フレンド16
「落ち着いて、まず様子を見ろ」
みっちゃんが焦るボクを抑える。
「でも!」
「こんな人目のつくところなら何もできない。落ち着いて状況を判断しろ」
みっちゃんに諭され、様子を見る。
声は聞こえない。大場に何かを渡されている様子だった。
* * *
まことたちの裏の顔を知ってしまった私は、唯一話のできる大場さんに相談した。
「廊下が血で汚れていたか……。こりゃ、噂は間違いないな」
大場さんは深刻そうに言った。
「わたし、もうマコトたちのところから離れた方がいいよね。準備しなきゃ」
そう決意した私を、大場さんが止める。
「待て。急にいなくなったら、舞花が本当のことを知ったと思われるから、消されるぞ」
「消される」という言葉に、私は恐怖とともに途方に暮れた。
「……じゃあ、どうしたらいいの?」
私が聞くと、大場さんは、
「とにかく、今は気づかれないことが大切だ」
「一、二週間したら、『お金の目途がついたから引っ越す』と言って、自然に消えればいい」
「それまでは?」
「そう。それまでは、知らないふりをしてやり過ごすしかない」
大場さんは、あの部屋にとどまるように言うけど……どうしよう。
殺し屋と一、二週間、同じ部屋?
耐えられるかどうか。
「そうだ、隠し部屋のドアノブに金属プレートがあるって言っていたよな?」
「うん」
大場さんは、何かを思い出したように言った。
「多分、カードキーだと思うんだ。このカード、万能らしいから、使ってもう一度、開けるのに挑戦したら? もしかしたら、本当に殺し屋かどうか確信が持てるかもしれないぜ」
大場さんが渡してくれたのは、PASMOみたいな一枚のカードだった。
確かめよう。
本当にマコトたちが殺し屋なのかどうか。
そう思い、舞花は部屋に戻った。
* * *
ボクたちは、舞花と大場の15分ほどの会話の様子を見ていた。
何か深刻そうな話をしていた。
「みっちゃん、どう思う?」
少し冷静になったボクは、みっちゃんの意見を聞いた。
「何とも言えないな。会話の内容は分からないが、深刻そうな話だな」
「大場とは接点を持たない方がいいと思うんだ」
「大場とつながっている可能性も、なきにしもあらずか……」
みっちゃんも迷っているみたいだ。
「そんなことないよ! ボク、舞花が心配だから、様子を見たいんだけど、いい?」
ボクはみっちゃんに言った。
「ああ、そうしろ」
今日は、ボクは舞花の様子を見ることにした。
舞花は新宿の街を、考え事をしながら少しブラブラ歩いていたけど、17時前には店に入っていった。
一方、みっちゃんは大場を見張っていた。その後、大場はスカウトの仕事を続け、22時には東中野の古い賃貸マンションに戻っていった。
* * *
23時、ボクたちはアジトに戻り、これからどうするか話し合った。
「ボクは、大場が舞花をだまして何かをさせようとしていると思っている」
「それは否定できないな。ただ、舞花が大場とグルの可能性も、また否定できない」
みっちゃんは、こんな時も冷静だ。
「じゃあ、どうするの?」
「取りあえず、今までと同じく情報を流して、どうなるか試してみよう」
ボクは気が進まなかったけど……舞花を試すことにした。
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