フレンド21
ボクと舞花は、サザンビーチ付近を散策することにした。
サザン通りをビーチに向かって歩く。
住宅街にポツ、ポツとサーフショップやレストラン、民宿が並んでいる。
ふと見ると、家にも店にもしめ縄が飾られている。
どうやら、どこかでお祭りがあるみたいだ。
「お祭りがあったら行きたいね」
舞花が嬉しそうに言った。
表情が少し和らいでいる。
ここに来るまで、舞花はずっと緊張していた。
大場に監視されているかもしれないという不安もあるだろうし、これからどこで暮らすことになるのかも分からない。
そんな舞花にとって、お祭りという言葉は久しぶりに心を弾ませるものだったのかもしれない。
「そうだね。行きたいね」
そんな話をしながら坂道を登ると、国道134号と交差する。
一気に視界が広がる。
ここがサザンビーチだ。
もう10月だが、サーファーが波乗りを楽しんでいる。
遊歩道には犬を連れた親子。
ここだけは平和なんだと思う。
海から吹いてくる風が心地よかった。波が寄せては返す音を聞いていると、新宿での慌ただしい毎日が嘘のように思える。ボクたちが普段いる世界とは、まるで別の場所だ。
ボクと舞花はビーチを散策した後、ハワイアンレストランで昼食を食べた。
ロコモコ丼とガーリックシュリンプ、ポケサラダ。
どれも美味しかった。
舞花も美味しそうに食べていた。こうして一緒に食事をするのも、いつまでできるか分からない。そんなことを考えると、少し寂しくなった。
夕方、常盤スポーツ整体院に戻った。
「改めて、俺は常盤。みつとは大学の同級生」
「みっちゃんの同級生?」
「ああ、と言っても俺は中退して、一時はヤクザをしていたがな」
と言って、常盤は大笑いした。
見た目は熊のように大きくて迫力があるが、笑うと気さくな人に見える。みっちゃんが信頼している相手なら、ボクも安心できそうだ。
「で、裏の組織に追われているってか?」
「ボクじゃなく、この舞花がね」
「ま、あいつの頼みだ。任せとけ。でも、仕事はしてもらうからな」
「はっ、はい」
舞花は緊張したように返事をした。
「そんなに緊張しなくてもいいぞ。ここにいる間は、俺の言うことを聞いて真面目に働いてくれればいい」
常盤の言葉に、舞花は少しだけほっとしたようだった。
その夜、常盤にお祭りをしている神社を教えてもらい、ボクと舞花は縁日を楽しむこととなった。
神社の境内には出店がにぎわっていた。
たこ焼きに、じゃがバターに、チョコバナナ。
どうして縁日の食べ物は、こんなに美味しいんだろう。
あちこちから楽しそうな声が聞こえ、境内には食べ物のいい匂いが漂っている。舞花は出店を見つけるたびに足を止め、何を食べようか迷っていた。
その様子を見て、ボクも自然と笑顔になった。
舞花が楽しそうにしている。それだけで、ここまで来てよかったと思えた。
楽しい時間を過ごしたボクたちにも、夜になり、別れの時間がやってきた。
ボクは新宿に戻らなくちゃならない。
「舞花、頑張ってね」
「まこともね」
舞花は笑顔で答えた。
その笑顔を見て、ボクは少し安心した。ここなら、しばらくは安全に過ごせるはずだ。
そうして舞花と別れたボクは、足取りを消すために熱海まで行き、そこから新幹線に乗って東京駅まで戻ってきた。
ボクはアジトに戻ると、みっちゃんとともに大場を捕まえる準備を始めた。
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