子どもを売る悪い奴。17
足立区花畑三丁目。
綾瀬川を境に、埼玉県八潮市との都県境になる。
河川敷には緑地があり、その中にぽつんと産廃施設がある。
広さは約百メートル四方。
周囲を古びたトタンの壁で覆われている。
高さは三階建てくらいだから、十メートル程度だろうか。
看板を見ると、どうやら金属専門の買取をしているようだ。
「あそこだね」
「ああ」
日中はまともな仕事をしているけど、社員も全員、人身売買組織の人間らしい。
ボクらは車の中から周囲を確認する。
取付道路は一つだけど、隙間が結構ある。
こう見ると、どこからでも侵入できそうだ。
「侵入は簡単にできそうだな」
「なんか嫌な感じがする」
ボクのカンが、そう言っている。
とりあえず、夜まで待とう。
ボクらは暗くなるのを待った。
赤外線暗視ゴーグルをつける。
肉眼では真っ暗な敷地内に、赤外線センサーの存在が淡く浮かび上がっていた。
やっぱりそうか。
センサーは、かなり狭い間隔で張り巡らされていた。
ボクとみっちゃんは車に戻り、作戦を考える。
「重要なのは、マリアがあの場所にいるかどうかだよね」
「ああ、そうだな」
「あの赤外線センサー、ボクならすり抜けられるけど、みっちゃんには難しそうだよ」
「面目ない」
少し考えていると……
「そうだ」
ボクは、一つの作戦を思いついた。
ボクはみっちゃんと別れ、一人で潜入することにした。
マリアがいるかどうか確認するためだ。
赤外線暗視ゴーグルに、いつものレザースーツの上下。
アルマーのシーア二本といった、いつもの装備。
それに、最近練習していた投げナイフを十本。
そして小型の通信機を持って、潜入を試みた。
赤外線センサーを避けながら進んでいく。
体の小さいボクだから、すり抜けることができる。
そして、なんとかトタンの壁のところまでたどり着いた。
「ふう。何とか塀まで着いた。どこから入ろうかな?」
独り言を言いながら辺りを見渡すと、一か所、トタンの塀に穴が開いていた。
穴に潜り込むと、そこは壊れたアルミサッシを積んだ山だった。
もう夜だからか、誰もいない。
「番犬もいないね」
柏ノ葉ファームのドーベルマンたちを思い出す。
いたとしても、魚肉ソーセージはない。
ボクは監視カメラの位置を把握した。
「三か所か……」
そのカメラも外敵を監視するというよりは、作業の安全を確認するためのものらしい。
中に入ってしまうと、警備はそれほど厳重ではない様子だ。
この施設には、手前にスチール缶、その隣にアルミ缶の山。
そしてアルミサッシなどのアルミ類。
一番奥には、鉄くずが積み上げてある。
処理場の西側には三階建ての事務所があり、その前にはトラックごと量れる大きな計量器があった。
その奥に倉庫が見えた。
倉庫は厳重に鍵がかけられている。
おそらく、連れてきた子どもは商品として、あそこで保管されるのだろう。
事務所の方は、三階の一室に明かりが灯っていた。
窓際に人影が見える。
でも、マリアではなかった。
ボクは倉庫に潜入した。
倉庫は二階建てになっている。
中央は天井まで吹き抜けになっているけど、右側に階段があり、上は二階へ、下は地下室へと続いている。
ボクはまず地下室に行ってみた。
地下室の鍵を開けると、十四、五畳ほどの部屋になっている。
人はいない。
トイレと洗面台だけがある。
壁には金属製の丈夫そうな手すりがある。
塗装が削れているのを見ると、ここに手錠で拘束されていたみたいだ。
ボクは鍵を閉め、今度は二階に向かった。
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