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まことはニッコリ笑って人を斬る。  作者: ほりーⅯ


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8/40

ニッコリ笑って人を斬る。8

ゲームの弊害が出た。

 ゲームの世界なら、タイミング通りにボタンを押せば成功だけど……。

 現実はそうはいかない。

 身体能力の低さ……。

 力のなさ……。

 今更、後悔しても……。

 死ぬ……。

 いろいろなことが一瞬のうちに頭をよぎる。

 これが走馬灯なのか?

「何ごちゃごちゃ言ってるんでぇ! 死ねや!」

 今川が引き金を引こうとした、その刹那。

「ぬおぉぉぉぉぉぉー!」

 みっちゃんが背後から、両手を頭の上で組んでジャンプ一番、その組んだ拳を今川の後頭部に叩き落とす!

 ゴキッ! と鈍い音。

 そして、今川はばたっと倒れる。

「ハアッ、ハアッ」

 みっちゃんは少し興奮気味だ。

 みっちゃんが直接人を殺すことは、あまりない。

「みっちゃん。キャリーケースに入れなきゃ」

「あっ、ああ」

 死後硬直する前にケースに詰めなくちゃ。

 体をうまい具合に曲げ、ケースに詰める。

 ボクたちは何事もなかったかのように、少し離れて歩く。

 キャリーケースはさすがに重いのか、キャスターが削れるような音がした。

 ボクが電話で掃除屋を呼び、みっちゃんが待ち合わせをしていた劇場通り沿いの、とある信号の近くで待っていると……。

 大手宅配便の二トントラックが、みっちゃんの目の前で止まった。

 二人の男が降りてくる。

「荷物、引き受けに来ました」

 業者が言う。

「いや、俺は頼んでいない」

 みっちゃんが否定する。

「俺たち、掃除屋」

 それを聞いたみっちゃんは、ようやく納得し、

「お願いします」

 と一言。

「確実に死んでいるな?」

 と聞かれ、

「多分…。」

と、みっちゃんが答える。

 任務完了。

 「ぷぷっ。だけど撲殺って、どんだけ怪力なの?」

 自分がヤバくて情けなかったことを隠したいボクは、みっちゃんを小ばかにしてみる。

「火事場の馬鹿力ってやつかな」

 みっちゃんが真面目に答える。

 みっちゃんは、ボクがそんなみじめな気持ちだって知っているから、そこはあえて触れないでくれる。

「あーあ、ラーメン食べたいな」

「こんな時にか?」

「食べたい!」

「新宿に戻ってからにしようぜ」

「食べたい! 今すぐ、た・べ・た・い!」

 歩いていると、ちょうど目の前にラーメン屋があった。

 ○○ちゃんラーメン。

 いわゆる、ちゃん系ラーメンの店だ。

 券売機にお金を入れて、普通のラーメンを押そうとすると、みっちゃんが隣のワカメラーメンを押す。

「えっ?」

「おまえ、ここのところ野菜を全然食べてないだろ。せめてワカメくらい食え」

「みっちゃん。あんた、ボクのおかん?」

 少しうざいけど、ボクのことを考えてくれている。

 カウンターでラーメンを待つ間。

「ねえ、みっちゃんも引退したら、みっちゃんラーメンでも始めたら?」

「なんか、もうありそうな名前だな。でも、それも悪くないか」

「ボクも手伝うよ」

「起きれるのか?」

「夜だけね」

 笑いながら言った。

 ワカメラーメンが、それぞれボクとみっちゃんの前に置かれる。

 ネギにメンマにチャーシュー。そして、大量のワカメ。

 一口、スープをすする。

 飽きのこないシンプルなスープ。

 おいしい。

 スープまで飲み干し、一気に食べてしまった。

 横を見ると、みっちゃんがスープを残している。

「みっちゃん。スープ残すの?」

「ああ。このところ血圧が高くてな。医者にラーメンのスープは飲むなって言われてるんだ」

「ププッ。みっちゃんて、本当にお・じ・さ・んだね」

「ほっとけ」

 いつものやり取り。

 今日の失敗のことは、明日考えよう。

「あっ、もうこんな時間」

 ボクはみっちゃんと、副都心線の最終電車に駆け込んだ。


いつもありがとうございます。感想いただけたら幸いです。

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