フレンド10
その日の夕方、舞花は初出勤をしていた。
Girls Bar VELIA。
歌舞伎町の端にある店だ。
新宿3丁目のアジトから、目と鼻の先にある。
大場から店長に紹介され、店のシステムなどをいろいろ教えられていた。
客のドリンクは、特別なものを除いてセット料金になっているので、あまり期待できない。
稼ぐには、とにかく客に指名されること。
そして、いかにドリンクを飲ませてもらうか。
「でも、お酒はまだ飲めないから、ちょっとな~」
舞花は独り言を言ってみた。
最近の新宿は観光客の外国人も多いので、ガールズバーの客として、ふらっとやってくることも多いようだ。
そういう客のほうが単価が高い。
狙い目だ。
「舞花ちゃん、今日は最初だから、無理しないでね」
店長に声をかけられる。
「はい。頑張ります」
舞花は笑顔で答えた。
お金が必要だから働く。
それだけのつもりだった。
でも、初めての仕事というのは、やっぱり少し緊張する。
舞花の1日目が始まった。
* * *
さて、ボクたちは作戦の成果を確認に向かった。
23時、リランドホテル。
ここで、待ち伏せなんかの異変があれば、てっちさんが犯人ってわけ。
ちなみに、部屋にはシルバーセージの幹部がいるという噂を流している。
ホテルの周辺を、少し離れた場所から観察する。
車の出入り。
ホテルに入っていく人。
周囲を警戒しているような人影。
何か変わった動きがないか、注意深く見る。
けど、何もなかった。
「うーん、てっちさんはシロ? かな」
「そうだな。次に行こう」
24時、ラウナントホテル。
次は、掃除屋の乾に流した情報はどうだろう。
こちらも、何もない。
「外れかな?」
「みたいだな」
ボクもみっちゃんも、肩透かしを食らったような気分だった。
「これで2人ともシロなら、残るのは……」
「まだ決めつけるな」
みっちゃんが釘を刺す。
「分かってるって」
ボクは答えた。
次に行くことにした。
25時、グドンランホテル。
「これで大場が犯人だね」
ボクが言うと、
「まだ分からないだろう。短絡すぎるぞ」
みっちゃんの小言。
「ちぇっ」
舌打ちをする。
ホテルの周りを見回す。
東側の入り口から死角になるところに、人影が……。
大場だ!
「アイツがいるってことは、犯人? だよね」
「まだ分からんぞ」
みっちゃんは、いつも慎重だ。
「でも、ここにいるんだよ?」
「それだけじゃ証拠にはならない」
確かに、みっちゃんの言うとおりだ。
でも、ボクには大場が犯人にしか見えなかった。
「捕まえて尋問する?」
「いや、取りあえずホテルに忍び込む振りでもしよう」
「分かった」
ボクらは大場に気づかれないように、ホテルへ近づいた。
706号室。
あらかじめ流しておいた情報の部屋に行く。
廊下にも、人の気配はない。
部屋の前まで来ても、何も起こらなかった。
結局、何もなかった。
「いったん戻ろう」
みっちゃんがボクに言う。
「捕まえて尋問したほうがいいんじゃない?」
「今捕まえても証拠が弱い。しかも、あいつは俺たちとは別のチームだ。摩擦は避けたほうがいい」
「じゃあ、泳がせるんだね。了解」
ボクは大場がいた方向をもう一度見る。
でも、そこにはもう誰もいなかった。
「逃げた?」
「いや、帰ったんだろう」
「じゃあ、明日も調べる?」
「ああ。もう少し様子を見よう」
ボクらは今日は帰ることにした。
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