
カイルは焚き火を見つめながら頷いた。
「そうだな……ここでしっかり休もう。」
休息の間、カイルたちは隠れ家との通信を行った。画面に映るエイデンの冷静な表情と、その隣に立つアンナが優しい笑顔を見せていた。
「状況はどうだ?無事に進んでいるか?」
エイデンが問うと、カイルが答えた。
「なんとかね。今は休息を取っているところだ。」
「それなら良かった。ただ、一つ気になる情報が入った。」
エイデンは少し表情を引き締めて続けた。
「気になる情報?」
ケンが眉をひそめると、エイデンがアンナに目配せをする。
「アンナ、君の方から説明してくれ。」
アンナは通信画面に少し前のめりになり、言葉を選びながら話し始めた。
「あのね、サラがそっちの近くにいるかもしれないって情報が入ったの。」
「サラだって?」
カイルが驚きの声を上げ、ケンも険しい表情を浮かべた。
「でも、なんでこんなところにサラが?」
カイルが疑問を口にすると、エイデンが答えた。
「ファントム使い同士は互いに惹かれ合うことがある。それが“共鳴”という現象だ。」
「共鳴……。」
カイルが呟き、ケンは小さく頷いた。
「確かにサラなら、ここにいてもおかしくないな。」
一方で、アリとミゲルは首を傾げていた。
「サラって……誰のことだ?」
アリが尋ねると、ケンが短く説明する。
「俺とカイルが以前、一度だけ共闘した異能者だ。とにかく強い。」
「なるほど……どんな奴か気になるな。」
ミゲルが少し笑みを浮かべながら答えると、アンナが柔らかな声で話を続けた。
「でも、会えたらちゃんと仲良くしてね。きっとすごく大事な仲間になるはずだから。」
その言葉に、カイルたちは少し安堵しながらも、次の出会いを予感していた。
通信が終わった後、全員が焚き火を囲んで座り込んでいた。炎の揺れる光が洞窟の壁を照らし、静けさが漂う。
「サラが近くにいるってことは、また何か面倒なことに巻き込まれそうだな。」
ケンが軽く冗談を言うと、アリが首をかしげながら尋ねた。
「そのサラってのは、一体どんな奴なんだ?」
カイルが焚き火を見つめながら答えた。
「一度だけ共闘したことがある異能者だ。すごく強いんだけど……どこか冷たい印象もあった。」
ケンも頷きながら続けた。
「けど、根は悪い奴じゃない。俺たちと同じく、あいつもきっと戦いに巻き込まれてるんだろう。」
アリが軽く笑いながら、楽しそうに言った。
「へぇ~。でも仲間になるなら、かわい子ちゃんだったらいいなっ!」
「……そういう問題じゃねぇだろ。」
ケンが呆れた表情で突っ込み、ミゲルも苦笑しながら答える。
「ま、そうだな。でも、仲間にできれば助かるのは間違いない。」
「それが簡単じゃないんだ。」
カイルが微かに苦笑いを浮かべると、ケンが力強く言葉を添えた。
「それでも、俺たちは会って話す必要がある。彼女を味方につけられたら、きっと大きな力になる。」
その言葉にアリとミゲルも静かに頷き、全員が焚き火を囲んで夜の静けさを共有した。
次回予告
近くにいるとされるサラの行方を追うカイルたち。果たして、彼女との再会はどのような展開を迎えるのか――。
第29話「静寂の中で」をお読みいただき、ありがとうございます!
今回は、戦闘後の休息と隠れ家との通信を中心に描かれました。サラの存在が再び浮上し、新たな伏線が生まれました。この伏線がどう展開するのか、次回以降もぜひお楽しみに!
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