フレンド17
今日も深夜1時を過ぎてから、舞花は帰ってきた。
「ただいま。お腹空いた。何か食べたい」
「舞花、おかえり。みっちゃんが蕎麦寿司を作ってくれたよ」
「蕎麦寿司って何?」
蕎麦寿司は、酢飯の代わりに茹でた蕎麦を使い、海苔で巻いて作る料理だ。
蕎麦の上に卵焼き、キュウリ、椎茸、エビなどの具材をのせ、巻き簾で巻いて形を整える。
ひと口大に切り、わさびやそばつゆ、醤油などをつけて食べる。
京都などで親しまれてきた蕎麦料理の一つで、蕎麦の香りと具材の味わいを楽しめる。冷たくして食べることが多く、見た目も華やかだ。
ちなみに、キュウリが嫌いなみっちゃんは、代わりに茹でたほうれん草を使っている。
「へぇ、美味しいね」
舞花は以前と同じようにボクに接してきた。
それが、かえって違和感を感じさせた。
ボクの考えすぎかもしれない。でも、舞花の笑顔がいつもと同じだからこそ、何かを隠しているようにも思えた。
「舞花、ボクとみっちゃんは明日、朝から川越に行ってくる。帰りは明後日になると思う」
「川越?」
「うん。浮気の調査だから、時間がかかるんだよね。戸締まりとか、よろしく」
「わかった」
舞花は何事もなかったかのように答えた。
その後、まことの目を盗み、舞花は大場に連絡した。
明日の朝から、まことは川越に行く、と。
* * *
次の日、みっちゃんは川越に向かった。
みっちゃんは、シルバーセージの下部組織の近くまで行っていた。
川越にあるシルバーセージの系列組織は、ここしかない。
ボクは新宿に残った……。
* * *
舞花は、マコトたちが部屋を出てから3時間後の午前11時、隠し部屋に向かった。
クローゼットの奥にある扉。
普段は服に隠れていて、そこに扉があることすら分からない。
舞花は周囲を見回した。
誰もいない。
本当に、今なら確かめられる。
大場からもらったカードキーを、ドアノブの上にある金属プレートにかざした。
カチャリ。
鍵が外れる音がした。
舞花の心臓がドキリと跳ねる。
本当に開いた……。
恐る恐る扉を開けてみる。
薄暗い部屋の中には、銃やナイフなど、戦闘に使うものが収められていた。
舞花は息をのんだ。
見間違いであってほしかった。
何か別の理由があるのかもしれない。そう思いたかった。
けれど、目の前にあるものは、どう考えても普通の人が持つようなものではなかった。
やっぱり、マコトたちは殺し屋。
証拠が完全にそろった。
「やっぱり、大場の仲間だったんだね」
背後から声がした。
「えっ……!」
振り返ると、まことが立っていた。
ボクが後ろから舞花に声をかけると、舞花の顔が恐怖にひきつった。
「まこと、本当に殺し屋だったんだね」
舞花は小さな声で言った。
「そうだよ」
ボクは正直に答えた。
もう、隠す必要はなかった。
舞花は何も言わず、ボクの顔を見つめていた。
その目には、恐怖と戸惑いが入り交じっていた。
いつも一緒にご飯を食べて、何気ない話をして、笑い合っていた相手。
その相手が人を殺す仕事をしている。
舞花にとって、それは簡単には受け入れられない事実だったのだろう。
「大場とはどういう関係?」
ボクは続けて尋ねた。
「………」
舞花は答えられなかった。
その沈黙が、ボクには何よりも気になった。
大場に脅されているのか。それとも、自分の意思でボクたちを裏切ったのか。
今のボクには、まだ分からない。
ただ一つ、はっきりしていることがあった。
舞花は、大場と連絡を取っていた。
そして今、ボクたちの秘密を知ってしまった。
ボクは舞花をソファーまで連れていき、みっちゃんが帰ってくるまで待つことにした。
舞花は抵抗しなかった。
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