フレンド13
舞花はボクらのアジト、すなわちマンションに戻ると、誰もいない部屋の中を探し始めた。
ボクたちが殺し屋だという証拠を……。
違っていてほしいという希望を持ちながらも、心のどこかでは、大場の言葉が気になって仕方がなかった。
まこともみっちゃんも、確かに普通の人とは少し違う。
でも、人殺しだなんて……。
舞花は頭を振って、余計な考えを追い払おうとした。
そして、普段は衣裳部屋にしている部屋の、さらに奥に別の部屋があることを確認した。
まこととみっちゃんは、洗濯物をたたまず、ハンガーに掛けたまま収納している。
そのハンガーラックの後ろ。
というより、部屋のドアを洗濯物で隠しているようだった。
このマンションの間取りは3LDKではなく、3SLDK。
つまり、サービスルームがある。
その6畳間の奥にある扉を開けようとするが……。
開かなかった。
ぱっと見たところ、鍵のようなものはない。
ドアノブの上に、6~7センチ四方の金属プレートがあるだけだった。
舞花は、ここに何かあるに違いないと確信した。
普通の収納部屋なら、わざわざこんなふうに隠す必要はない。
それに、ドアには鍵穴すら見当たらない。
いったい、何が隠されているのだろう。
もしかしたら、大場の言っていた証拠が、この奥にあるのかもしれない。
そう考えると、胸の奥がざわついた。
でも、そのドアノブの上にあるプレートの秘密が分からないと、先には進めない。
これ以上探している時間もない。
舞花は後ろ髪を引かれる思いで、その場を離れた。
今日は諦めて、ガールズバーに出勤することにした。
* * *
その日の夕方、ボクとみっちゃんは、再びあきなママに呼ばれてSuiteKissⅡに来ていた。
「急ぎの仕事があるの」
「ずいぶん急ですね。で、どんな仕事ですか?」
みっちゃんが聞く。
「シルバーセージの下部組織にいる、薬の売人、吉田浩一を殺してほしいの」
「売人ですか」
「ええ、そうよ。高田馬場で学生相手にシャブを売っているわ」
「じゃあ、高田馬場にいるの?」
「そう。神田川沿いのボロアパートの二階よ」
「じゃあ、楽勝だね」
ボクが言うと、
「まこと、お前はまた……」
みっちゃんが呆れたように言った。
「あそこは監視カメラもないし、木造だから、いざとなったら燃やしちゃえばいいんじゃない?」
「だから、お前は周囲に迷惑をかけるようなことはするな」
みっちゃんに注意されても、ボクは悪びれなかった。
むしろ、どうすれば手早く片づけられるか、そればかり考えていた。
人が住んでいる建物だということも、火事になったらどうなるかということも、頭の片隅にすら浮かばなかった。
このとき、ボクの言動が少しずつおかしくなってきていることに、ボク自身は気づいていなかった。
「とにかく、余計なことはするんじゃないわよ」
ママが念を押す。
「分かってるって」
ボクは軽く答えた。
ボクらは道具を取りに、アジトへ戻った。
サービスルームのドアノブの上には、金属製のプレートがある。
そこにICカードをかざすと、カチャリと鍵が開いた。
ボクは黒いレザースーツを着て、アルマーのシーアを手に取った。
いつもの装備を身につけると、不思議と気持ちが落ち着く。
さっきまでの軽口も、頭の中から消えていった。
みっちゃんはグレーの作業服に着替え、黒いデイバッグを背負った。
バッグの中にはP320と、今回はマガジン1本、サイレンサー。
それに、ファーストエイドキットが入っている。
みっちゃんは装備を確認すると、ボクに目を向けた。
「まこと、今日は余計なことをするなよ」
「分かってるってば」
ボクは笑って答えた。
でも、本当に分かっていたのだろうか。
ボクらは、すぐに仕事に取りかかった。
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